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中性脂肪が高すぎる・低すぎることの問題とは?
数値の目安についても解説

2023年8月24日

中性脂肪が高すぎたり、低すぎたりすると、どんな問題があるの?

「中性脂肪が気になる方へ」と謳っている特定保健用食品や飲料は、今やドラッグストアだけでなくコンビニでも売られている時代です。そうした商品を見る限り、中性脂肪が高いと健康に悪影響を及ぼすように思われますが、中性脂肪が低い分には問題ないのでしょうか? そもそも、中性脂肪って身体の中でどんな役割を担っているのでしょうか?
今回は、中性脂肪の働きや正常値、高すぎたり、低すぎた場合の問題点などについてお話します。

中性脂肪とは、名前の通り脂肪の一種で、英語名を「triglycerides(“トリグリセライド”や“トリグリセリド”)といいます。

中性脂肪には、食事中の脂肪が腸で吸収されて血液中に取り入れられた「外因性トリグリセリド」と、一度肝臓に取り込まれた脂肪が再び血液中に分泌された「内因性トリグリセリド」の2通りが存在します。
血液中には、中性脂肪の他に、「コレステロール」「リン脂質」「遊離脂肪酸」の3つの脂肪が存在しますが、このうち、中性脂肪とコレステロールは、動脈硬化の元凶とされています。

それなら体内の中性脂肪はゼロにしたほうがいいのか、というとそうではありません。
なぜなら、中性脂肪は「体内にエネルギーを貯蔵する」という大切な役割を担っているからです。
生命を維持するためのエネルギーとしては主にブドウ糖が利用されますが、中性脂肪はブドウ糖の不足を補う形で利用されるのです。

しかし、エネルギーとして使われなかった中性脂肪は、肝臓や脂肪組織、皮下、血中に蓄えられて、その多くは皮下脂肪になってしまいます。こうなると、生活習慣病のリスクも高まります。

つまり、中性脂肪は高すぎても低すぎても好ましくないということです。

中性脂肪はわたしたちの身体になくてはならないものですが、肝臓で増えすぎれば脂肪肝につながりますし、皮下組織で増えれば肥満につながります。
また、血液中の中性脂肪が多い状態が続くと、動脈硬化のリスクが高まります。
その他、中性脂肪値が基準値より高い場合は、「脂質異常症」「糖尿病」「ネフローゼ症候群」「膵炎」「甲状腺機能低下症」などを患っている可能性も考えられます。

つまり、中性脂肪値が高いからといって、必ずしも肥満ではないということ。
脂質の多い食べ物やアルコールの過剰摂取以外にも、中性脂肪値が高い原因はあるのです。

たとえば、痩せているのに中性脂肪値が高い場合、食事から摂取した脂肪が血液中に留まりやすい体質であることも考えられます。
「血液中に中性脂肪が多い」状態だと、血液はドロドロと考えられます。そうなると、身体の隅々まできちんと酸素や栄養が運ばれず、老廃物も溜まりやすく、健康面にも美容面にも影響が出てきます。

また、ストレスも中性脂肪値に悪影響を与えるので、ストレスを溜めないように心がけることも大切です。

では、中性脂肪値が低すぎる場合はどういった弊害が考えられるでしょうか。

先にお話しした通り、中性脂肪は「体内にエネルギーを貯蔵する」という大切な役割を担っています。
そのため、中性脂肪値が基準値以下の場合、体内のエネルギーの蓄えが少ない状態なので、「疲れやすい」「十分に休んでもスタミナが回復しない」といったことが起こります。

また、中性脂肪は身体の体温調節に関係しているため、低体温、末端の冷えなどの症状が現れることもあります。
さらに、中性脂肪に溶け込んで体内を巡っている「脂溶性ビタミン(ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDなど)」が不足して、免疫力の低下や、抜け毛や肌荒れなどを起こす場合もあります。

中性脂肪値が低すぎる原因は、大きく分けて4つあります。

1.ダイエット目的などで極端な食事制限をおこなうこと
2.アスリート並みの過度な運動
3.なんらかの疾患が関係している
たとえば肝機能に問題がある場合、中性脂肪を合成、貯蔵することができなくなるため値が下がりますし、甲状腺機能亢進症(=バセドウ病)の場合、新陳代謝が非常に活発となるため、中性脂肪が大量に消費されることで値が下がります。
4.体質や遺伝によるもの
1つ目~3つ目の原因に当てはまらないなら、体質的に中性脂肪を蓄えにくいと考えられるため、意識的に脂質を多く摂ることが望ましいでしょう。

中性脂肪の基準値は、30~149mg/dLとされています。

中性脂肪は過剰に増えても自覚症状を感じることがないので、定期的に健康診断を受けることが大切です。
中性脂肪は内臓周囲にある腸間膜(ちょうかんまく)や大網(だいもう)、腹膜(ふくまく)につきやすく、内臓脂肪の増加につながりますし、血糖値や血圧が上昇した結果、血栓ができやすくなります。
生活習慣病の予防のためにも、定期的な検査をおこなうことで、中性脂肪を溜めないよう心掛けましょう。

中性脂肪値は食後に必ず上がりますし、食事に大きな影響を受けます。
そのため、食事内容を見直すことはもちろん、蓄え過ぎたエネルギーを消費するために運動することなども有効です。

脂質、糖質は控えめに

食生活改善のポイントとしては、まずは中性脂肪を増やしやすい食べ物を控えめにすることが大切です。
具体的には、バターやクリームなどの乳脂肪分の多いもの、牛肉、豚肉など脂質の多いもの、果物、ハチミツ、ケーキやジュースなど糖質の多いものを減らしましょう。

脂の多い肉などを調理する際には、湯通しして余分な脂を落としたり、電子レンジや蒸し器を活用したりして、油を使わずに調理するのもいいでしょう。
焼いたり炒めたりするなら、少量の油でも調理できるフッ素加工のフライパンを選ぶのも一手です。

調理の工程で、バターやラードなどの動物性油脂を使うのもよくありません。
油脂類を使う場合は、LDL(悪玉)コレステロールを減らしてくれる不飽和脂肪酸を多く含んだ植物油脂などを選ぶようにしましょう。

<摂り過ぎに注意したい脂肪酸>
・飽和脂肪酸
飽和脂肪酸を多く含む油:バター、ラード、パーム油、ヤシ油、カカオ油、肉の脂身など
働き:LDL(悪玉)コレステロールを増やす

<身体によい影響をもたらす脂肪酸>
・一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)
一価不飽和脂肪酸を多く含む油:オリーブ油、キャノーラ油
働き:LDL(悪玉)コレステロールを減らす
・多価不飽和脂肪酸
①多価不飽和脂肪酸のうち「n-6系リノール酸」を多く含む油:コーン油、ごま油
働き:LDL(悪玉)コレステロールを減らすが、摂り過ぎるとHDL(善玉)コレステロールも減らす
②多価不飽和脂肪酸のうち「α-リノレン酸」を多く含む油:えごま油、しそ油
働き:LDL(悪玉)コレステロールを減らす
③多価不飽和脂肪酸のうち「EPA、DHA」を多く含む油:さば、さんま、いわしなどの青魚の油
働き:中性脂肪(トリグリセライド)やLDL(悪玉)コレステロールを減らす

コレステロール排出に役立つ食物繊維を摂取する

また、腸内で脂肪分やコレステロールを包み込んで体外に排出してくれる食物繊維を積極的に摂取することも有効です。
さらに、大豆や胚芽に多く含まれる植物ステロールは、コレステロールの吸収を妨げることが期待できるので、食物繊維を多く含有する食材同様、積極的に摂取するといいでしょう。

≪食物繊維を豊富に含有する食品≫
(グラム数:可食部100gあたりの食物繊維含有量)

  • おから:11.5g
  • 干ししいたけ(戻したもの):7.5g
  • 納豆:6.7g
  • ごぼう:5.7g
  • ひじき(戻したもの):5.2g
  • ブロッコリー:4.4g
  • 生しいたけ:3.5g
  • カットわかめ(戻したもの):2.8g
  • 玄米ごはん:1.4g

また、アルコールも中性脂肪を増やす原因となります。
アルコールは、日本酒なら1合、ビールなら大瓶(633ml)1本、ワインならグラス2杯程度、ウイスキーならグラス1杯程度にして、週に1~2日は休肝日も設けましょう。

食事をする際、お酒を飲む際に気をつけてほしいのは、「よく噛んでゆっくり食べる」「腹八分目を心掛ける」「夜遅い時間は特にカロリーを控えめにする」ということです。
お酒のつまみとして揚げ物などを選ぶと一気にカロリーが跳ね上がるので、どうしても食べたい場合は主食となる炭水化物を少なめにするなどして調整しましょう。

適度な運動も有効

食事内容に気をつけることと同様、適度な運動を実践することもとても大切です。
ウォーキング、水中運動、スロージョギング、エアロバイクなどの有酸素運動を週に数回続けることで、効率よく中性脂肪を減らしましょう。

もしも、毎日仕事が忙しくて運動の時間を思うように取れないなら、「通勤時に早歩きする」「駅構内での移動にはエスカレーターやエレベーターではなく階段を使う」など、できる範囲で身体を動かすことからはじめるのでもいいでしょう。

また、前述の通りストレスを溜めないことも大切。
ストレスの原因となっていることを取り除くことが難しいなら、ストレスを上手に発散する方法を見つけるのもいいかもしれませんね。

食生活や体質が原因で中性脂肪が、基準値より低い場合は、食生活を見直しましょう。
中性脂肪が低いということは栄養不足の状態だということなので、必要な栄養をしっかりと摂取することが大切です。そのために実践してほしいのは以下の3つです。

1. 朝昼晩、規則正しく食べる
栄養が足りていない人は、食事を抜いたり、食べる時間が不規則だったりというケースが多いです。まずは、朝昼晩規則正しく食べる習慣をつけることからはじめましょう。

2. 炭水化物を多めに摂る
中性脂肪値が低いということは、体内がエネルギー不足に陥っている状態です。そのため、すぐにエネルギーになる炭水化物を積極的に摂ることをおすすめします。炭水化物は、米、パン、麺類などに多く含まれています。

炭水化物が分解されてできるブドウ糖は、脳の栄養源となります。脳に十分な栄養が行きわたれば、「身体に力が入らなくて頭がぼーっとする」「しっかり寝ても疲れが取れない」といった症状が改善されやすくなります。

3. 炭水化物、タンパク質、脂質をバランスよく摂る
炭水化物をきちんと摂取する習慣がついたら、次は、タンパク質や脂質もしっかりと摂取することを意識しましょう。タンパク質からできるアミノ酸、脂質からできる脂肪酸は、筋肉や血管などの大切な構成成分となります。
身体に必要な栄養素をバランスよく摂取すると、中性脂肪値は上がっていきます。
ただし、栄養不足が原因ではなく、肝臓や甲状腺疾患が原因で中性脂肪値が低い場合は、病院での治療が必要となります。早めに医療機関を受診するようにしましょう。

中性脂肪を下げる薬は、もともとは処方箋が必要とされていました。
しかし近年、血液サラサラ効果が期待できる「EPA」や「DHA」などのサプリメントや、EPA配合の市販の医薬品も登場。
市販の医薬品に関しては、中性脂肪値が150mg/dL以上300mg/dL未満の人しか購入できないため、販売認定薬剤師のいる薬局にて、服用指導などを受けた人しか購入することができませんが、サプリメントは誰でも簡単に手に入れることができます。

しかし、EPAには、血液が固まりにくくなるなどの作用があるため、1日3g以上の摂取においては注意が必要です。
特に、出血を伴う手術や歯科治療などを受ける場合などは、医師に相談するなどして十分注意しましょう。

では、医師に処方される薬にはどのようなものがあるかというと、主として以下の7つがあります。

1. スタチン系
血中の中性脂肪だけでなく、悪玉コレステロールを低下させることができる。

2. 陰イオン交換樹脂
腸内にある胆汁酸と結合させて、コレステロールを排出させる。

3. 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬
腸内にある胆汁酸を抑制してコレステロールの吸収をコントロールする。

4. フィブラート系
肝臓で中性脂肪が作られるのを抑える。

5. ニコチン酸誘導体
肝臓で中性脂肪が作られるのを抑えるビタミン。悪玉コレステロールの増加も抑える。

6. プロブコール
悪玉コレステロールを胆汁酸として排出させる作用を有す。悪玉コレステロールが酸化するのを防ぐために、動脈硬化の予防にも効果がある。

7. 多価不飽和脂肪酸
血をサラサラにする効果があり、中性脂肪を分解して中性脂肪値を下げる働きがある。

処方された薬を飲み、「筋肉の痛み」「手足のしびれ」「倦怠感」「呼吸困難」などの症状が現れた場合は、すぐに服用を中止して、医師に相談するようにしましょう。

Q. 中性脂肪値を正常値に保つためにはどんな食事が理想的?
A. 昔ながらの日本食は極めて理想的です。精白していない五穀などの穀類の主食に、季節の野菜や近海で獲れた小魚をおかずとした食事は、脂質が控えめで食物繊維やビタミンが豊富。毎日は難しくとも、こうしたバランスのいい食事を積極的に摂るように心がければ、中性脂肪を減らせるだけでなく、美容や健康面でもうれしいメリットがたくさんあるはず。
「主食(米)、主菜(魚や大豆製品など)、副菜(野菜や海藻、きのこを主原料にしたおかず)、副々菜(不足しがちな野菜を補う小鉢)、汁物」の和定食で、健康な身体づくりを心がけましょう。

Q. 中性脂肪の薬を処方されている場合、一生飲み続けることになるの?
A. 中性脂肪値を下げるためには、食生活の改善、運動習慣、ストレス解消が必要です。
これらの改善と薬物療法によって、中性脂肪値が正常値になり、医師の判断の下、服用を止めて良い可能性も出てきます。

中性脂肪値が高過ぎても低過ぎてもダメ! 食べ過ぎ飲み過ぎも運動不足もストレスもダメ! そう言われると改善するのが難しいと感じてしまう人は、それだけ不摂生な生活を送っているということ。

逆に言うと、腹八分目と適度な運動、ストレスフリーな生活を心掛けていると、中性脂肪は自然と基準値におさまりやすくなりますし、そうした生活を続けることは、生活習慣病をはじめとする疾患を防ぐことにもつながります。

生活習慣をすべて改善するのが難しいなら、まずは簡単にできそうなことから一つひとつクリアしていくのでもOK。
5年後、10年後も健康で毎日笑顔で過ごせるよう、今からできることをはじめてみてくださいね。

また、中性脂肪値が高い人の中には、肥満に悩んでいる方もいるのではないでしょうか?肥満症になった場合、脂質代謝を上げて、余分な脂肪を分解・燃焼して減らす漢方薬などもおすすめです。

「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」と「大柴胡湯(だいさいことう)」の2処方は便秘を改善して、脂質代謝を上げて余分な脂肪を分解・燃焼する効果があります。それぞれ使われる体質が違うので、まずは自分の体質に合わせて処方を選ぶことが大切です。
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」のタイプ:食べ過ぎや間食が多く、代謝が追い付かなくなることでお腹まわりに脂肪がつきやすくなるタイプ。このタイプは胃腸の働きが乱れて便秘にもなりがちです。
大柴胡湯(だいさいことう)」のタイプ:年を重ねることやストレスなどでホルモンバランスが乱れ、脂質代謝が低下し、上半身を中心に、筋肉の少ない二の腕・脇腹に溜まりやすいタイプ。また、このタイプは食生活が乱れやすく、便秘にもなりがちです。
「防風通聖散」と「大柴胡湯」の2処方は、ドラッグストア等でクラシエ薬品のコッコアポとして販売されていることがあります。漢方薬で自分にあう脂肪の減らし方を探したいときは、ぜひチェックしてみてください。

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からだにいいこと
記事監修
からだにいいこと編集部
創刊18周年を迎えた女性向けの健康生活情報誌『からだにいいこと』。医師や専門家の監修のもと、「いますぐできる」「心も体も元気になれる」健康・美容・ダイエット情報を発信中。