目次
- 漢方で考えるむくみが起きる原因
- むくみ度チェック
- むくみの原因となる体内の余分な水の巡りをよくする漢方薬
- 夏に起きるむくみの原因とは?
- むくみを防ぐ8つの習慣
- むくみやすい人必見!常備しておきたいアイテム
- むくみ対策に効果のある食べ物
- むくみやすい人が控えた方がいい食べ物とは
- むくみが気になる方におすすめの簡単レシピ
むくみは、水分の摂りすぎだけが原因ではなく、日々の体調や生活習慣など、ちょっとした変化によって引き起こされることもあります。漢方では、夏のむくみは高温多湿や冷房による冷えなどにより、血(けつ)や水(すい)の巡りが滞ることで起こると考えます。また、ストレスが続くと気(き)が滞ることで、体内に余分な水分がたまりやすくなります。これらが、むくみの原因となることがあります。今回は、むくみの種類や原因、セルフケアの方法について紹介します。
漢方で考えるむくみが起きる原因
漢方でいうむくみは、カラダの中の水分が滞っている状態だと考えられています。
漢方では、次の3つの臓腑の働きの低下が水分を滞らせ、むくみを引き起こす原因としてあげられます。
1. 脾(ひ)の働きの低下
脾には、食べ物から消化、吸収した栄養分や水分を全身に運ぶ消化器の役割があります。暴飲暴食や雨で湿気が多い季節、ストレスなどで脾の働きが弱り、皮膚や筋肉に水がたまると、手足のむくみが出やすくなります。
2. 肺(はい)の働きの低下
肺には、呼吸器の働きに加えて、体内にたまった余分な水分を汗や尿として出す役割があります。肺は外の空気と直接つながっているため、ウイルスや花粉などが侵入しやすく、肺の働きが弱くなると、咳や息切れ、むくみなどの症状が出やすくなります。特に肺は、体内で上方に位置する臓器のため、同じむくみでも下半身ではなく、顔などの上半身にむくみが出やすくなります。
3. 腎(じん)の働きの低下
腎には、体内にたまった余分な水分を尿に変えて外に出す、泌尿器の役割があります。加齢や冷えなどにより、腎の働きが弱って尿量が減少すると、むくみなどの症状が出やすくなります。特に下半身にむくみが出やすくなり、足腰が冷えて重だるいなどの症状を感じやすくなります。
むくみ度チェック
「むくみ」と聞くと、顔や足がパンパンに張っているようなイメージを思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、むくみは少しずつ進行するため、自分では気づきにくいこともあります。次の項目で「はい」がいくつあるかをチェックしましょう。半分以上当てはまる場合は注意が必要です。
・指輪がきつく感じることがある
・座ったり、立ったりする時間が長い
・甘いもの・塩辛いもの・脂っこいものをよく食べる
・冷たいものをよく飲んだり食べたりする
・手足が冷たい
・疲れやすい
・全身がだるい
・同じ姿勢で過ごすことが多い
・運動不足
・カラダを締め付ける服装が多い
・肩こり・頭痛を感じる
・水分や塩分をたくさん摂る
むくみの原因となる体内の余分な水の巡りをよくする漢方薬
漢方では、体内に余分な水分が滞ると、むくみやめまい、下痢などの不調を起こすと考えます。このような不調のときには、次のような水の巡りをよくする漢方薬がおすすめです。
■五苓散(ごれいさん)
全身の余分な水分を排出する働きがある漢方薬です。低気圧などによる頭痛、二日酔などを改善する漢方薬です。吐き気・下痢といった症状のある方のむくみにも効きます。
■防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
胃腸の働きを整え、体内の余分な水分を外に出すことにより、肥満症やむくみなどを改善する漢方薬です。汗をかきやすい方に向いています。
■八味地黄丸(はちみじおうがん)
腎の働きをよくする漢方薬です。カラダを温め、カラダ全体の機能低下を改善することで、加齢の影響による、頻尿や夜間尿などが起こる方のむくみに効きます。
夏に起きるむくみの原因とは?
むくみが起きる原因には、水分の摂りすぎや冷房などのカラダの冷え以外に、ストレスもあります。夏にむくみやすいポイントをチェックしてみましょう。
•高温多湿
夏の暑さと湿度は、カラダの水分バランスを崩し、むくみの原因になることがあります。湿度が高いと、汗がうまく蒸発しにくくなり、体内に熱がこもりやすくなります。
•塩分の摂りすぎ
暑い季節によく食べる食べ物や飲み物には、塩分がよく含まれています。例えば、スポーツドリンクやそうめんのめんつゆといったものです。この塩分がむくみの原因になることがあります。
•運動不足
夏は暑さや湿気を理由に外出の機会が減り、活動する時間が減ってしまいがちです。カラダを動かす時間が減ると、血流やリンパの流れが悪くなるため、むくみを起こしやすくなります。
•ホルモンバランスの乱れ
夏は暑さにより睡眠不足になるなど、生活リズムが崩れがちです。この変化がホルモンバランスに影響を与え、体内の水分代謝がうまくいかず、むくみを引き起こすことがあります。
•冷房の影響
エアコンでカラダが冷えすぎると、血管が収縮し血流が悪くなるため、リンパの流れも滞りやすくなります。この結果、カラダに不要な老廃物や水分をうまく外に出すことができず、むくみを引き起こす原因になります。
・ストレス
ストレスがたまると、気の巡りが滞りやすくなります。その影響で水の巡りも悪くなり、体内に余分な水分が滞りやすくなります。また、睡眠不足や緊張状態が続くと、血の巡りも悪くなるため、むくみがあらわれやすくなります。
むくみを防ぐ8つの習慣
むくみが気になる方は、まずは毎日の生活習慣を見直すことから始めてみましょう。ただし、いつもと明らかに異なる不調がある場合は、自己判断をせずに医師に相談することをおすすめします。
1. 手帳に体調を書く
朝起きたあとと、寝る前の体調を書きましょう。食事の記録もおすすめです。むくみやすい日を知ることができます。雨の日や、甘いもの脂っこいものを食べすぎたときは、カラダの中に水分が滞りやすくなり、むくみを感じることがあります。漢方では、消化吸収の働きをもつ脾の働きが弱くなると水分代謝が乱れ、余分な水分が体内に滞りやすくなると考えられています。体調の変化に目を向けることで、むくみを事前にケアできるようになります。
2. 毎朝舌を見る
舌は内臓の鏡といわれるように、カラダの内側を映し出すもののひとつです。舌がぶよぶよして白っぽい場合は、体内に水分が滞っている可能性があります。舌に歯型がついている場合は、脾の働きが弱っていると考えられ、むくみや冷えが強い場合は腎の働きが弱っている場合もあります。歯磨きの前に舌を確認するといった習慣を身につけることにより、カラダの変化に早く気がつくことができます。
3. 冷たいものが飲みたいときは、温かいものとセットで
暑い時期は、ついつい冷たいものが飲みたくなります。そんなときは、温かいものとセットで摂りましょう。カラダの冷えを和らげることができます。冷たいものを摂りすぎると、脾の働きが弱くなることにより、水分代謝が悪くなり、むくみの原因になることがあります。特に、氷が入った飲み物や生野菜などは、内臓が冷えるため、胃腸の働きが悪くなる場合があります。
4. こまめに水分補給をする
一度に大量の水分を摂ると、体内に余分な水分が滞るため、むくみの原因になることがあります。水分は少量ずつこまめに摂りましょう。例えば、寝る前と起きたあとはコップ一杯の水を飲む。暑いときは、1時間毎にコップ一杯の水を飲むなど決めておくといいでしょう。温かいお茶や常温の水がおすすめです。
5. 1時間に1回立ち上がり足首を回す
ふくらはぎは第2の心臓といわれるくらい、カラダにとって重要な役割を果たしています。ふくらはぎの筋肉が衰えると、下半身の血流やリンパの巡りが悪くなり、足がむくみやすくなります。肺機能が低下し全身の巡りが悪くなっている場合、ふくらはぎの筋肉を動かすことで、末端に滞った余分な水分を全身に巡らせることができます。特に、デスクワークなど長時間同じ姿勢でいる人は、1時間に1回は立ち上がり、足首を回したり、ストレッチをするようにしましょう。
6. 夜はお風呂でふくらはぎをマッサージ
足のむくみがある人は、お風呂に入って足をマッサージしましょう。軽くなでるだけでも効果があります。足のむくみに効くツボには、三陰交があります。内くるぶしから指4本分上にあるツボです。このツボは、冷えやむくみに効果的だといわれています。お風呂でカラダを温めながらマッサージをすると、気血水の巡りがよくなりむくみを改善させることができます。暑い季節だからこそ、お風呂に入って心身の緊張をほぐすことをおすすめします。
7.ストレス管理
夏の暑さや湿気によるストレスや生活リズムの乱れはホルモンバランスを崩し、むくみを引き起こすことがあります。ストレスを軽減するために、リラックスできる時間を設けましょう。ヨガや瞑想、深呼吸などが効果的です。また、規則正しい生活リズムを保つことで、ホルモンバランスを整えることができます。毎日同じ時間に寝起きすることを心がけましょう。また、栄養バランスのよい食事を摂ることで、ホルモンバランスを維持することができます。特にビタミンB群やマグネシウムを含む食材を積極的に摂りましょう。豚肉・卵がおすすめです。
8.デジタルデトックスの実践
スマホ・パソコンなどのデジタルデバイスの使いすぎは、ストレスやホルモンバランスの乱れ、自律神経の不調を引き起こすため、むくみの原因になることがあります。デジタルデバイスの使用を控えることにより、長時間の姿勢の悪化や運動不足を防ぎ、血行不良によるむくみも予防できます。また、睡眠の質が向上します。良質な睡眠は、自律神経やホルモンバランスを整え、水分バランスをよくすることにつながります。
デジタル習慣を見直したい方は、寝室にスマホを持ち込まない、通知をオフにする、リラックスする時間をつくるといったことを心がけましょう。
むくみやすい人必見!常備しておきたいアイテム
むくみやすい人は、毎日の生活の中で、ちょっとした工夫が必要です。ここでは、むくみやすい人が持っておきたいおすすめアイテムを紹介します。
・マイボトル
喉が渇いたときでも、冷たい飲み物を避けることができます。マイボトルに入れるおすすめの飲み物は温かい白湯やとうもろこし茶です。白湯はカラダを温め、とうもろこし茶は体内の余分な水分を外に出す働きがあります。外出先でも自分のペースで水分補給ができます。
・靴下やレッグウォーマー、ひざ掛けやブランケット
冷房の効いた部屋や、長時間の座り仕事は、カラダを冷やすためむくみの原因になります。冷房の温度を適度に設定し、冷えすぎを防ぎましょう。エアコンの温度は、25~28度が目安です。特に夏は、冷え対策をおろそかにしがちなので注意が必要です。
・ゴルフボールやマッサージグッズ
足裏にはたくさんのツボがあります。デスクワークの人は、ゴルフボールを使って足裏をころころ刺激するのがおすすめです。小さなマッサージグッズがあれば、太ももを手軽にほぐすこともできます。足裏には湧泉(ゆうせん)といった不眠や精神的な不調に効果のあるツボがあります。
・お粥を入れたジャーポット
脂っこいものを食べた翌日はカラダがむくみやすくなります。そんなときは、消化のよい薬膳粥がおすすめです。利尿作用のあるはとむぎやカリウムを含むさつまいもを入れるとむくみ解消に効果があります。外出先でも自分の体調に合わせた食事をすることができます。
・おやつ
アーモンドや乾燥バナナを常備しておきましょう。お腹が空いたときに少し食べることができます。アーモンドやバナナには、カリウムが入っているので体内の余分な水分を外に排出してくれます。アーモンドはビタミンEが含まれており、血行改善に役立ちます。乾燥バナナは急な血糖値の上昇を抑えることができます。
・アロマオイル
リフレッシュしたいときは、アロマテラピーがおすすめです。持ち歩きできるアロマスプレーやアロマストーンなどがあります。アロマの香りは、気の巡りを整えたり、心身のバランスを整える働きもあります。リラックスしたいときは、ラベンダーやゼラニウムがおすすめです。
むくみ対策に効果のある食べ物
薬膳において、体内の余分な水分を排出して巡りを整える食材=むくみ対策におすすめの食材を紹介します。
◆カラダの冷えを改善する食材
・しょうが
カラダを温めて、汗を出す効果があります。胃腸の働きを整える作用もあります。
・ねぎ
カラダを温めて、気血の巡りをよくする働きがあります。
・シナモン
カラダを温める効果の高い食材です。血行を促進し、冷えによる痛みを和らげる効果もあります。
◆ストレスを改善する食材
・セロリ
イライラしたり、のぼせがある方に適した食材です。熱を冷ます効果があります。
・ミント
気の巡りをよくする作用があります。頭や顔のほてりなどに効果があります。
・レモン
香りは気の巡りをよくする作用があります。ストレスがある、リフレッシュしたい方に適しています。
◆血行の流れを改善させる食材
・玉ねぎ
気を巡らせる働きがあります。胃の不調や冷えのある方に適しています。
・カツオ
気血を補います。血虚の方や気虚の方に向いています。
・桃
カラダを温める働きがあります。血の巡りをよくするため、女性の症状にも向いています。
むくみやすい人が控えた方がいい食べ物とは
むくみが気になる人は、カラダに余分な水分をためこみやすい食材を控えることが大切です。次の食材は、控えめにしましょう。
◆冷たいもの
カラダが冷えると、胃腸の働きが弱くなります。脾の機能が低下すると、カラダに余分な水分が滞りやすくなります。
・冷えた水・ジュース
・トマト・きゅうりなどカラダを冷やす食材
◆甘いもの
砂糖が入ったものを摂りすぎると、脾の機能が低下するため、カラダの水分が排出されにくくなります。
・チョコレート
・ケーキ
・アイスクリーム
◆脂っこいもの
油が含まれている食べ物は、体内に湿気だけでなく熱もためこみやすく、気血を滞らせる原因になります。これを漢方では湿熱(しつねつ)といい、むくみやにきび、胃もたれなど不調を起こす原因になることがあります。
・あげもの
・脂身の多い肉
◆塩分の多いもの
塩分を含んだものを食べすぎると、水分をためこみやすくなります。特に、加工食品は、知らず知らずのうちに塩分過多になっている可能性があります。
・ソーセージ・ベーコンなどの加工食品
・インスタント食品
むくみが気になる方におすすめの簡単レシピ
体内の余分な水分を排出する「とうもろこし」、気血を巡らせカラダを温める「玉ねぎ」、カラダを潤し、不足した血(栄養)を補う「卵」、カラダを温め、体内の巡りをよくする「酢」を使ったスープをご紹介します。
★冷えやむくみにやさしい「とうもろこしを使った薬膳スープ」
【材料】2人分
・とうもろこし 100g(冷凍でもOK)
・玉ねぎ1/2個
・ベーコン2枚
・卵1個
・コンソメ1個
・水400ml
・酢少量
・塩コショウ
【作り方】
- 1. 玉ねぎを薄切りにし、ベーコンは食べやすい大きさに切る。
- 2. 鍋にオイルをひき、玉ねぎとベーコンを炒める。
- 3. 玉ねぎがしんなりしてきたら、とうもろこしと水とコンソメを入れる。
- 4. 全体的に火が通ったら、溶き卵を流し入れる。
- 5. 最後に酢を加え、塩コショウで味を整える。
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兵庫県在住。医療機関、薬局、IT企業での勤務経験を経て、2015年にライターとして独立。体の不調を感じたことをきっかけに、漢方・薬膳に興味を持つ。中医学スクール「薬膳アカデミア」に入学し「国際中医師(国際中医専門員)」を取得。現在は、ライターとして活動をしながら、漢方薬膳の知識を活かしたコンサルタント業務や、ワークショップ・初心者向け講座などを実施。特に女性の体に関する悩みに寄り添った活動を行っている。
実績:クラシエ薬品株式会社主催「KAMPO OF THE YEAR 2024」にゲストとしてトークショーに登壇
執筆書籍:「カラダのために知っておきたい漢方と薬膳の基礎知識」(淡交社)
資格:国際中医師(国際中医専門員)・医薬品登録販売者・漢方養生指導士・薬機法管理者・食品衛生責任者を取得
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