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ダイエットのお悩みには。 ―太り・むくみには漢方薬―

2025年10月27日
ぽっこりお腹やストレスによる過食、
年々低下する代謝で太りやすくなったと感じる方は多いのではないでしょうか。
肥満は見た目だけでなく、生活習慣病のリスクを高めるため、健康のために減量が望ましい場合もあります。
この記事では、無理なく続けられる健康的なダイエットの考え方と、体質に合わせた漢方薬の選び方、
日常生活で取り入れやすい習慣
をわかりやすくご紹介します。
あなたに合った方法を見つけて、健康的な体づくりを始めましょう。

「ダイエット」とは単に体重を減らすことではなく、健康維持のための食生活や生活習慣の改善を指します。この言葉は英語の「diet」に由来し、現代では体重管理や健康増進のための食事調整を意味します。
多くの人が短期間での結果を求め、極端な食事制限や無理な運動に走りますが、これらは栄養不足や代謝低下を招き、リバウンドのリスクも高めます。健康的なダイエットの目標は心身のバランスを整え、健康状態を向上させることです。
このセクションでは、体質や生活スタイルに合った健康的な体づくりのポイントを解説します。

健康的なダイエットを実践するには、正しい知識と適切な方法が不可欠です。体重減少や短期間での成果だけに焦点を当てた方法は避けるべきでしょう。これらは一時的な効果はあっても、長期的な健康維持には繋がりません。ここからは、持続可能で健康的なダイエットを実現するための3つの重要なポイントについて説明します。

極端な食事制限は危険な方法です。過度な制限は栄養不足を招き、筋肉量の減少と基礎代謝の低下につながります。その結果、痩せにくい体質になるだけでなく、めまいや倦怠感、冷え性、肌荒れ、女性の場合は月経不順などの健康問題を引き起こす可能性があります。
健康的なダイエットの基本は「食べない」ことではなく、栄養バランスを考慮した適切な食事を摂取することです。体に必要な栄養素とエネルギーをしっかり補給しましょう。

短期間で一気に体重を落とすのではなく、長期的な視点で健康的な体づくりに取り組むことが大切です。急激な減量はリバウンドを引き起こし、健康を害する恐れがあります。
減量の目安としては、3~6カ月かけて現在の体重の3%程度を目指すとよいでしょう。
例えば体重70kgの方なら、3カ月で約2.1kgの減量が適切です1)
自分のライフスタイルに合った食習慣や運動を少しずつ取り入れ、無理なく続けることが成功への鍵となります。

1)日本肥満学会『肥満症診療ガイドライン2022』ライフサイエンス出版.2022年

体重だけでなく体全体の変化に注目しましょう。筋肉が増えて脂肪が減ると、体重は変わらなくても見た目は引き締まり、体が軽く感じられます。また、疲れにくくなる、睡眠の質が向上する、消化機能が改善するなど、日常生活での体調変化も重要な成果です。
健康的な体づくりを目標に、自分のペースで継続できるダイエット方法を見つけることが大切です。体重計の数値よりも、健康と体調の改善を優先しましょう。

ここでは健康的な体質改善に向けた具体的な方法を紹介します。漢方の考えに基づき、「食事」「運動」「睡眠」「ストレス対策」の4つの観点から体の内側から変化を促す方法を解説します。これらは一人ひとりの体質に合わせた調整が可能で、持続可能な習慣として日常に取り入れることで、自然な体質改善と健康増進を目指します。

糖分の過剰摂取は脂肪蓄積と体重増加を招きます。特に加工食品や甘い飲料に含まれる「隠れ糖分」に注意しましょう。食物繊維が豊富な食材を追加すると満腹感が持続し、過食を防げます。できるだけ自然な食材を選びましょう。
食事は野菜→肉・魚→炭水化物の順に摂ることで消化がゆるやかになります。また、よく噛むことで満腹感が得られ、血糖値の急上昇を抑制できます。食前の水分摂取や定時の食事も効果的です。

日常生活で体を動かす習慣を取り入れましょう。電車のひと駅分を歩いたり、階段を使うといった小さな活動から始めるのが効果的です。スクワットは太ももやお尻の大きな筋肉を鍛え、基礎代謝を向上させます。また、ウォーキングなどの有酸素運動は脂肪燃焼に効果的です。1日30分の軽い運動でも、続けることで代謝機能が向上し、冷え性改善にもつながります。無理なく楽しく続けることが大切です。

睡眠はダイエット成功の重要な要素です。質の良い睡眠が不足すると、食欲抑制ホルモン「レプチン」が減少し、食欲増進ホルモン「グレリン」が増加することで、過食傾向になります。また、睡眠不足は血糖値のコントロールに影響を与え、インスリン抵抗性を高めることで、体重増加や生活習慣病のリスクを高めます。成長ホルモンの分泌が活発になる深い睡眠時間を確保することで、脂肪代謝や筋肉修復が促進され、基礎代謝の維持にも寄与します。7~8時間の質の良い睡眠を心がけましょう。

ストレスはコルチゾールの分泌を促し、過食や内臓脂肪の蓄積を引き起こします。
ストレス管理はメンタルヘルスと身体健康の両方に不可欠です。
適度な運動(ウォーキングなど)、十分な睡眠、深呼吸や瞑想などのリラクゼーション法が効果的です。また、趣味や好きな活動に時間を使うことで、自然とストレス発散につながります。日常的にこれらの習慣を取り入れることで、ダイエット成功の可能性が高まります。

出典:鎌倉市「【新型コロナウイルス関連】『感染予防の基本と免疫力アップ』で健康づくり」

健康を害する肥満の基準として、BMI(体格指数)が主に使われています。BMIは「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」で計算され、日本では25以上が「肥満」と定義されています。1)
特にBMI30以上(高度肥満)になると、生活習慣病のリスクが顕著に高まります。内臓脂肪型肥満(腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上)は、BMIが低くても健康リスクが上昇します。肥満が長期間続くと、心臓病、脳卒中、糖尿病などの発症率が2〜4倍に増加するため、早期の対策が重要です。

1)日本肥満学会『肥満症診療ガイドライン2022』ライフサイエンス出版.2022 年

肥満のうち、健康障害や内臓脂肪の蓄積が明らかな場合は「肥満症」と診断されます。1)肥満症は単なる体重過多ではなく、健康リスクを伴う状態です。日本肥満学会によれば、BMI25以上で内臓脂肪型肥満(腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上)は生活習慣病リスクを2~4倍高めます。食事改善、運動習慣の確立、漢方薬による体質改善が有効で、医療専門家と相談しながら生活習慣の見直しが推奨されます。

1)日本肥満学会『肥満症診療ガイドライン2022』ライフサイエンス出版.2022 年

漢方薬は体質に合わせた選択が重要です。肥満症の方には、体質を「溜め込み型」「ストレス型」「水太り型」の3つに分類することが効果的です。自分の太りやすさの原因を把握し、それぞれの体質に適した漢方薬を選びましょう。体質の特徴を理解することで、より効果的な漢方薬の選択が可能になります。

溜め込み型(実証・熱証)は「熱が内にこもった状態」で、代謝は活発ですが過剰摂取により余分なものが蓄積しやすい体質です。

主な特徴:
・お腹まわりに脂肪がつきやすい
・便秘傾向で排便が不規則
・食欲旺盛で満腹感を感じにくい
・脂っこい食事や高カロリー食品を好む
・顔のほてりや上半身の熱感
・ストレスを食べることで発散
・肩こりや頭痛(「瘀血」症状)

この体質の方は食べ過ぎや運動不足で代謝処理が追いつかず、お腹に脂肪が蓄積し、腸の動きも低下します。漢方医学では「気滞」や「瘀血」と呼ばれる体内循環の滞りが特徴で、体内の熱を冷まし代謝を促進する漢方薬が有効です。

ストレス型(実証・気滞)は、漢方医学で「気の流れが滞った状態」と考えられる体質です。精神的ストレスが体に影響を与え、脂肪蓄積や不調を引き起こします。

主な特徴:
・二の腕や脇腹に脂肪がつきやすい
・ストレスによる過食傾向
・イライラや緊張感が強い
・便秘や消化不良を起こしやすい
・みぞおちから脇腹にかけての張り感
・消化器系の不調(膨満感など)

この体質の方は、ストレスにより自律神経バランスが崩れ、消化機能低下や気の巡り悪化を招きます。気の流れを改善し、過食を抑える漢方薬が効果的です。
また、リラクゼーションや適度な運動、温かい食事、規則正しい生活習慣も大切です。
漢方薬と生活改善の両面からアプローチすることで、ストレス型体質の改善が期待できます。

最後に、水太り型の体質についてです。この体質は、次のような特徴があります。

主な特徴:
・下半身がむくみやすく、水太りしている
・汗をかきやすい
・胃腸が弱い
・体が重だるく、疲れやすい
・風邪をひきやすい
・食事量は少ないのに太りやすい

胃腸の働きが弱く、運動不足や筋肉量の低下により水分代謝が悪化し、むくみや下半身の脂肪蓄積が起こりやすい体質の方は、「水太り型(虚証・気虚・水滞)」です。漢方医学では、この体質は「気虚(ききょ)」と呼ばれる元気不足の状態と、「水滞(すいたい)」と呼ばれる水分代謝の停滞が組み合わさった状態と考えられています。この体質の方には、利水作用(余分な水分を排出する作用)と補気作用(体を元気づける作用)を持つ漢方薬が効果的です。漢方薬で水分バランスを整えることで、体調改善をサポートします。

肥満症の改善には、体質に合わせた漢方薬を選ぶことが大切です。「溜め込み型」「ストレス型」「水太り型」に合わせた「防風通聖散」「大柴胡湯」「防已黄耆湯」は、ドラッグストアで購入可能な代表的な漢方薬です。ここでは、各漢方薬がどのような体質の方に適しているかをご紹介します。

防風通聖散は、主に「溜め込み型」体質(実証・熱証)の方に最適な漢方薬です。
この体質の特徴は、お腹周りに脂肪がつきやすく、便秘傾向にあることです。
具体的には、食欲が旺盛で満腹感を感じにくく、脂っこい食事や高カロリー食品を好む傾向があります。
防風通聖散は18種類もの生薬から構成され、体内の巡りを整えることで肥満症の改善を促します。特に効果的なのは、以下の症状を持つ方です。

- 過剰な食欲を抑制し、お腹周りから全身の脂肪分解と燃焼を促進
- 高血圧や肥満に伴うむくみの改善
- 肥満に伴う便秘の改善
- 肥満に伴う肩こりの緩和
- 肥満に伴うのぼせや炎症症状(ニキビや蓄膿症など)の緩和

この漢方薬は単に脂肪を減らすだけでなく、体全体のバランスを整える効果があります。体質に合っていれば、通常1週間ほどで便通が改善され、お腹周りがスッキリしたという実感が得られます。
肥満改善を目的とする場合は、1〜2週間で良い変化を感じた上で、1ヶ月を目安に服用を続けることが推奨されています。
ただし、最大の効果を得るためには、漢方薬の服用だけでなく生活習慣の見直しも重要です。

- 食事面では、油っこいものや甘いものを控え、野菜中心の食事を心がける
- 運動面では、ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動を1日30分、週3回以上行うことが理想的。

これらを組み合わせることで、防風通聖散の効果を最大限に引き出し、溜め込み型肥満の改善をより効果的にサポートすることができます。

参考:防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)効果・副作用・注意点について解説

大柴胡湯は、主に「ストレス型」体質(実証・気滞証)の方に最適な漢方薬です。
この体質の特徴は、二の腕や脇腹に脂肪がつきやすく、便秘傾向にあることです。
具体的には、ホルモンバランスや自律神経の乱れにより、上半身に脂肪が溜まりやすい傾向があります。
大柴胡湯は複数の生薬から構成され、体内の巡りを整えることで肥満症の改善を促します。特に効果的なのは、以下の症状を持つ方です。

- 体内の巡りを整え、脂質代謝を促進して余分な脂肪を減少
- 肥満に伴う便秘の改善
- 肥満に伴う肩こりの緩和
- 自律神経を整え神経症の症状を改善

この漢方薬は体全体のバランスを整える効果があります。体質に合っていれば、通常5~6日間程度で便通改善や脇腹の張り感軽減などの効果を実感できます。
肥満改善を目的とする場合は、1ヶ月を目安に服用を続けることが推奨されています。
ただし、最大の効果を得るためには、漢方薬の服用だけでなく生活習慣の見直しも重要です。

- 食生活:過食を防ぐために少量多食を心がけ、食事は温かいものを中心に
- 運動:ヨガや太極拳などのゆったりとした動きの運動を取り入れる
- ストレス管理:入浴や十分な睡眠、趣味の時間を確保しリラックスする時間を作る

「大柴胡湯」は単独での服用を推奨。他の下剤との併用は避け、自分の体質に合った漢方薬を選ぶことが重要です。

参考:大柴胡湯(だいさいことう)の効果とは?副作用はある?脂質代謝を上げる漢方薬

防已黄耆湯は、主に「水太り型」体質(虚証・気虚・水滞)の方に最適な漢方薬です。
この体質の特徴は、下半身がむくみやすく、汗をかきやすいことです。具体的には、胃腸が弱く、疲れやすい体質で、水分代謝が低下して下半身にむくみや脂肪がつきやすい傾向があります。
防已黄耆湯は6種類の生薬から構成され、体内の水分代謝と脂質代謝を促進することでむくみや水太りの改善を助けます。特に効果的なのは、以下の症状を持つ方です。

- 体内の水分代謝を高め、余分な水分を排出してむくみを改善
- 脂質代謝を促進し、下半身の余分な脂肪を減少
- 肥満に伴う関節の腫れや痛みの緩和
- 多汗症の改善

この漢方薬は体全体のバランスを整える効果があります。体質に合っていれば、通常2週間から1ヶ月程度で排尿量が増え、むくみが軽減するなどの効果が実感できます。
ただし、最大の効果を得るためには、漢方薬の服用だけでなく生活習慣の見直しも重要です。

- 食事:塩分や水分の摂りすぎを控え、野菜中心の食事を心がける
- 運動:ウォーキングや軽いストレッチを毎日取り入れ、むくみを予防する

防已黄耆湯は特に下半身のむくみや水太りに悩む方に効果的です。体質改善と併せて利用することで、健康的で持続可能なダイエットをサポートします。

参考:防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)効果・副作用・注意点について解説

漢方薬は体質や症状に合わせて選ぶことが最も重要です。自己判断せず、専門家(漢方医や薬剤師)に相談して、自分の「証」(体質や症状の総合的な状態)に合った処方を選びましょう。同じ症状でも体質によって適する漢方薬は異なります。
また、即効性を求めず、継続的な服用が基本です。効果の現れ方には個人差があり、通常2週間から1ヶ月ほどかかることを理解しておきましょう。副作用の可能性も考慮し、服用中に異常を感じたら直ちに中止して医療機関に相談してください。特に便秘改善をサポートする漢方薬は、他の下剤との併用で過度の下痢を引き起こす可能性があります。
さらに、漢方薬だけに頼らず、食事・運動・睡眠などの生活習慣の改善と併せて取り組むことで、より効果的な結果が期待できます。漢方薬は体質改善を目的としたものであり、急激な体重減少を目指すものではないことを理解しましょう。

太りやすさには、溜め込み型、ストレス型、水太り型など様々な体質的背景があります。そのため、自分の体質を正しく理解し、それに合った漢方薬を選ぶことが重要です。多くの漢方薬局や健康関連のウェブサイトでは、無料の体質診断ツールやダイエットガイドを提供しており、これらを活用することで自分に最適な方法を見つけやすくなります。漢方薬は体内のバランスを整え、自然な形で肥満症の改善をサポートします。さらに、日常生活に軽いストレッチや十分な水分摂取を追加することで、漢方薬の効果をより高め、健康的な体づくりが加速します。ただし、自己判断せず専門家に相談することをお勧めします。

執筆者プロフィール
坂江 沙月
薬剤師
金沢大学薬学類出身。大学在学中より漢方に興味を持ち、漢方薬局で研鑽を積む。2023年に大学を卒業後、調剤薬局で勤務を開始し、2024年からは漢方薬局と調剤薬局の両方で実務経験を積んでいる。
「漢方の良さをより多くの方に伝えたい」という思いから、X(@Ka_m_po)を通じて漢方を身近に感じられる情報発信を行うほか、イベントの開催やオリジナル商品の開発にも取り組んでいる。

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