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大柴胡湯(だいさいことう)の効果とは?
便秘や脂質代謝の改善に効果的な漢方薬

2022年4月27日

大柴胡湯(だいさいことう)脂質代謝の改善に効果的な漢方薬

50歳前後の方で、最近、太り気味でなかなか脂肪が落ちないという方におすすめの漢方薬があります。なかでも、体ががっちりしていて、肥満ぎみ……という方にぴったりなのが大柴胡湯(だいさいことう)です。
この漢方薬に配合されている生薬や、効能効果、保存の仕方など、総合的にご紹介します。

大柴胡湯(だいさいことう)は、脂質代謝の改善に関与しています。体力があり、筋肉質で便秘やお腹が張って苦しく、肩こり等を伴う人の諸症状に用います。例えば、肥満、高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛・便秘、神経症、などを改善するために用いられます。

販売されているOTC薬のパッケージには、「脂質の代謝を上げて余分な脂肪を落とす」「更年期などの脂肪に」「食事が乱れがちな方の更年期太りに」「ストレスを感じる肥満ぎみの方」といった、具体的な内容が書かれているものもあります。

脂質には、大きく分けて中性脂肪とコレステロールの2つがあります。
中性脂肪は体内にエネルギーを蓄える役割があります。コレステロールは一見悪者に思われがちですが、細胞などの膜や、女性ホルモン、消化酵素の原料になっています。いずれも私たちの身体になくてはならないものですが、多すぎると生活習慣病を引き起こす恐れや、肥満の原因にもなります。

また、50歳前後の更年期を迎えた女性は、女性ホルモンの1つ「エストロゲン」の減少で、脂肪が燃焼しにくくなります。更年期に太りやすくなるのはこのためです。

こういった脂質代謝サイクルの乱れによって、うまく脂肪代謝ができなくなった状態を改善するのが大柴胡湯です。
また、大柴胡湯は、体の熱を取り、炎症を鎮める効果があるため、高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛・便秘を改善します。さらに興奮を鎮め、ストレスやイライラを改善します。

漢方には独自の基準があり、これを「証(ショウ)」と呼びます。その人に合った漢方薬を選択(処方)するために、その人の体質、体力、体の抵抗力、病状などを見極めるためのものです。

「証(ショウ)」のうちの「虚証(キョショウ)」は、体力がなくて弱々しい人を指します。反対に「実証(ジッショウ)」は、筋肉質でガッチリ、血色がよく、肌ツヤがある、体力がある人のことを表します。
「大柴胡湯」は「実証」タイプに用いられる代表的な漢方薬です。

具体的には、肥満気味の方、更年期の女性、ストレスを感じる肥満気味の方で、便秘がち、みぞおちから肋骨の下の部分が強く張っている人向けに選択(処方)されるものです。
そのほかに、ストレスで過食してしまう人、食欲にムラがある人、生活習慣が乱れがち、イライラする、緊張しやすいタイプにも適しています。

前述で、大柴胡湯には、肝臓の働きをサポートすることで脂肪代謝をアップさせる働きがあると触れました。
では、代謝とはどんなことでしょうか?

代謝というのは、体の中で古いものと新しいものが入れ替わり、化学的に変化を起こしてエネルギーが出入りすることを指します。
人間は生きて生活するために、食べ物や水分などを摂取します。それらは体内で分解・合成されて、筋肉や皮膚、臓器、骨、血液など、さまざまな細胞をつくる原料となり、エネルギーとなります。不要なものは老廃物として体外に排泄されます。
それが物質代謝、あるいは新陳代謝と呼ばれるものです。

一方、食べ物や水分などを取り込んでエネルギーに消費していくのがエネルギー代謝。エネルギー代謝には、基礎代謝・活動代謝・食事誘導性熱代謝があります。
基礎代謝は、じっとした状態でも消費されるエネルギーのことで、肝臓の代謝はとても大きく、肝臓の機能が低下すると体の脂肪が増加してしまいます。
女性の場合、この作用は更年期を迎える頃から急激に低下し、脂肪がエネルギーとして代謝されずに蓄積してしまうため、「大柴胡湯」は有効な作用があるとされます。

また、「大柴胡湯」は男性にも有効で、なかでもストレスの多い環境下で働き、食事でカロリーをとり過ぎたり、お酒を飲みすぎたりして肥満気味の人向き。ストレスによるエネルギーの停滞を改善して、体の熱やイライラを解消。体内の気のめぐりをよくし、体をスッキリさせます。

大柴胡湯は、「柴胡(サイコ)」、「黄芩(オウゴン)」、「半夏(ハンゲ)」、「枳実(キジツ)」、「大黄(ダイオウ)」、「芍薬(シャクヤク)」、「生姜(ショウキョウ)」、「大棗(タイソウ)」の、合計8種類の生薬で構成されていますが、先に記したように「実証」の方に向けた漢方薬ですから、冷えが気になる「寒証」の人や、虚弱、胃腸が弱い、食欲不振がある、下痢を起こしやすい「虚証」の人は控える方が良いでしょう。

他の漢方薬と併用する場合は、漢方薬の専門家や、医師、薬剤師又は登録販売者に相談することをおすすめします。漢方専門医は、漢方薬を併用する場合、重複する生薬を考慮してくれることもあります。
また、まれに下記のような症状があらわれ、[ ]内に示した副作用の初期症状である可能性があります。
このような場合には、使用をやめて、すぐに医師の診療を受けてください。

・発熱、から咳、息切れ、呼吸困難[間質性肺炎]
・体がだるい、皮膚や白目が黄色くなる[肝機能障害、黄疸]

妊婦または妊娠している人、今までに薬で発疹や発赤、かゆみの症状が出たことのある人。そのほかの病気で医師にかかっている人は、必ず服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください。

漢方薬は、1日にきめられた分量を食前や食間に飲むことが多いものですが、「大柴胡湯」も同様です。

飲み忘れた時は、気が付いた時に服用します。次の薬のタイミングが、2時間以内の場合は、服用せず、次のタイミングで1回分服用してください。2回分を1回に服用するのは絶対にさけてください。

何より、用法・用量を守って服用するのが原則で、自己判断で、服用する量を増減することは避けましょう。他の薬も服用している方は、必ず担当の医師や薬剤師にその薬の種類と用量を伝えてください。

常温の場所に置いておくことはできますが、直射日光が当たらず、湿気の少ない、涼しいところを選んで保管してください。使用期限をすぎた製品は、使用を避けましょう。

開封後は、瓶や袋の口をしっかりしめて保管してください。また、漢方薬は薬ですので、子供の手の届かないところに保管しましょう。

Q. 妊娠に気づいてから飲むことができますか?
A. 「大柴胡湯」に限らず、妊婦又は妊娠していると思われる人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください。

Q. 頑固な便秘で悩んでいます。「大柴胡湯」と「麻子仁丸(マシニンガン)」を併用したらどうでしょうか?
A. 他の瀉下薬とは併用しないでください。どちらにも「大黄」が使われており、大黄の摂りすぎで腹痛などの作用が強くなる場合もあります。「大柴胡湯」は「実証」タイプの人に使われる漢方薬なのに対して、「麻子仁丸」は「虚証」タイプの人向きですが、まずは医師、薬剤師又は登録販売者に相談してから、体質に合った薬を用いるようにしてください。

Q. 生理前になるとイライラが起こるため、産婦人科で「抑肝散(ヨクカンサン)」が処方されています。その漢方薬とOTCの「大柴胡湯」を併用しても大丈夫でしょうか?
A. 「抑肝散」は、幼児などにも用いられる漢方薬で、「証」にはあまりこだわらずに用いることができます。ただし、病院で処方された薬がある場合は医師に相談してください。基本的には、「柴胡」が重複していますので、服用期間などを考慮することをおすすめします。

ストレスでイライラを感じやすい肥満症の方には「大柴胡湯」がおすすめ

なかなか落ちない脂肪。体の脂質代謝を漢方薬の大柴胡湯でサポートすることで、脂肪が燃えるサイクルになり、気になる脂肪を減らすことができます。

身体の不調や体質改善には、運動や食事のコントロールということだけでなく、漢方薬というアプローチもあるので、ぜひプラスしてみてはいかがでしょうか。

からだにいいこと
記事監修
からだにいいこと編集部
創刊18周年を迎えた女性向けの健康生活情報誌『からだにいいこと』。医師や専門家の監修のもと、「いますぐできる」「心も体も元気になれる」健康・美容・ダイエット情報を発信中。