秋から冬に倦怠感や眠気が強くなる「冬季うつ」とは?「冬季うつ」のさまざまな症状に使われる漢方薬と対策について

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秋から冬に倦怠感や眠気が強くなる「冬季うつ」とは?「冬季うつ」のさまざまな症状に使われる漢方薬と対策について

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夏の暑い季節が終わり、日が短くなってくると、気分が落ち込んだり、やる気がでなくなったりすることはありませんか?これらの症状は「冬季うつ」により生じている可能性があります。

一般的に「冬季うつ」とは、秋の終わり頃から冬の初めごろに抑うつ症状などが現れ、春や夏になると同症状が自然によくなる季節性の変動をくり返し示すのが大きな特徴とされています。「冬季うつ」は冬の日照時間が短い緯度の高い地域に認められ、海外では「ウインター・ブルー」と呼ばれることもあります。

また、「冬季うつ」でよくみられる気分の落ち込みや倦怠感・日中の強い眠気などの症状は、漢方用語の「気•血•水」で考えると、気虚や血虚が関係している場合があります。「冬季うつ」の症状で悩んでいる方のために、漢方医学の考え方で、原因や不調を改善する方法などについて紹介をします。

「冬季うつ」と一般的な「うつ病」の違い

「冬季うつ」と一般的な「うつ病」のどちらにも、疲れやすい・イライラする・不安になる・やる気がおきない、などの症状を呈する事があります。両者の違いとして、一般的な「うつ病」が食欲不振・不眠を伴うのに対し、「冬季うつ」では過食・過眠(日中の強い眠気)を伴いやすいという特徴があります。ご飯・麺類・パンといった炭水化物や、チョコレートなど甘いものを、午後から夜にかけて特に食べたくなります。また、長時間しっかりと寝たのにもかかわらず、疲れがとれず日中に強い眠気を感じ知らないうちに居眠りをしてしまう事もあります。

漢方医学による「冬季うつ」の食事や睡眠状況の改善策

漢方では「冬季うつ」に起こりやすい過食や過眠(日中の強い眠気)などには、体質、食事内容などが影響を与えると考えています。過食や過眠(日中の強い眠気)が起きる原因や特徴には、次のようなものがあります。

過食:胃熱証

漢方で過食は胃に熱がこもっている状態だと考えます。原因は、辛いもの・脂っこいものの食べ過ぎや、過度なストレスです。冷たいものを好む・のどが渇く・口臭が強いなどの特徴があります。胃熱証の方に適した食材は、カラダにこもった熱を冷ますキュウリ・トマト・リンゴなどがあります。

過眠(日中の強い眠気):気血両虚証

日中の強い眠気症状は、気血水で考えると気虚と血虚が関係している場合があります。気虚では、過労・食事制限・多汗など、血虚では、朝食を抜く・目の使いすぎ・夜更かしなど、がそれぞれの原因として考えられています。気血両虚証には、易疲労感・睡眠障害・目の乾燥・倦怠感などが持続する特徴があります。また、気血が同時に不足すると、気虚から血虚に、血虚から気虚になるなど、お互いに影響し合い気血両虚が重症化•遷延化していく事があります。気血両虚証では、気血がともに不足しており、後に述べるような気と血を補う食材を摂ることが大切です。

気血水の考え方は、「漢方の基礎知識(気血水とは)」を参考にしてください。

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冬の不調を改善する養生生活

冬は、カラダを休めエネルギーを補充する季節だと考えられています。カラダの不調を整えるためには、不足したものを補いながら充電していきましょう。過食・過眠(日中の強い眠気)を改善または予防する方法には、次のような方法があります。

・光を浴びる

冬は寒邪(かんじゃ)の影響を受けやすい季節です。寒邪には外寒と内寒があり、外寒はカラダの外から入ってくるもの、内寒はカラダの中から冷えが生まれる陽気不足によって起こります。外寒へは、日光浴や入浴などを活用しつつ、カラダの中の陽気不足は、エビ、ニラなどの食材によって補うことができます。
西洋医学的な観点では、日照時間の短縮が関与しているといわれている「冬季うつ」の治療には、体内時計の調整も兼ねて、早朝の時間帯に5000 ルクス以上の光を浴びる光療法が有効とされています。自宅でおこなう場合は、起床時にカーテンなどをあけて明るい部屋で1時間ほど過ごすことが重要です。それとともに、朝食をしっかり摂り、温かい日は午前10時までに30分くらい散歩をしましょう。毎日続けることでカラダの中に不足した陽気を補うことができます。

・気血をおぎなう食材を摂る

漢方で冬は他の動物と同じくエネルギーを蓄える季節だと考えています。冬の間に気と血を補う食材を摂りましょう。冬に体調不良が起きやすい方は、夏の過ごし方に問題があったと考えられます。特に冷たいものをたくさん食べたり、クーラーなど冷えた部屋で長い時間過ごした方は、弱った胃腸や身体を回復させるため不足したエネルギーを補いましょう。気血をおぎなう食材には、ヤマイモ・ジャガイモ・ホウレンソウ・人参・シイタケ・胡桃・豚肉・鶏肉・マグロなどがあります。冬の季節は各鍋料理、特にスープも楽しめるジャガイモ・人参・鶏肉などが入ったポトフなどはオススメです。カラダに不足したエネルギーを食材の栄養成分と同時に美味しく補充することができます。
おすすめの食材については、「薬膳食材図鑑」をご覧ください。

・冬はしっかりとカラダを休める

漢方では冬の3ヶ月を閉蔵(へいぞう)といい、冬の寒さを避け気をできるだけ発散させないことが大切だとされます。中国の医学書「黄帝内経素問」(こうていだいけいそもん)には「夜は早く寝て、朝は太陽の光とともに起きることが大切」だと書かれています。夜は23時までにはベッドに入り、朝は7時くらいに起きると良いでしょう。冬は無理をせず心身を休めることが大切です。朝の光を有効利用し、睡眠覚醒など生活リズムの改善と安定維持させるとともに、過度な行動を控え、気を消耗させないことが大切です。

「冬季うつ」の症状によく使われる漢方薬

「冬季うつ」の症状によく使われる漢方薬には次のようなものがあります。食事や生活を改善するだけで状態が良くならない場合は、自分の症状にあった漢方薬の使用を検討しましょう。詳しい薬剤師や、漢方薬を処方してくれる医師に相談してみると良いです。

・加味帰脾湯(かみきひとう)

体力は中程度以下で、カラダやココロが疲れ、顔色が悪く、カラダに熱がこもっている方に利用されます。加味帰脾湯は、カラダに不足している血をおぎない、気をめぐらす作用があるため、落ち込んでしまった気持ちを落ち着かせることができます。精神的な不安・不眠などの症状に利用される漢方薬です。

・半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

体力は中程度で、気分が落ち込み、喉や食道などに異物感を感じる方、どうき・めまい・吐気などがある方に利用されます。半夏厚朴湯は、滞った気のめぐりを改善するため、のどのつまった感じや違和感を落ち着かせることができます。不安神経症や神経性胃炎などにも利用される漢方薬です。

・柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)

体力は中程度で、精神不安があり、イライラする・動悸・不眠・便秘などの症状がある方に利用されます。柴胡加竜骨牡蛎湯は滞った気のめぐりを改善し、カラダにこもった熱を冷ますため精神を安定させることができます。神経症や更年期神経症などにも利用される漢方薬です。

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監修
桂川洛西口くれたにクリニック
榑谷 路留先生


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