ゲップがよく出る原因は?今日からできる漢方的対処法

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自然に出てしまう「ゲップ」。くしゃみやしゃっくりと同様に人間の生理現象とはいえ、人前で出たら困るものの1つではないでしょうか。さらにゲップにニオイがあると「何かの病気なのでは?」と心配になるかもしれません。気になるけれど他人に相談しにくいゲップの悩み。
この記事では、ゲップが出る理由やニオイの原因、病気との関係性について触れながら、今日からできる漢方的な対処法や生活習慣の改善策を詳しくご紹介します。

ゲップとは?そのメカニズムは?

ゲップは「おくび」や「曖気(あいき)」とも呼ばれ、消化器内に存在するガスが、口から外に排出される生理現象のことです。私たちは食事の時に無意識に空気を飲み込んでいます。
逆流性食道炎と呼ばれる胃酸が十二指腸の方に流れずに食道の方に流れてしまう病気、義歯の不適合などによる場合やガムの咀嚼(そしゃく)によって唾液の分泌が過剰になることでも必要以上の空気の飲み込みが発生します。他にも炭酸飲料などガスが多く含まれるものを直接飲むことでも起こります。

ゲップの目安は1日どのくらい?「多い」基準とは

一般的なゲップの回数は、成人の場合1日あたり平均で13回~15回程度とされています。もし1日あたり20回を超えるほどゲップが出る場合は回数が多いと考えられます。食事の時に飲食物と一緒にカラダに入った空気や、食べ物を消化する時に発生するガスの影響で、ゲップは食後に出やすくなります。人前では出すことをためらうゲップですが、体内に溜まったガスや、空気を外へ送り出すという大事な役割があることから、無理な我慢はよくありません。

ゲップが多い理由とは?チェックリストで原因を見つけよう
誰もが毎日しているゲップですが、回数の多さは日常生活にその原因があるかもしれません。以下の項目をチェックしてみましょう。

口呼吸をしている
(鼻呼吸に比べ、多くの空気を唾液とともに飲み込みやすくなる可能性があります)
食べるのが早い
(急いで食べることで飲食物とともに空気も一緒に飲み込みやすくなります)
大食い、まとめ食いをしがち
(飲食物とともに空気も多く飲み込みやすく、食べる量の多さにより消化器への負担をかけやすくなります)
早口で話す、食事中に会話が多い
(話す際に唾液を多く飲み込みやすくなります)
炭酸飲料、アルコール摂取量が多い
(飲料自体にガスが含まれている場合に加え、胃に刺激を与えることがあります)
カフェインや辛いものの摂取量が多い
(胃酸の分泌を促進し、胃に負担をかけることがあります)
ストローで飲料を飲みがち
(飲料と一緒に空気を飲み込みやすくなります)
ガムを噛む習慣がある
(唾液を飲み込む回数が増え、その際に空気も一緒に飲み込みやすくなります)
喫煙習慣がある
(煙を含んだ唾液と一緒に空気を飲み込んだり、胃腸の働きに悪影響を与えたりする可能性があります)
ストレスが多い(噛みしめ癖がある/歯ぎしりをする)
(ストレス自体が自律神経の乱れを引き起こし、胃腸の働きを鈍らせることがあります。噛みしめ癖や歯ぎしりは、ストレスによることが多いと言われています)

上記の行動や習慣が思い当たる方は、唾液や飲食物と一緒に胃に空気を取り込みやすかったり、胃に負担をかけやすかったり、自律神経の乱れによって胃の働きが鈍り、空気が滞留しやすかったりする傾向があります。そのため、カラダが溜まった空気を体外に出そうとしてゲップの回数が増えると想定されます。

漢方視点でゲップを考える

ゲップの発生について、漢方(中医学)では西洋医学とは異なる独特の視点から捉えます。体内のエネルギーである「気(き)」がスムーズに巡ることが健康の基本と考えられています。
飲食物は口から取り込まれた後、胃を通って小腸、大腸へと下に向かって送られますが、これは胃の気が正常に下向きに働く「降濁(こうだく)」という仕組みです。ゲップが頻繁に出る状態は、この胃の気が本来下向きに進むべきところを、逆向きの上へ向かって作用している状態と捉えられます。これを中医学では「胃気上逆(いきじょうぎゃく)」と呼びます。
中医学ではゲップを単なる消化器系の問題としてだけでなく、カラダの気の流れを含む総合的なバランスの乱れとして捉えます。気の巡りを整え、胃腸の働きをサポートすることが、ゲップの改善に繋がると考えるのです。

ゲップに悩むあなたへ:漢方的対処法と漢方薬

ゲップに対する効能がある漢方薬は「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」が有名です。ゲップの漢方的対処法は、その原因となる「胃気上逆」の状態を改善し、胃腸の働きを整えることで解消に導きます。個々の体質や症状に合わせた適切な漢方薬を選ぶ必要があるため医師薬剤師に相談するとよいでしょう。

■半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
ストレスや不安などで胃の調子が悪くなり、胸のつかえ、胸やけ、吐き気、ゲップなどが頻繁に出る「心下痞(しんかひ)」という状態に用いられる漢方薬です。体力中程度の方の胃腸の炎症を鎮め、気の流れを整えゲップを改善します。

■調胃承気湯(ちょういじょうきとう)
便通を促すことで、胃を含む消化器官に溜まった熱を取り除くと同時に、気の停滞も解消させ、上逆を抑える作用があります。体力中程度の方の便秘、便秘に伴う頭重・のぼせ・食欲不振・腹部膨満などの症状緩和に用います。ゲップとともに口臭が気になる方にも適しています。

■六君子湯(りっくんしとう)
体力中程度以下で胃腸が弱く、食欲がない、疲れやすい「気虚(ききょ)」の状態にある方に合う漢方薬です。胃腸の消化吸収能力を高めることで胃の気の働きを補い気の流れを巡らせるため、貧血や冷えを感じる方の胃炎、胃腸虚弱などの症状に効果があります。日頃から、胃もたれやゲップが出やすい方に特に適しています。

嫌なゲップを減らす!今日からできる日常のポイントと予防策

ゲップが気になる方は日常の行動を振り返ることで見直しが可能になるかもしれません。ポイントは3つ、①食事における口からの空気の取り込み方に注意する、②飲食物や嗜好品の種類を再考する、③ストレスを認識し解消する、に分けて順番に解説をしていきます。

食事の摂り方
必要以上に胃の中に空気を送り込まないために、鼻呼吸の習慣や食事の仕方を見直すことが大事です。食事は口を閉じてゆっくり、よく噛んでから飲み込むように心がけましょう。ストローをよく使うという方は飲み物と一緒に空気を多く吸い込みやすくなるため控えることも大切。食事中の会話はできるだけ控え、背筋を伸ばして胃を圧迫しないような姿勢で食べるとよいでしょう。
飲食物や嗜好品
炭酸飲料はそれ自体にガスが含まれており、カフェインや辛い物の摂り過ぎ、喫煙は胃に負担がかかるため注意が必要です。ガムを噛むと唾液の量が増え消化にはよいのですが、唾液を飲み込む回数が増え空気の飲み込みにつながります。さらに高脂肪の食品や硫黄成分の多い食品(卵、肉類、タマネギ、ニンニク、アブラナ科の野菜等)はゲップにニオイが出ることがあるので気になる方は注意が必要です。
ストレス
ストレスが自律神経に悪影響を及ぼすことはよく知られています。ストレスの多い方や集中力を伴う仕事をする際、噛みしめる癖がつくことがあります。噛みしめは就寝中の歯ぎしりとなる場合、睡眠の質低下を促し、自律神経がさらに乱れる恐れがあります。
ストレスを感じると自律神経の交感神経が優位になり、副交感神経が抑制されます。交感神経は消化を抑制するため胃腸の働きが低下しゲップが発生しやすくなります。自律神経は自分の意思でコントロールができない自動運転のようなシステムのため、血流や体温調節だけでなく胃腸などの内臓の働きにも影響が及ぶのです。ストレスを感じたら、意識的に舌先を上あごにつけて上下の歯を離すように心がけましょう。ストレス緩和のために適度な運動でリフレッシュする時間やリラックスできる方法を見つけることも大切です。

日常を快適に導くためのリラクゼーション法とストレス管理

食事方法の見直し、姿勢や嗜好品の制限などはすぐに着手することができます。しかしストレスにつながる自律神経の乱れを整えることは、自ら運動を取り入れたり睡眠に気を配ったり、と習慣化させることが必要です。カラダ全体の緊張を緩めるストレッチ等を取り入れ心とカラダを解きほぐしましょう。音楽や香りなど気持ちの切り替えにもつながるリラクゼーション法を見つけることも有効です。まずは簡単にできるものから取り入れてみましょう。

◆5分あればできる「入浴時のプチ瞑想」
疲れやストレスを感じた時こそシャワーではなく浴槽に湯をはり入浴することがおすすめです。入浴は温浴効果による血行促進や水圧によってリンパの流れを促すなどカラダのメンテナンスには持ってこいですが、気持ちの面でもリフレッシュにつながります。
さらに湯舟に浸かる時間を利用して5分程度の瞑想を取り入れることでマインドフルネス効果につながります。まずは少しの時間から始める瞑想で呼吸を整え、思考をクリーニングすることでストレス緩和を目指します。

入浴時のプチ瞑想のやり方(イメージ図)

<やり方>1分~5分程度(慣れてきたら10分位がおすすめ)

湯舟の湯は心臓より下くらいがおすすめのため、浴槽の中であぐら又は正座で骨盤を立て背筋を伸ばして座ります。
可能であれば寄りかからず、目を閉じることで精密な感覚器である目からの情報を遮っておきます。
目からの情報が無いことで自分のカラダの内側にフォーカスしやすくなるため、呼吸に意識を向けてゆっくりと呼吸を数えましょう。分からなくなったら数え直します。考え事が浮かんできてもその思考を棚上げし、呼吸を数えることだけを行います。
眠らないように湯舟に寄りかからないことがおすすめです。
脱水にならないように入浴前後に水分補給を行いましょう。
のぼせやふらつきが出る前に上がりましょう。
湯の温度はぬるま湯がおすすめですが、肩が冷える場合はかけ湯などを行い心地よい状態を保ちましょう。

◆寝る前のリラックスヨガ「かんたん・やさしいウサギのポーズ」
呼吸を深めることで自律神経を整えます。さらに心臓より頭が下にくるようなポーズを取ることで頭に上って滞っている気の流れをスムーズにして入眠を促します。

寝る前のリラックスヨガ「かんたん・やさしいウサギのポーズ」 イメージ図

<やり方>1~3回程度目安

マットやベッドの上で正座になり後ろで両手を組みます。
胸の真ん中を斜め上に引き上げるようにして胸の前側を開き呼吸を深めていきます。
ゆっくりとおじぎをするように前屈し、額をマット(ベッド)につけ無理がないところまで組んだ両手を天井方向へ持ち上げます。
ゆったりと呼吸を数回繰り返したら両手をゆっくりと離して下ろし、背中を丸めたまま呼吸を続けてリラックスした後、ゆっくりと正座の姿勢に戻ります。
手を後ろでつなげない場合は無理せずに両腕を肩より後ろに持っていき、胸を開くだけでも大丈夫です。
頭痛やめまいがある場合は控えましょう。

ゲップにニオイがある時は要注意?考えられる病気と症状

基本的に、口から飲み込んだ空気が逆流して起こるゲップにはニオイはないと言われています。ゲップが独特のニオイを伴っている場合には、胃腸系の機能が低下していたり、何らかの病気が隠されていたりする可能性があります。ゲップが臭いときに想定される病気や症状には次のようなものがあります。

逆流性食道炎(胃酸や胃の内容物が食道に逆流することで炎症が起こる病気)
胃潰瘍・十二指腸潰瘍(粘膜が傷つき潰瘍ができる胃腸の病気)
胃がん(胃の壁の内側の細胞ががん細胞となり、無秩序にふえていく病気)
便秘症(排便が順調に行われないことで腸内環境が悪化しガスが発生しやすくなる症状)
呑気症(空気嚥下症:過剰な空気を飲み込むことで起こる消化器の症状)

気になる場合は軽視せずに医療機関を受診しましょう。なお、食べた物が原因と分かっている場合は問題ありません。どのような物を食べると臭いゲップがでるのかを分かっておくとよいでしょう。例えばたんぱく質(肉、魚介類、卵、乳製品)、アブラナ科の野菜(ブロッコリー、芽キャベツ、ケールなど)、香味野菜(にんにく、ニラ、ねぎ等)、加工食品、ビールやワインのように、硫黄が含まれている飲食物などは消化するときに生成される硫化水素ガスが原因でニオイやすくなります。また高脂肪の食品は胃に長く留まり、消化するのに時間がかかるためゲップがにおう可能性が高まります。
ゲップのニオイが持続的に悪化する場合や、その他の消化器系の症状(胃痛、吐き気、食欲不振など)が伴う場合は、医療機関を受診し相談することが重要です。

那須久美子

那須久美子

広告会社、大手化粧品会社宣伝部にてCM、雑誌等の広告制作に携わる。
その後フリーランスとしてバレエ講師、ピラティスマスターストレーナー、ヨガセラピスト、介護予防運動指導員として老若男女へ伝える仕事に従事。
企業や官公庁での健康アドバイザーや研修講師も務める。
国家資格キャリアコンサルタントとしては企業内障害者ジョブコーチを経て自治体の就労支援事業で講師・カウンセラー、現場統括責任者を歴任。
現在は文化芸術振興事業の広報、キャリアコンサルタントのためのオウンドメディア監修も担当。

・ヘルスケアデザイナー
・バレエティーチャー
・ピラティストレーナー、ヨガセラピスト
・アスリートキャリアコーディネーター
・国家資格キャリアコンサルタント
・漢方アドバイザー
・介護予防運動指導員

HP:https://www.kandworks.com/about

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