あなたの便秘はどのタイプ?漢方で原因をチェック!タイプ別対処法を国際中医師が解説

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「また今日も出なかった…」と便秘で落ち込んだことはありませんか?そんなときは無理をせず、ココロを大切にしましょう。漢方には心身一如(しんしんいちにょ)という言葉があり、ココロとカラダは切り離すことができないものという考えがあります。まずは、「出ない」ことだけにとらわれすぎずに、ゆったりとした気持ちで過ごしましょう。ココロが落ち着くと自律神経が安定し、腸の働きが整いやすくなります。今回は、便秘で困っている方のために、便秘のタイプ別原因と特徴、そしてココロとカラダを整える方法について紹介をします。

西洋医学で考える便秘の原因

一般的に考える便秘は「器質性便秘(きしつせいべんぴ)」と「機能性便秘(きのうせいべんぴ)」に分けられます。「器質性便秘」とは、大腸がんや巨大結腸などの疾患による大腸や肛門の変形や障害が原因で起こるタイプです。「機能性便秘」とは、ストレスや食生活の乱れ、運動不足、加齢、体質などが原因で起こるタイプです。この機能性便秘には、次の3つの種類があります。

・弛緩性便秘(しかんせいべんぴ)
大腸の動きが弱くなり、便を送り出す力が不足することで起こる便秘
・痙攣性便秘(けいれんせいべんぴ)
ストレスなどで蠕動(ぜんどう)運動の動きが悪くなり、けいれんするように収縮することで起こる便秘
・直腸性便秘(ちょくちょうせいべんぴ)
便が直腸まで下りているにもかかわらず、排便反射が弱くなっているため便意が起こらない便秘

ライフステージで考える便秘の原因

便秘は多くの人が経験する不調ですが、ライフステージによって原因が異なります。若い年代の方はストレスや不規則な生活環境によって腸の働きが乱れやすくなります。一方で、中高年になるとカラダを潤す力やエネルギーが少しずつ低下するため、便を出す力が不足する場合があります。ここでは、子供、女性・妊婦、高齢者に分けて便秘の原因を探っていきます。

<乳幼児期~幼児期>
子供は、腸の働きが未熟で排便リズムが整っていないため、食生活や生活習慣の影響を受けやすい時期です。偏った食事や野菜不足は便秘の原因につながります。

<思春期~成熟期>
女性のカラダは女性ホルモンの変化に敏感です。特に生理前は黄体ホルモンの影響で腸の働きが低下し便秘につながりやすくなります。さらに妊娠中は、お腹が大きくなることで子宮が腸を圧迫し、便の通りが悪くなるため便秘を起こしやすくなります。

<高齢期>
高齢になると、加齢に伴って腸の働きは低下するため、排便がスムーズにできなくなることがあります。さらに、水分摂取が減ることにより、体内の潤いが不足し便秘が慢性化しやすくなります。

漢方で考える便秘の原因

漢方では、便秘は胃から大腸の乱れによって起こると考えます。主な原因には、次の4つがあります。

1.胃腸に熱がこもっている
脂っこいもの・香辛料・お酒の摂りすぎ、暴飲暴食は、体内に余分な熱がこもる原因となります。この熱によって腸が乾燥し、便が硬くなることで便秘になりやすくなります。この状態になると、排便時に出血することがあります。

2.加齢
年齢を重ねると、カラダの潤いが少しずつ不足していきます。また、排便する力も弱くなります。その結果、便が乾燥して硬くなり、排出しにくくなります。

3.虚弱体質
食事量が少ない方や偏った食事をしている方は、カラダを動かす気が不足しています。その結果、腸の働きが低下し、便を押し出す力が弱くなります。

4.ストレス
気の流れが滞ることで腸の動きが乱れ、排便がスムーズにできなくなります。ストレスが溜まっている方は、お腹の張りやガスを感じやすくなります。

気血水タイプで考える便秘の原因

漢方では、便秘はカラダを構成する基本的な要素「気(き)」・「血(けつ)」・「水(すい)」のバランスの乱れにより起こると考えられています。気(エネルギー)・血(栄養)・水(血液以外の水分)のいずれかが不足したり、巡りが悪くなったりすることが主な原因です。「気・血・水」による便秘のタイプには次のものがあります。

<気虚タイプ>
体力不足や疲労などにより「気」が不足し、大腸を動かす力が弱くなります。排便に必要なエネルギーが足りないため、便が出にくくなります。
<気滞タイプ>
ストレスや緊張などで気の巡りが悪くなり、腸の蠕動運動がスムーズにいかなくなります。お腹が張ったり、スッキリ出ない感じがしたりします。
<血虚タイプ>
血が不足して腸に潤いが届かなくなります。便が硬くなり、コロコロ便が出やすくなります。
<陰虚タイプ>
カラダの潤いが不足して腸が乾燥し便が硬くなります。高齢者の方や病後の方に多いタイプです。

あわせて読みたい>>漢方の基本「気血水」とは?

気血水タイプによるセルフチェック

まずは、自分の体質をチェックしてみましょう。便秘の原因は、食生活や生活環境だけでなく、体質も関係していることがあります。セルフチェックでは複数のタイプに当てはまる場合があります。

<気虚タイプ>
・便意はあるのになかなか出ない
・便が出てもスッキリしないことが多い
・便の出始めが硬く、出すのに時間がかかる
・少し動いただけで息切れやだるさを感じる
・声が小さく、話すとすぐ疲れる

<気滞タイプ>
・ストレスがたまりやすい
・お腹が張って苦しいことが多い
・お腹にガスがたまりやすい
・イライラしたり、不安になったりしやすい
・ゲップやおならが多い

<血虚タイプ>
・コロコロとした硬い便が出る
・便を出すのに時間がかかる
・顔色が青白いまたはツヤがない
・肌や髪が乾燥しやすい
・爪が割れやすく筋が入る

<陰虚タイプ>
・便が硬くコロコロしている
・口や喉がよく乾く
・のぼせたり、寝汗をかいたりしやすい
・手のひら・足の裏に熱っぽさを感じる
・皮膚や髪が乾燥しやすい

漢方で考える気血水タイプ別対処法

自分の気血水タイプがわかったら、その体質にあった食事や生活習慣を意識してみましょう。毎日の小さな積み重ねが便秘だけでなくカラダ全体の改善につながります。

●気虚タイプ
カラダを動かすために必要な気(エネルギー)が不足しているタイプです。便を押し出すためには、気(エネルギー)を補いましょう。
食材:米・山芋・かぼちゃなどがおすすめです。
養生法:気虚タイプの人は、眠る時間を確保しましょう。夜更かしを避け、体力を温存することが大切です。また、朝食を食べることも大切です。気を補うだけでなく排便リズムを整えることもできます。

●気滞タイプ
ストレスや緊張で気の巡りが滞っているタイプです。お腹の張りやガスを解消するためには、気を巡らせることが大切です。
食材:しそ・みょうが・ジャスミン茶などがおすすめです。
養生法:リラックスする時間を持ちましょう。深呼吸やストレッチ、または自分の好きな趣味に没頭することもリフレッシュにつながります。気の巡りが良くなると、カラダの中の巡りが良くなるため便秘の改善にもつながります。

●血虚タイプ
カラダの中を巡る血が不足しているタイプです。血が不足すると、腸に潤いが届かなくなるため、コロコロした硬い便が出やすくなります。
食材:にんじん・ほうれん草・黒ごま・クコの実などがおすすめです。
養生法:無理なダイエットを控えましょう。食事制限をすると血を作る材料が足りなくなってしまいます。目や脳を使い過ぎると血が不足しやすくなります。

●陰虚タイプ
カラダを潤す血や水が不足しているタイプです。腸が乾燥しやすく便がコロコロして出にくくなります。寝汗や急にほてりが出たりする場合もあります。
食材:白きくらげ・梨・豆腐・卵などがおすすめです。
養生法:こまめな水分補給を意識しましょう。また、辛い物を控えめにすることも大切です。刺激物を摂りすぎると体内が乾燥しやすくなります。

今日からできる便秘を予防する6つの生活習慣

便秘は食事や運動だけではなく、毎日の生活リズムとココロの状態が深く関わっています。便秘がなかなか改善しない場合は、自分の生活習慣を見直してみましょう。

1.水分を摂取する
便秘の原因として多いのは水分不足です。便をスムーズに出すためには、こまめな水分摂取が欠かせません。一度にたくさん飲むのではなく、時間を決めて少しずつ摂りましょう。できれば、常温や温かい飲み物を選びましょう。

2.食事
食事はできるだけ1日3回、決まった時間に食べましょう。特に野菜・海藻・キノコ類などの食物繊維や、キウイやバナナなどビタミンCを含む果物がおすすめです。さらに、ヨーグルトや味噌など発酵食品を取り入れることで、腸内環境を整えることができます。

腸活はこちらのサイトが参考になります。
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3.ストレス
精神的な緊張やストレスは、自律神経のバランスを乱し、腸の働きを低下させます。ストレスが溜まっているときは、深呼吸をしてみたり、自分の好きな趣味に没頭したりしましょう。マラソンや水泳など思いっきりカラダを動かすのも効果的です。

4.睡眠
十分な睡眠時間を確保することで自律神経のバランスが良くなり腸の排便リズムを整えます。起きる時間と寝る時間を決めて習慣化しましょう。また、寝る前のスマホやパソコンの使用は控えましょう。快適な睡眠環境を整えることが大切です。

5.排便習慣
毎朝、トイレに行く習慣を身につけましょう。朝食後は腸が活発に動く時間帯です。便意がなくてもトイレに座る習慣を身に付けることにより、カラダが自然と排便リズムを覚えていきます。そのためにも、朝食はしっかりと摂ることが大切です。

6.運動
適度な運動で腸の働きを良くすることが大切です。ウォーキングやストレッチ、ヨガなど軽めの運動を習慣化すると、体内の巡りが良くなるだけでなく、ココロもリラックスできます。

便秘に効果がある漢方薬

便秘の漢方薬の代表的なものには「麻子仁丸(ましにんがん)」「乙字湯(おつじとう)」「調胃承気湯(ちょういじょうきとう)」があります。
これらの処方はそれぞれの作用や適している体質・症状が異なります。どの漢方薬が効くかは一人ひとりのカラダの状態によって変わります。
たとえば、便が硬くて出にくい人、ストレスで腸の動きが悪くなっている人、あるいは体力があるけれど腸に熱がこもっている人などです。自分の体質や便の状態に合わせて漢方薬を選ぶことが大切です。

■麻子仁丸(麻子仁丸料エキス錠クラシエ)
カラダに潤いを与えながら、腸の動きを穏やかに整えて、自然に近いお通じをもたらす効果のある漢方薬です。便が硬くてコロコロしているタイプや、高齢者・体力のない方に向いています。力んでも出にくい「気虚タイプ」や、腸の潤いが不足している「血虚・陰虚タイプ」に向いています。麻子仁丸は腸を潤し、便を柔らかくさせ、蠕動運動を良くすることにより排便を促します。「冷えているタイプ」にも選ばれることがあります。

■乙字湯(「クラシエ」漢方乙字湯エキス錠)
肛門まわりの血流を改善しながら、便通を促す効果のある漢方薬です。便秘がちで便が硬い、排便後に出血や痛みがあるといった症状のある方に向いています。乙字湯は血液の循環を良くすることにより、傷の治りを早め、うっ血をとるとともに腫れを抑えます。ストレスがたまりやすい「気滞タイプ」に向いています。

■ワカ末漢方便秘薬錠(調胃承気湯)
腸にこもった熱や滞りを取り除き、便通を促す効果のある漢方薬です。便が硬くて臭いが強い、お腹が張って苦しいといった症状がある方に向いています。気の流れを良くすることにより排便を促し、カラダの余分な熱を冷まします。「熱がこもっているタイプ」に向いています。

便秘に漢方薬がおすすめの理由

便秘が起こる原因や症状は人それぞれです。薬を飲んですぐに改善する人もいれば、何度も繰り返してしまう人もいます。便秘に悩んでいる方には、自分の体質や症状に合わせて選べる漢方薬が役に立ちます。漢方薬を選ぶ理由には次のものがあります。

・カラダへの負担が少ない
漢方薬はカラダ全体のバランスを整えることで便秘を改善します。比較的優しく作用し、自然な排便リズムを整えることができます。

・習慣性がつきづらい
漢方薬は便秘そのものを直接に治すのではなく、体質を整えることにより腸の働きを改善します。薬で便意を起こすものではないため、依存性や習慣性がつきにくいと考えられています。

・便秘に伴う他の症状にも効果があります漢方薬は便秘そのものを改善するだけでなく、お腹の張り、冷え、肩こりなど便秘に伴う症状の改善にも役立ちます。

病院に行くか迷ったときは

便秘で悩んでいる人は、「このまま様子を見ていいのだろうか」「それとも病院に行った方がいいのだろうか」と迷うことがあります。医療機関を受診する目安は、日常生活に支障が出てきた場合や、いつもと違う症状が出たときです。例えば、血便が出る。体重が急に減る。便が細くなる。などです。単なる便秘と考えず、カラダからのサインと受け止めることが大切です。気になる症状があるときは、早めに医師や薬剤師に相談をしましょう。

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多田有紀
兵庫県在住。医療機関、薬局、IT企業での勤務経験を経て、2015年にライターとして独立。体の不調を感じたことをきっかけに、漢方・薬膳に興味を持つ。中医学スクール「薬膳アカデミア」に入学し「国際中医師(国際中医専門員)」を取得。現在は、ライターとして活動をしながら、漢方薬膳の知識を活かしたコンサルタント業務や、ワークショップ・初心者向け講座などを実施。特に女性の体に関する悩みに寄り添った活動を行っている。

実績:クラシエ薬品株式会社主催「KAMPO OF THE YEAR 2024」にゲストとしてトークショーに登壇
執筆書籍:「カラダのために知っておきたい漢方と薬膳の基礎知識」(淡交社)
資格:国際中医師(国際中医専門員)・医薬品登録販売者・漢方養生指導士・薬機法管理者・食品衛生責任者を取得

X:https://x.com/sora_writer
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