記憶力を上げる方法|物忘れにもう悩まない!「アレアレ症候群」とは?

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中高年になると、「ぱっと人の名前が思い出せない」とか「物忘れがひどい」などという会話をする機会が増えるかもしれません。イメージはできているのに言葉が出てこずに「あれ」「それ」等という指示代名詞を多用している人もいるでしょう。そのため「若い時の方が、脳がよく働き物覚えもよかった」と思っていませんか?実は記憶力と年齢には相関関係がないと言われています。むしろ大人になっても記憶力が衰えることがないとも言われているのです。でも物忘れをしたり記憶力が落ちたと感じたりするのはなぜでしょうか?この記事では、記憶力低下の原因が加齢ではなく脳の使い方であることを解説し、記憶力が良い人の特徴や記憶力アップのポイント、脳のために有効な栄養素についてお伝えします。

記憶には種類がある?記憶のメカニズムとは

「記憶」と似た意味を持つ言葉に「暗記」があります。暗記は文章や数字などを一時的に覚えることを意味しますが、記憶は暗記した内容を「忘れずに覚えておく」ことを表わします。そしてその記憶を保持し続ける能力が「記憶力」です。

記憶のしくみは大まかに「①脳が新しい情報を取り入れる段階【記銘】」「②覚えた情報を保存する段階【保持】」「③覚えた情報を思い出す段階【想起】」の3ステップがあります。記憶の保存については保持される時間軸によって「感覚記憶」「短期記憶」「長期記憶」の3つの種類に分類されます。

感覚記憶は数十秒から1分程度の短い時間、一時的にものごとを覚える能力のことで、例えば「電話番号を覚えて電話をかける」「メモを読みながらその内容を理解する」などが挙げられます。

短期記憶は感覚記憶より長い、数分~数日間の保持時間の記憶のことです。昨日の食事内容や行動履歴、天気などの記憶が代表例です。

長期記憶は短期記憶よりも長く、数年から数十年以上の保持時間の記憶をいいます。自分や家族の名前や生年月日、冠婚葬祭などの個人の生活史などの記憶が挙げられます。もし仮に脳に送られる情報の全てが長期記憶に変換されるとしたら、脳が消費するエネルギーや記憶に必要な脳細胞が膨大な量になります。そのため保存の必要性がないと判断されたものは感覚記憶として短い時間のみ保持しますがその後は忘却されます。そのうち注意を向けた情報が短期記憶となり、さらに重要で繰り返し使用したり感情が伴ったりする印象の強い情報が長期記憶に保存されます。この積み重ねで人間は情報を記憶に刻んでいるのです。

記憶をつかさどる脳の部位「海馬」

人の記憶の中枢は脳の中にある「海馬(かいば)」が担っています。その形がタツノオトシゴ(seahorse)に似ていることから海馬と名付けられています。脳の神経細胞は加齢とともに減っていき蘇らせることができないと考えられていましたが、最近の研究で海馬の神経細胞が新生するという事実がわかっています。つまり記憶に関しては、加齢を言い訳にはできないということになります。海馬は新しい記憶が入ってきた時、まず一定期間それを保持します。そして、保持した記憶を「必要な記憶」と「不要な記憶」に分類し、必要な記憶を脳の別の場所(側頭葉など)にある記憶の貯蔵庫に格納し不要な記憶を消去します。こうすることで、海馬は次の記憶が入ってくるスペースを空け、いつでも記憶を受け入れられるようにしているのです。一方で、ストレスホルモンであるコルチゾールが過剰に分泌されると、海馬はダメージを受けやすくなります。これにより記憶力が低下し、認知機能の衰えが進むことがあります。

さらに海馬はアルコールにも影響を受けやすくアルコールの血中濃度が一定以上になると海馬の神経細胞がその働きを失うと考えられています。お酒に酔って記憶を脳の中で形成することができなくなった状態がブラックアウト<酩酊(めいてい)>といえます。酔っぱらって記憶が無いのにも拘わらず普通に人と会話をしたり、帰宅できたりしている、という経験のある人もいるかと思います。アルコールの影響で海馬が一時停止状態になっていますが、脳内では言語中枢や空間的な認識を司る中枢部分が働いていることから普通に会話ができますし、繰り返し使われている保存された記憶(自宅へ帰る順路)が的確に使われるため迷わずに家に帰れる、というわけです。覚えていない理由は、酔った時の短期的な記憶は不要な記憶として振り分けられて消去されたということになります。

脳が適切に機能するには豊かで安定した血流が欠かせません。脳の重さは体重の2%しかありませんが、機能するには酸素と栄養を運ぶために血液の15~20%を必要とします。脳が安定して力を発揮するためには血流も含め、全身の健康が必要不可欠なのです。

脳の機能が成長するのは30代以降

子供の頃は最初に耳で聞いて覚え、覚えてから理解するという順番で脳を働かせています。聴覚から記憶へとつながる脳のルートがいちばん強くて使いやすいのが子供の脳の特性です。聞いたものを「オウム返し」する力や、意味を理解せずにそのまま記憶する「暗記」は脳の使い方が未成熟だからこそ備わっている脳の仕組みなのです。一方、年齢を重ねてさまざまな経験や情報に触れると、他の脳ルートが開通していき、子供脳のルートは徐々に使われなくなっていきます。そして大人になると反対に、理解してから覚えるシステムへと変わっていくのです。子供脳と大人脳とでは、記憶するための脳のシステムが異なります。そのことに気付き、大人脳のシステムに沿ったアプローチをすることで、記憶力の向上が見込めます。

構造上、脳が「大人になった」という状態になるのが30歳前後。それ以降、10年ほどかけて対応力や創造力など、より高度な機能を備えた大人脳のシステムに切り替わり、脳全体の最盛期は40代後半から50代になると言われています。いわゆる「老い」を感じる頃が、実は脳の“旬”ということです。就職、結婚等のライフステージのさまざまな変化を経験し、新しい刺激を受けるほど脳の機能は熟成するため、シニア年齢でも発展が可能なのです。

記憶力がいい人の特徴に倣う

記憶力が良い人の特徴が分かれば、それを意識するだけで自分の記憶力も変化していくはず。大きく分けて以下の3つの特徴を参考にしてみましょう。

①「感情」を組み合わせる
好きや嫌いといった感情を司る脳の扁桃体が作用しているとき、海馬の短期記憶から長期記憶への移行に大きく関係すると言われています。イヤイヤ勉強するものは覚えられなくても大好きな推しの情報はたくさん頭に入るということでもイメージがつくと思います。年齢を重ねると記憶力が低下すると感じるのは、加齢によって日々の出来事に対して興味を抱かなくなったことで「覚えが悪くなる」ことが一因となります。

②「好奇心」が旺盛
記憶のメカニズムは「生存に関わる情報かどうか」を脳の海馬が判断し、必要なものは長期記憶に残すという流れです。生存に必要ないものでも繰り返し入ってきた情報は生存に必要な情報だと海馬が勘違いをして記憶し、さらに忘れるスピードも遅くなります。好奇心がある人は、新しい情報を取り入れようと自然と脳に繰り返し刷り込みを行っていると言われるため記憶力が高まる傾向にあります。

③「反復」する機会が多い
記憶力が良い人でも、覚えられる容量には限界があります。覚えたことを何度も思い出す機会をつくる、つまり反復するうちに記憶が持続するようになり、記憶力が向上します。インプットとアウトプットを多く行える状況を作れると、繰り返し海馬を刺激できるため記憶力アップが見込めます。

脳に効くアクティブプラン3選

実際に脳細胞は加齢とともに減少していきますが、脳の細胞同士をつなぐ情報伝達回路の活性化、つまり「脳への刺激」を与えることで年齢を重ねても記憶力の向上が見込まれます。記憶力の良い人の特徴でもある「感情」を動かし「好奇心」を持って「反復」することを意識する他にも、脳を多角的に使うことで活性化を図りましょう。

①デュアルタスク(二重課題)トレーニング
脳の活性領域向上や脳への酸素供給を上げるために、一度に2つのことに熱中するトレーニングです。脳の別の分野を同時に行うことで脳のネットワークを活性化させましょう。

・ウォーキング(運動)+しりとり(言語活用)
散歩しながら、又はその場で足踏みをしながら「しりとり」を行います。日本各地の地名を取り上げる等テーマを限定すると難易度が上がります。一人でも複数人でも行えます。

・歯磨き(上半身の繊細な運動)+足踏み(下半身の大まかな運動)
上半身と下半身で違う目的を持った動きをすることで脳への刺激が高まります。上半身のみであっても、左右別の動きを行うことも効果的です。例えば右手で二拍子の指揮を執りながら左手で三拍子の指揮を執るなど、異なる動きを同時にやってみましょう。座ったままでも行うことができます。

・足踏み(運動)+歌「むすんでひらいて」(リズム感)+「(で・て)で拍手」(反射神経)
その場で足踏み(椅子に座っていても可能)をしながら歌「むすんでひらいて」を歌い、歌詞の「て」と「で」のタイミングで拍手をする、という組み合わせ動作です。同時進行で複数のタスクを行うことで様々な脳の神経系ネットワークを活性化できます。

②有酸素運動
リズムに合わせて踊る、振り付けを楽しんで覚える等で「楽しい」「ワクワクする」などといった感情を働かせながら新しい情報(振り付け・ダンス・体操)をカラダで覚えることにより、脳を活性化させましょう。運動で血流も巡り、ストレス緩和にも役立ちます。無心に運動に集中することでリフレッシュできるランニングもおすすめの有酸素運動です。

③脳トレ(間違い探し)
脳のひらめきを鍛え、脳内の各エリアの連携を強化する間違い探しなども効果的です。絵の違いを見つけるものも有効ですが、同じ漢字が並んだものから一つだけ違う文字を見つける間違い探しを試しにやってみましょう。

<初級編>
同じ漢字が並んでいますが一つだけ異なる漢字があります、見つけたらクリックしてみましょう。正解すると赤い丸が表示されます。リセットボタンを押すと赤い丸が消えて漢字の配列が変わりますので何度もチャレンジできます。

<中級編>
同じ漢字が並んでいますが文字色が互い違いに二色で構成されています。その中から一つだけ異なる漢字を見つけクリックしてみましょう。

脳をクリアにするクリーニングプラン2選

瞑想等でマインドフルネスを実践することにより、ストレスの緩和や睡眠の質向上が期待されます。心配事や不安な気持ちでいっぱいになっている脳を瞑想で一旦オフラインにすると頭の中がクリアになり、集中力や記憶力の向上につながります。

①マインドフルネスの実践
脳の活性化は大事ですが、働きすぎの脳を休めることも大切です。つまり思考のゴミを整理し脳をすっきりさせるためにマインドフルネスを実践することが有効です。脳の動きは止めることができないため、悩みや不安などの思考を一時的に棚上げするために瞑想を取り入れマインドフルネスの状態に導きます。ザワついていた脳のもやもやが晴れてリフレッシュするだけでなく、実際に脳(海馬等)のキャパシティが増え、記憶力や能力の向上を促します。さらに認知機能低下を予防する効果も期待できると言われています。

②睡眠時間と質の確保
脳は眠っている間に一日の出来事や学んだことを整理し、記憶として定着させます。つまり充分な睡眠を取ることは、記憶力の向上に直結します。特に質の高い睡眠が重要であり、日常生活の充実度や学習効果も高まると考えられます。食事と睡眠は直接関係ないように思えますが、夜の安眠のためにしっかり朝食を摂ることがおすすめです。安眠を促すホルモンは日中に体内で作られるため、その元となるアミノ酸(トリプトファン)が含まれるタンパク質を朝食で摂っておくのがポイントです。つまりカラダに入ったトリプトファンは、幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンに変化し、14~16時間かけて睡眠と関わりのあるメラトニンというホルモンに変わります。夜に睡眠を促せるように朝食で肉や魚、卵、大豆製品、乳製品といった良質なタンパク質をしっかりと摂りましょう。

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物忘れをカラダの中からなんとかする!

カラダは自らが食べるもので出来ています。脳の主なエネルギー源であるブドウ糖(全粒穀物や果物等)、脳細胞の健康を保ち、神経伝達物質の働きを支えるオメガ3脂肪酸、抗酸化作用のあるナッツ類やカカオなどを日々の食事に摂り入れ、記憶力の向上や維持に役立てましょう。食事内容だけでなく生活習慣や摂り入れた栄養を巡らせる運動習慣も同時に見直せるとよいでしょう。

◆記憶力のためにおすすめの食材一覧
・青魚(DHA/EPAなどのオメガ3脂肪酸が記憶力を向上)
・豚肉(ビタミンB1がブドウ糖をエネルギーに変える)
・ごま(ビタミンB6がでんぷんをブドウ糖に分解)
・バナナ(脳のごはん=ブドウ糖を含有)
・カカオ(ポリフェノールが海馬を活性化)

◆物忘れのある方に向けた漢方とは
漢方では「心(しん)は神(しん)を蔵す」と言われています。心は血流を司る心臓、神は精神・意識の状態を表わしています。つまり血液循環が弱まることで不眠や物忘れにつながる恐れがあるとされています。物忘れが生じてから治すよりも、予防の段階で漢方薬を使うことも有効です。

■オンジ
「オンジ(遠志)」は、イトヒメハギの根の部分。精神を安らかにする作用があるといわれ、健忘に用いられています。「志が遠大になる」という由来から「遠志(おんじ)」と名づけられました。言葉がなかなか出てこない、ちょっとしたことが思い出せない方におすすめの漢方薬です。※この医薬品は、認知症の治療または予防に効果のあるものではありません。

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那須久美子

那須久美子

広告会社、大手化粧品会社宣伝部にてCM、雑誌等の広告制作に携わる。
その後フリーランスとしてバレエ講師、ピラティスマスターストレーナー、ヨガセラピスト、介護予防運動指導員として老若男女へ伝える仕事に従事。
企業や官公庁での健康アドバイザーや研修講師も務める。
国家資格キャリアコンサルタントとしては企業内障害者ジョブコーチを経て自治体の就労支援事業で講師・カウンセラー、現場統括責任者を歴任。
現在は文化芸術振興事業の広報、キャリアコンサルタントのためのオウンドメディア監修も担当。

・ヘルスケアデザイナー
・バレエティーチャー
・ピラティストレーナー、ヨガセラピスト
・アスリートキャリアコーディネーター
・国家資格キャリアコンサルタント
・漢方アドバイザー
・介護予防運動指導員

HP:https://www.kandworks.com/about

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