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生理前になると、理由もなくイライラしたり、気分が落ち込んだりすることはありませんか。
こうした症状はPMS(月経前症候群)といわれ、なかでも精神的な不調が強くあらわれる状態をPMDD(月経前不快気分障害)といいます。これらは女性ホルモンの変動が関係していると考えられていますが、現時点ではっきりとした原因は解明されていません。
本記事では、PMDDとPMSの違いや原因、セルフケアの方法、漢方による対処法までわかりやすく解説します。生理前の気分の落ち込みにお悩みの方は、参考にしてみてください。
生理前に気分が落ち込む、イライラするなどの不調は、多くの女性が経験したことがあるのではないでしょうか。
内閣府男女共同参画局の調査によると、20~30代女性の8割以上が月経に関するなんらかの不調を感じていると報告されています。その中でも、生理前の不調は66%の方が経験しています。
こうした数字からもわかるように、生理前の気分の落ち込みは、決して特別なことではありません。まずはご自身の状態を把握することから始めてみましょう。
参照:内閣府男女共同参画局「男女の健康意識に関する調査」(令和5年度) (2)月経に関わる不調の状況 https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/pdf/kenkou_r05s/00.pdf
PMS(月経前症候群)とは、月経前の1~7日ぐらいにわたって、身体的・精神的なさまざまな不調があらわれる状態を指します。
たとえば、身体的な変化としては、食欲の増加や胸の張り、肌の変化などが一般的です。
一方でPMDDは、PMSの中でもとりわけ精神的症状が強くあらわれる状態のことを指します。
PMSでもイライラする、なにもないのに涙が出るといった変化が見られることがありますが、PMDDの場合は、次のように日常生活に影響が出る場合もあるでしょう。
これらはあくまでも一例です。PMSもPMDDも生理が始まると自然に治まる傾向にありますが、気になる症状がある場合は専門家にご相談ください。
PMDDの原因は、現時点でははっきりと解明されていませんが、生理前に起こる女性ホルモンのひとつである黄体ホルモン(プロゲステロン)の変化が関係しています。
また、幸せホルモンといわれるセロトニン不足や、ストレスや対人関係などによる環境的な要因も原因のひとつです。
漢方では、PMDDのような不調は気の流れと関係があると考えられています。
その中でも、ストレスや気分の変化に関わる「肝(かん)」と呼ばれる働きが影響していると考えられています。肝は、肝臓という意味ではなく、気のめぐりや感情のバランスに関わる働きのことです。
この働きが乱れると、ネガティブな気持ちになったり、イライラしたりといった変化があらわれやすくなる傾向があります。
PMDDの対処法として、まずは日常生活の中で取り組めることから始めてみてはいかがでしょうか。この章では、以下のように、今すぐ自宅でできる簡単なセルフケアを紹介します。
イライラや不安を感じたら、まずは深呼吸をしてみましょう。深呼吸で新鮮な空気をカラダの中に取り入れることで、気持ちを落ち着かせるきっかけになります。
イライラや不安を感じたときは、以下の手順で深呼吸を5分ほど繰り返してみましょう。
簡単なので、できるタイミングで取り入れてみてください。
適度な運動を習慣にすることで、ホルモンバランスや自律神経のリズムが整いやすくなります。まずは、以下のような軽めの運動から始めてみましょう。
汗をかいたり、息が上がったりするほど激しい運動でなくてもかまいません。継続することが大切なので、無理のない範囲で続けていくことを意識しましょう。
漢方には「七情(しちじょう)」という考え方があり、怒りすぎたり、心配しすぎたりといった感情の偏りが体調に影響を与えることがあります。
日々、元気がない・やる気が起こらないと感じている方は、無理をして気を消耗させないような過ごし方を心がけてみましょう。
食事内容を見直し、栄養バランスを整えることもひとつの方法です。野菜や果物、魚などをバランスよく食べ、さまざまな栄養素を摂取できるよう意識してみましょう。
あわせて、糖分・カフェイン・アルコールのとり方を見直すことも大切です。
栄養の不足が気になる場合は、サプリメントを活用する方法もあります。ただし、薬と併用できないケースがあるため、医師、薬剤師又は登録販売者に相談してから利用しましょう。
また、気のめぐりをよくするためには、香りのよい野菜を食事に取り入れるのもひとつの方法です。シソは、気のめぐりに働きかける食材で、お腹の張りや食欲不振が気になるときに用いられることもあります。
生理前の症状(PMS)に用いられる市販薬もあります。
市販薬は、主に頭痛や腹痛などの身体的な症状をやわらげることを目的としており、直接的に精神的な不調に作用するものではありません。しかし、身体的なつらさが軽減されることで、イライラや情緒の不安定さが落ち着いたと感じられる可能性はあります。
用法・用量を守って使用し、つらい症状が続く場合は医師、薬剤師又は登録販売者にご相談ください。
上記で紹介したセルフケアを続けても、つらい状態が繰り返される場合は、漢方薬を取り入れることも選択肢のひとつです。
漢方薬は、生理前の心身の不調に対して用いられることがあります。さまざまな漢方薬がありますが、一人ひとりの状態や体質に合わせて選ぶことが大切です。
セルフケアだけでは変化を感じにくいと思ったときに、次のステップとして検討してみてください。
生理前の不調に用いられる漢方薬には、いくつかの種類があります。症状のあらわれ方や体質は人によって異なるため、それぞれの症状に合わせた漢方薬を選びましょう。
この章では、生理前の精神的な不調に使用されることの多い以下3つの漢方薬について詳しく紹介します。
タイプ別に紹介していくので、自分の状態と照らし合わせながら、参考にしてみてください。
加味逍遙散(かみしょうようさん)は、月経前の精神症状などに悩んでいる方に用いられることがある漢方薬です。
| 向いている方 | ・体力は中等度以下 ・イライラしがちで怒りっぽい ・のぼせ感がある ・不安を感じる |
| 特徴 | ・ストレスなどで乱れたカラダのバランスによってたまった“熱”をしずめながら、気や血の流れを整え、不足しがちな血を補う ・血の道症(女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状)に用いられる |
漢方の考え方では、肝に異常があり、「気滞」「気逆」「血虚」「瘀血」タイプの方に向いているとされています。自分がどのタイプか気になる方は、こちらから簡単にチェックできます。
抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)は、ストレスがたまりイライラする・気分が落ち着かない、といった不調が見られる方に用いられることがある漢方薬です。
| 向いている方 | ・体力は中等度 ・消化器が弱い ・イライラする ・気分が落ち着かない |
| 特徴 | ・肝の高ぶりを抑え、気血のめぐりをよくしたり、胃腸の機能を整える働きがある ・神経が高ぶり眠れない方に利用される |
漢方の考え方では、とくに「気滞」タイプの方に向いているとされています。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)は、精神不安があって、動悸、不眠の方の神経症に用いられる漢方薬です。
| 向いている方 | ・体力は中等度以上 ・寝つきが悪い、眠れない ・動悸 ・精神不安がある ・便秘がある |
| 特徴 | ・気をめぐらせ、カラダにこもった熱を冷ますとともに、心を落ち着かせて精神不安などを改善する |
漢方の考え方では、「気滞」タイプの方に向いているとされています。
PMDDの症状は、本人だけでなく周囲との関係にも影響することがあります。そのため、彼氏や家族など近い関係にある方には、PMDDの症状があることをあらかじめ伝えておくこともひとつの方法です。
とはいえ、PMDDという言葉自体を知らないケースもあるでしょう。
など、自分が困っていることを具体的に伝えてみましょう。
また、母親や姉妹など同じ女性でも、生理のつらさは人それぞれです。「同じ女性だからわかってもらえるはず」と思い込まずに、自分の言葉で伝えることが大切です。
セルフケアや漢方薬を試しても症状が続く場合や、日常生活に支障が出ていると感じる場合は、医療機関への相談を検討しましょう。
「病院に行くほどではない」と感じる方もいるかと思いますが、以下に受診の目安となる例を挙げるので、参考にしてみてください。
受診先は、婦人科または心療内科が一般的です。気になる場合は、早めに相談してみましょう。
PMDDは、PMSの中でも精神的な症状が強く、日常生活に影響をおよぼすことがある状態です。まずは睡眠・食事・適度な運動といった生活習慣を整えるセルフケアから始めてみましょう。
セルフケアで変化を感じにくい場合は、漢方薬という選択肢もあります。「月経前のイライラや不安」「気分が落ち着かない」「寝つきが悪い」といった状況に応じて、用いられる漢方薬は異なります。自分の体質に合ったものがどれなのか、薬剤師に相談するのもひとつの方法です。
症状が続く、または日常生活に支障が出ていると感じる場合は、医療機関への相談も視野に入れましょう。つらいときは一人で抱え込まず、周りの理解も得ながら、無理のない範囲で対処していくことが大切です。
監修 Fクリニック沖縄 院長 多和田 利香先生