漢方の基礎知識5「虚実とは」

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虚実とは

漢方には、個人個人の体質を知るための診断方法がいくつかあります。 その中のひとつが「虚実(きょじつ)」です。 「虚実」には「実証(じっしょう)」と「虚証(きょしょう)」があり、簡単にいうと実証は「邪気(じゃき)など外からの刺激によって不調になるもの」、虚証は「必要なものが不足し、体の機能が低下しているもの」を指します。 例えば、不眠が起こる原因にも、実証・虚証それぞれに理由があります。イライラや不安で眠れないのが実証疲れすぎや年齢を重ねたことなどで眠れないのが虚証などです。まずは、何が原因でその不調が起こっているのかを調べてみましょう。それでは、「虚実」について具体的に説明をします。 イライラや不安で眠れない実証 疲れすぎや加齢で眠れない虚証

虚実とは?(八綱弁証)

「虚実」とは、体質や症状を調べるときに利用される「八綱弁証(はっこうべんしょう)」といわれる診断方法の中のひとつの方法です。 「実」とは ・病気の勢いや精神状態が高い状態まで進むこと(機能が亢進しているもの) ・寒、暑、乾燥など体の外からはいってくる「邪気」が強いもの 「虚」とは ・体の栄養不足などが原因で体の機能が低下しているもの ・気(エネルギー)・血が少ないもの と考えます。

実証・虚証とは?

ここから、もう少し具体的に実証・虚証について説明をしていきます。 実証が起こる原因は、病気の原因が体の外側にあり、病気の原因になる邪気が体に侵入して病にかかりやすい状態になることです。実証は、「正気」といわれる生命力・自然治癒力が高く積極的に「邪気」と戦うため、逆に激しくなりすぎて病気を引き起こします。実証は急性期に起こりやすい状態です。 虚証が起こる原因は、病気の原因が体の内側にあり、体内の栄養素などが不足しているため、病にかかりやすい状態です。虚証は「正気」といわれる生命力・自然治癒力が不足しており、「邪気」に対する抵抗力が低下しています。邪気と戦う力がすくないので激しい症状は起こりません。体の弱い人や病後などに起こりやすい状態です。虚証は慢性期に起こりやすい状態です。

実証と虚証の見極め方

それでは自分がどちらの状態なのかを確認してみましょう。 虚証・実証はどちらも正常な状態ではありません。 虚証・実証がわかることは、現在の体調不良は何が原因で起こったのかを見定める手段となります。 ・虚実のチェックシート 次の虚実のチェックシートで何が原因かを確認しましょう。 「実証」は体の外から邪気が侵入した状態です。実証は、気血水のタイプでは気滞・瘀血・水滞などに分けることができます。 「虚証」は、体の機能が減少している状態です。虚証は、気血水のタイプでは血虚・陰虚・気虚などに分けることができます。 チェックシート

実証の治療は「とりのぞく」こと。虚証の治療は「補う」こと。

漢方には「補虚瀉実(ほきょしゃじつ)」という言葉があります。 これは、足りないものは補い(虚証)、必要でないものはとりのぞく(実証)という考えを表す言葉です。よって、実証では、体の中の余分なものをとりのぞく方法をとりいれます。とりのぞく方法としては、「汗法(かんほう)」「清法(せいほう)」「吐法(とほう)」「消法(しゃほう)」「下法(げほう)」があります。順番に説明をすると、汗をだす、熱を冷ます、吐き気を促す、気を巡らす、排便を促すといった方法です。 虚証では、体の中の足りないものを補う方法をとりいれます。「和法(わほう)」「温法(おんほう)」「補法(ほほう)」があります。順番に説明をすると、体の栄養分を調和する、冷えを除去する、不足した栄養分を補うといった方法があります。

【虚実で考える】漢方薬を飲むときに気をつけたいこと

漢方では症状だけを見て漢方薬を選ぶわけではありません。 その人がどんな体質なのか、どんな症状が起きているかを確認しながら薬を選んでいきます。 例えば、便秘にもいろいろな漢方薬があります。 ひとつ例にとると、調胃承気湯(ちょういじょうきとう)は「便秘、便秘に伴う頭重・のぼせ・・・」に効果があるとされています。さきほどの実証の治療法でいえば「下法(げほう)」になります。しかし、体の中の余分なものが原因で便秘になっているわけではない虚証タイプの人がこの薬を利用すれば、下痢が止まらなくなる可能性があります。

漢方薬を選ぶときに知っておきたい「しばり」とは何?どう読むの?

市販されている漢方薬のパッケージや添付文書には「しばり(使用制限)」と呼ばれている文言が記載されています。 防風通聖散を例に取ると「体力充実して、腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなもの」がしばりの表現にあたります。便秘の症状であれば誰でも服用してもいいのではなく、体力があり、お腹に皮下脂肪が多く、便秘がちの人に適応される漢方薬であるというように「しばり」をかけているのです。そして、ここには「虚実」が組み入れられています。具体的に見てみましょう。 ・「実」の病態が適応となるもの「比較的体力があり」「体力が充実して」などの記載があります。 麻黄湯・防風通聖散・大柴胡湯など ・虚実の尺度で考えたときに中間の場合「体力中等度で」などの記載があります。 半夏厚朴湯・疎経活血湯・抑肝散加陳皮半夏などがあります。 ・虚の病態が適応となるもの「体力虚弱で」「比較的体力が低下した」など 当帰芍薬散・十全大補湯・補中益気湯などがあります。 ・虚実に関わらず幅広く用いられるもの「体力に関わらず」など 猪苓湯・芍薬甘草湯などがあります。 例えば、桂枝茯苓丸の場合は、「比較的体力があり」とあるので「実証」ですね。 このように、漢方薬を選ぶときは、西洋医学にはない注意点があります。 私は、便秘に悩んでいるけれど、頭痛もあって、イライラもする。他にも症状があるけれど、どの薬がいいかわからないというときは、専門家に相談することをおすすめします。 なぜなら、漢方薬は、症状に対して選ぶのではなく、その人の体質に合わせて選ぶからです。 >次のコンテンツ(五臓)へ >漢方の基礎知識TOPへ


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