漢方の便秘薬「調胃承気湯(ちょういじょうきとう)」をピックアップ!便秘のタイプ別養生法とは

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健康のバロメーターといえば、毎日の便通。朝のスムーズな便通は体調のみならず気持ちの快適さにも直結します。便は栄養素が吸収された後の「残りかす」であることから、溜まっていたら当然カラダにも、QOLにも影響が出るというもの。便秘に関するインターネット調査では51.5%が便秘を自覚している、という結果が出ています(※)。その要因としては「加齢によるもの」、「女性であること」、「疾患によるもの」という事実が考えられます。歳を重ねるにつれ悩みが病気に変わる前に、便秘に効果的な食養生やストレッチなどの便秘解消法とタイプ別の漢方薬をご紹介します。
※日本消化器病学会雑誌第116巻第11号

便秘の基準とは?

便秘とは、排便がない状態をいいますが、はっきりとした定義がありません。日本内科学会では「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」、慢性便秘症ガイドラインでは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できていない状態」とされています。
便秘の原因は、食事からの食物繊維や水分摂取不足、腸内環境の乱れ、運動不足、ストレスなど多岐にわたります。便秘が引き起こす症状は、腹痛や頭痛、肩こり、食欲不振、吹き出もの、肌荒れなど多種多様でいずれも日常生活の快適さが損なわれます。病気や薬の副作用による便秘を除くと、機能性便秘と呼ばれる腸の働きの異常によって起こる便秘が最も多く見られる便秘のタイプです。

便秘のファーストチョイス「調胃承気湯」とは

漢方の観点では、便秘は「気・血・水(き・けつ・すい)」の中の「水」の不足、ストレスや緊張による「気」の異常、「血」の不足や、滞りである『瘀血(おけつ)』などによって起こると考えられています。西洋医学で用いられる下剤や座薬・浣腸薬のように薬剤で刺激を与えて便を排出するのではなく、個々の体質を考えてその原因にアプローチする漢方を取り入れることは『便秘になりにくいカラダ』に向かう第一歩です。

一般的に便が硬く出にくい場合は、腸内に熱が生じて乾燥するために便が滞ると考えられます。つまり、食べ過ぎや脂っぽい食事、ストレスなどで胃腸に熱がこもると当然便も乾燥して硬くなってしまいます。それに対して胃腸への保水効果があり、便を軟らかくしてカサを増やしてくれる漢方薬に「調胃承気湯(ちょういじょうきとう)」があります。
「調胃」という名前の通り胃腸の働きを調える効果を持っています。且つ天然の含水硫酸ナトリウムが主成分の「芒硝(ぼうしょう)」というミネラルを含む鉱物由来の生薬が便を軟らかくすることで便通を促します。複数の生薬の併せ技によって原因にアプローチし排便を促すため、便秘薬で腹痛になりやすい方にもおすすめです。

便秘を伴う症状に用いられる漢方薬に「○○承気湯(じょうきとう)」という名前がつくものが数種類あります。承気とは「気を身に受け入れる」、つまり「消化管の機能を回復し便通を正常化し、その働きを調える」という薬効を示しており名前はこれに由来しています。
一般的な機能性便秘は、大腸の蠕動(ぜんどう)運動が低下し、便を肛門へ送り出す力が弱くなることで起こります。便が大腸に長く留まり水分が過剰に吸収されて便の量が減り硬くなることから、胃腸に潤いを与えて便を軟らかくする漢方薬を選ぶとよいでしょう。

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<注意>
基本的に頓服として用い、便が出たら中止しましょう。お腹が冷えている時には適しません。高齢者や胃腸の弱い方は腹痛、下痢を起こすことがあります。

慢性便秘の悩み別漢方の選び方

単純に便を出すだけではなく、なぜ便が出にくいのかという原因を考えると大きく4つの便秘タイプに分けられます。気・血・水の観点を加えてその養生について見ていきましょう。

◆熱タイプ<腸に熱がこもるタイプ>
体内に余分な熱がこもり、腸の動きが滞って便秘になるタイプです。便が硬く乾燥し、排便に時間がかかることがあります。肌荒れやのぼせ、腹部膨満感などを伴うこともあります。


☑ 顔が赤らみやすい
☑ のぼせやすい
☑ 便が硬くて出にくい
☑ 肌に吹き出物が出やすい

ひとこと養生法
・腸内の熱を冷まし、便を柔らかくする食材を意識しましょう。食物繊維が豊富な野菜(キャベツ、ほうれん草)、海藻類、きのこ類、そして水分をしっかり摂ることが大切です。辛いものや油っこい食事は腸に熱をこもらせるため、控えめにしましょう。
・軽い運動やストレッチで腸の動きを促進しましょう。ウォーキングやヨガなど、腸を刺激する運動を日常に取り入れることで、便通改善に役立ちます。激しい筋トレよりも、継続しやすい運動が効果的です。

■調胃承気湯(ちょういじょうきとう)
便秘や便秘に伴う頭重・のぼせ・湿疹・ふきでもの(にきび)・腹部膨満かんに悩む方におすすめ。

◆過敏タイプ<腸の緊張・冷え・虚弱体質>
腸が過敏になり、緊張やけいれんによって腹痛や便通異常が起こるタイプです。便秘と下痢を繰り返すことが多く、残便感や腹部膨満感を伴うことがあります。冷えやストレス、体力の低下が関係している場合もあります。


☑ 胃腸が弱く、冷えやすい
☑ 便秘と下痢を繰り返す
☑ 残便感がある
☑ ストレスでお腹が痛くなることがある

ひとこと養生法
・腸の緊張を和らげるために、温かい食事や消化の良いものを摂りましょう。生姜や大棗(なつめ)など、胃腸を温める食材もおすすめです。
・ストレッチや入浴でカラダを温めてリラックスし、腸の動きを整えましょう。過度な運動よりも、自律神経を整える軽い運動が効果的です。

■桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
腹部膨満感、残便感がある方、腹痛が起こりやすく便秘と下痢を繰り返しやすい方の腹痛、下痢、便秘に 効果があります。

◆燥タイプ<腸の乾燥・水分不足>
腸内の水分が不足し、便が乾燥して硬くなり、排便しにくくなるタイプです。加齢や体力の低下、病後などで体内の潤いが減少している方に多く見られます。便はコロコロとした兎糞状になりやすく、残便感や腹部膨満感を伴うこともあります。


☑ 高齢者や虚弱体質
☑ コロコロした硬い便
☑ 慢性的な便秘
☑ 肌の乾燥や吹き出物が気になる

ひとこと養生法
・腸を潤す力を補うために、油分や潤いを与える食材(ナッツ類、ゴマ、クコの実、オリーブオイルなど)を積極的に摂りましょう。こまめな水分補給も大切です。 ・入浴やストレッチで血流を促し、腸の動きを助けることも効果的です。冷えを防ぎ、腸の乾燥を緩和するために、温かい食事や白湯を取り入れるのもおすすめです。

■麻子仁丸(ましにんがん)
腸を潤して便を軟らかくするため、コロコロとした便が硬くて出にくい方におすすめ。

◆ストレスタイプ<気の滞り>
腸の蠕動運動をコントロールする力が不足して、便を押し出すことができないタイプ。緊張やストレスの影響で腸がスムーズに動かず便がスッキリと出ない状態です。


☑ ストレスを抱えている
☑ 睡眠不足
☑ イライラすることが多い

ひとこと養生法
・ストレスや過労、睡眠不足により自律神経が乱れていることが考えられるため、香りのあるお茶(ジャスミン茶やハーブティー)などを摂り入れ、リフレッシュできる状態をつくりましょう。
・睡眠環境を見直し、睡眠の質を高めることがおすすめです。吸湿性の高い寝具や寝間着を取り入れ、就寝時は寝室を暗く静かな環境にすることで目や耳といった感覚器を刺激から守りましょう。寝る前にスマホやPCを触らない等、自律神経を乱さないことも大事です。

■柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
「気」を巡らせ、カラダにこもった熱を冷ますとともに、自律神経の乱れを整えます。ストレスからくる便秘や神経症などに効果があります。

◆番外編
便秘による痔の症状に<血の乱れ>

カラダを巡る血が滞ることを瘀血(おけつ)といい、それによりカラダへの栄養が行き渡らず不調の原因となります。腹部が瘀血状態になってしまうと、腸の動きが滞ってしまい便秘につながります。痔は肛門が瘀血状態になっていると考えられます。

■乙字湯(おつじとう)
肛門付近の血液循環をよくしてうっ血をとることで便通を整え便秘に効き ます。腫れや出血、痛みなどの痔による症状を改善します。

お腹が張って運動する気になれない時のセルフケア

運動不足は腸の働きを鈍らせ、便秘の原因になります。便秘改善のためには日頃から適切な運動習慣を維持することが大切です。運動することが腸のためによいとわかっていても、お腹が張っている時に運動することで気分が悪くなることがあります。ストレスによる便秘の場合はそもそも動く気になれないこともあるでしょう。

そんな時にはゆったりと入浴して血行を促進することが効果的です。こまめに水分補給をすることでカラダを中から潤わせ、体内の水の巡りを促してあげることも重要です。
ストレスによる気の滞りを巡らせるために香りのよいお茶や気持ちが安らぐ音楽などでリフレッシュすることなども有効です。直接腸に働きかけるわけではありませんが自律神経を整えることはカラダ全体の調整に効果的です。

毎日の習慣としてかんたんにできる寝る前のお腹マッサージとお腹ストレッチ、便秘のツボ指圧も取り入れてみましょう。

◆お腹マッサージ
おへそ周辺、下腹部に両手を重ねて置いて、時計回りにやさしくなでます。気持ちよく感じるくらいの力加減で10〜20回程度さすることで、腸の働きをサポートします。

① 仰向けになり、ひざを曲げた状態にする。
② 両手を下腹部で重ね、おへそを中心として時計回りに「の」の字を描くようにやさしくなでる。
③ 10~20回程度繰り返す。

※強い刺激を与えると、筋肉が緊張状態になり、かえって腸の動きを妨げるためやさしくさする程度にしましょう。
※気分が悪い時、内臓疾患がある時、怪我、妊娠中は止めましょう。

お腹ストレッチのイメージイラスト

◆お腹ストレッチ
腹式呼吸を行うだけでも自律神経が整いやすくなります。うつ伏せで股関節の前側にある腸腰筋という腸に隣接した筋肉をストレッチすることで普段硬くなりがちな内臓に近い深層筋肉を緩めることができるため効果的に血行を促せます。

① うつ伏せになり両足は腰幅に開く。両手は胸のあたりに置き、脇を軽く締めて肩甲骨を下げる。
② ゆったりと呼吸をしながら上体を起こし、耳と肩を遠ざけるようにして首を長く保つ。
③ 胸を張ってウエストを長く伸ばすことを意識し、呼吸を止めずに30秒ほどそのままの姿勢をキープする。
④ ゆっくりうつ伏せ姿勢に戻る。

※腰から起きるのではなく上半身を伸ばしウエストを長く保つようにすることがポイントです。腰痛がある場合は両手を重ねてその上に額をのせ、頭を持ち上げずにうつ伏せ姿勢で腹式呼吸を行いましょう。
※できるだけ腹式呼吸をゆっくりと行いましょう。

お腹マッサージのイメージイラスト

◆便秘のツボ
お腹にある「天枢(てんすう)」・「大巨(だいこ)」というツボは、消化器官の働きを整える効果があり、便秘解消効果が期待できます。両方とも左右にあることから左右同時に呼吸を止めずに気持ちいいと感じる力で5秒程度指圧しましょう。

<天枢>
おへそから左右対称に、外側に指3本分離れたところにあるツボが天枢です。
<大巨>
天枢からさらに指3本分下、やや内側にあるのが大巨です。

便秘のツボのイメージイラスト

▼おならがよく出る原因は?お腹の張りを改善するツボ紹介

毎朝のルーティーンで排便習慣をつける

毎朝、必ず同じような時間にトイレに座る習慣をつけることで便意を促すことも重要です。腸のデザイン的には、和式トイレでしゃがむ姿勢が、直腸から肛門まで一直線の角度になるため排便を促すのに適しています。洋式トイレの場合でも同じような角度を意識して便座に座ることで便通を促すことができます。

◆腸のデザインを考えた便座への座り方
前屈みに座ることで直腸から肛門にかけて真っ直ぐな構造になるため、便が一気に出しやすくなります。軽い便秘の人はたったこれだけで解消する人もいます。太ももと上半身との角度が35度になるように、足元に踏み台を置き、上半身は股関節から前に倒すことで便を排出しやすい角度が保てます。

腸のデザインを考えた便座への座り方のイメージイラスト

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那須久美子

那須久美子

広告会社、大手化粧品会社宣伝部にてCM、雑誌等の広告制作に携わる。
その後フリーランスとしてバレエ講師、ピラティスマスターストレーナー、ヨガセラピスト、介護予防運動指導員として老若男女へ伝える仕事に従事。
企業や官公庁での健康アドバイザーや研修講師も務める。
国家資格キャリアコンサルタントとしては企業内障害者ジョブコーチを経て自治体の就労支援事業で講師・カウンセラー、現場統括責任者を歴任。
現在は文化芸術振興事業の広報、キャリアコンサルタントのためのオウンドメディア監修も担当。

・ヘルスケアデザイナー
・バレエティーチャー
・ピラティストレーナー、ヨガセラピスト
・アスリートキャリアコーディネーター
・国家資格キャリアコンサルタント
・漢方アドバイザー
・介護予防運動指導員

HP:https://www.kandworks.com/about

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