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人気の漢方家・櫻井大典さんの連載、今回のテーマは9、10月の過ごし方です。本来この時期、心がけるのは秋の養生ですが、いまや日本の9月は真夏の暑さが続きます。現代の気候に合わせた養生のポイントをお伝えします。暦の上では秋でも「湿邪」が続く
漢方の暦からすると、9月は秋本番。本来は乾燥対策が主となる時期ですが、いまの日本は9月でも真夏並みの高温多湿が続きますよね。すると、体内に湿気や熱がこもりやすい邪気「湿邪(しつじゃ)」に侵されやすくなります。 湿邪による、だるさや食欲不振、胃の不調、むくみ、頭が重く感じるといった症状が気になっている人も多いのでは。 そのため9月までは、夏の養生食を引き続き摂るのがおすすめです。「利湿(りしつ)」と言って、体から湿気を追い出す作用のある物をいただきましょう。 特に利湿の効果が高い食材としては、ハト麦、冬瓜、とうもろこしなど。たとえば、とうもろこしのヒゲは、漢方の「南蛮毛」という生薬で、体の水はけを良くしてくれます。薬膳では乾煎りしてお茶にしますが、より簡単に、茶色の部分を除いたヒゲを刻んでスープに入れるだけでもいいですよ。とうもろこしご飯にして、ヒゲを一緒に炊き込んだりしても。 また、この時期から美味しくなるきのこでも、舞茸やエリンギは排出力があるので、体の余分な水分や湿気を追い出してくれます。 なお、えのき、しいたけ、しめじも働きは違いますが、この時期におすすめです。これらにはエネルギーを補給する「補気(ほき)」の作用があります。夏の疲れを癒やすため、きのこの効能を活用しましょう。 生活習慣では、ぬるめのお風呂に長めに入ったり、軽い運動で汗をかくよう心がけて。発汗によって体の熱を出し切ることが、秋に向けた養生になります。というのも、体に熱がこもったままだと、10月からの乾燥がひどくなるのです。10月からは「燥邪」の対策を
9月は体の水気、湿気を追い出す養生ですが、10月からはその逆。乾燥シーズンに入り、湿度が70%くらいから、一気に50%くらいに下がってきます。すると乾燥の邪気「燥邪(そうじゃ)」の対策が必要になります。 空気が乾燥して、肺や皮膚のうるおいが奪われると、のどのイガイガや空咳、肌のかさつきや便秘などの症状が出やすくなります。 特に夏の間、冷房の部屋でずっといて、冷たい飲み物やアイスを摂り汗をかかずに過ごした人は、夏の暑さで受けた熱が体内にこもっているため、内側から体を消耗させてしまいます。 体を潤す食材としては、白い食材が効果的です。梨や長芋、山芋、白ごま、百合根、松の実、白キクラゲ、イカ、豆腐、豆乳、ヨーグルトなどなど。 それと便秘の人は、腸が乾燥している可能性があります。腸を潤すには、干しぶどう、プルーンなど、黒っぽい食材がいいですね。ゴマは黒でも白でも有効です。 秋においしくなる梨は、体を潤す代表的な食材。薬膳では火を通していただきます。加熱したほうが消化しやすく、有効成分も吸収しやすい状態になるからです。 デザートとしても楽しめる、梨の薬膳レシピをご紹介しましょう。 【体を潤す“蒸し梨”の作り方】 梨の上を切って芯をスプーンでくり抜き、氷砂糖を四つか五つ詰めて、上を切った部分をのせてフタにする。深い皿に入れて40分ぐらい蒸す。梨の皮がパリパリに割れてきたら食べごろの合図。 皮は残してもかまいませんが、皿に溜まったシロップはしっかり飲んで下さい。蒸し梨はのどを潤す作用が強く、乾燥性の咳を取る薬膳になります。 もっと手軽に作るには、梨をスライスして皿に並べてラップをかけ、レンジで温めたら、はちみつをかけていただきましょう。蒸した方がのどを潤す働きは強くなりますが、忙しいときはこれでもOKです。夜更かしは潤いを消耗する
食べ物だけでなく、日々の生活でも体を潤し、乾燥を防ぐ養生を心がけてください。 部屋では加湿器を使い、自分が過ごす場所の湿度に気を配って。肌が乾燥しやすい方は、入浴後、すぐに体に保湿剤を塗りましょう。 また、潤いは夜作られるので、早めの就寝を。遅くまで起きているほど、潤いを消耗します。そもそもこの時期、日が短くなり夜が来るのが早くなるのは、早く寝た方がいいという合図です。夏は睡眠時間が短めでかまいませんが、秋、冬は、たっぷり寝るのが大切な養生です。秋は成果をまとめる季節
春、夏は外に出て活動する時ですが、秋、冬はエネルギーを内に向ける季節。ですから、新しいことを始める時期には向きません。 秋は発表会などが多いですよね。それは春から夏に培った成果をまとめる季節だからです。農作物も、春に種をまき、夏に育てて、収穫する時期ですよね。ここにきて、まだあれもこれもできていないと思っても遅いので、今年できたことだけを数え上げて、今年の成果としましょう。 これから訪れる厳しい冬の寒さに備えて、秋の味覚を楽しみながら、読書の秋、芸術の秋など、心豊かに過ごしてください。
撮影(トップ画像)/長谷川梓