漢方の基礎知識11「正気と邪気で考える病気が起こる原因とは」

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正気と邪気で考える病気が起こる原因とは

みなさんは、原因がわからない体調不良に悩んだことはありませんか?
例えば、何も悪いものは食べていないのに胃腸の調子が悪くなった、何もしていないのに体がだるいなど、さまざまな症状について思い当たることもあるでしょう。
もしかしたらその体調不良は、今回紹介する正気(せいき)と邪気(じゃき)に関係があるかもしれません。

今回は、漢方の考えによる病気が起こる原因について紹介します。これまで体調が悪くなったのは、何が原因だったのかを知ることにより、改めて自分の体を見つめ直すきっかけになることを願っています。

正気と邪気で考える病気が起こる原因とは

自分の体の状態を知るためには、いくつかの診断方法があります。これまでのコンテンツの中では、診断方法のひとつに虚実(きょじつ)があると説明をしました。
今回は、虚実とは何かを復習しながら、虚実の働きを表している「正気」と「邪気」について説明をします。そもそも、漢方では、病気が起こる原因には、正気と邪気が関係していると考えています。まずは、正気と邪気は何かについて知ってから、病気が起きる原因について説明をしていきます。

正気と邪気が綱引きをして対戦しているイメージ

正気と邪気の意味

それでは、病気の原因を知るために必要な正気と邪気について具体的に確認してみましょう。

正気(せいき)とは

正気とは人間がもともと持っている生命力・自然治癒力です。体の中に必要な量の正気が満たされていれば、病気に対する防衛能力は高くなります。正気が正常に働くためには、気血水・陰陽などのバランスが整えることが大切です。
例えば、正気が満たされていれば夏の熱邪(ねつじゃ)・暑邪(しょじゃ)などの邪気が体に侵入しても病気になる可能性は低くなります。湿邪とは梅雨の時期に起こりやすい湿気、暑邪は夏の暑さのことです。ただし、正気が満たされていても、平常時より邪気のパワーが強ければ病気にかかりやすくなります。

邪気(じゃき)とは

邪気とは病気を起こす原因となるものです。邪気は体の外部から侵入するもので、風邪(ふうじゃ)・寒邪(かんじゃ)・暑邪(しょじゃ)・湿邪(しつじゃ)・燥邪(そうじゃ)・火邪(かじゃ)があります。
外邪は、体の外から皮膚や鼻・口などを通過し体の中に侵入します。

病気が起きる原因とは

漢方では、病気が起こる原因のひとつに正気と邪気の戦いがあると考えています。病気が起きる原因には、邪気の強さや邪気を受けた場所などが関係しています。病気が起こる・進行する・変化するといった行程は、正気と邪気が戦い、どちらかが強くなったり弱くなったりする関係だと考えます。

ここであらためて虚実について復習していきましょう。虚実とは体質や症状を調べるときに利用される診断方法のひとつです。実証(じっしょう)とは邪気が盛んになることで、病気の勢いや精神状態が高い状態まで進むことです。虚証(きょしょう)は正気が不足することで、体の栄養不足(気血の不足)などにより体の機能が低下していることです。

虚証は、体の栄養が不足しているため、病気にかかりやすい状態です。実証は正気といわれる生命力や自然治癒力は高い状態ですが、邪気の力がそれ以上に強いために病気を引き起こしやすくなります。

正気と邪気の関係

正気と邪気の戦いには、2つの考えがあります。病気が発症あるいは進行する原因は、正気と邪気の変化によって起こると考えています。
少し難しい言葉ですが、漢方の考えである「正勝邪退」(せいしょうじゃたい)「邪勝正衰」(じゃしょうせいすい)について説明をします。

正勝邪退(せいしょうじゃたい)

「正勝邪退」とは、病気を治療する、または自然に治癒することで、少しずつ健康な状態になることを意味します。病気がよくなる理由は、邪気が弱く症状も軽いため、正気が邪気に勝つからだと考えます。
すなわち、邪気が弱ければ症状も軽くなり、邪気が強ければ病気の状態も重くなります。
また、正気が強ければ邪気を抑える力も強くなります。その人の体質や治療を行うことによって、邪気が弱くなり正気が勝るといったこともあります。病気が良くなると、気血水や陰陽のバランスがよくなるため、これまで不調だった部分だけでなく体全体の健康状態が良くなります。

正気と邪気の強弱だけではなく、病気が現れた場所が異なれば、病気の状態も異なります。
例えば、風邪(ふうじゃ)の影響を受けた場合、邪気が軽ければ軽い皮膚のかゆみなどに抑えられます。「正勝邪退」は、正気が勝り邪気が衰退すると考えることができます。

邪勝正衰(じゃしょうせいすい)

「邪勝正衰」とは、逆の状態になることを意味します。邪気が強く正気が弱いため、生命力や自然治癒力が低くなっている状態です。正気が邪気に負けるため、病気の状態が悪化し、適切な治療を受けることができなければ、状態によっては予後不良に至ることがあります。

この状態は、邪気が極端に強く、正気が極端に弱いため、正気は邪気と戦う力がない状態です。例えば、春に多い風邪(ふうじゃ)は、上半身から侵入しやすく、正気を損傷させます。
ある程度正気が強ければ邪気を追い出すことは可能ですが、正気が弱かったりすると邪気がどんどん体内に侵入し病を悪化させます。これらを改善するためには、春になる前から脾の状態を整えることで正気を増やすことが大切です。
「邪勝正衰」は、邪気が勝り、正気が衰退すると考えることができます。


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