漢方の基礎知識8「病因病機とは①(六淫・七情など)」

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病因病機とは①

漢方が考える、6つの邪気(六淫)と7つの感情(七情)

漢方では、病気の原因のことを病因(びょういん)といい、正気(せいき)と邪気(じゃき)が戦うことにより、邪気が勝った状態のことをいいます。正気とは気血水・陰陽などのことで、人が生きるための自然治癒力や、生きるための力を意味しています。例えば、春になると鼻水やくしゃみが出て辛い…という方も多いですよね。これは、風の邪気の影響を受けて、カラダの中に花粉やほこりなどが侵入することが原因で起こります。ただし、正気が正常であれば、風邪(ふうじゃ)に負ける可能性は低くなります。
カラダの不調は、今回説明をする外因(外からの邪気)や内因(感情・体力低下)などによって起こります。病気が起きる原因について、ひとつずつ紹介をしていきます。

暑邪により、汗が止まらず、ほてり顔の女性

外因:六淫(りくいん)の特徴

「六淫(りくいん)」とは、病気の原因となる6つの邪気のことをいいます。

風邪(ふうじゃ)
風邪は2~4月の春に起こりやすく、風が吹くように軽い・上昇する・発散するといった特徴があり、カラダの上の方またはカラダの表面に症状が起こりやすくなります。風は一年中吹いているため、春だけでなく夏・秋・冬の風と一緒に熱邪・寒邪など他の邪気と同時にカラダに侵入することがあります。風は百病の長といい、あらゆる病気の原因となります。風邪がカラダに侵入すると、めまい・悪寒・鼻水・喉の痛みなどの症状が起こります。

暑邪(しょじゃ)
暑邪は5月~7月の春から夏にかけて起こりやすく、炎のように熱がある・上昇する・発散するといった特徴で、湿邪と一緒に侵入しやすいといった特徴もあります。暑邪は、気温が高くなると起こるため、カラダが炎のように熱くなり、エネルギーを発散させるため、気血水のバランスが崩れやすくなります。
暑邪がカラダに侵入すると、高熱・顔が赤い・口が乾く、大量に汗をかくなどの症状が起こります。

火邪(かじゃ)
火邪は熱邪と同じ時期に起こりやすく、炎が炎上する様子を意味します。火邪は、暑邪と同じく気温が高くなると起こるため、肌が赤くなる・腫れる・痛みがあるなど、カラダの一部が化膿したり、炎症が起きたりすることがあります。火邪がカラダに侵入すると、吐血・血尿・血便・高熱などの症状が起こります。

湿邪(しつじゃ)
湿邪は7月の雨がよく降る梅雨の時期に起こりやすく、重く濁ったようすを意味しています。湿気は、五臓の脾に影響を与えやすいため、水分がカラダに影響をおよぼします。湿邪は、湿気の影響で起こるため、カラダの上部から下部へと症状が移行することがあります。湿邪がカラダに侵入すると、カラダがだるい・むくみ・頭が重い・下痢などの症状が起こります。

燥邪(そうじゃ)
燥邪は8月~10月の秋に起こりやすく、乾燥した空気がカラダの表面やカラダの中に影響をおよぼすといった特徴があります。乾燥した空気は、カラダの表面や中の水分をうばうため、肺の機能にも影響を与えます。
燥邪がカラダに侵入すると、空咳・便秘・髪の毛や皮膚の乾燥などの症状が起こります。

寒邪(かんじゃ)
寒邪は11月~1月の寒い冬の季節に起こりやすく、寒くて冷たいといった特徴があります。薄着をしたり、冷たい飲食物をとったりすると、寒邪はカラダに侵入しやすくなります。カラダが冷えると気血水の働きにも影響を与えるため、カラダのバランスが崩れやすくなります。
寒邪が侵入すると、足腰が冷える・お腹が冷える・下痢をするなどの症状が起こります。

内因:七情(しちじょう)の特徴

仕事でトラブルが発生し、思い悩みすぎて食欲がなくなってしまった様子

七情(しちじょう)とは、7つの感情のことで、正常な状態では発病の原因にはなりませんが、体のバランスが崩れると七情の変化により五臓や気の流れに影響を与えます。「七情」には7つの感情の変化があります。主る(つかさどる)というのは、属するという意味があります。

「心」は喜を主るが、喜びすぎると「心」を損傷する
喜ぶことは気血のめぐりがよくなり、気持ちを明るくします。ただし、喜びは心とつながっているため喜びすぎると、気が緩んでしまいます。

「肝」は怒りを主るが、怒りすぎると「肝」を損傷する
怒りすぎると、気はカラダの上の方に上がるため、頭痛・めまい・顔色や目が赤くなるといった症状が起こります。

「脾」は思を主るが、思いすぎると「脾」を損傷する
思いすぎると、脾の気のめぐりが悪くなり、食欲がない・お腹が張る・吐き気がするといった症状が起こります。

「肺」は悲憂を主るが、悲しみ憂いすぎると「肺」を損傷する
悲しみすぎると、肺の気を消耗するため、話したくなくなる・声がかすれる・やる気がなくなるなどが起こります。

「腎」は驚恐を主るが、驚き恐れずぎると「腎」を損傷する
驚き過ぎたり、恐がり過ぎると腎に影響を与えるため腰を抜かす、尿を漏らすなどといった症状が起こります。

今回は、「六淫・七情」といった病気が起きる原因についてそれぞれ紹介しました。季節に応じた6つの邪気は、思い当たることがある方も多いのではないでしょうか。
例えば、「湿邪」で言えば、梅雨の時期は、カラダがだるくて体調がすぐれない方もいますよね。
また、「七情」では、「脾」で説明した通りで、仕事などでトラブルが発生したとき、思い悩みすぎて食欲がなくなってしまったという経験がある方もいるでしょう。

病気が起こる原因を知っておくと、病気になる前に予防することもできます。次回では、病気が発生するメカニズムについてくわしく説明をするので、まずは「六淫・七情」から理解しておきましょう。

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