冬の養生│冷え対策だけでは不十分?薬膳と漢方で考える冬の養生法

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目次

漢方では、冬はエネルギーを体内に蓄えるべき時期だと考えています。しかし、冬は「寒邪(かんじゃ)」と呼ばれる邪気によってエネルギーが消耗され、血の巡りが悪くなり、手足の冷え、肩こり、関節痛などが起こりやすくなります。また、生命力の源である「腎」に負担がかかりやすい季節でもあります。冬の不調を防ぐには、エネルギーを発散せず、カラダを温めて「腎」をいたわる生活を送ることが大切です。

漢方で考える冬とは

中医学の基礎となる古い書物「黄帝内経(こうていだいけい)」によると、冬の3ヶ月間を閉蔵(へいぞう)とよび、「冬の3ヶ月は、生命力を内にしまい込む季節」とされています。植物が葉を落とし、動物が冬眠するように、人も本来は活動を少し控え、春に向けてエネルギーを蓄える時期だと考えられています。大切なのは、「陽気を外へ漏らさず、カラダの内に蓄える(蔵する)こと」です。夜更かしをしたり、動き回ったりすると、陽気を消耗してしまいます。冬は、早く寝て、朝は日が昇ってから起きる早寝遅起きが冬の養生となります。

なぜ冬は不調が起こるのか

中医学では、冬に不調が起こりやすいのは、寒さによってカラダの働きが低下し、エネルギーの消耗や巡りの滞りが起こるためとされています。特にこの季節は「腎」と深く関わる季節です。中医学において腎は成長や老化、生命力の源と考えられており、寒さによってその働きが弱まると、さまざまな不調が現れやすくなります。例えば、手足の冷え、腰や膝の痛み、疲れやすい、むくみ、頻尿、気分の落ち込み、朝起きにくいといった症状です。また、潤いも不足するため、乾燥肌やかゆみといった症状も起こしやすくなります。前述した通り、冬は「閉蔵」の季節でエネルギーを蓄える時期です。夜遅くまで起きたり、他の季節と同じにように活動をすると、本来蓄えなければいけない陽気や潤い、エネルギーを使い過ぎてしまいます。

腎についてはこちらを参考にしてください。 漢方の基礎知識6「五臓とは」

冬の養生におすすめの食べ物

冬は、カラダを温める食材や、腎に良い黒い食材を摂ることが大切です。薬膳で考える冬の食養生には次のようなものがあります。

・カラダを温める:しょうが・ねぎ・シナモン(温性)

カラダを内側から温める食材です。冷えを感じやすい時期や、温かい食事を摂りたいときにおすすめです。

・腎を補う:黒豆・黒ごま・くるみ(補腎)

冬の寒さは、エネルギーを蓄える「腎」に大きな負担をかけます。腎の不調は老化にもつながるため、冬の間にしっかり摂りたい食材です。

食材は、薬膳食材図鑑を参考にしてみてください。

漢方で考える冬に起こりやすい症状と養生法

冬は寒邪の影響を受けやすく、生命力の源である腎のエネルギーを消耗しやすい季節です。今回は冬に起こりやすい症状と養生法をご紹介します。

1.冷え(手足の冷え、冷え性)

手足が冷たく感じたり、カラダがなかなか温まらなかったりする状態です。血の巡りが悪くなったり、温める力が不足したりすることもあります。冷たい飲み物や食べ物の摂りすぎなども、冷えの原因になります。

対処法

  • ・首・手首・足首を冷やさないようにする
  • ・湯船にゆっくり浸かり、カラダを芯から温める
  • ・ウォーキングやストレッチなどの軽い運動を習慣にする

漢方薬:当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)

「冷えによって起きるしもやけや下腹部・腰の痛み、頭痛などがある」方に用いられます。(自己判断での長期連用は避け、医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください)

効能・効果

体力中等度以下で、手足の冷えを感じ、下肢の冷えが強く、下肢又は下腹部が痛くなりやすいものの次の諸症:冷え症、しもやけ、頭痛、下腹部痛、腰痛、下痢、月経痛

2.腰痛

腰まわりに痛みや重だるさを感じる状態です。長時間同じ姿勢が続いたり、運動不足、冷え、筋肉のこわばりなどが原因になることがあります。重い物を持つ動作や、姿勢が崩れたとき急に痛みが出ることもあります。

対処法

  • ・長時間同じ姿勢を避け、こまめにカラダを動かす
  • ・腰を冷やさないようにする
  • ・軽いストレッチや体操で血行を促す

漢方薬:牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)

「腰痛や下肢痛、しびれ、むくみがある」方に用いられます。(自己判断での長期連用は避け、医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください)

効能・効果

体力中等度以下で、疲れやすくて、四肢が冷えやすく尿量減少し、むくみがあり、ときに口渇があるものの次の諸症:下肢痛、腰痛、しびれ、高齢者のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ、高血圧に伴う随伴症状の改善(肩こり、頭重、耳鳴り)

3.頻尿

頻尿とは、トイレに行く回数が普段より増えた状態です。水分を多くとったときや、コーヒー・お茶・お酒などを飲んだあと、カラダが冷えているときや、加齢により起こることもあります。夜中に何度もトイレに起きると、睡眠不足や日中の疲れにつながることもあります。

対処法

  • ・カラダを冷やさないようにする
  • ・カフェインやアルコールを控える
  • ・寝る前の水分摂取を控える

漢方薬:八味地黄丸(はちみじおうがん)

「頻尿・残尿感・夜間尿などで悩んでいる」方に用いられます。(自己判断での長期連用は避け、医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください)

効能・効果

体力中等度以下で、疲れやすくて、四肢が冷えやすく、尿量減少又は多尿で、ときに口渇があるものの次の諸症:下肢痛、腰痛、しびれ、高齢者のかすみ目、かゆみ、排尿困難、残尿感、夜間尿、頻尿、むくみ、高血圧に伴う随伴症状の改善(肩こり、頭重、耳鳴り)、軽い尿漏れ

4.疲れ

カラダやココロに負担がかかり、だるさや集中力の低下、やる気が出ないなどと感じる状態です。睡眠不足や多忙、運動、食事の偏りなどが原因になることがあります。休んでも疲れが取れない状態が続く場合は、何らかの不調が隠れていることもあります。

対処法

  • ・十分な睡眠と休養をとる
  • ・予定を詰め込みすぎず、疲労をためない
  • ・軽い運動やストレッチで気血の巡りをよくする

漢方薬:補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

「疲れやすい、だるい、気力が出ない」方に用いられます。(自己判断での長期連用は避け、医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください)

効能・効果

体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えて、疲れやすいものの次の諸症:虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒

5.乾燥肌・かゆみ

肌の水分や皮脂が不足し、カサつきやつっぱり、かゆみを感じやすくなる状態です。空気が乾燥する季節や、熱すぎるお湯での入浴、洗いすぎなどで悪化することがあります。衣類との摩擦や、エアコンによる乾燥も肌への負担になる場合があります。

対処法

  • ・熱すぎるお湯での入浴を避ける
  • ・入浴後は早めに保湿剤を塗る
  • ・加湿器などを利用して室内の乾燥を防ぐ

漢方薬:当帰飲子(とうきいんし)

「皮膚の乾燥が気になる」方のかゆみに用いられます。(自己判断での長期連用は避け、医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください)

効能・効果

体力中等度以下で、冷え症で、皮膚が乾燥するものの次の諸症:湿疹・皮膚炎(分泌物の少ないもの)、かゆみ

漢方薬:六味丸(ろくみがん)

カラダの潤いや栄養を補い、加齢などに伴う「腎」の働きを整える漢方です。(自己判断での長期連用は避け、医師、薬剤師又は登録販売者へ相談してください)

効能・効果

体力中等度以下で、疲れやすくて尿量減少又は多尿で、ときに手足のほてり、口渇があるものの次の諸症:排尿困難、残尿感、頻尿、むくみ、かゆみ、夜尿症、しびれ

6.風邪

風邪は、鼻水・のどの痛み・せき・熱などの症状が出ます。疲れがたまっているときや、睡眠不足、空気が乾燥しているときにかかりやすくなります。高い熱が続く、息苦しいなどの症状がある場合は医療機関への受診を勧める表現にされることをおすすめします。

対処法

  • ・十分な睡眠と休養をとる
  • ・こまめな水分補給を心がける
  • ・室内の湿度を適度に保つ

漢方薬:葛根湯(かっこんとう)

「風邪のひき始めで、寒気や肩こりがある」方に用いられます。(自己判断での長期連用は避け、数日服用しても症状の改善がみられない場合は、医師、薬剤師又は登録販売者へ相談してください)

効能・効果

体力中等度以上のものの次の諸症:感冒の初期(汗をかいていないもの)、鼻かぜ、鼻炎、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛み

冬の養生におすすめのツボ

冬の養生には、カラダを温めて巡りをサポートするツボ押しもおすすめです。すきま時間に取り入れて、冷え対策に役立てましょう。

・腎兪(じんゆ) … 腎を養う代表的なツボ

腎兪は、腰のあたりにあるツボで、背骨から指2本分ほど外側、ウエストの少し上あたりにあります。中医学では腎と深い関わりをもつ代表的なツボと考えています。冬は腎の働きが重要になる季節と考えられており、冬の養生でもよく用いられます。

・三陰交(さんいんこう) … 冷えや血行不良が気になるときに

三陰交は、内くるぶしの最も高いところから指4本分ほど上、すねの骨の内側にあるツボです。中医学では、肝・脾・腎の3つの経絡が交わる重要なツボと考えています。冷えを感じるときや、足のむくみ、生理前後の不調が気になるときにも利用します。

冬は「温める」だけでは不十分?体質によって異なる養生法

冬の養生は、「温めること」だけが目的ではありません。例えば、手足が冷えやすく寒がりで、疲れやすい「陽虚」タイプの人は、冬の寒さによってさらに陽気が不足しやすくなります。そのため、十分な睡眠をとり、カラダを冷やさず、温かい食事で陽気を養うことが大切です。

一方で、のぼせやすい、口や喉が乾く、寝汗をかくといった「陰虚」タイプの人は注意が必要です。陰虚タイプはカラダを潤す力が不足しているため、冬だからといって、生姜や唐辛子など温めるものばかり摂ると、乾燥やほてりが悪化することがあります。

また、冬によくやりがちなのが、「カラダを温めすぎること」です。サウナで大量に汗をかいたり、厚着で温めすぎて汗をかくと、必要な陽気を外へ逃がしてしまいます。

冬はエネルギーを蓄える季節です。陽虚の人は陽気を補い、陰虚の人は潤いを補うなど体質に合わせた養生が大切です。寒いからといって、「とにかく温める」ことが、かえって不調を招く場合もあります。

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冬の不調、実は「がんばりすぎ」が原因かも

冬の養生というと、カラダの養生ばかりに目が向きがちですが、漢方の古い書物「黄帝内経」によると、ココロの養生も同じくらい重視されています。冬の養生法として、ココロの中を外へ向けすぎず、内におさめることが大切だと書かれています。現代では、年末年始の行事や帰省、仕事始めなどで、冬でも慌ただしく過ごす人が少なくありません。もちろん、仕事や勉強をがんばることも大切ですが、「もっと頑張らなければ」「結果を出さなければ」と自分を追い込みすぎることは、陽気の消耗につながると考えます。

多田有紀 兵庫県在住。医療機関、薬局、IT企業での勤務経験を経て、2015年にライターとして独立。体の不調を感じたことをきっかけに、漢方・薬膳に興味を持つ。現在は、ライターとして活動をしながら、漢方薬膳の知識を活かしたコンサルタント業務や、ワークショップ・初心者向け講座などを実施。特に女性の体に関する悩みに寄り添った活動を行っている。

実績:クラシエ薬品株式会社主催「KAMPO OF THE YEAR 2024」にゲストとしてトークショーに登壇 執筆書籍:「カラダのために知っておきたい漢方と薬膳の基礎知識」(淡交社)

X:https://x.com/sora_writer オフィスかなで:https://officekanade.com/

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