7年ごとに訪れる女性の節目を、漢方でやさしくサポート

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漢方の古典「黄帝内経(こうていだいけい)」には、女性のカラダは7年ごとに大きな節目を迎えると書かれています。女性のカラダは、歳を重ねるごとに少しずつ変わっていきます。カラダの変化に戸惑うこともありますが、それは自分を見つめなおす大切なタイミングでもあります。無理をせず、カラダとココロの声に耳を傾けて、日々の生活でやさしく整えていきましょう。

女性のカラダは7年周期で変わる

女性のカラダにあらわれる7年ごとの変化と、ライフステージに合わせた漢方・薬膳ケアのヒントをお届けします。今回は、毎日の生活にとりいれやすい薬膳茶も紹介します。それぞれの年代や体質に合わせた漢方薬については最後にまとめて紹介をしています。

女性のカラダにあらわれる7年ごとの変化

思春期(7歳~21歳前後)

カラダの変化:成長期にあたる思春期は、初潮を迎え、ホルモンバランスが大きく変わる時期です。思春期は気滞により熱がこもりやすくなる時期です。また、成長期によりエネルギーを消耗することで気血が不足する場合があります。

<起こりやすい症状>
思春期は成長する時期で、初潮を迎えることによりカラダとココロが大きく変化する時期です。ホルモンバランスが安定していないため、月経不順や生理痛が出やすく、急激に血が必要になるため、貧血やふらつきなども起こる場合もあります。漢方では、この状態を血虚といい、血が不足している状態だと考えます。また、ホルモンの影響で皮脂の分泌が盛んになるため、肌荒れやにきびといった肌トラブルも増えます。

漢方ではこの状態をカラダに余分な熱がこもる状態だと考えます。さらに、気の流れが悪くなると、ココロとカラダのバランスも崩れやすく、イライラしたり、落ち込んだりすることもあります。気血不足になるとカラダを温める力や巡らせる力が弱くなるため、冷える場合もあります。

<おすすめの薬膳食材>
・レバー
成長期に不足しやすい血を補う働きがあります。生理が始まった女性の貧血やふらつきにおすすめです。

・なつめ
ほんのりとした甘みがあり、ココロを落ち着かせる働きのある食材です。イライラや落ち込みやすい方におすすめです。

・小松菜
カラダの熱を冷ます働きがあるので、にきびや肌荒れなどのあるときにおすすめです。

・ほうれん草
血を補い、カラダを潤す働きがあります。目の充血・めまいにもおすすめです。

・鮭
気と血を補う食材です。カラダを温める働きがあるので冷えが気になる方に向いています。

・鶏肉
消化吸収の良い食材です。気血不足によりカラダが冷えている方に向いています。

<暮らしの養生>
思春期は血の巡りやホルモンバランスが乱れやすい時期です。カラダを冷やすと生理不順や血行不良につながります。できるだけ温かいもしくは体温に近い飲食物を摂りましょう。無理なダイエットは控えめに。過度な食事制限は、気や血を不足させます。疲れがなかなかとれなかったり、やる気が起こらなくなったりすることもあります。自分の体質にあった食事を意識しましょう。

<おすすめのお茶(薬膳茶)>
なつめとクコの実茶:なつめは滋養強壮の働きがある食材です。血を補い、ホルモンバランスを整える働きがあります。クコの実は血を補う食材で、目の疲れや肌トラブルにおすすめの食材です。

<思春期の主な症状に用いられる漢方薬>
加味逍遙散当帰芍薬散十味敗毒湯

成熟期(21歳~42歳前後)

カラダの変化:妊娠・出産を選択する人がいる時期で、女性ホルモンの変動が大きくなります。家庭や仕事の両立で心身の疲れが溜まりやすく、ストレスや睡眠不足が加わることにより、カラダの不調があらわれやすくなります。

<起こりやすい症状>
成熟期は気虚や血虚になりやすい時期です。カラダのエネルギー源である気や、全身に栄養をめぐらす血が不足しやすくなります。成熟期は、仕事や家庭などで忙しく、食事や休養が十分にとれないこともあります。気が不足すると疲れやすい・集中力が続かないといった症状が起こりやすくなります。特に、女性は生理によって血を消耗するため、めまいや生理不順、顔色のくすみ、冷えなどが起こります。また、生理周期や妊娠、更年期に向けてホルモンの変動が活発になるこの時期は、体内の水分代謝も乱れやすくなります。その結果、むくみや頭痛といった不調が現れやすくなります。

<おすすめの薬膳食材>
・小豆
カラダに滞りやすい余分な水分を外に出す働きがあります。むくみやだるさを感じやすい方におすすめの食材です。

・鶏肉
気を補い、カラダを温める食材です。消化吸収がよいので、疲れやすい方やエネルギー不足を感じている方におすすめです。

・にら
カラダを温める働きのある食材です。気を補い、血の流れを良くします。生理痛や生理不順など女性の不調におすすめです。

・生姜
胃腸を温め、冷えからくる不調をやわらげます。ストレスによる食欲不振や血行不良の方におすすめです。

・山芋
気を補う働きがあるため、疲れやすい方におすすめです。腎の働きを良くするため老化防止にも役だちます。

・クコの実
血を補う働きがあり、目の疲れや視力低下に役立ちます。肝や腎を良くする働きがあるため、老化防止やイライラにもおすすめです。

・なつめ
ほんのりとした甘みがあり、ココロを落ち着かせる働きのある食材です。イライラや落ち込みやすい方におすすめです。

<暮らしの養生>
女性のカラダは冷えやすく、産前産後の方はとくに血や気が不足します。食事でカラダの内側から温めることを意識しましょう。血流が良くなると自然とカラダも温かくなります。普段のちょっとした温活や予防が冷えや疲れの予防につながります。忙しい日でも、ゆっくりお茶を飲む、外の空気を吸うなど、ゆったりとした時間を持ちましょう。

<おすすめのお茶(薬膳茶)>
なつめと生姜の黒豆茶:なつめは、血を補いココロとカラダの調子を整えてくれます。生姜はカラダの内側から温め、血行をよくしてくれます。ほんのりとした甘さと、ピリッとした生姜に黒豆の香ばしさが加わる飲みやすいお茶です。

<成熟期の主な症状に用いられる漢方薬>
桂枝茯苓丸加味逍遙散五苓散

更年期(42歳~56歳前後)

カラダの変化:更年期は閉経の前後で女性ホルモンが急激に減少しやすい時期です。ホルモンバランスの変化によって自律神経が乱れやすくなり、これまでと違った心身の不調を感じやすくなります。更年期は腎の働きが衰える腎虚をはじめ、気の巡りが悪くなる気滞、血の巡りが悪くなる瘀血になりやすい時期です。

<起こりやすい症状>
更年期は、女性ホルモンの急激な減少により、これまでと違った症状が現れます。腎の働きが弱くなり、陰が不足すると、カラダに熱がこもり乾燥しやすくなるため、ホットフラッシュや肌の乾燥が起こります。また、骨や関節を支える力が弱くなり、足腰のだるさや関節の痛みが出やすくなります。気の巡りも 悪くなるため、イライラしたり、情緒不安定になります。ストレスが増えるとさらに悪化するので、精神の安定を意識しましょう。また、血や陰が不足するため、眠りが浅くなったり、不安を感じやすくなります。

<おすすめの薬膳食材>
・豆腐
カラダにこもった熱を冷まし、潤いを補う働きがあります。ホットフラッシュや肌の乾燥におすすめです。のぼせによる不眠などをやわらげます。

・黒豆
腎を補い、年を重ねることによっておこる不調を改善する働きがあります。水分の摂りすぎによるむくみや関節のこわばりにもおすすめです。

・黒ごま
血を補い、カラダの乾燥を潤す働きがあります。特に、髪のぱさつきや肌の乾燥に役立ちます。更年期の美容や健康におすすめの食材です。

・百合根
ココロを落ち着かせ、不眠をやわらげる働きがあります。のぼせやイライラする更年期にも適しています。

・山芋
胃腸の調子を整える働きがあります。疲れやすい方や、集中力が保てない方におすすめです。カラダに潤いを与える働きもあります。

<暮らしの養生>
更年期は腎の力が衰えやすくなるため、疲れや冷えがカラダの不調を悪化させる原因となります。腎の調子を整えるためには、腰を温めることが大切です。腎は腰と深い関係があると考えられているため、下半身を冷やすと腎の働きがさらに弱くなります。普段から、できるだけ冷たい飲食物を避け、一年中靴下や腹巻をするなど、カラダを冷やさない習慣を取り入れることが大切です。また、腎を消耗する過労や睡眠不足またはストレスを避けることも大切です。

<おすすめのお茶(薬膳茶)>
黒豆+なつめ茶:黒豆は腎を補い、足腰のだるさや髪の衰えを予防する働きがあります。なつめは血を補いココロの調子を整える働きがあるため、情緒不安定な方や不眠の方にも向いています。

<更年期の主な症状に用いられる漢方薬>
加味逍遙散柴胡加竜骨牡蛎湯八味地黄丸

老年期(56歳以降)

カラダの変化:年齢とともにカラダが衰え、老化が進みやすくなります。漢方では老年期は生きるために必要なエネルギーの源である腎の働きがさらに弱くなると考えます。また、水分代謝が落ちるので水滞も起こりやすくなります。

<起こりやすい症状>
老年期は加齢とともに腎の力が衰えやすくなります。腎は、生殖や排泄に関わる機能を持っているため、夜間に何度も目が覚めてトイレに行きたくなったり、頻尿も起こります。また、記憶力が低下したり、物忘れが起きることもあります。さらに、耳鳴りや聴力の低下といった耳の不調が起こるのも腎虚のサインのひとつと考えられます。

<おすすめの薬膳食材>
・くるみ
腎を補い、脳の働きを活性化する働きがあります。記憶力の低下や脳の老化を予防します。

・黒きくらげ
血の巡りをよくし、肌に栄養や潤いを補う働きがあります。老年期の方に適しています。

・山芋
消化を良くし、体力を補ってくれます。老年期の気の補いに適しています。

・にんにく
カラダを温めて、気を巡らせてくれます。温める作用が強いので、冷えや血行不良にも適しています。

・鮭
気血の巡りを良くし、カラダを温める働きがあります。エネルギー補給に役立つ食材です。

・黒豆
腎を補う働きのある食材です。加齢とともにあらわれる物忘れや足腰の弱りなどを予防してくれます。

<暮らしの養生>
自分の体調に合わせて無理のない運動をすることが大切です。足腰を動かすだけで、気血の巡りがよくなり、自然とココロもカラダも楽になります。ウォーキングや軽いストレッチなど日々の生活に取り入れやすい運動がおすすめです。筋肉や関節を使うことにより、転倒予防や足腰の健康維持にもつながります。早いうちから養生をすることで、年齢を重ねても健やかに過ごせる土台を作ることができます。

<おすすめのお茶(薬膳茶)>
くるみ+黒豆茶:くるみと黒豆は、腎を補いたいときにおすすめのお茶です。黒豆は腎を補う働きがあるので、年齢を重ねるごとに必要な養生にも適しています。特に冷えを感じやすい時期におすすめです。

<老年期の主な症状に用いられる漢方薬>
八味地黄丸

食材は、薬膳食材図鑑を参考にしてみてください。

女性のライフステージに合わせて利用する漢方薬

漢方薬は、同じような症状や体質であっても症状や体質などライフステージによって選び方が変わります。
自己判断だけではなく、信頼できる専門家に相談し、今の自分に合った処方を選ぶことが大切です。食事や生活習慣の見直しと組み合わせて、無理なく続けましょう。

■加味逍遙散(かみしょうようさん)
カラダの上の方にある気を下におろして全身を巡らせることにより、女性ホルモンの変動に伴って現れるいらだちやのぼせなどの血の道症症状を改善する漢方薬です。体力中等度以下の方の冷え症 や生理不順などにも効果があります。

■当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
カラダの栄養が不足している方に、血を補うことで足腰の冷え症や生理不順を改善する漢方薬です。体力虚弱な方のめまいや肩こり・腰痛などにも効果があります。

■十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
皮膚が炎症でじゅくじゅくしているときに、カラダに滞っている水や熱を発散させることにより、湿疹や皮膚炎を改善する漢方薬です。体力中等度な方のじんましんにも効果があります。

■桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
血の巡りを良くして生理不順を改善する漢方薬です。比較的体力がある方のめまいやしみ、肩こりにも効果があります。

■五苓散(ごれいさん)
カラダの中の余分な水分を排出することにより、頭のだるさや痛みを改善する漢方薬です。体力に関わらず使用でき、低気圧などによる頭痛にも効果があります。

■柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
カラダの中の気が滞っていることにより、不眠やストレスによるイライラを改善する漢方薬です。体力中等度以上の方の更年期障害にも効果があります。

■八味地黄丸(はちみじおうがん)
腎の働きが低下したことによる頻尿や夜間尿などの尿トラブルを改善する漢方薬です。体力中等度以下の方の下肢痛や腰痛、目のかすみなどにも効果があります。

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多田有紀
兵庫県在住。医療機関、薬局、IT企業での勤務経験を経て、2015年にライターとして独立。体の不調を感じたことをきっかけに、漢方・薬膳に興味を持つ。中医学スクール「薬膳アカデミア」に入学し「国際中医師(国際中医専門員)」を取得。現在は、ライターとして活動をしながら、漢方薬膳の知識を活かしたコンサルタント業務や、ワークショップ・初心者向け講座などを実施。特に女性の体に関する悩みに寄り添った活動を行っている。

実績:クラシエ薬品株式会社主催「KAMPO OF THE YEAR 2024」にゲストとしてトークショーに登壇
執筆書籍:「カラダのために知っておきたい漢方と薬膳の基礎知識」(淡交社)
資格:国際中医師(国際中医専門員)・医薬品登録販売者・漢方養生指導士・薬機法管理者・食品衛生責任者を取得

X:https://x.com/sora_writer
オフィスかなで:https://officekanade.com/

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