トップメッセージ
2025年1月付で代表取締役 社長執行役員に就任した草柳 徹哉です。7年にわたりリーダーシップを発揮し、ビジョン「CRAZY KRACIE」のもとで経営改革や「綜合化」を軸とした経営機構改革を推し進めた前任の岩倉からのバトンをしっかりと受け取り、引き続きクラシエの企業価値向上のために力を尽くす覚悟です。
クラシエらしい「快適」を提供したい
2023年10月に、それまで持株会社の傘下にあった3事業会社を統合し「クラシエ株式会社」として新たなスタートを切りました。この組織改編を皮切りに、これまで各事業会社が持っていた機能の一本化による経営の効率化、意思決定の迅速化を図ることを目的とした経営機構改革を進めています。この改革により、クラシエの持つ知見や人の力が事業領域の壁を越えて協業し、イノベーションやシナジーを通じてさらなる成長を遂げていくことを企図した一連の取り組みが、「綜合化」です。
クラシエは、トイレタリー・コスメティックス、薬品、食品という、一見あまり共通項のなさそうな事業ポートフォリオを持つ、ユニークな事業体です。研究開発から調達、販売に至るバリューチェーンも、注視すべき環境変化も異なる3事業ですが、いずれも人々の「暮らし」に寄り添う商品を提供していること、「暮らし」の中の繊細な変化からニーズを見出す視点が求められていることが共通しています。では今後、人々の「暮らし」はどのように変化していくのか、「暮らし」の中に人々はどのような価値を求めるようになるのか。「綜合化」の先に目指す成長戦略の模索は、ここが出発点になりました。
少子超高齢化の加速に伴い社会保障制度の枠組みが再構築され、保健医療分野では治療から予防へと重心が移るとともに、健康寿命延伸の重要性がさらに高まってくることが見込まれます。中長期的な生産年齢人口の減少に伴い、心身の不調やライフステージの変化を抱えながら働く人を包摂する社会の形成が求められることになります。また、単身世帯の増加やデジタル技術の進展により、個人の体験や感情はよりパーソナライズされたものになり、マーケットも「マス」ではなくより「個」へと細分化していくはずです。
クラシエは、これまで事業を展開してきた「医・食・美」の領域に「快適」を加えて、こうした社会の変化に対応する新たな価値を創出しようとしています。その土台にある発想は「漢方価値の翻訳」です。東洋医学に立脚する漢方は、西洋医学とは異なり、身体の内側からバランスを整えることで不調の原因を根本から改善することを主眼としています。長年にわたって漢方薬を展開してきたクラシエは、処方や生薬の作用についての多くの知見を蓄積しています。今後は薬品事業だけでなく、同様に素材から市場まで幅広く知見を持つトイレタリー・コスメティックスや食品といった事業部門でも、「バランスを整える」という漢方の発想を取り入れた商品や使用方法を開発・提案することで、クラシエだからこそ提供できる、ユニークで新しい価値を創出できるのではないかと考えています。これが今後の成長戦略の重要な軸となる「快適」の意味するところです。
成長を加速させるために
「快適」を指針に事業領域を拡大し、成長を実現するために、さらなる「綜合化」を推進します。
研究開発については、これまで事業領域ごとに設置していた3研究所に加え、「快適」領域の研究を担うウェルビーイングリサーチセンター(WBRC)を新設、これらの研究所をR&D本部が統括する体制としました。WBRCの主導により3研究所間で交流が促され、相互の知見や研究テーマの共有、協業が進み、事業間のシナジーが生まれ、新たな発想で「快適」領域の深耕が進むことが期待されます。
従来の商品群や事業領域にとらわれない新規事業の創出にも挑戦していきます。研究開発部門での「綜合化」が進むことで新たな価値創造のヒントは自ずと生み出されるはずですが、それらを受動的に待つだけでなく、新規事業創出のための戦略的な取り組みも進めます。2024年4月、開発専門組織であるフロンティアBCを新設しました。新規事業の発掘から事業化・収益化についての検討、社外の研究機関や企業等とクラシエにある既存事業の協業推進を、同BC(ビジネスセンター)が主体となって行っています。
直近の成果としては、台湾の漢方薬局から生まれたライフスタイルブランド「DAYLILY(デイリリー)」を運営するDAYLILY JAPAN株式会社の株式を取得、2025年7月に子会社化しました。国内外に実店舗を展開し、ライフスタイルブランドの企画・開発を行う同社の商品・サービスに、クラシエが持つ漢方の知見を取り入れることで、「快適」をコンセプトとした新たな価値提供に向けて双方の強みを活かすことができる取り組みです。今後もこうした取り組みを通じて新規事業を創出し、既存事業ポートフォリオの強化につなげたいと考えています。
海外市場への展開も重要なテーマです。中長期的には、自然志向・健康志向の高まりを見せる地域に対して「快適」の価値提供を水平展開していく目論見がありますが、足元ではまず、既に展開している北米での事業強化が優先課題となります。
北米では既に日用品と菓子を販売しています。「綜合化」に際し、各事業部門が設置していた海外事業部門を、2026年春に国際事業本部として再編し、輸出事業を一元化しました。そして、海外拠点としてKracie USA, Inc.を設立、2026年春から本格稼働しています。販売先の自主開拓やマーケティングの強化を進め、消費が旺盛な北米市場でのマーケットポジション確立につなげたいと考えています。
成長戦略に伴う大規模な投資も進めています。まずは国内で製造・研究開発拠点の刷新・再整備を急いでおり、数年間はやや投資先行となりますが、定量的には、2030年度末にグループ売上高1,100億円の達成を目標としています(販売代理店契約が終了する「フリスク」等の売上を除いたベースで、2025年度比5ヵ年CAGR5%)。また、同年度にROS5%以上の確保を目指します。
成長の原動力:強みと人の力
ここまで「綜合化」の次に描く成長戦略についてご説明しました。社会の変化が従来以上に加速し、見通しづらくなる中で、この成長戦略を着実に遂行し、事業成長を実現していくためには、これまでに培ってきた独自の強みを最大限に発揮できる環境がクラシエに整っていなければなりません。
クラシエが持つ強みはまず、商品を企画し、また使う場面を新たなカテゴリーとして創造する発想力にあると考えています。基本理念である「人を想いつづける」に忠実に、手に取る人にとっての使い心地の良さ、新たな喜びをお届けしたいという想いから生まれ、ロングセラー商品や、参入カテゴリーで強力なポジションを持つ商品になったものは少なくありません。
商品カテゴリーそれぞれにある、研究開発から原材料調達、製造、販売まで一貫し、安全・品質へのこだわりを込めて構築されたバリューチェーンも、クラシエが持つ強みです。既存の商品を持続的・安定的にご提供できるだけでなく、どのような新商品が生まれたとしても、確実に最適なバリューチェーンを構築することができると考えています。

最後に、企業再生からクラシエとしての再出発、「普通の会社」に向けた経営改革を経験してきたこと、その経験の中で共有してきた危機感や緊張感も、今後のクラシエの成長を支える重要な強みです。経営が安定してくると、得てして危機感や緊張感は薄らいでくるものです。クラシエでは、企業理念「しるし」の現場への浸透、変革や挑戦、協働を促すビジョン「CRAZY KRACIE」の策定等を通して、全社員が同じ方向を向く企業風土の醸成に取り組んできました。
ここに挙げた強みを活かし、さらに強めて企業としての成長を遂げていくためには、強みの源泉である「人」の力を適材適所で活かし、さらに強めることが重要です。社員一人ひとりが、クラシエの一員として自ら研鑽し、価値を創出することの意義や成果を実感することができるように、「一人ひとりが活きる組織」を目指す「やりがい改革」を推進しています。評価や報酬、研修制度の整備など、個人の成長がクラシエ全体の労働生産性向上と事業成長につながる施策だけでなく、クラシエが変わらずに大切にする価値観の人と組織への浸透策も、重要な取り組みの一つとして盛り込んでいます。
「綜合化」と次の成長に向けた挑戦をスタートさせたクラシエですが、ほんの20年前までは「成長」を語れる状態ではなかったことを忘れることはできません。商品を手に取ってくださるお客さま、お取引先さまへの感謝、そして危機感と緊張感を持って変革と挑戦に取り組んできた経営層や社員一人ひとりの力がなくては、今日の姿を思い描くことすらできなかったでしょう。その間の拠りどころであった「人を想いつづける」という志を今後も大切にしながら、引き続き「CRAZY」に挑戦を続けてまいります。