【櫻井大典のまいにち養生】夏は“清熱解暑”の食材で体を涼しく

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目次

人気の漢方家・櫻井大典さんの連載、今回のテーマは真夏の元気な過ごし方。いまどきの夏は、暑さの対処に加えて、体の冷やし過ぎも不調のもとに。注意すべきポイントをご紹介します。

過剰な熱「暑邪」が体を襲う

暑さが厳しいこの時期、中医学では過剰な熱が「暑邪(しょじゃ)」となって体を襲ってくるとされています。

暑邪にやられると、体がだるくなったり、食欲が落ちたりします。まさに夏バテですね。熱中症も症状のひとつです。

この暑邪に効果的なのが、体の熱を取り払う「清熱解暑(せいねつげしょ)」という働きを持った食材です。

代表的なのがウリ科の野菜で、ゴーヤ(にがうり)やキュウリ、冬瓜など。冬瓜は冬の文字が入っていますが、旬は夏です。スイカやメロンはウリ科の果物で、これらも体の熱を取ってくれます。

他には、トマト、ナス、セロリ、豆苗、空心菜など。緑豆はそのままとるのがいちばんですが、緑豆もやしや緑豆春雨でも効果は期待できます。

麺なら蕎麦、お茶はハト麦茶がおすすめです。

これらの食材はこもった熱を冷ます性質が強いので、さらに冷蔵庫で冷やすのはよくありません。生で食べるスイカやキュウリ、トマトは、冷たくするにしても井戸水の温度程度(16~18℃)が良いとされており、基本的には常温で食べてください。

また、こうした食材の体を涼しくする作用は、熱を加えても変わりません。ですから、煮たり焼いたり、温かくしていただきましょう。胃腸の調子が整います。

冷たいアイスや飲み物が疲れの原因に

かつての夏バテといえば、暑さで体がまいってしまうことでしたが、現代では冷やしすぎも問題です。

エアコンでキンキンに冷えた室内で、冷たいアイスを食べたり、冷えた飲み物をゴクゴク飲んだり。実は、これが疲れの原因になるのです。

体は常に一定の体温を保つように働いています。冷たい物をとると、体の中が冷える。すると体は体温を上げるためにエネルギーを使います。つまり、冷たい物をとることで体はエネルギーを消耗し、疲れやすくなります。

また、腸内環境を悪化させるという問題も。腸内の温度は37.5度くらいに保たれています。これは消化酵素や腸内細菌が働きやすい温度です。しかし、冷たいものをとることで、腸内の温度が下がると、消化・吸収力が低下します。冷たい食べ物や飲み物は、夏の食欲不振を助長させてしまいます。

本来、夏場の体は、熱中症にならないように、いつも体の熱を放出するようになっています。ですから、夏の方が体は冷えやすい。そこでさらに冷たい食べ物をとれば、体にとって大きなダメージとなります。

冷たいものを欲しがるのは首から上だけ。首からは下は、冷たいものを欲していないのです。

もちろん、農業や工事現場での作業など、炎天下で体を使っている人が、冷たい物で熱中症予防をするのは必要なことです。しかし、ほとんどは、冷房の効いた電車や車で移動し、冷えたオフィスや家の中で1日の大半を過ごしていますよね。そういう生活では、冷たい物が体の毒になります。

とはいえ、やっぱりアイスが食べたいときもあるもの。その場合は、食べた後に熱いお茶やスープを飲むなどしましょう。お腹を温めることで、冷たい物の影響をやわらげることができます。

食欲がないからと麺類を食べがちですが、これも冷たい麺でなく、温かい麺を。そうめんなら、煮麺(にゅうめん)がいいですね。

なお、先に紹介した熱を取る食材も体を冷やすのでは?と思われるかもしれません。しかし、清熱解暑の食材は、体の余分な熱を取ってくれますが、健康を害することはありません。

一方、冷蔵庫や氷で冷やしたものは、体温よりはるかに温度が低く、過剰に熱を奪います。胃腸を弱らせ、疲れをまねき、代謝が落ちて太りやすくなったりもします。人の歴史の中でごく最近登場したものですから、人の体に合っていないのです。

汗をしっかりかいていますか?

夏の養生のひとつが、汗をかくことです。ベタベタするからとイヤがられますが、汗をかかないと、熱が体内にこもってしまいます。そのまま秋の乾燥シーズンに入ると、うるおいを失い、乾燥によるかゆみや咳といったトラブルにつながります。

夏場に汗をかいて熱を発散するのは、秋に向けた養生なのです。夏は汗をかかなければいけない季節と心得てください。

中医学の古典では「夏は好きな人が外で待っているかのように、外に出て過ごしましょう」ということが書いてあります。

1日1回は外に出て汗をかきましょう。昼間の暑い時間でなくていいので、午前中や夕方以降に散歩するなどして、軽く汗をかくよう心がけてくださいね。

この時期はどんどん活動するのが養生

もうひとつ、夏は活動することで体が元気になる季節でもあります。太陽からエネルギーをたくさんもらって体が盛んになるんです。

ところが今は、酷暑のせいで、外に出るのがつらいですよね。

でも活動というのは、外で体を動かすことばかりではありません。人と会うことだって活動です。話したり、笑ったりして、旺盛なエネルギーをどんどん使いましょう。夏は、部屋でひとり鬱々としていてはいけません。

活動してエネルギーを使い、汗をかく。冷房で体が冷えたら風呂で温まり、冷たい物は控える。いまどきの夏に対応しながら、何千年も続く人間の体のサイクルに合わせて、夏を元気に過ごしてください。

櫻井大典

櫻井 大典

漢方コンサルタント、国際中医相談員、日本中医薬研究会会員。
アメリカ・カリフォルニア州立大学で心理学や代替医療を学び、帰国後、イスクラ中医薬研修塾で中医学を修める。漢方セミナーを開催し、年5000件以上の相談を受けて漢方での健康づくりの普及に務めている。プライベートでは、好きな和菓子や夜更かしの楽しみと養生を両立。趣味のバイク一人旅は、愛娘のイクメン作業優先で自粛中。著書に『まいにち漢方―体と心をいたわる365のコツ 』『病気にならない食う寝る養生』『二十四節気の暦使い暮らし』など多数。

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撮影(トップ画像)/長谷川梓

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