漢方の基礎知識10「一般的な診断方法の紹介(証)」

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一般的な診断方法の紹介(証)

中医学による診断方法(四診)

みなさんは、漢方の診断方法についてどれくらいご存知でしょうか?漢方には、独特な診断方法があり、これを「四診」(ししん)といいます。診断するものの一部に、顔の色や声の出し方、体臭などがあります。例えば、顔色が悪いのは血の流れが悪くなっている。声が小さいのは気(エネルギー)が不足しているなどです。これらは、1つの診断方法だけではなく、複数の診断方法で得た結果を合わせることにより病気の原因や治療法を調べます。

四診の中で、舌診をしているイメージ

四診とは

四診には、望診(ぼうしん)・聞診(ぶんしん)・問診(もんしん)・切診(せっしん)の4つがあります。望診とは、目で視る診断方法です。聞診とは耳と鼻を使って音を聞いたり匂いをかいだりします。問診とは患者もしくは家族からその人の症状を聞き取ります。切診とは、患者の脈やお腹を触診します。
これらの診断方法で得た情報をいろいろな角度から総合的に診断します。
例えば、不眠といってもひとつの症状だけではありません。例えば、イライラして眠れない、眠いけれど眠れない、夜中に目が覚めるなどさまざまな症状があります。不眠の原因を気血水で考えた場合、気虚・気滞・血虚などのタイプにわけることもできます。

四診の順番は、基本的に問診→望診→聞診→切診ですが、この順番は重視されておらず、総合的に判断することが大切だと考えています。それでは、具体的に四診についてひとつずつ説明をしていきます。

望診とは

望診とは目で見る診断方法です。望診は、基本的に体型・姿勢・表情・動作・精神状態などをみます。また、皮膚・髪・耳・目・鼻・口・舌などの色や状態なども確認します。望診には、さまざまな診断方法がありますが、今回は代表的な診断方法について紹介をします。

・精神状態を判断する
目の状態や顔色・意識・呼吸・言語などで判断します。健康な状態は、顔色は血色があり、目に輝きがあり、意識・言語ははっきりとし、呼吸は整っています。精神状態には4つの種類があると考えています。

精神状態
得神(とくしん) 血色がいい。目が輝く。動きは鋭敏。精神ははっきり。呼吸は穏やか。
少神(しょうしん) 血色が悪い。目の動きは遅い。精神はぼんやり。呼吸は浅くて弱い。
失神(しっしん) 血色は明るい。目は閉じる。精神は昏迷。呼吸は弱い。
仮神(かしん) 血色は突然赤くなる。突然起きる。一時的に興奮状態になるが予後不良

・顔色を観察する
皮膚の色には、大きく分けて青・赤・黄・白・黒の5つあります。健康な人は顔色が明るく、皮膚にツヤがあり潤っています。顔色は五臓のどこにどんな異常があらわれているかを判断します。

顔色 五臓 特徴
寒証・瘀血・気滞
熱証
水滞・脾気虚
気虚・血虚
気滞・瘀血・寒証

寒証:カラダに寒邪が侵入することによって冷え・下痢などが起こる状態です。
熱証:カラダに熱邪が侵入することによって発熱・便秘などが起こる状態です。

・舌の状態や色を観察する
漢方では、舌は内臓を映し出す鏡ともいわれており、望診の中でも特に重要な診断方法だと考えています。舌は、色や苔の状態だけでなく、形や動きなどでも判断します。健康な舌の状態は、淡い紅色で舌に薄い苔がついています。舌を出したときにゆがんだり、震えているのは、高熱や気血が不足しているなど異常がある状態と考える場合があります。舌の状態には多くの診断方法がありますが、今回は一部の色や状態を紹介します。

・大きくてはれぼったい
カラダの中に水分が滞っている状態です。むくみ・めまい・頭痛などの症状が起こります。

・舌のふちに歯型がついている
気(エネルギー)が不足している状態です。胃腸が弱っていたり、疲れが溜まっている場合もあります。

・舌が薄くやせている
気血が不足している状態です。疲れがたまり、カラダの栄養も不足しています。

舌の状態は次のような体質を診断することができます。

色や状態 体質
淡白 気虚・血虚・寒証
熱証
青紫 気滞・瘀血
苔の状態 体質
寒証
熱証
寒証

・排泄物を観察する
鼻水・涙・痰・尿・便などカラダから排出されるもので診断する場合があります。それぞれの排出物が水のような状態なのか、粘ってるのか、量はすくないのかなどでカラダの状態を判断します。診断するには次のようなものがあります。

排泄物 体質
鼻水 寒証:薄くて水のよう 熱症:黄色くて粘り気がある
涎(よだれ)と唾(つば) 寒証:薄くて水のよう 熱証:粘り気がある
熱証:黄色くて粘り気がある 寒証:白く薄い

聞診とは

患者の声の大きさや高さ、呼吸・咳などの音を聞いたり、口臭・体臭などの臭いで判断することもあります。診断方法には次のようなものがあります。

体質
大きい場合は実証で熱証 小さい場合は虚症で寒証
呼吸 弱い場合は気虚、荒い場合は実証・熱証
体臭 口臭・体臭は胃の熱証

問診とは

患者もしくは患者の家族から症状や普段の生活習慣などをくわしく聞く方法です。診断する側は、患者の現在の状態だけでなく、普段の生活習慣やどんなものを好んで食べるのかなどをくわしく聞き取ることが大切です。漢方では、自覚症状を聞き取ることが重要だと考えており、時間をかけてひとつひとつの症状を問診票などに控えながら、他の診断で得た情報を組み合わせることにより、病気の原因や治療法を検討します。
問診には、次のような方法があります。

1.本人の名前・年齢・性別・身長・体重・職業など基本的なことから始めます。
2.現在の症状・既往歴・家族歴などや、現在飲んでいる薬やいつからその症状が起きているかも聞きます。家族歴は遺伝や体質などを知ることができます。
3.本人の体質について聞きます。女性は生理やおりものについても聞きます。

診断するものには次のようなものがあります。

寒熱 寒気がある。発熱がある。
汗がでない。汗がひどい。寝汗がでるなど。
痛み 痛みの頻度や度合い。激痛・針の刺すような痛み、冷えて痛いなど。
便・尿 便秘。トイレの回数が多い。尿量が増加するなど。
睡眠 眠れる。眠れない。入睡困難、中途覚醒など。
食欲 食欲がない。食べる量が少ない。よく食べるなど。
口渇 喉が乾く。水を飲みたくないなど。
運動 運動をする。ほとんど動かないなど。

切診とは

切診には、患者の脈(脈診)または直接患部に触れる「按診」(あんしん)があります。脈診は、患者の手首に3本の指をおき、脈を押さえながら、脈の速さや強さ・カラダの寒熱・皮膚の状態などを診断します。脈診は、医師や鍼灸師などの専門家が診断する方法です。按診はお腹で診断することが多く、触る・なでる・押さえることにより、痛みや塊がないかを確認します。按診もカラダの寒熱や皮膚の状態などを知ることができます。

漢方では、カラダの状態を診断する方法には四診といった4つの方法があります。もし、体調を崩している方は、顔色や舌の色なども確認してみてはいかがでしょうか?ただし、漢方の診断は簡単にできるものはありますが、総合的に判断するのはとても難しいと考えられています。つらい症状が続く場合は、専門家の診断を受けることをおすすめします。




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