のど(喉)が痛いとき、
どうすればいい?
原因と痛みを和らげる方法
最終更新日 2025年05月21日
目次
風邪の時、のどが痛くなった経験はありませんか?
「のどが痛い」というのは、風邪のサインとして感じられる代表的な症状です。
ここでは、のどが痛くなる原因や、のどの痛みを和らげる方法を紹介します。
のどの構造と役割
まず、のどの構造と各部位の役割について解説していきます。
のどは、鼻の奥の鼻腔(びくう)から口の奥を通って食道や気管までの部位のことで、咽頭(いんとう)と喉頭(こうとう)からなっています。咽頭は鼻腔側から、上咽頭、中咽頭、下咽頭と呼び、食道へとつながる食べ物や飲み物の通り道で、嚥下の機能を担っています。
一方、喉頭は下咽頭の手前側、のどぼとけの付近にあり、咽頭から分かれて気管につながる空気の通り道で、呼吸の機能を担っています。喉頭には、食べ物が通る時に蓋の役目をする喉頭蓋(こうとうがい)があり、空気の通り道を確保し、食べ物が気管の方に間違って入らない仕組みになっています。また、声を出す器官である声帯があり、発声の機能を担っています。つまり、のどは、鼻と口から気管と食道までの通り道のような構造で、呼吸と嚥下と発声という3つの役割があります。
のどの機能

のどの痛み、原因は?
では、ここから、のどが痛くなる原因について具体的にみていきましょう。
のどが痛くなる原因
ウイルス・細菌感染
のどが痛くなる原因の多くは、ウイルスや細菌の感染症、いわゆる風邪です。ウイルスや細菌を含む飛沫を鼻から吸い込んだり、手や食物に付着したウイルスや細菌が鼻や口から入ることで起こります。鼻水や咳、痰をともなうことが多いですが、炎症が全身に広がることで頭痛、発熱、関節痛など、さまざまな症状が起こります。
また、のどの奥の扁桃に存在するさまざまな免疫細胞がウイルスや細菌などの外敵を取り込むと、免疫を発動して炎症反応が起こり、扁桃炎となります。扁桃が赤く腫れて大きくなり、ものを飲み込むときなどにのどが痛くなるのです。
のどが痛くなる場合、多くはウイルス感染によるもので、細菌感染は成人の場合約10%程度と いわれています。感染源のウイルスや細菌の種類によって症状や重症度が異なりますので、水分や食事も摂れないほど強い痛みがある場合には注意が必要です。
| ウイルス・細菌 | 特徴 |
|---|---|
| ライノウイルス | 風邪の原因として一般的なウイルス。のどの痛みや咳、鼻水、くしゃみなどの症状がみられる。 |
| RSウイルス | 2歳までの乳幼児の多くが感染するウイルス。発熱、鼻汁などの症状から気管支炎や肺炎を引き起こす場合がある。 |
| コロナウイルス(新型コロナウイルスは除く) | 風邪の原因としてライノウイルスに次いで多い。ほとんどの子どもが小さいうちに経験する風邪で鼻やのどに軽い症状がある。 |
| エンテロウイルス | 夏を中心に流行するウイルスで、風邪や咽頭炎、急性気管支炎などを引き起こす場合がある。 |
| パラインフル エンザウイルス |
秋に流行する型と、春から夏にかけて流行する型があり、微熱や鼻やのどの風邪の症状を引き起こす。 |
| アデノウイルス | 冬から夏にかけて多く、鼻炎、咽頭炎、扁桃炎などの気道炎の他、結膜炎や気管支炎、肺炎などを引き起こす場合もある。 |
| インフルエンザ ウイルス(A型、B型、C型) |
鼻やのどなどの上気道の粘膜に感染して起こる。高熱や筋肉痛、関節痛などの全身症状を引き起こす。 |
| A群レンサ球菌 | 学童期の子どもを中心に大人までかかる感染症で、急性咽頭炎や中耳炎、肺炎などを引き起こす場合がある。 |
のどの乾燥
咽頭や喉頭の表面は薄い粘膜に覆われているため、うるおっていれば粘膜が傷つきにくく、外敵の侵入を防ぐことができます。しかしのどが乾燥するとウイルスや細菌などが付着しやすくなり、炎症が起きて、のどの痛みや違和感の原因になることがあります。乾燥によるのどの痛みは一時的な場合もありますが、免疫が低下していると咽頭炎や扁桃炎に進むこともあります。
のどへの強い刺激、酷使
煙草に含まれる有害物質やアルコール、からい食べ物や熱い飲み物など、強い刺激にのどがさらされると、のどの粘膜に炎症が起きて痛みの原因になります。また、何時間も歌ったり、スポーツ観戦やライブ鑑賞などで長時間大きな声で声援を送ったりするなど、のどの酷使も痛みの原因になります。
のどの痛みを引き起こす病気
のどの痛みを引き起こす病気の代表は、ウイルスや細菌などの感染による、いわゆる「かぜ」です。
鼻水や発熱、痰や咳をともなうこともありますが、一般的には数日で回復します。
かぜといっても診断としては、腫れや炎症の起きている部位や程度によって、のどの粘膜が腫れた「咽頭炎」、扁桃が腫れて大きくなった「扁桃炎」、扁桃炎の炎症が広がると「扁桃周囲炎」、さらに扁桃に膿がたまっていれば「扁桃周囲膿瘍」、喉頭が腫れた「喉頭炎」、喉頭蓋が腫れた「喉頭蓋炎」などがあります。
のどの強い痛みに加えて、水や唾液を飲み込むだけでも強い痛みがあったり、のどの腫れが強く呼吸が苦しくなったりする場合などもあります。
咽頭炎(いんとうえん)
のどの腫れや痛み、発熱、声のかすれ、首のリンパ節の腫れ、咳やたんなどの症状を起こします。
十分な睡眠と栄養を摂り、室内を加湿して防いで安静に過ごしましょう。のどの炎症の悪化を防ぐため、刺激物を避けてのど越しのよい食事をとることが大切です。一般的には1週間程度で治りますが、症状が長引く場合、他の病気の可能性があるため、早めに医師に相談しましょう。
扁桃炎(へんとうえん)
のどの痛みや飲み込む時の痛み、あごの下や頚部のリンパ節の腫れ、耳の痛み、発熱やだるさなどの症状があります。しっかりと休養をとることが大切で、のどの痛みや腫れをやわらげるためにも、水分補給を心がけます。
のどの痛みがある場合は、アルコールや喫煙、入浴は避けたほうがよいでしょう。症状が改善しない場合は医療機関を受診しましょう。
扁桃周囲炎(へんとうしゅういえん)
扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうよう)
扁桃周囲炎では、口の天井の軟らかい部分にある軟口蓋やのどの奥にある扁桃が赤く腫れ、強いのどの痛みや飲み込みにくさ、発熱などの症状があります。
扁桃周囲炎が悪化すると扁桃周囲膿瘍になり、扁桃の腫れがさらにひどくなって膿がたまり、口蓋垂が片側に寄ることがあります。激しいのどの痛みや発熱、口臭、飲み込む時の激しい痛みがあり、耳まで痛みが広がることがあります。
また、咀嚼筋がけいれんし口を開けにくくなることもあります。治療は抗菌薬の投与をおこないますが、扁桃周囲膿瘍の場合は膿瘍を針で刺す、あるいは切開をして膿を出す必要があるため、医療機関での診察・検査が必要です。
喉頭炎(こうとうえん)
喉頭炎になると、声がかすれ、のどに違和感などが生じます。悪化すると、のどの痛みや飲み込みにくさ、発熱や全身のだるさの症状が現れることがあります。
のどに症状がある時は、会話を控えてのどを休め、多めに水分補給しのどを保湿すると症状がやわらぎます。症状が数週間続く場合は、他の重篤な病気が隠れている可能性があるので、医療機関で診察を受けましょう。
喉頭蓋炎(こうとうがいえん)
激しいのどの痛みや発熱、飲み込みにくい、よだれなどの症状がありますが、症状が出るまで時間がかかります。のどの奥にある喉頭蓋が腫れて気道がせまくなると、ヒューヒューといった呼吸音を生じ、悪化すると呼吸困難に陥ることもあります。飲み込めないほどのどが痛い場合や息苦しさを感じる時は救急外来に受診をしましょう。
その他
花粉症や食物アレルギーなどによって、のどがヒリヒリと痛くなることがあります。また、「喉頭がん」や声帯の上方にできる「声門上がん」でも、のどの違和感や異物感、のどの痛み、いがらっぽさや声がれなど、風邪に似た症状が出る場合があるので注意が必要です。
その他、のどの逆流する「逆流性食道炎」によって、胃酸がのどの粘膜の炎症を起こし、痛みを生じることがあります。これらの症状が長引く場合や、特に強い痛みや違和感がある場合は早めに医療機関を受診しましょう。
のどの痛みを和らげるには?
のどの痛みはつらいものです。ここでは、のどの痛みをやわらげる方法を紹介します。
医療機関で医師の診察を受ける
高熱がある、のどの痛みが強く水分や食べ物の摂取ができない、のどがふさがるほど腫れて息が苦しい、ひどい咳や痰が多い、その他関節痛、頭痛、強い倦怠感などの症状がある場合には、医療機関で医師の診察を受けましょう。
中咽頭は口を開けてみることができますが、上咽頭、下咽頭、喉頭は内視鏡を使って診察します。かかりつけの内科で相談し、必要に応じて耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。
のどを刺激しない、
負荷をかけない
のどが痛い時には、のどを刺激しないようにタバコなどの刺激物を控え、大声を出したり、声を使い過ぎたりしてのどに負荷をかけないことが大切です。
タバコを吸わない人も副流煙でのどを刺激することがあるので気をつけましょう。
保湿する、乾燥させない
のどが痛い時には、保湿することが大切です。加湿器や濡れたタオルを部屋に干すなどして部屋の湿度を上げたり、マスクをしたりして保湿しましょう。
湿度の低い冬の外出時などは、口元を覆うようにストールを巻くのもおすすめです。こまめな水分補給やうがいも効果的です。
内服薬、外用薬を使う
のどの痛みが強い時には医師に相談したうえで、消炎鎮痛作用のある内服薬を服用するという選択肢もあります。痛み止めを飲むのは対症療法ですが、のどの痛みが強いと、水分や食べ物も摂ることができなくなり、脱水や体力によって、症状が悪化することもあるからです。
頭痛や発熱の時に使う解熱鎮痛剤や市販の風邪薬にも消炎鎮痛作用のある成分が配合されているので、用法用量に従って服用しましょう。
ここでいう外用薬というのは、トローチやうがい薬などのことです。
のどに塗るタイプやスプレーするタイプもあります。
いずれも、のどの粘膜を保護する作用や炎症をやわらげる作用のある成分が配合されている物が多い傾向にあります。
いずれも使用方法に従って使うようにしましょう。
漢方薬・生薬製剤を活用する
のどが痛い時や、痰や膿が気になる時は、漢方薬や生薬製剤を活用するのもおすすめです。ただし症状が重篤な場合や長引く場合は自己判断せず、ただちに病院を受診してください。
| 処方名 | 構成生薬 | 効能と はたらき |
|---|---|---|
| 銀翹散(ぎんぎょうさん) |
薄荷、 牛蒡子、 淡豆鼓、 金銀花、 連翹、 淡竹葉、 荊芥、 桔梗、 甘草 |
《 効能 》 かぜによるのどの痛み・口(のど)の渇き・せき・頭痛
《 はたらき 》
銀翹散はのどの痛み、口が渇いて水が飲みたくなるといった症状に合います。かぜの症状が出はじめた時に服用する点では葛根湯と同様ですが、さむけのあるかぜに葛根湯が効くのに対し、のどが痛いタイプに銀翹散は適しています。のどの痛みがでやすい時期は、乾燥する冬だけでなく、エアコンを多用する夏は、部屋が乾燥しすぎている場合があるため、湿度の調整も大切です。 |
| 麦門冬湯(ばくもんどうとう) |
麦門冬、 粳米、 大棗、 半夏、 人参 、 甘草 |
《 効能 》 体力中等度以下で、たんが切れにくく、ときに強くせきこみ、又は咽頭の乾燥感があるものの次の諸症:からぜき、気管支炎、気管支ぜんそく、咽頭炎、しわがれ声 《 はたらき 》 麦門冬湯は、気道の潤い不足に対し気道液に含まれる漿液などの分泌を促進することで、水分や飴などでは潤しにくい気管支まで潤し、長引くせきやからぜきに効果的な漢方薬です。 |
| 甘草湯(かんぞうとう) | 甘草 |
《 効能 》 激しいせき、咽喉痛、口内炎、しわがれ声 《 はたらき 》 甘草湯は「甘草」という生薬ひとつで構成されており、のどの粘膜を潤し、痛みを和らげてしわがれ声などに効果的な漢方薬です。 |
| 桔梗石膏(ききょうせっこう) |
桔梗、 石膏 |
《 効能 》 去痰、排膿 《 はたらき 》 桔梗石膏は炎症を鎮めて痰を取り除くのに効果的です。 |
こんなのどの痛みには?
症状別の対処法
のどがむずむず、イガイガする
のどがむずむず、イガイガする時は、部屋の保湿とともにこまめなうがいや水分補給を心掛けましょう。また、のど飴でのどを潤したり、医師、薬剤師、または登録販売者に相談のうえ、殺菌・抗炎症成分の入ったトローチやのどスプレーを利用したりするのも効果的です。
唾液やものを飲み込むと痛い
唾液やものを飲み込むときに痛む時は、医師に相談のうえ、抗炎症成分が含まれているのどスプレーやのどの痛みや炎症を抑える市販薬を使うのも有効です。
ただし、発熱や首のリンパ節の腫れなどがみられる場合は細菌に感染している可能性があるため、無理をせずに医療機関を受診しましょう。
声がかれる、出しにくい
のどに炎症があり、声がかれたり出しにくい時は、無理に声を使わないようにしましょう。また、こまめにうがいをし、のど飴をなめるなどしてのどを潤すようにしましょう。
症状が長引く場合は、病気が隠れていることがあるため、早めに医療機関を受診しましょう。
咳がひどい、痰がからむ
咳がひどく痰がからむ時は、部屋の湿度を高め、栄養価の高い食事やこまめな水分補給を心がけます。症状が長引き、さらに悪化していく場合は、何らかの病気を引き起こしている可能性があるため医師に相談することをおすすめします。
のどが痛いときの食事
(食べ物・飲み物)は?
01 消化が良く、飲み込みやすいものを選ぶ
のどの痛みがある時はのど越しがよく、飲み込みやすい食べ物を選ぶとよいでしょう。
ゼリーやヨーグルト、プリン、アイスクリーム、茶碗蒸しやスープ、バナナなどの、やわらかで口当たりがよく消化に良いものであれば、のどに刺激が少なく食べやすくなります。
硬い野菜や肉類は細かく刻む、あるいはやわらかく煮ることで、のどが痛くても食べやすくなります。
02 水分と栄養を補給する
のどの炎症を抑え、免疫力を維持するためには、栄養バランスの良い食事を摂ることが大切です。のどの粘膜の健康維持に役立つビタミンAやビタミンB群、ビタミンCなどを含む食べ物をとるようにしましょう。
スポーツドリンクやスープなどで水分を十分に補給すると、のどの粘膜が潤い、痛みの軽減にもつながります。
03 のどを刺激するものは避ける
香辛料やからいもの、酸味の強いもの、硬いものなど、のどに刺激を与える食べ物は避けるようにします。
また熱すぎたり冷たすぎたりする食べ物ものどへの刺激になるので、適温のものをゆっくりとるようにしましょう。
04 アルコールやカフェイン飲料は控える
アルコールは刺激が強く、のどの粘膜をいためることがあります。またアルコールを体内で分解する時に体から水分が奪われ、のどの乾燥を引き起こす可能性があります。
利尿作用のあるコーヒー、お茶などのカフェイン飲料も体の乾燥を招くため、のどに痛みがある時は控えたほうがよいでしょう。
05 のどが痛いときにおすすめの食べ物
はちみつ
はちみつには殺菌作用や、のどの炎症を軽減する作用があるといわれています。消化吸収が良く、風邪で体力が弱まっている時の栄養補給にもおすすめです。はちみつをお湯に溶かして飲んだり、ヨーグルトにかけたりすると、手軽に補給できます。
ただし、ハチミツは乳児ボツリヌス症のリスクがあります。1歳未満の乳児の摂取は避けてください。
生姜
生姜には抗炎症作用のある成分が含まれており、のどの痛みの緩和に役立つといわれています。スープやうどんなどに生姜を加えることで体が温まりやすくなります。
りんご
りんごは粘膜の健康維持に役立つビタミンCや殺菌作用、抗菌作用があるとされているカテキンが多く含まれています。のどが痛い時は、りんごをすりおろすと食べやすくなります。
大根
大根の葉の部分には、粘膜の健康維持に役立つビタミンCが多く含まれています。また、大根に含まれるイソチオシアネート等の成分は抗炎症作用と殺菌作用があるため、のどの炎症を和らげる効果を期待できます。
大根おろしにしたり、やわらかく煮てスープにしたりするのもおすすめです。
ネギ
ネギには殺菌作用や抗炎症作用のあるアリシン等の成分が含まれており、のどの痛みがある時におすすめの食材です。細かく刻んで味噌汁に入れたり、おかゆに少しのせたりするとおいしく食べられます。
まとめ
のどの構造や機能、のどが痛くなる原因を知ることで、のどが痛くなった時の対処や普段ののどのケアにつなげることができます。ただし早期診断や早期治療が必要な場合もあるので、必要に応じて医療機関を受診するようにしましょう。
山原佳代
大学を卒業後、医療機器メーカー、広告代理店等を経て、メディカルライターとして活動。化粧品・医薬部外品、健康食品、医薬品等の広告物作成のほか、製薬会社や医療機関、大学、研究機関への取材に基づくライティングの実績多数。



