漢方について知る

漢方薬の種類と選び方は?
常備におすすめの漢方薬も症状別で紹介

漢方薬を自身の体や症状に合わせて使いたい人も少なくないはず。この記事では、漢方薬の特徴・西洋薬との違いや、漢方薬を選ぶ際の考え方、服用時の注意点などを解説していきます。症状別に常備しておきたい漢方薬も紹介しているので、ぜひ役立ててください。

「漢方」「漢方薬」とは? そのルーツとは?

「漢方」とは鍼灸や食養生も含めた医学を意味しており、「漢方薬」は、漢方医学の理論に基づいて処方される医薬品のことです。

漢方とは、古来、中国から伝わり、日本において発展してきた日本の伝統医学。もともとは中国生まれで、当初日本では、中国医学をそのまま受け入れていましたが、次第に診断法や漢方薬の選び方などをもっとわかりやすく、日本人の体や気候に合わせて日本流に改良することが行われ、独自の発展をとげてきました。

「漢方」という言葉が定着したのは、江戸時代後期のあたり。長崎から入ってきたオランダ系医学、「蘭方」に対する呼び方として使われるようになったといわれています。明治以降は、西洋医学に対して、中国医学を土台にした伝統的な日本の医学を「漢方」と呼んでいます。

「現在日本で用いられている「漢方薬」は、長い歴史の中で生薬の種類、量、組み合わせなどが工夫されて、薬として確立されたものです。また、薬として確立されたものは、「処方」とも呼ばれます。

漢方薬の特徴とは?

漢方薬は生薬を組み合わせたもの

漢方薬は、原則として2種類以上の生薬を、決められた分量で組み合わせて作られたものです。生薬(有効成分)のはたらきにより、複数の症状や慢性的な症状などに効果を発揮します。なお、漢方薬には多くの種類がありますが、日本で一般用漢方製剤として承認基準が制定されているものは294処方、医療保険の適用のある処方が148処方あります。


西洋薬との違い

西洋薬には人工的に化学合成された物質がほとんどで、その多くはひとつの成分で構成されており、ひとつの疾患やひとつの症状に強い薬理作用を示します。

それに対し、漢方薬は天然の生薬を使用し、ひとつの処方は原則として2種類以上の生薬で構成されていますので、多くの成分を含んでいます。そのために、ひとつの処方でいろいろな病状に対応することができます。また、漢方薬は、原因の特定できない慢性の病気、体質がからんだ病気に向くことが多いとされます。しかし、病気の原因が特定でき、原因別の治療が可能な場合や手術が必要な場合、緊急を要する疾患、重症の感染症などには一般的に西洋医学のほうがすぐれていると考えられます。

漢方薬の種類

煎じ薬

生薬に含まれる有効成分を熱湯で煮出すことを煎じると言います。煮出したスープ状の薬汁が煎じ薬になります。煎じ薬は、煎じるのに時間がかかるほか、独特の味や香りがあって飲みにくいと感じる人も多いようです。


エキス製剤

エキス剤は、生薬を煎じ、濃縮して水分を除いて微粉末のエキスを製剤化したもので、錠剤や顆粒などがあります。

漢方薬は一人ひとりの体質・症状に合わせて選ぶ

体質や抵抗力などを知るための「証」

漢方では、病気にかかっている人の状態を、体質、病気の状態、環境など、さまざまな角度からとらえ、「証」に基づいて治療します。「証」とは、ひとことで言えば、「病気の人が表すさまざまな症状や訴えのなかから、関連があるものを症候群としてとらえたもの」です。

「証」には、虚と実、寒と熱などがあります。「虚証」は、力が足りない状態で、体力が弱って病気への抵抗力が落ちている人です。「実証」は、力が余る状態で、体力があって病気への抵抗力が強めの人です。一方、「寒証」は、熱が足りていない状態で、寒気や冷えを感じる人です。「熱証」は、熱がたまった状態で、ほてりやのぼせを感じる人です。

このような「証」に基づいた治療は、漢方独自のもので、西洋医学との大きな違いでもあります。「この証には…この漢方薬が最適」という処方があります。そのため、同じ病気でも異なる漢方薬を使うこともありますし、違う病名であっても、病気の原因が共通している場合は、同じ漢方薬を使うこともあります。


体の不調・症状の原因を探る「気・血・水」

漢方では、人の体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3つで構成されていると考えられています。「気」は目には見えないが人の体を支えるすべての原動力のようなもの、「血」は全身の組織や器官に栄養を与えるもの、「水」は飲食物中の水分からできた、体をうるおすもののことです。この3つは、お互いに影響しあっています。大切なのは、この3つがバランス良くめぐっていることです。どれかが多過ぎても少な過ぎてもいけません。

水は流れ、温めれば蒸発する。重いものは下へ行き、軽いものは上へ行く。そんな自然の摂理を体のはたらきに当てはめ、バランスを調節するのが漢方です。その人にとって本来の“ちょうどいい”状態に戻していきます。

漢方薬を服用する際の注意点とは?

2種類以上の漢方薬を同時に飲んでもよい?

漢方薬は何種類かの生薬を特定の比率で組み合わせて作られています。それぞれ別の漢方薬を混ぜてしまうと、別の薬になってしまいます。そのため、むやみに複数の薬を飲むと成分が重複してしまい副作用が出やすくなったり、思わぬ作用が現れたりするおそれがあります。自己判断で、複数の薬を飲まないようにしましょう。詳しくは医師、薬剤師または登録販売者に必ず相談しましょう。


漢方薬と西洋薬は併用しても大丈夫?

西洋薬の成分が漢方薬と重なった場合、とくにカンゾウ、マオウ、ダイオウ、ブシなどが含まれている漢方薬は注意する必要があります。漢方薬に関しては、副作用が少ないと思いがちですで、成分の重なりにはとくに注意しましょう。詳しくは医師、薬剤師または登録販売者に必ず相談しましょう。

【症状別】常備しておくのにおすすめの漢方薬

風邪の症状におすすめの漢方薬

「葛根湯(かっこんとう)」
体力中等度以上のものの次の諸症:感冒の初期(汗をかいていないもの)、鼻かぜ、鼻炎、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛み

「麻黄湯(まおうとう)」
体力充実して、かぜのひきはじめで、さむけがして発熱、頭痛があり、せきが出て身体のふしぶしが痛く汗が出ていないものの次の諸症:感冒、鼻かぜ、気管支炎、鼻づまり

「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」
体力中等度又はやや虚弱で、うすい水様のたんを伴うせきや鼻水が出るものの次の諸症:気管支炎、気管支ぜんそく、鼻炎、アレルギー性鼻炎、むくみ、感冒、花粉症


ストレスや不眠におすすめの漢方薬

「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」
体力中等度をめやすとして、気分がふさいで、咽喉・食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う次の諸症:不安神経症、神経性胃炎、つわり、せき、しわがれ声、のどのつかえ感

「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」
体力中等度以上で、精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う次の諸症:高血圧の随伴症状(動悸、不安、不眠)、神経症、更年期神経症、小児夜泣き、便秘

「桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)」
体力中等度以下で、疲れやすく、神経過敏で、興奮しやすいものの次の諸症:神経質、不眠症、小児夜泣き、夜尿症、眼精疲労、神経症


便秘などお通じ改善におすすめの漢方薬

「乙字湯(おつじとう)」
体力中等度以上で、大便がかたく、便秘傾向のあるものの次の諸症:痔核(いぼ痔)、きれ痔、便秘、軽度の脱肛

「桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)」
体力中等度以下で、腹部膨満感のあるものの次の諸症:しぶり腹、腹痛、下痢、便秘
(注)「しぶり腹」とは、残便感があり、くり返し腹痛を伴う便意を催すものを指します。


生理痛・生理不順などの悩みにおすすめの漢方薬

「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」
体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などを訴えるものの次の諸症:月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、産前産後あるいは流産による障害(貧血、疲労倦怠、めまい、むくみ)、めまい・立ちくらみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷え症、しもやけ、むくみ、しみ、耳鳴り

「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」
比較的体力があり、ときに下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどを訴えるものの次の諸症:月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、血の道症、肩こり、めまい、頭重、打ち身(打撲症)、しもやけ、しみ、湿疹・皮膚炎、にきび
(注)「血の道症」とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状を指します。

まとめ

いかがでしたか? 漢方薬の種類や選び方のポイント、症状別のおすすめ漢方薬などをご紹介してきました。漢方薬を選ぶ際に少しでも疑問に思うことがあれば、医師、薬剤師または登録販売者に相談するようにしましょう!

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