はじめての漢方

はじめての漢方

目次

漢方はどうやってできたの?

漢方薬は天然の生薬の組み合わせ

漢方薬の原料は、草や木、動物など、自然にあるものです。
たとえば、「ショウガを食べると体が温まる」と言われますよね。このような、植物などに備わった力を一つひとつ確かめ、組み合わせてできていったのが漢方薬なのです。
漢方の治療原則は、熱ければ冷まし、冷たければ温める。足りないものは補い、多過ぎるものはとり除く。このようにして、体が本来もつバランスを整えていきます。


日本人に合わせて発展してきた漢方

漢方とは、中国(漢)から伝わった医術という意味。もともとは中国生まれですが、日本にわたってきてから、日本人の体や気候に合わせて独自の発展をとげています。

生薬 イメージ

漢方薬と西洋薬との違い

漢方は“自然な治癒力”を呼び覚まします

漢方薬は生薬でできたもの、西洋薬は科学的に合成した成分でできたもの。もちろんそういった違いもありますが、漢方薬と西洋薬は、“治し方”に対する考え方が違います。
西洋薬の多くは、本来体がすべきはたらきを薬が代わりにするため、そのはたらきが切れると元の状態に戻ってしまいます。
一方、漢方薬は、本来体のもつはたらきを高めるように作用して、体自身の力で正常な状態をつくりだそうとするものです。
そのため、具合が悪く病院で検査をしたが、どこも悪くないといった症例にも対応していくことができます。

自然な治癒力 イメージ

漢方はどんなときにいいの?

「なんとなく不調」に

人生は、晴れの日ばかりではなく雨の日もあります。体も同じで、体調が良い日ばかりとは限りません。とくに女性は、月経や出産などで、一生のうちでも体のバランスが大きく変わり、ついていけずに不調を感じることも多いものです。
病院に行くほどではなくても、「なんとなく不調…」。漢方は、そうした体のバランスの変化に対応し、整えていきます。


どこかひとつだけではない症状に

漢方では、症状ひとつだけを見るのではなく、体全体、その人そのものを見ます。また、体と心はつながっているという考え方から、心のはたらきもその人の一部として考えます。
このことから、一見関係のないように見える複数の症状に、1つの漢方処方で対処できることもあります。
なんとなく、あちこちがしっくりしないというとき、漢方を試してみませんか?

自然な治癒力 イメージ

漢方は“バランス重視”

大切なのは本来のバランス

漢方では、人の体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3つで構成されていると考えられています。「気」は目には見えないが人の体を支えるすべての原動力のようなもの、「血」は全身の組織や器官に栄養を与えるもの、「水」は飲食物中の水分を消化吸収によって人の体に必要な形にして体をうるおすもののことです。この3つは、お互いに影響しあっています。
大切なのは、この3つがバランス良くめぐっていること。どれかが多過ぎても少な過ぎてもいけません。

水は流れ、温めれば蒸発する。重いものは下へ行き、軽いものは上へ行く。そんな自然の摂理を応用し、バランスを調節するのが漢方です。その人にとって本来の“ちょうどいい”状態に戻していきます。

“気”“血”“水” イメージ

漢方薬の上手な選び方

漢方薬は体の状態に合わせて選べます

漢方薬は、症状だけではなく、その人の体の状態によって選べます。たとえば、同じ「冷え症」でも、手足が冷えるのか、足腰が冷えるのか、足は冷えるのに顔はのぼせるのかで、選ぶ薬が違ってきます。
また、その人が本来もっている「気」「血」「水」のバランスによっても、選ぶ薬は違います。「気」が少ない人には「気」を補うように、「血」が少ない人には「血」を補うようにするためです。

大切なのは、その人が本来もっている体のバランス。
ひとつの症状だけで考えず、今の体の状態を考えて選んでみてください。

体の状態 イメージ

漢方にまつわるギモンをまるっと解決! 漢方全般Q&A

Q 「気(き)」とは何ですか?
A 「気(き)」とは、目で見ることのできない一種のエネルギーで、全身をめぐって基本的な生命活動を維持していると考えられています。また、人の体を支えるすべての原動力のようなものとされています。漢方では、「気(き)」の要素に異常が起こったときに、イライラや気分の高ぶり、不眠などが現れるとされています。
Q 「血(けつ)」とは何ですか?
A 「血(けつ)」とは、全身をめぐる栄養素などの循環や、血液の流れなどのことで、全身の組織や器官に栄養を与えるものです。「血(けつ)」の要素に異常が起こった場合は、血行障害によって血が滞った「お血」や月経不順、貧血などが現れるとされています。
Q 「水(すい)」とは何ですか?
A 「水(すい)」とは、血液以外の水分や体液を指すもので、食べ物や飲み物の中の水分を消化吸収によって人の体に必要な形にして、体をうるおすもののことです。「水(すい)」の要素に異常が起こった場合は、水分や体液の偏在によるむくみや排尿障害などをまねくといわれています。
Q 漢方薬は日本でできたって聞きましたが、本当ですか?
A かつて日本は、さまざまな文化・技術を中国から輸入してきました。医学もその一つで、6世紀頃には朝鮮半島を経て、中国の医学が伝えられたといわれています。7世紀以降には、中国の文化とともにいろいろな医学書が輸入されていました。当初、日本では、中国医学をそのまま受け入れていましたが、次第に診断法や漢方処方の選び方などをもっとわかりやすくし、日本人の体や日本の気候に合わせて改良するようになりました。こうして、独自のスタイルとして発展をとげてきたのが、日本の「漢方」です。
Q 「不定愁訴」って言葉をよく聞きますが、どんな症状ですか?
A 「体力がなくなった」「頭が重い」「イライラする」「疲労感が取れない」「よく眠れない」…など自覚症状はあるものの、検査しても原因の病気がみつからないものを“不定愁訴”と呼びます。また、更年期にみられる不定愁訴症状群を更年期障害といいます。女性は更年期になると、卵巣機能が低下して性ホルモンの分泌が減少するようになります。このため、自律神経の失調状態をまねいてしまい、不定愁訴が起こりやすくなるといわれています。
Q 「エキス製剤」って何ですか?
A 生薬を煮出したり、アルコールに浸したりしてエキスを抽出し、顆粒・細粒、錠剤に加工したものをエキス製剤と呼びます。なお、剤形による効果の違いについては、ほとんどの場合は大差がなく、剤形よりも、原料の生薬の質によって優劣が決まるといえるでしょう。