
微熱は何度から?
続く微熱の要因や受診の目安
最終更新日 2025年07月23日
微熱はよくある症状でありながら、体温計の数値だけでは判断しにくく「何度から微熱とされるのか」「どのタイミングで医療機関を受診すべきか」など悩む方も多いでしょう。微熱にはさまざまな原因があり、適切な対処法を知ることで症状の改善につながる場合があります。今回は、微熱について基準や原因、受診するタイミングなどを解説します。
微熱とは?何度から何度までが微熱?
微熱には、はっきりとした基準や定義はありませんが、一般的に37.0℃以上38℃未満が微熱とされています。ただし、医療機関や医師個人の考えで基準はさまざまです。
人間の体温は、1日のうちで時間帯によって高くなったり低くなったりする「日内変動」があり、日内変動の幅は約1℃といわれています。体温は早朝がもっとも低く、午後から夕方にかけて高くなり、夜になると下がり始めます。そのため、体温を測るタイミングによっては、高めの数値になることがあるのです。
平熱・高熱の定義
日本人の平熱は、一般的に36.0℃〜37.0℃とされていますが、体温には個人差があり、平熱が35℃台の低体温の人もいれば、37℃台と高めの人もいます。
発熱の目安として、感染症法では37.5℃以上が発熱、38.0℃以上が高熱とされています。実際の医療現場では、37.5℃以上38.0℃未満を微熱、38.0℃以上39.0℃未満を中等熱、39.0℃以上を高熱と捉えることが一般的です。
微熱が続く原因とは?
微熱が続く原因にどのようなものがあるか、5つのポイントに分けて解説します。
1ホルモンバランスの乱れ
女性においては、女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の影響で、微熱が続くことがあります。
更年期の方の場合、卵巣で作られるエストロゲンの量が少なくなると、脳の視床下部の機能に影響を及ぼします。脳の視床下部には、自律神経をコントロールする働きがあるため、エストロゲンの量が減ると、自律神経のバランスが乱れてしまうのです。
自律神経には、血管を収縮したり広げたりして体温を調整する働きがあり、エストロゲンの影響で自律神経がきちんと機能しない状態になると、微熱を引き起こすことがあります。
一方、月経がある方の場合、高温期に入るとプロゲステロンの分泌量が増えることで、体温が上昇し、体質によっては37.0℃以上の微熱になることもあるのです。
2ストレスや寝不足
ストレスや寝不足によって微熱が引き起こされることがあり、「心因性発熱」と呼ばれています。心因性発熱のメカニズムは、ストレスや寝不足により、自律神経のバランスが乱れて体温調整が困難になるためと考えられています。微熱のほかにも、頭痛や体のだるさなどの症状をともなうこともあるのです。心因性発熱は、感染症による微熱とメカニズムが異なるため炎症反応がみられず、解熱剤が効かないという特徴があります。
3感染症
微熱が続く原因として頻度が高いものは、風邪や新型コロナウイルスなどの感染症です。風邪の大半はウイルスが原因となり、咳や鼻水、胃腸症状などをともなうこともあります。新型コロナウイルスは、乾いた咳・のどの痛みなど風邪によく似た症状から、息苦しさや全身のだるさなど重症化するケースまでさまざまな症状をともないます。
風邪による微熱では、ほかに乾いた咳や吐き気、腹痛などの症状の組み合わせがみられる場合、漢方薬で症状を和らげる方法もあります。
4感染症以外の疾患
感染症以外にも微熱が出る主な疾患は、甲状腺機能亢進症や亜急性甲状腺炎などの甲状腺疾患と、慢性関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの炎症性疾患です。
甲状腺疾患では、微熱のほかに甲状腺が腫れる・脈が速くなる・息切れがするなどの症状をともなうことがあります。慢性関節リウマチでは関節の腫れや痛み、全身性エリテマトーデスでは全身の発疹・関節の痛み・体のだるさをともなうことがあります。
5薬の副作用
服薬中の薬の副作用による「薬剤熱」で微熱が続くことがあります。薬剤熱の特徴は、微熱が出ているわりに元気があることです。薬の種類によって、投与してから数時間以内に発熱する場合もあれば、1~2週間経ってから発熱する場合もあります。原因となる薬は、抗菌剤や抗てんかん薬などさまざまな種類があります。
微熱が続くとき、病院に行くべきタイミングは?
微熱の判断は個人差が大きく、明確な基準もありません。そのため、病院を受診するタイミングは熱だけにとらわれず、総合的な体調で判断しましょう。
微熱が2日~3日で改善して、その後もくり返すことがなければ様子をみても良いですが、微熱が数日以上続いたり、頻繁にくり返したりするときは病院への受診をおすすめします。微熱のほかに、咳・全身のだるさ・食欲不振・腹痛・吐き気などの症状があってつらい場合も、早めに受診すると良いでしょう。
微熱のときに心がけるべき過ごし方
微熱があるときは、体調を悪化させないための過ごし方が大切です。
心がけると良い対処法について5つ紹介します。
良質な睡眠をとり安静にする
微熱があるときは、睡眠を十分にとって安静を心がけましょう。良質な睡眠をとると、免疫細胞の働きを高めて感染症を予防したり、脳や体を休息させて自律神経の働きを整えたりするため、自然治癒力を高めることができます。良質な睡眠をとるために、以下のポイントに気を配ると良いです。
夕食は、就寝3時間前までに済ませる
就寝時間に近くなってから食事を摂ると、寝ている間も消化活動が続くことで、眠りが浅くなることが分かっています。また、夕食は消化に時間のかかる脂っぽいものを控えると良いです。
就寝1時間前からブルーライトを
浴びないようにする
スマートフォンやパソコンから発するブルーライトを浴びると、睡眠ホルモンのメラトニンの分泌を抑えてしまい、睡眠の質が下がります。就寝前は、メールなどの通知をオフにするなどスマートフォンやパソコンから離れる工夫をしましょう。
就寝前のカフェイン飲料
(コーヒー・緑茶など)や
アルコール摂取は控える
カフェインには覚醒作用があるため、寝つきが悪くなります。就寝前のアルコールは寝つきを良くするものの、眠りを浅くするため、睡眠の質が低下します。
寝室に、周囲の音や強い光が
入らないようにする
音が気になって眠れないときは、耳栓や遮音カーテンを活用しましょう。光への対策は、寝室を間接照明にする・アイマスクを着用するなどの方法があります。
水分補給をしっかりする
微熱があるときは、体から水分が奪われて脱水症状を起こしやすくなります。そこで水分補給をしっかりすることで脱水症状を防ぎ、微熱症状からの回復を助けます。脱水症状を防ぐ水分補給のポイントは以下のとおりです。
白湯・水・麦茶など
刺激の少ない飲み物を摂る
さらに汗をかいているときは、水分と一緒に電解質も排出されてしまうため、スポーツドリンクや経口補水液を摂ることもおすすめします。
のどの渇きを感じる前に
こまめに水分補給する
起床時・毎食後・入浴の前後・就寝前など数時間おきに水分を摂ることで、脱水にならないように注意しましょう。
少なくとも1日に1.2L以上の
水分を飲む
健康な成人における1日あたりの必要な水分量は約2.5Lですが、飲み水として補給するのは、食事に含まれる水分量と体内で作られる水分量を差し引いた分の約1.2Lが望ましいとされています。微熱があるときは普段より水分が失われやすいため、必要に応じて水分量を増やしましょう。
感染症による場合①:体を適切に温める
体温が上がると、免疫細胞の働きが活発になり、ウイルスや細菌が増えないようにしたり排除したりします。そこで微熱が出始めたときに適切に体を温めることで、免疫細胞の働きをサポートします。体を温めて効率的に体温を上げる方法と注意点は以下の通りです。
衣服で調節する
体温を調整しやすいように、薄手の羽織ものを重ね着すると良いです。熱が上昇しているときは足元が冷えやすいため、レッグウォーマーや靴下で覆うようにしましょう。
寝具などで調節する
微熱で寒気をともなうときは、布団をかけて体を温めましょう。電気毛布や湯たんぽを活用しても良いです。
汗をかき始めたら熱を逃がす
体が温まり、熱が上がりきると汗をかき始めます。汗が出てきたら薄着になり、熱がこもらないようにしましょう。汗を放置すると体が冷えてしまうため、こまめに着替えると良いです。
感染症による場合②:乾燥を防ぎ、加湿する
空気の乾燥を防いで加湿をすると、粘膜の機能が保たれるため、微熱の原因となる感染症を防ぐとともに、ウイルスや細菌の活性を抑えることができます。エアコンを使用している時や空気が乾燥する季節は、湿度が低くなり過ぎないように乾燥対策をしましょう。
室内でできる対策
加湿器で部屋の湿度を50%〜60%程度に保ち、感染症予防につなげましょう。加湿器が手元にないときは、バスタオルや洗濯物を部屋干しする、入浴後にバスルームのドアを開けておくなど、手軽に部屋を加湿する方法もあります。
屋外でできる対策
秋冬の空気が乾燥する季節は、マスクを着用して鼻やのどの粘膜が乾燥するのを防ぎましょう。のど飴をなめることものどの乾燥対策になります。
漢方薬を活用する
微熱が続くときは、漢方薬で回復をサポートできる場合があります。微熱にともなう症状ごとに、症状の緩和が期待される漢方薬を2つ紹介しましょう。ただし、重篤な症状が現れているときは、自己判断せずに早めに医療機関を受診することをおすすめします。
微熱と咳が続く場合
かぜが治りきらず、微熱や咳込みが続いているときにおすすめするのは、竹葉石膏湯(ちくようせっこうとう)です。
含まれている生薬は、竹葉(ちくよう)・石膏(せっこう)・甘草(かんぞう)・半夏(はんげ)・麦門冬(ばくもんどう)・粳米(こうべい)・人参(にんじん)の7種類で、体に残っている熱を冷まし、のどや気道の粘膜を潤して気管支炎やからぜきを改善します。
吐き気、腹痛をともなう微熱の場合
かぜを悪化させてしまい、微熱のほかに吐き気・下痢・腹痛など胃腸症状もあるときにおすすめするのは、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)です。
含まれている生薬は、桂枝(けいし)・生姜(しょうきょう)・柴胡(さいこ)・黄芩(おうごん)・半夏(はんげ)・芍薬(しゃくやく)・人参(にんじん)・甘草(かんぞう)・大棗(たいそう)の9種類で、体内の熱や炎症を抑えながら、胃腸の働きを整えて、かぜの中期から後期の症状を改善します。
まとめ
微熱は、一般的に37.0℃以上38℃未満とされていますが、個人差も大きく明確な基準はありません。微熱の原因は、ホルモンバランスの乱れ・ストレス・感染症などさまざまあります。微熱が数日以上続く場合や、咳・だるさ・食欲不振などの症状をともなってつらい場合は早めの受診が必要です。症状が軽い場合は、良質な睡眠やこまめな水分補給などのセルフケアで改善が期待できます。竹葉石膏湯や柴胡桂枝湯などの漢方薬も症状をやわらげる選択肢の1つとして活用できるでしょう。微熱は体からの重要なサインです。自分の体調と向き合い、適切な対処をして症状の改善に努めましょう。
加藤 あゆ里
薬科大学卒業後は調剤薬局で20年以上勤務し、在職中は、漢方外来の処方に対して多くの服薬指導を経験。親の看取り・介護を機に、現在は医療・健康分野のライターとして活動中。病気や薬など難しい内容でも、分かりやすく公平な目線で情報発信している。
