かぜについて知ろう!
原因や症状、早く治す方法を解説

最終更新日 2025年05月21日

かぜは1年を通して誰もがかかる可能性のある病気です。同じ「かぜ」でも、原因や症状はさまざまあります。
今回はかぜについて、季節による違いや原因となるウイルス、代表的な症状などを解説します。かぜをひいたときに長引かせないための対処法についても紹介するので、いざというときに知識を役立てましょう。

そもそも「かぜ」とは?

かぜとは、鼻からのどにかけての上気道が急性の炎症を起こした状態のことをいいます。インフルエンザとの違いや季節による違いについてみていきましょう。

かぜとインフルエンザって
どう違うの?

毎年、冬になると身の回りでもニュースでもかぜやインフルエンザの話題で持ち切りになります。この冬は元気に過ごしたい!という皆さんのために、まずはかぜとインフルエンザのメカニズムについてご説明しましょう。

そもそもかぜとインフルエンザはどう違うのでしょうか。かぜの正式名称は「かぜ症候群」といい、そのほとんどはウイルス感染によって引き起こされます。かぜの原因となるウイルスは200種類以上もあり、冬だけでなく夏に子どもたちの間で流行する手足口病やプール熱などもかぜの一種です。

冬に大流行するインフルエンザも、インフルエンザウイルスに感染することで引き起こされるかぜ症候群の一種とされています。ですが、インフルエンザは一般的にかぜと呼ばれているものと異なり、突然38℃以上の高熱が出たり、関節痛や筋肉痛、倦怠感に食欲低下と、全身に症状が見られ、重症化するケースも多くみられます。そのため、一般のかぜ症候群とインフルエンザは区別して扱われています。

一般的なかぜ

  • 病原体

  • ライノウイルス、コロナウイルス、RSウイルスなど、
    かぜの原因となるウイルスは200種類以上

  • 主な症状

    • 37〜38℃台での微熱。インフルエンザのような高熱はあまり
      見られない
    • 鼻水/くしゃみ/咳/喉の痛みなど、症状は局所的
    • 一般的に症状が続くのは、1週間弱。時に長引くこともある
    • 重症化することは少ない

インフルエンザ

  • 病原体

  • インフルエンザウイルス

  • 主な症状

    • 急に38℃以上の高熱
    • 関節痛、筋肉痛などの全身症状+鼻水/くしゃみ/咳などの
      かぜの症状
    • 感染力が強いため、外出は控える
    • 重症化しやすい。急性脳症やひきつけ(小児)、
      肺炎(高齢者)などを引き起こすこともある

かぜやインフルエンザが
冬に流行しやすいのはなぜ?

手足口病やプール熱といった夏かぜの例を除くと、かぜの流行は冬に見られます。それは、かぜを引き起こすウイルスの多くが、15〜18℃の低温かつ乾燥した環境で威力を発揮する性質を持っているため。特にインフルエンザは、一般的なかぜのウイルスに比べて、ウイルスの増殖スピードが早いので、流行の規模も大きくなりがち。インフルエンザは気温が下がり始めた12月前後から発生が始まり、1〜3月にピークとなる傾向にあります。

かぜやインフルエンザが冬に流行しやすいのはなぜ?

夏のかぜと冬のかぜの違いは?

夏のかぜと冬のかぜの違いは、大きく2つに分けられます。

1つは原因となるウイルスの違いです。夏のかぜはアデノウイルスやエンテロウイルスが原因となることが多く、冬のかぜはRSウイルスやコロナウイルスが原因となることが多い傾向にあります。
もう1つは症状の違いです。夏のかぜでは発熱・のどの痛み・胃腸炎が現れやすく、冬のかぜは鼻水・鼻づまり・咳が現れやすくなります。

夏かぜの症状と原因について、詳しくは「夏風邪の症状と原因は?早く治すための対処と予防策」をご覧ください。

かぜをひくのはなぜ?原因となるウイルス

かぜの原因の80~90%といわれているウイルスの主な種類と特徴は以下のとおりです。

主なウイルス 特徴
ライノウイルス かぜの原因の30%〜40%を占める。秋や春に多く、くしゃみ・鼻水・鼻づまりなど鼻症状がよくみられる。
コロナウイルス(新型コロナウイルスは除く) かぜの原因として2番目に多い。冬のかぜの代表格で、鼻水・鼻づまり・のどの痛みがよくみられる。
RSウイルス 年間を通じてみられるが冬に多い。鼻水・咳・発熱から肺炎までさまざまな症状が起こる。乳幼児が感染すると重症化しやすい。
アデノウイルス プール熱の原因ウイルスとして知られていて、冬から夏にかけて多い。発熱やのど・結膜の炎症がよくみられる。
エンテロウイルス 夏に多く、一般的なかぜ症状から下痢までさまざまな症状がみられる。ヘルパンギーナや手足口病の原因ウイルスとして知られる。
パラインフルエンザ
ウイルス
秋に流行する型と、春から夏にかけて流行する型があり、鼻水やのどの症状がよくみられる。クループ症候群の原因ウイルスとしても知られる。
ヒトメタニューモ
ウイルス
春から初夏にかけて多い。症状はRSウイルスと似ていて、乳幼児や高齢者が感染すると気管支炎や肺炎を起こしやすい。

どんな感染経路でかぜにかかるの?

かぜのウイルスに感染する経路は、飛沫感染と接触感染の2種類があります。
飛沫感染は、感染している人の咳やくしゃみによる飛沫を、近くにいる人が吸い込んで感染することです。接触感染は、ウイルスが付いたものに触れた手で、自分の口や鼻を触ってしまい感染することをいいます。
かぜをひかないために、この2つの感染経路についてしっかり理解しておきましょう。

〈 飛沫感染 〉

  • くしゃみや咳と一緒にウイルス感染者が
    ウイルスを含む飛沫(細かい水滴)を放出

  • 近くにいた第3者が、ウイルスを含む
    飛沫を口や鼻から吸い込んで感染

  • 飛沫感染

〈 接触感染 〉

  • 感染者からドアノブやつり革など
    周囲の「モノ」にウイルスが付着

  • 第3者がウイルスのついた
    「モノ」に触れる

  • ウイルスの付いた手で食べたり、
    口や鼻を触ったりして感染

  • 接触感染

かぜをひくとどうなる?かぜの代表的な症状

かぜをひくと、発熱・咳・くしゃみ・鼻水などさまざまな症状が現れます。これらの症状は、侵入したウイルスから体を守るための防御反応です。かぜの代表的な症状と、発症するメカニズムについてみていきましょう。

のどの痛み、痰

のどの痛みや痰は、ウイルスがのどや気道の粘膜に付着して炎症を起こすことが原因です。
ウイルスがのどの粘膜の細胞を攻撃して傷をつけると、傷ついた細胞から炎症を引き起こす物質が放出され、のどに炎症が起きて痛みや違和感が出ます。
そしてウイルスが気道に付着すると、気道の粘膜が炎症を起こし、ウイルスを体から排出させるために粘液を分泌して痰となります。

のどの痛みや痰の原因について詳しくは「のど(喉)が痛いとき、どうすればいい?原因と痛みを和らげる方法 」、「喉の違和感をなんとかしたい!痰(たん)って何者? 」をご覧ください。

咳、くしゃみ

咳やくしゃみは、体に侵入したウイルスを排出するために起こります。
鼻や気道にウイルスが侵入すると、鼻や気道の粘膜表面にあるセンサーが反応し、情報が脳に伝えられます。情報を受けた脳が信号を送り、呼吸筋が緊張して空気を瞬発的に出すのと一緒にウイルスも体の外へ排出させるのが、咳やくしゃみです。

咳の原因や対処法について詳しくは「咳や痰(たん)が止まらないときの対処法は?つらい、しつこい咳を和らげる方法 」をご覧ください。

鼻水、鼻づまり

鼻水や鼻づまりは、鼻の粘膜にウイルスが付着して炎症を起こすことが原因です。
ウイルスが鼻の粘膜を傷つけて炎症が引き起こされると、鼻の分泌物が増えて鼻水となり、ウイルスも一緒に体の外へ排出します。

また、鼻の粘膜に付いたウイルスと戦うために免疫反応が起き、鼻の粘膜が腫れて空気の通り道がせまくなることで鼻づまりが起きます。

鼻水の原因や症状について詳しくは「鼻水はどうして出るの?鼻水が止まらないときは?症状別の対処法 」をご覧ください。

発熱、さむけ

発熱やさむけは、体がウイルスに対抗するために起こる反応です。

ウイルスが体の中に侵入すると、免疫細胞はウイルスの情報を脳の視床下部へ伝えます。情報をもらった視床下部は体温の設定温度を上げて、全身に熱を作り出すように指示を送り、「発熱」がおこります。
発熱により体温が上がると免疫細胞の働きが活発になり、ウイルスが体内で増殖するのを抑えられるのです。

一方、「さむけ」は、発熱量を増やすために筋肉をふるえさせたり、体内の熱を逃がさないようにするため血管を収縮させたりするなど、体温が上がる途中でみられます。このように、発熱とさむけは連動して体を守るために働いています。

発熱時の対処法について、詳しくは「かぜをひいたら?熱が出た時の対処法と治るまでの過程 」をご覧ください。

その他

かぜをひいたときに、食欲不振・下痢・嘔吐などの胃腸症状が出ることがあります。原因は、ウイルス感染によって胃や腸など消化管の粘膜に炎症が起こるためです。胃腸の粘膜に炎症が起こると、水分や消化液が過剰に分泌されることで、食欲不振・下痢・嘔吐の症状につながります。

かぜをひいたら?長引かせず早く治すためのポイント

「かぜをひいてしまったかも」と思ったとき、長引かせず早く治すためにとれる行動について解説します。

「ひきはじめ」に適切な
対処をする

かぜは「ひきはじめが肝心」といわれるように、かぜのサインが現れたときに適切な対処をしないと、症状をこじらせたり治るまでに時間がかかったりしてしまいます。そのため、ひきはじめの症状を見過ごさないようにすることが大切です。

たとえば、くしゃみや鼻水が出る・のどがイガイガする・さむけがするなど、ちょっとした体の異変を感じたら注意しましょう。症状が軽いからといって無理はせず、早めの休息をとることをおすすめします。
栄養補給をしたり、免疫を上げるために体を温めたりするなど、症状が悪化する前に適切な対処をしましょう。

質の良い睡眠をとる

質の高い睡眠を十分な時間とって、体力を回復させましょう。
かぜをひくと、発熱や咳などで体力を消耗してしまいます。質の高い睡眠を十分にとることは、免疫細胞がきちんと機能するために大切です。

睡眠時間の目安は、成人で6時間~8時間ほどです。質の高い睡眠をとるためには、部屋に強い光が入らないようにして、周囲の音が届きにくい環境で休むようにしましょう。

水分や栄養をしっかり摂る

かぜをひいたときには、体力を補うために水分や栄養をしっかり摂ることが大切です。
タンパク質やビタミンAやビタミンC、ビタミンB群などの栄養素は積極的に摂りましょう。卵・豆腐・白身魚・にんじん・ほうれん草・バナナ・りんごは栄養価が高いのでおすすめです。
また、調理法は、消化の良い「蒸す・煮る」などを心掛けるとよいでしょう。

発熱があったり食欲が落ちたりしているときは、水分補給を欠かさないようにします。スポーツドリンク・経口補水液・野菜スープは、水分と一緒に電解質も補えるためおすすめです。

体を温める

かぜのひきはじめにさむけがするときは、体を温めましょう。さむけがする理由は、筋肉をふるえさせて体温を上昇させて、かぜのウイルスが体内で増えないようにするためです。
効率よく体を温めるために、大きな血管が通っている首・手首・足首をストールやレッグウォーマーなどでしっかり覆いましょう。

漢方薬を活用する

かぜの対処法として、漢方薬を活用するのもおすすめです。症状に応じて効果的な漢方薬をご紹介します。ただし症状が重篤な場合や長引く場合は自己判断せず、ただちに病院を受診してください。

葛根湯(かっこんとう)

かぜのひきはじめで寒気があり、肩こりもともなうときに。体を温めて筋肉のこわばりをほぐし、発汗を促すことで症状をやわらげます。

葛根湯について
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麻黄湯(まおうとう)

かぜのひきはじめで、寒気と発熱・節々の痛みをともなうときに。体を温めて発汗を促すことで症状をやわらげます。

麻黄湯について
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銀翹散(ぎんぎょうさん)

かぜのひきはじめで、のどの痛みがあり、咳や頭痛で熱っぽさを感じるときに。のどや体内の熱を鎮めて炎症を抑えることで症状をやわらげます。

銀翹散について
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かぜ予防のために普段からできること

かぜをひかないようにするためには、生活習慣に気を配りウイルス感染を防ぐことが大切です。日常で取り組める対策を紹介していきましょう。

手洗いうがいやマスクの着用を
心がける

手洗いうがいやマスクの着用で、体の中にウイルスを侵入させないようにしましょう。
ウイルスが付いた手で目や鼻に触れると感染しやすくなるため、帰宅時や食事前などこまめに手を洗います。
人混みへ出かけるときにはマスクを着用して、周りの人の咳やくしゃみの飛沫が、自分の鼻や口に付着するのを防ぐようにしましょう。

規則的な生活を送り、
免疫力を高める

睡眠不足や食生活の乱れは、免疫力が低下する原因となります。また食事は栄養バランスの良いものを1日3食摂るようにします。

特に、免疫をサポートするビタミンやミネラルは不足しないように注意しましょう。
具体的には、ビタミンCを豊富に含む柑橘類(オレンジ、グレープフルーツなど)、ビタミンAが多い緑黄色野菜(にんじん、ほうれん草など)、ビタミンDを含む魚類(サーモン、マグロなど)、亜鉛を含むナッツ類(アーモンド、くるみなど)が挙げられます。

腸内環境を整えることも免疫力の向上につながるため、納豆やヨーグルトなどの発酵食品や、海藻類やいも類などの食物繊維を摂ることもおすすめします。

こまめな換気と適度な湿度を
意識する

部屋の空気を定期的に入れ替えることも有効です。部屋の換気は、人が大勢集まっているときは1時間に2回以上おこなうようにします。空気の流れができるように2方向の窓やドアを開けるようにしましょう。
また、湿度を50%~60%に保てるように加湿器を使用したり、濡れタオルを部屋に干したりしましょう。

加藤あゆ里

薬科大学卒業後は調剤薬局で20年以上勤務し、在職中は、漢方外来の処方に対して多くの服薬指導を経験。親の看取り・介護を機に、現在は医療・健康分野のライターとして活動中。病気や薬など難しい内容でも、分かりやすく公平な目線で情報発信している。

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