かぜをひいたら?熱が出た時の対処法と治るまでの過程

かぜをひいたら?
熱が出た時の対処法と
治るまでの過程 最終更新日 2023年09月29日

かぜが治るまでの過程と一般的な症状

かぜは、かぜをひいている方の鼻水や咳などの飛沫が手に付いたり吸い込んだりして、気道粘膜にウィルスや細菌などが付着して増殖することから始まります。この段階では、必ずしも発症するわけではなく、健康状態や環境によって発症するかどうかは決まります。

通常、発症初日に、微熱、のどの痛み、倦怠感などがあらわれ、2~3日目になると鼻水や鼻づまりなどの鼻症状が強くなり、その後、咳や痰が出るようになります。症状のピークは3日ごろで、通常7~10日ほどで自然に治ることが多いです。ただし、鼻水や咳だけ2週間程度残ることもあるようです。

かぜが治るまでの過程や症状は、原因のウイルスや細菌など病原体の種類や強さによって異なります。また個人差も大きく、同じ原因であっても、同じ症状や経過をたどるとは限らないのが、かぜの特徴とも言えます。

かぜをひくと体温があがる(熱が出る)のはなぜ?

かぜをひくと体温があがる(熱が出る)のは、身体の中で免疫細胞がウイルスと闘っている証拠です。体温を上げて免疫を活性化させ、ウイルスへの攻撃力を高めているのです。

発熱は、体に備わった体温を調節する仕組みによって起こります。通常は、私たちの身体は37℃前後に保たれています。これは、脳にある体温調節の司令塔である視床下部が設定した温度です。これをセットポイントといいます。ウイルスに感染すると、免疫細胞が察知して発熱物質を作り、ウイルスが体内に侵入したことを視床下部に伝えます。そして免疫を活性化させるために、体温を調整する機能が作用して、セットポイントを高い温度に設定します。そうすると、脳から身体に発熱するように指令が出されるのです。

熱が出る時に悪寒がして震えるのは、筋肉を震えさせて熱を生み出すためです。強いウイルスに感染したときほど、体温は高く設定されると考えられています。そのため、一般のかぜよりインフルエンザの方が高熱になるのです。

通常の発熱経過

かぜで熱が出たときの対処法

では、かぜで熱が出た時には、どのように対処すればよいでしょうか。上手に対処するためのポイントを説明していきましょう。

無理に熱を下げない

熱が出ても、無理に熱を下げる必要はありません。
前述の通り、かぜで熱が出るのは自然な体の防御反応で、ウイルスなどの病原体の増殖や活動を抑えたり、体の免疫を活性化させたりする働きがあるからです。

ひきはじめの段階で免疫力を上げる

かぜで熱が出た時には、ひきはじめの段階で病原体に対する生体防御の効果を高めるために、免疫力を上げることが大切です。

免疫力を上げるには、上手に体温を上げるのがポイントです。体温が上昇すると、免疫力が活性化されると言われているからです。
かぜのひきはじめには、脳が設定したセットポイントまで体温を上昇させるために悪寒や震えがおきますが、安静を保ち保温することで体温の上昇を促すことができます。
また、葛根湯など体を温める働きのある漢方薬を活用すると良いでしょう。

汗をかきはじめたら?

発熱後、汗をかきはじめたら、免疫とウイルスなどの病原体との闘いが収束した証拠です。闘いが終わって脳が体温のセットポイントを普段の37℃前後まで下げたために、体は汗をかいて体温を下げようとしているのです。

汗をかきはじめたら、熱を放出できるように薄着にしましょう。汗はこまめに拭き、衣服は汗で濡れたままにせずに着替えます。わきの下や太ももなど、太い血管が通る部位を冷やすと、効果的に熱を下げることができます。

また、汗で失われた水分の補給も大切です。汗と一緒に塩分も失われているので、スポーツドリンクや経口補水液などが適しています。

高熱なのに汗が出ないときは?

高熱なのに汗がでないときは、まだウイルスなどの病原体との闘いが終わっていないと考えられます。
ただし、なかなか熱が下がらない場合にはかぜ以外の病気が原因のこともあるので、医療機関を受診することをおすすめします。

また、食欲がなく、食事や水分が摂れていない場合には、脱水状態で汗が出ないこともあります。少しずつこまめに水分を摂るようにしましょう。

また、葛根湯や麻黄湯といった漢方薬を活用する方法もあります。体質によって使い分ける必要があるので、ドラッグストアや薬局で購入する場合には漢方薬に詳しい薬剤師に相談しましょう。

発熱時にすべきこと、避けること

発熱時の過ごし方について、注意すべきポイントを説明していきましょう。

注意すべきポイント

こまめに水分をとる

こまめな水分摂取が大切です。
発熱時には、汗をかいている実感はなくても、体温の上昇にともない体の水分は失われています。スポーツドリンクや経口補水液を少しずつゆっくり飲むようにしましょう。

消化がよく栄養のある
食事をする

かぜで発熱している時は、胃腸の働きも衰えているため、消化がよく栄養のある食事を摂りましょう。
消化に時間のかかる油分は控え、糖質、タンパク質、ビタミンなどの栄養素をバランスの良く取り入れた食事、例えば、おかゆやうどん、野菜や豆腐の入ったみそ汁、玉子を入れた野菜スープ、茶わん蒸しなどがおすすめです。
どうしても食欲がない時には、プリンやゼリー、アイスクリームなど、のど越しの良いものを摂ると良いでしょう。

部屋の湿度を高くする

ウイルスの感染予防のために部屋の湿度の管理が重要なことはよく知られていますが、かぜをひいてしまった後も、部屋の湿度を高く保つことが大切です。

部屋の湿度が高い方が、のどや鼻の粘膜にある腺毛の動きがよくなり、ウイルスなどの病原体を排除しやすくなるからです。部屋の湿度を高くするには、加湿器を使用する以外に、濡れたタオルを部屋にかけておくのも効果があります。

お風呂は体力を
消耗しないように

発熱時は必ずしもお風呂に入ってはいけないわけではありませんが、38℃以上の熱や悪寒や倦怠感がある時には、体力を消耗しないようにシャワーで流す程度の方が良いでしょう。子供の場合には体調を上手に伝えることが難しいため、無理にお風呂には入らずに、体をふいてあげるだけでも良いでしょう。

厚着しすぎず様子を見る

発熱して顔や体がほてるようになったら、必要以上に厚着をせずに様子を見るようにしましょう。
発熱時にも保温を心掛けて免疫を高める必要はありますが、厚着をしすぎたり布団をかけすぎたりすると熱が放散されずためこむことになるので危険です。状態に合わせて衣服や環境の調節をすることが大切です。

その発熱、かぜが原因ではないかも?

発熱の原因が、かぜでない場合もあることを念頭に入れておきましょう。
ウイルスが原因のかぜの場合、発熱は2~3日程度、他の症状も含めて7~10日の経過で自然と良くなります。しかし、高熱が続いたり、発熱以外の他の症状が激しかったり、なかなか回復しなかったりする場合には、かぜが原因ではないかもしれません。かぜと間違いやすい他の病気を紹介します。

かぜと鑑別が必要な他の病気

発熱以外の特徴的な症状
急性細菌性副鼻腔炎(きゅうせいさいきんせいふくびくうえん) 鼻づまり、膿性の鼻汁、顔の片側の痛みや腫れ、頭痛など
細菌性咽頭炎(さいきんせいいんとうえん) 細菌性扁桃炎(さいきんせいへんとうえん) ・飲み込む時ののどの痛み
・咳や鼻水は少ない
・のどの痛みや発熱が1週間以上続く、または軽快した後再発した場合など
急性喉頭蓋炎(きゅうせいこうとうがいえん) のどの激しい痛み、息を吸い込む時の喘鳴(ぜいめい)、よだれなど
急性気管支炎 ・主な症状は咳で2~3週間続く
・鼻の症状は少ない
インフルエンザ ・強い全身症状(高熱、筋肉痛、関節痛)
・冬季の季節性
結核 2週間以上続く咳・痰・微熱・倦怠感
新型コロナ感染症 ・筋肉痛、倦怠感
・咳、痰、味覚障害など

かぜの治りかけはどう過ごす?

熱が下がり鼻や咳の症状が軽くなると「かぜが治ってきたな」と感じるかもしれませんが、体はウイルスなどの病原体と戦うための免疫応答で消耗しているため、すぐに日常生活に戻すのは禁物です。

体力を回復させるためには、安静を保って十分に睡眠をとり、水分と食事をしっかり摂りましょう。食欲が回復しても、油っぽいものや辛いものなどは避け、アルコールは控えて、消化の良い栄養のあるものを摂るようにしましょう。

まとめ

一般的なかぜは、のどの痛みや違和感、鼻水・鼻づまりで始まることが多く、悪寒や寒気をともなう発熱後、7~10日で回復することがほとんどです。

発熱はウイルスなどの病原体の活動や病原性を弱め、免疫機能を活性化するために必要な生体防御反応のため、安易に熱を下げることは回復を遅らせる可能性もあり、おすすめできません。
かぜをひいた時には、保温と安静を保ち、上手に体温を上げることで、免疫を活性化することができます。
少しでも回復を早めるために、かぜをひいた時の過ごし方や発熱時の対処法を知っておくことが大切です。

小谷敦子

薬剤師免許取得後、病院薬剤師として就職。ライフステージの変化にともない、調剤薬局の薬剤師とメディカルライターとしての実績を積んできた。東洋医学専門診療科のある大学病院の門前薬局では、漢方薬の処方に対する数多くの服薬指導を経験。