鼻水がひどいとき、薬はどう選ぶ?原因別の正しい選び方と効果的な漢方

鼻水がひどいとき、薬はどう選ぶ?
原因別の正しい選び方と効果的な漢方 最終更新日 2023年11月30日

鼻水がひどい時、どのような薬を飲めばよいのでしょうか。正しく薬を選ぶためには鼻水の出る原因を考え、原因に合った薬を適切に使わなければなりません。
ここでは、鼻水の出る原因と正しい薬の選び方について解説します。

まずは鼻水が出る原因を調べよう

薬を選ぶ際は、その原因を突き止めることが重要です。
ただし、鼻水の原因が不明だったり、症状が強く長引いたりする場合には医療機関に相談するようにしましょう。
詳細はこちらの記事でも解説しています、併せてご覧ください。
「鼻水はどうして出るの?鼻水が止まらないときは?症状別の対処法」を読む

感染症

かぜやインフルエンザなど

かぜやインフルエンザなどの感染症は、鼻水の代表的な原因のひとつです。
かぜのひきはじめの鼻水は、鼻腔に侵入したウイルスなどを鼻の分泌物を増やして排除しようする生体防御反応で、さらっとした水っぽい鼻水です。さらにウイルスが鼻腔で増殖して炎症を起こすと、粘りのある鼻水に変わります。

その後、くしゃみや鼻づまりなどの鼻炎症状や倦怠感、発熱、寒気などの全身症状が続いて起こります。かぜの場合、症状のピークは2~3日目で、1週間~10日で回復することがほとんどです。 出典:島田 茉莉:日耳鼻感染症エアロゾル会誌(8 3): 172–175, 2020

副鼻腔炎

ウイルス感染によるかぜの後、鼻水が黄色く粘り気が強くなり、鼻づまり、鼻水がのどに流れる後鼻漏(こうびろう)、咳の他、頭痛や頬の痛み、顔面の圧迫感の症状が現れることがあります。

発症から4週間以内を「急性副鼻腔炎」、3ヵ月以上症状が続く場合を「慢性副鼻腔炎」といいます。
急性副鼻腔炎はほとんどの場合、発症から1週間以内に回復します。慢性副鼻腔炎は、感染の他にアレルギーや鼻茸(はなたけ)などの形状の問題などが関係しています。原因がウイルス性から細菌性に変化する場合もあります。 出典:山中昇:急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン(2013年追補版), 日本内科学会雑誌 105 巻 12 号, 2016

アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎には、1年を通して症状がある通年性と季節性の花粉症があります。
いずれの鼻水も水っぽく大量で、発作的で繰り返すくしゃみと鼻づまりをともなう場合があります。

アレルギーの原因は、通年性の場合は室内ダニの他、ハウスダスト、ゴキブリやガ、猫や犬など動物の毛、フケなど、季節性の場合はスギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサ、シラカンバなどの花粉が多く、これらのアレルギーの原因を吸い込むことで、アレルギー反応を起こして症状が現れます。

非アレルギー性鼻炎

くしゃみや鼻水など鼻炎の症状があっても、その原因が感染でもアレルギーでもない場合、非アレルギー性鼻炎と言います。

たとえば、室内から寒い屋外に出た時など、鼻の粘膜の自律神経のバランスがくずれて起こる「血管運動性鼻炎」があります。
また、薬が原因で起こる「薬物性鼻炎」、職場で繰り返し物質を吸い込むことで起こる「職業性鼻炎」、「老人性鼻炎」、刺激性の熱い食べ物を食べた時に起こる「味覚性鼻炎」などもあります。

「かぜ薬」と「鼻炎薬」は違う?

「かぜ薬」と「鼻炎薬」は、主に服用の目的と配合されている成分の種類と効果、服用期間が違います。それぞれ違いを説明していきましょう。

服用の目的が違う

かぜ薬の服用の目的は、ウイルスなどの感染によって現れる複数の症状を和らげることです。一方、鼻炎薬の服用の目的は、鼻炎症状を和らげることです。

服用の目的が違うため、たとえばかぜのひきはじめのくしゃみや鼻水に対して鼻炎薬を服用しても、かぜの経過にしたがってあらわれる発熱や咳、倦怠感などのさまざまな症状には効果が期待できません。
また、鼻炎に対してかぜ薬を服用すると必要のない薬を体に入れることになり、副作用のリスクが生じます。代用することは控えましょう。

配合されている成分の種類と
効果が違う

かぜ薬には、解熱鎮痛薬、抗炎症薬、抗スタミン薬、痰切り薬、咳止めなど、複数の成分が配合され、さまざまなかぜの症状に対して効果が期待できます。

一方、鼻炎薬の配合成分は、鼻炎の症状に効果のある成分だけで、抗ヒスタミン薬の単剤または、抗ヒスタミン薬に血管収縮剤や鼻水の分泌を抑える成分が配合されています。

抗ヒスタミン薬は、花粉などのアレルギー物質が体内に入ると放出されるヒスタミンという物質の受け皿にふたをして、鼻水やくしゃみなどの症状を抑える効果が期待できます。
第2世代といわれる抗ヒスタミン薬には、ヒスタミンの放出を元から抑える作用(抗アレルギー作用)のある薬もあります。

服用期間が違う

かぜ薬はかぜの症状に対する対症療法のため、服用期間は一時的な短期間に限られています。かぜの場合2~3日で症状が改善することが多く、5~6回服用しても回復しない場合には医師、薬剤師などに相談するようにしましょう。

また、鼻炎薬も対症療法として鼻炎の症状のある間に服用しますが、花粉症の場合などは症状が出始めてからだけでなく、花粉の飛散予測や飛散情報に合わせて症状のある間は継続して服用することがすすめられていることもあります。 出典:日本OTC医薬品協会:おくすりQ&A おくすりの種類で選ぶ/かぜ薬

【原因別】
鼻水に効く正しい薬の選び方

鼻水に効く薬を選ぶには、どのような点に注目したらよいのでしょう。ここでは、鼻水の原因別に、薬を選ぶ時のポイントについて説明していきましょう。

かぜの場合の鼻水

一般用医薬品から選ぶポイント

かぜの場合の鼻水には、かぜにともなうさまざまな症状を和らげることが期待できる「かぜ薬」を選びます。
一般的なウイルス感染によるかぜの場合、かぜの経過にしたがって鼻水だけでなく、のどの痛みや倦怠感、発熱、節々の痛み、痰や咳など、複数の症状が同時、あるいは次々と現れることが多いからです。
総合感冒薬を選ぶ時には、製品の外箱の「効能・効果」や「主症状」に、鼻の症状や鼻用などが記載されているかを目安にしましょう。

選ぶ時の注意点として、総合感冒薬に配合されている成分には服用後に眠気や視覚の異常などの副作用があることが多いため、乗り物や機械類の運転、高所作業がある方は注意が必要です。
また、花粉症などで長期間鼻炎薬を服用している場合は作用が重複するため、鼻炎薬とかぜ薬を併用するのは避けてください。

漢方薬から選ぶポイント

漢方医学では、かぜによる鼻水は「気」「血」「水」のうちの「水」のめぐりがうまくいかずにバランスをくずし、鼻水としてあふれ出すと考えられています。
そのため、体をあたためて水分代謝を促し、「気」を動かして鼻水やくしゃみの鼻症状を和らげる漢方薬を選びます。

かぜに適した漢方薬には麻黄湯、葛根湯、小青竜湯があり、かぜの症状や時期、普段の体力などに応じて使い分けます。

アレルギー性鼻炎(花粉症など)の
場合の鼻水

一般用医薬品から選ぶポイント

アレルギー性鼻炎や季節性の花粉症の鼻水には、抗ヒスタミン薬が配合された鼻炎薬を選びます。
抗ヒスタミン薬には、古くからある第1世代と第2世代があります。第1世代抗ヒスタミン薬で代表的なクロルフェニラミンやジフェンヒドラミンなどは、速効性があり鼻炎に対する効果も高いのですが、脳にも作用して強く眠気が出たり、口の渇きや尿が出にくくなったりするなどの副作用があります。

現在、鼻炎薬の主流は第2世代の抗ヒスタミン薬で、代表的なエピナスチン、フェキソフェナジン、ロラタジンなどは眠気が出にくく、ヒスタミンの放出を元から抑える抗アレルギー作用があるものもあります。
医療用医薬品から第1類医薬品のOTCにスイッチした薬もあるため、薬剤師に相談し説明を受けてから購入しましょう。

また、鼻炎薬には飲み薬の他にも抗ヒスタミン薬、鼻の炎症を抑えるステロイド、鼻づまりを和らげる血管収縮剤が配合された点鼻スプレーもあります。アレルギー性鼻炎は長期間治療する可能性が高いため、症状とライフスタイルに合わせた鼻炎薬を選ぶようにしましょう。

漢方薬から選ぶポイント

アレルギー性鼻炎や花粉症に特徴的な水っぽい鼻水やくしゃみ、鼻づまりには、漢方薬では小青竜湯をおすすめします。一般用医薬品の鼻炎薬に配合されている抗ヒスタミン薬の副作用には、「眠気」「のどの渇き」「尿が出にくくなる」などがありますが、小青竜湯にはこのような副作用はないため、薬の服用によって眠くなっては困る方や、飲み合わせの悪い薬を服用中の方などにおすすめです。

副鼻腔炎の場合の鼻水

一般用医薬品から選ぶポイント

急性副鼻腔炎では、抗菌薬は必要ありません。ただし、かぜの症状がある間はかぜ薬、鼻の症状が強い場合には、鼻炎薬を服用するのがよいでしょう。
その理由は、急性副鼻腔炎は、主にウイルス感染によるかぜに続いて発症することが多く、通常、発症から1週間以内に自然に回復するといわれているからです。

一般用医薬品のなかには、抗ヒスタミン薬の他に、副鼻腔炎の症状である鼻の粘膜の腫れや、粘り気のある鼻水を減らしたり出しやすくする成分を配合した製品もあります。薬剤師や登録販売者に相談してみましょう。

なお、急性副鼻腔炎の症状が強い場合や、悪化したり長引いたりした場合には抗菌薬での治療が必要になります。
発症から5日程度経過しても症状が良くなる傾向がみられない場合には、医療機関を受診しましょう。 出典:急性鼻副鼻腔炎治療ガイドライン(2013年追補版)3.急性鼻副鼻腔炎の治療の原則

漢方薬から選ぶポイント

副鼻腔炎には、急性にも慢性にも効果が期待できる漢方薬として、葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)、辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)などがあります。

葛根湯加川芎辛夷は葛根湯をベースにした、体を温めて余分な水分を排出させる漢方薬で、鼻がつまって息苦しい、いつまでも鼻づまりがよくならないといった「鼻づまりが強いタイプの方」に適しています。

荊芥連翹湯は、体の中の余分な熱を冷まして鼻の通りを良くする漢方薬で、体力中等度以上で粘り気のある濃い鼻水が出る、蓄膿症がつらいといった「濃い鼻水が出るタイプの方」に適しています。

辛夷清肺湯は、体にこもった熱を発散させて鼻の炎症を鎮め、膿を抑えることで鼻の通りを良くする漢方薬です。体力中等度以上で鼻づまりが強い方に適しています。

鼻水が出るときにおすすめの漢方

かぜが原因の鼻水や、アレルギー性鼻炎の水っぽい鼻水の時に適する、以下の3つの漢方薬について紹介します。

小青竜湯(しょうせいりゅうとう)

小青竜湯は、体を温めて体内の水分代謝を整えることで鼻水の症状を和らげます。体力が中等度または虚弱な方に適しています。

小青竜湯の配合生薬は、麻黄 (まおう)、桂枝(けいし)、細辛(さいしん)、半夏(はんげ)、五味子(ごみし)、芍薬(しゃくやく)、乾姜(かんきょう)、甘草(かんぞう)の8種類です。

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麻黄湯(まおうとう)

麻黄湯は、発熱があっても寒気がしてガタガタと震えるような時に発熱を促して免疫力を高め、かぜの回復を助けます。体力が充実している方に適しています。

麻黄湯の配合生薬は、麻黄(まおう)、桂枝(けいし)、杏仁(あんにん)、甘草(かんぞう)です。

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葛根湯(かっこんとう)

葛根湯は、体を温めて発熱を促すことで免疫力を高め、かぜのひき始めの鼻水などのかぜの症状を和らげます。体力が中等度以上の方に適しています。

葛根湯の配合生薬は、葛根(かっこん)、麻黄(まおう)、大棗(たいそう)、桂皮(けいひ)、芍薬(しゃくやく)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)の7種類です。
かぜの鼻水やくしゃみ、鼻づまりなどの鼻炎症状のほか、かぜにともなう頭痛や肩こり、筋肉痛、手足の痛みなどにも効果が期待できます。

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鼻水と薬のよくある質問

鼻水の時に使用する薬について、よくある質問にお答えします。

かぜのときの鼻水は薬で
止めても大丈夫?

かぜのひきはじめの鼻水は、鼻腔に入ったウイルスなどの病原体を粘液の量を増やして排出しているもので、体に入った異物を排出するための生体防御反応のひとつです。そのため、鼻水を薬で止める必要はありません。

ただし、発熱やのどの痛み、節々の痛み、咳などかぜの症状でつらい場合には、かぜ薬を服用し体力の消耗を抑えることもかぜを早く治すためには必要です。

薬による眠気を抑えたいときは
どうすればいい?

薬による眠気を抑えることはできませんが、カフェインの入った飲み物を飲む、ガムを噛む、仮眠をとるなどで、眠気を遠ざけることはできるかもしれません。

人により眠気を感じない方もいますが、ふらつきや集中力の低下が起こることがあります。そのため、眠気を催す可能性のある薬では、乗り物の運転や機械の操作、高所での作業などは大きな事故につながるリスクがあるため避けなければなりません。
薬剤師や登録販売者に相談をして、なるべく眠気が出にくい薬を選ぶようにしましょう。

子どもの鼻水、薬を飲ませても大丈夫?

子どもの鼻水のうちかぜが原因の場合には、他の症状がつらくなければ鼻水のために薬を飲ませる必要はありません。

しかし子どもでも、アレルギー性鼻炎や季節性の花粉症が増えています。大量の鼻水や鼻づまりで生活の質の低下や睡眠不足が気になる場合には、抗ヒスタミン薬が配合された鼻炎薬を服用することをおすすめします。
年齢ごとに服用できる薬の種類や用量が異なるので、よく注意して飲ませるようにしましょう。

飲み薬と点鼻薬を併用してもいい?

アレルギー性鼻炎や花粉症の症状が強い時には、飲み薬と点鼻薬を併用すると効果的です。
血管収縮剤が配合された点鼻薬は速効性がありますが、繰り返し長期に使用すると効果が弱まるうえに鼻炎症状が悪化することもあるので、使用期間に注意が必要です。

まとめ

止まらない鼻水やくしゃみ、鼻づまりなどつらい鼻の症状は、日常生活や睡眠にも影響を及ぼすため和らげたいものです。自分に適した薬を選ぶには、鼻水の原因に合わせて選ぶことが肝心です。

鼻水などの鼻炎症状を、免疫を高めたり体の水の代謝や気の巡りを整えたりして改善するには漢方薬が適しています。特に、漢方薬には眠くなる成分が配合されていないため、日常生活で眠くなるのは困るという方にはおすすめです。
鼻水のつらい症状をやわらげるためには、原因とライフスタイルに合わせた薬選びを心がけましょう。

小谷敦子

薬剤師免許取得後、病院薬剤師として就職。ライフステージの変化にともない、調剤薬局の薬剤師とメディカルライターとしての実績を積んできた。東洋医学専門診療科のある大学病院の門前薬局では、漢方薬の処方に対する数多くの服薬指導を経験。

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