「いぼ」の部位ごとの原因とケア:顔のいぼ
顔のいぼはなぜできる?
種類別の原因と対処法を解説
鏡を見るたび、気にかかるのが顔のいぼ。顔にできるいぼは、皮膚が盛り上がるため、メイクでもカバーしにくく、隠したくても隠せないのが悩ましいところです。ここでは、どうして顔にいぼができるのかについてご説明します。
1. 顔にできる「いぼ」の種類と原因
顔にできるいぼには、主にウイルス感染が原因でできるウイルス性のいぼと加齢によってできる脂漏性角化症(いわゆる老人性いぼ)の2つの種類があります。ちなみに、「いぼ」という呼び名は通称で、医学的には疣贅(ゆうぜい)と呼ばれています。
ウイルス性のいぼ
ウイルス性のいぼは、引っかき傷などにヒトパピローマウイルス(HPV)が入り込んで、細胞に感染することが原因でできると考えられています。「ウイルス性疣贅」または「ウイルス性いぼ」と呼ぶこともあります。ウイルス性のいぼの形状にはいくつかのタイプが知られていますが、顏にできやすいのが扁平疣贅(へんぺいゆうぜい)です。
平らな形でわずかに盛り上がり、肌色から薄い茶色をしていて、額や頬などによく見られます。表面はザラザラしていないのが特徴で、ときには小さいしみに見えることがあります。また、自覚症状がないことが多いのですが、突然かゆくなったり、赤くなったりすることもあります。若い女性に多く見られますが、40代の人にもできる可能性があります。
加齢によるいぼ
加齢や紫外線などの影響でできる良性のいぼを、脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)といいます。加齢とともに増える傾向があり、高齢者のほとんどにみられることから、老人性いぼとも呼ばれます。顔は紫外線の影響を受けやすく、特に老人性いぼができやすい部位です。やや褐色のものから黒っぽいものまでさまざまで、わずかに盛り上がるタイプやしこりのようになるタイプもあります。 通常、痛みやかゆみなどの自覚症状はありません。高齢者に多いいぼですが、20代から見られます。
2. 引っかき傷がいぼになることも
いぼは、引っかき傷などの小さな傷がきっかけでできることもあります。そもそも本来の健康な皮膚には肌のバリア機能(※)が備わっており、ウイルスや細菌などが皮膚の中に侵入するのを防いでいます。 ところが皮膚に小さな傷やキズができると、このバリア機能が弱まり、ウイルスの侵入経路が開かれ、感染リスクが高まります。
3. 加齢は顔のいぼの原因になる?
老人性いぼ(脂漏性角化症)は、皮膚の老化現象として生じやすいいぼです。老人性いぼの発症メカニズムの全ては解明されていませんが、肌の老化や長期間にわたる紫外線による皮膚へのダメージの蓄積によって皮膚の細胞の遺伝子が傷つき、傷ついた遺伝子の修復の過程でトラブルが生じることで細胞の異常増殖が起こり、いぼを形成すると考えられています。
老人性いぼは、60代では80%、80代ではなんと100%の人に見られます。ただし、老人性いぼといってもスポーツやレジャーなどで直射日光を浴びる機会の多い人では、20代の若年層でもできることがあり、決して高齢者だけの病気ではありません。
4. 顔のいぼ、
悪化させないためにできることは?
顔にできたいぼは、悪化させないことが大切です。いぼを悪化させないためにできる対策について詳しくみていきましょう。
顔に傷(カミソリ負けなど)をつくらない
カミソリ負けや引っかき傷、無理な脱毛などによって皮膚の表面に傷ができると、たとえそれが小さなものであったとしても、ウイルスが侵入しやすくなります。その他、フェイスブラシやスポンジ、タオルによるこすり洗いなどの摩擦刺激や、湿疹、アトピーなどにともなう掻きむしりなども、皮膚を傷つけて肌のバリア機能を低下させ、いぼが悪化するきっかけになります。
傷や摩擦によってバリア機能が低下した肌は、紫外線にも弱いため、老人性いぼの発生や、もともとある老人性いぼが悪化する原因になります。なるべく顔に傷をつくらないように注意し、肌のバリア機能を保つようにしましょう。湿疹やアトピーなどがある人はしっかりと治療を受け、掻きむしりを未然に防ぐことが大切です。
保湿し、乾燥を避ける

顔のいぼを悪化させないためには保湿ケアを習慣づけ、乾燥させないようにすることも大切です。顔の皮膚が乾燥して皮脂のうるおいを失うと、摩擦や紫外線などの刺激に対して無防備になり、いぼの原因ウイルスも侵入しやすい状態になってしまいます。
洗顔のあとは、化粧水や美容液、乳液、クリームを使ってしっかりと保湿しましょう。また、外出先などで乾燥が気になるときは、スプレータイプの化粧水やクリームなどを携帯して、こまめな保湿ケアを習慣づけましょう。

紫外線対策をする
直射日光には、皮膚にダメージを与える紫外線が多く含まれているため、日焼け止めや日傘、帽子、サングラスなどを活用し、紫外線を含む直射日光が顔の皮膚に直接当たらないように心がけましょう。レジャーやスポーツなどの野外活動のときはもちろん、短時間の外出であってもしっかりと紫外線対策をおこなうことが大切です。これらの紫外線対策はいぼができるのを予防する効果も期待できるため、若いうちから習慣づけることをおすすめします。
5. 顔のいぼは放置しても平気?
自然に治ることはある?
場合によっては増えることもある
ウイルス性のいぼは、放置しているとウイルスが周囲に広がって次第にいぼが増えていくことがあります。すでにできているいぼをむやみに触ったり傷つけたりすると、手指にウイルスが付着し、周囲の皮膚の細胞に感染して急激にいぼが増えるおそれがあるため注意が必要です。いぼが気になってもむやみに触るのは絶対にやめましょう。
老人性いぼも、加齢とともにいぼが大きくなったり、色が濃くなったり、数が増えたりします。特に紫外線対策をせずに直射日光を浴び続けていると、時間の経過とともに老人性いぼが増えて症状が悪化することも。肌の老化を完全に止めることはできませんが、紫外線対策をしっかりおこない、老人性いぼが増えるのを防ぎましょう。
気になる場合は医師や専門家に相談
急にいぼが大きくなったり、かゆみ、痛み、腫れなどの症状が現れたりした場合は、医師に相談しましょう。また、一見いぼのように見えても、タコなど他の皮膚の病気と見分けがつかない場合や、稀に内臓の病気や皮膚がんなど重大な疾患が原因になっている場合もあります。気になる症状がある場合も、自己判断せずにまず医療機関を受診しましょう。
6. 顔のいぼの治療法は?
すでにできてしまった顔のいぼに対しては、あとが残らないように治療することが大切です。ただしウイルス性のいぼに対する特効薬は今のところなく、老人性いぼに対しても、老化現象そのものを止めることはできないので、すでにできてしまったいぼに対する対処療法が基本になります。
医療機関では、液体窒素をいぼに押し当てていぼを除去する「冷凍凝固療法」が一般的です。その他、電気メスやでいぼを焼き切る「電気焼灼法」や、メスや炭酸ガスレーザーでいぼの部分を切除する方法などを選択したり、これらの治療を併用したりします。
内服治療としては、いぼに効果を発揮するといわれる生薬のヨクイニンなどがよく用いられています。ヨクイニンはイネ科の植物であるハトムギの種子に含まれる成分を抽出したもので、効き目が穏やかで治療のあとが残りにくいと考えられています。いずれの治療法をおこなうにしても、いぼが大きくなればなるほど、きれいに治すのが難しくなります。いぼの治療をする場合は、できるだけ早めに医師に相談するようにしましょう。
※脂漏性角化症はウイルス性いぼとは異なります。改善が見られない場合は、医師、薬剤師、登録販売者にご相談下さい。
7. まとめ
顔にできるいぼは、適切なケアをせずに放置していたり傷つけたりすると症状が悪化したり、いぼが増えてしまう原因になります。いぼに気付いたら、摩擦などの刺激を避ける、保湿ケアで肌のバリア機能を高める、紫外線対策をするなどの対策をしっかりとおこない、悪化するのを防ぎましょう。
いぼを治療したい場合は医療機関を受診し、医師に相談しましょう。いぼの治療にはいくつかの方法がありますが、いずれの方法も早期に治療を開始するほうが早くきれいに治療できる可能性が高まります。気になるいぼがあるときは、早めの対処を心がけましょう。
用語解説
顔のいぼの理解に役立つ用語について解説します。
●肌のバリア機能
乾燥や外部刺激から肌を守るはたらきのこと。肌にうるおいが保たれているときにバリア機能が発揮される。
出典:尋常性疣贅診療ガイドライン 2019(第 1 版)日本皮膚科学会 日本皮膚科学会雑誌:29(6),1265-1292,2019
形成外科診療ガイドライン 日本形成外科学会 皮膚軟部腫瘍診療ガイドライン作成部門/編
榎本 蒼子
医学博士、医学研究者。2015年まで公立医科大学にて医学研究および医学教育に従事。在職中は医師・研修医向けの東洋医学セミナー等を担当。現在は医療ライターとして、健康に役立つ情報や最新の医学研究に関する情報を発信している。