更年期障害
公開日:2018年08月01日最終更新日:2025年04月22日
更年期障害の症状には漢方薬を|その効果と対策法を紹介
40代に入ったあたりから、今までにはみられなかった体の不調に悩んでいる女性は多いのではないでしょうか。ここでは、さまざまな更年期障害の症状に適した漢方薬の種類や効果を紹介します。自分の症状に合った漢方薬を見つけてみましょう。
目次
更年期障害とは
更年期障害とは、更年期に現れるさまざまな症状によって日常生活に影響が出る状態を指します。代表的な症状には、ほてりやのぼせ、急な発汗、イライラ、不安感、不眠、肩こりなどがあります。更年期は閉経前後の約10年間にわたるため、時期によって現れる症状が変わることもあります。
この期間は、女性の体が子どもを産める状態から、卵巣機能が低下して排卵が止まるなど、女性ホルモンが急激に減少するため、体がこうした変化に適応できないことが原因です。
とくに、女性ホルモンの減少は自律神経のバランスを崩し、さまざまな身体的・精神的な不調を引き起こします。
更年期の症状は個人差が大きく、軽い症状で済む人もいれば、日常生活に支障をきたすほど重い症状に悩まされる人もいます。症状の現れ方や程度は、遺伝的要因や生活習慣、ストレスの有無などによっても異なるともいわれます。
更年期障害の代表的な対策として、ホルモン補充療法(HRT)や漢方薬、生活習慣の改善などが挙げられます。ホルモン補充療法は、減少した女性ホルモンを補うことで症状を緩和する方法です。一方、漢方薬には、体全体のバランスを整え、複数の症状を改善する効果があります。
漢方で考える更年期障害の主な症状
漢方では、体は「気」、「血(けつ)」、「水(すい)」の3つの要素で構成されていると考えます。それぞれの必要なものが不足している状態を「気虚(ききょ)」「血虚(けっきょ)」「陰虚(いんきょ)」、流れが滞っている状態を「気滞(きたい)」「血瘀(けつお)」「水滞(すいたい)」と呼んでいます。タイプ別に、どのような更年期の症状が起きやすいのか見ていきましょう。
「気」の不調(気虚・気滞)にかかわるもの
- 憂鬱やイライラなどの精神不安
- 顔が赤くなる、ほてり、のぼせなどの熱感
- 体重増加
- 急な発汗(ホットフラッシュ)、頻尿など
「血(けつ)」の不調(血虚・血瘀)にかかわるもの
- 動悸・息切れ、手足の冷え
- 手足の脱力感やしびれ
- 不眠、焦燥感や不安感
- 高血圧、頭痛、頭重
- 月経の乱れなど
「水(すい)」の不調(陰虚・水滞)にかかわるもの
- 悪心、嘔吐
- むくみ
- めまい、耳鳴りなど
タイプによって選ばれる漢方薬は変わってきます。簡単な体質チェックはこちらから↓
漢方薬で更年期障害を乗り切る方法
更年期障害の症状やその程度は、人それぞれです。西洋薬のように特定の症状に直接アプローチする治療法もありますが、漢方薬は複数の症状に対応できる点が魅力です。
どの薬を選べば良いか迷ったときは、まず現在一番困っている症状に効果がある漢方薬を選ぶと良いでしょう。漢方薬は体全体に働きかけ、バランスを整えて症状を改善してくれます。
更年期障害に効果的な漢方薬の種類と選び方
更年期障害の治療に用いる漢方薬で有名なものに、「加味逍遙散」「当帰芍薬散」「桂枝茯苓丸」が挙げられます。これらは三大漢方婦人薬とも呼ばれ病院でも処方される機会が多いものです。それぞれ構成する生薬や働きが異なるため、体質や症状によって選び分ける必要があります。
加味逍遙散(かみしょうようさん)
イライラなどの精神不安や肩こり、のぼせ感が強い方にまず試していただきたい漢方薬です。女性は通常、月経や出産など、血(けつ)が乱れやすい機会も多いものです。その血の不足から気(き)とのバランスが乱れ、溜まった気が熱を生じることで症状が現れると考えます。加味逍遙散は不足した血を補い、気を巡らせることで熱を鎮め、イライラやのぼせといった更年期症状や不眠を改善してくれます。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
疲労感やめまいや耳鳴りが気になる方の更年期障害には当帰芍薬散がおすすめです。これらの症状は、血の不足によって体が冷えたり水分代謝が悪くなったりすることで現れると考えます。当帰芍薬散は体に栄養を与え不足した血を補い循環させることで、疲れやすく、めまい、肩こり、耳鳴りがある方の更年期障害を改善してくれる漢方薬です。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
桂枝茯苓丸も、めまいや肩こりが気になる方の更年期障害に適している漢方薬ですが、当帰芍薬散との違いは、体の血が滞った体質(瘀血(おけつ)といいます)の方に効くということです。桂枝茯苓丸はこの瘀血体質に適した漢方薬として知られており、血液循環を良くして利水作用も高めることで、めまいやのぼせがある方の更年期障害を改善してくれる漢方薬です。
更年期障害に効果的な漢方薬リスト
ここでは、すでに紹介した漢方三大漢方婦人薬と呼ばれる漢方薬に加え、更年期にみられる症状に効果のある漢方薬をご紹介します。
ホルモンバランスが乱れ肩がこり、疲れやすくイライラなどある方

加味逍遙散(かみしょうようさん)
体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるものの次の諸症:冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症、不眠症
(注)「血の道症」とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状を指します。
一般的に「更年期障害」に使われる漢方薬
「加味逍遙散」の解説を見る
足腰の冷え、貧血や生理不順の方

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などを訴えるものの次の諸症:月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、産前産後あるいは流産による障害(貧血、疲労倦怠、めまい、むくみ)、めまい・立ちくらみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷え症、しもやけ、むくみ、しみ、耳鳴り
一般的に「更年期障害」に使われる漢方薬
「当帰芍薬散」の解説を見る
のぼせて足が冷える方の生理痛、生理に伴うイライラに

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
比較的体力があり、ときに下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどを訴えるものの次の諸症:月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、血の道症、肩こり、めまい、頭重、打ち身(打撲症)、しもやけ、しみ、湿疹・皮膚炎、にきび
(注)「血の道症」とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状を指します。
一般的に「更年期障害」に使われる漢方薬
「桂枝茯苓丸」の解説を見る
ストレスなどでイライラする不眠症の方

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
体力中等度以上で、精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う次の諸症:高血圧の随伴症状(動悸、不安、不眠)、神経症、更年期神経症、小児夜泣き、便秘
一般的に「更年期障害」に使われる漢方薬
「柴胡加竜骨牡蛎湯」の解説を見る
周りにあたってしまう・怒りっぽくなってきた方に

抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
体力中等度をめやすとして、やや消化器が弱く、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(神経過敏)、更年期障害、血の道症、歯ぎしり
(注)「血の道症」とは、月経、妊娠、出産、更年期など女性ホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状を指します。
一般的に「更年期障害」に使われる漢方薬
「抑肝散加陳皮半夏」の解説を見る
ドキドキしやすい方のストレスなどによる気疲れ、抜けないだるさに

柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
体力中等度以下で、冷え症、貧血気味、神経過敏で、動悸、息切れ、ときにねあせ、頭部の発汗、口の乾きがあるものの次の諸症:更年期障害、血の道症、不眠症、神経症、動悸、息切れ、かぜの後期の症状、気管支炎
(注)「血の道症」とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状を指します。
一般的に「更年期障害」に使われる漢方薬
「柴胡桂枝乾姜湯」の解説を見る
ホットフラッシュなどで、顔や手足が強くほてり汗ばむ方

知柏地黄丸(ちばくじおうがん)
体力中等度以下で、疲れやすく胃腸障害がなく、口渇があるものの次の諸症:顔や四肢のほてり、排尿困難、頻尿、むくみ
一般的に「更年期障害」に使われる漢方薬
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更年期障害と向き合う
次に、生活習慣の見直しによる更年期障害への対処法についてご紹介します。
生活習慣の改善
更年期を乗り切るためには、生活習慣の見直しが大切です。ポイントは、十分な睡眠、運動、情報の統一化などです。
十分な睡眠
睡眠不足は症状を重くします。体がほてって寝つきが悪い人は、氷枕などを利用すると寝つきがよくなる場合があります。また、寝る直前にお風呂に入ると体がほてるので、寝る2時間くらい前までに入浴を済ませるようにしましょう。夜にカフェインを含む飲み物をとると睡眠の妨げになります。午後以降、とくに夜はカフェインを含まない飲み物にするとよいでしょう。
運動
運動で血行が良くなると、更年期症状の緩和が期待できます。楽しみながら続けられるウォーキング、ジョギング、ダンス、水泳など、ご自身に合った運動を選びましょう。
情報の統一化
更年期には、ちょっと前のことも忘れてしまうことがあります。物忘れをするとそれを思い出そうとすることでストレスがたまり、イライラしてしまうことも。スケジュールや家庭の用事、体調、簡単な日記などを、すべて一つの手帳にまとめてみましょう。そうすると、行動のつながりを思い出しやすくなり、次に何をするかを考えられるようになって、イライラすることが減っていきます。
まとめ
更年期を笑顔で乗り切るためには、「気」「血」「水」の3本柱がしっかりと整っていることが大切です。不調を感じたら、まずは生活習慣から改善しましょう。それでも調子がいまひとつ、という方には漢方薬でのケアがおすすめです。