胃腸炎とは?感染性胃腸炎(胃腸風邪)の原因と症状、注意すべきポイント

胃腸炎とは?感染性胃腸炎(胃腸風邪)の
原因と症状、注意すべきポイント 最終更新日 2023年02月18日

胃、小腸、大腸に炎症が生じる「胃腸炎」。その中でも感染性胃腸炎は、ウイルスや細菌などの病原体が腸に入って感染し、腹痛や下痢、嘔吐などの症状が起こる病気です。
ここでは、感染性胃腸炎について、症状や原因、対処方法や予防についてくわしく解説します。

感染性胃腸炎(胃腸風邪)とは?

1. 感染性胃腸炎の症状

感染性胃腸炎の典型的な症状は、下痢、悪心・嘔吐、腹痛、食欲不振で、発熱することもあります。小児では嘔吐、成人では下痢が多いといわれています。

ただし、原因となる病原体や、病原体の量、感染した時の体調などにより、食欲不振や悪心程度で自然に治る場合もあれば、激しい嘔吐や水様の下痢など強い症状が出ることもあり、個人差があります。
特に小児や高齢者では、下痢によって脱水症状になることもあるため、油断は禁物です。

感染性胃腸炎は、「胃腸風邪」「おなかの風邪」と呼ばれることがありますが、体の中に入った病原体が腸の粘膜に感染して胃や腸の症状が出るため、風邪のような鼻水や咳といった症状は出ないことがほとんどです。

2. 感染性胃腸炎の感染経路

感染性胃腸炎の感染経路は、感染している人から感染する「接触感染」(人から人へ)と、病原体に汚染された食物などが口に入ることで感染する「経口感染」(食べ物から人へ)があります。

接触感染の場合、下痢や嘔吐物の処理や消毒が不十分な場合に、手指に付着して口から入ったり、乾燥してほこりと一緒に吸い込んだりして体内に取り込むことで感染します。
また、家庭や施設などで、感染している人との接触や飛沫から感染することがあります。

経口感染の場合、ウイルスや細菌に汚染された食物を十分に加熱処理せずに食べたり、水を飲んだりすることで感染します。また、感染している人が調理をした食物を食べることでも感染します。

3. 感染性胃腸炎の期間

感染性胃腸炎の期間は、細菌やウイルスの種類によって異なります。代表的な病原体と、その潜伏期間や症状のある期間は以下の通りです。

潜伏期間 症状のある期間の目安
ノロウイルス 24~48時間 1~2日間
ロタウイルス 2日間 1~2週間
アデノウイルス 3~10日間 1週間以上(下痢)
黄色ブドウ球菌 平均3時間 24時間以内に軽減
カンピロバクター 1〜7日間 1週間程度
サルモネラ菌 8~48時間 3~4日間下痢が持続
(1週間以上の場合もあり)

4. 非感染性胃腸炎との違い

感染性胃腸炎と非感染性胃腸炎との違いは、胃腸炎を発症する原因です。

非感染性胃腸炎は文字通り、感染以外の原因による胃腸炎です。
非感染性胃腸炎には、薬剤性、アレルギー性、中毒性、虚血性腸炎のほか、刺激物やアルコールの摂り過ぎ、暴飲暴食、寝冷えなどでも起こります。

非感染性胃腸炎とその原因

薬剤性腸炎 抗菌薬、非ステロイド性抗炎症薬、抗がん剤、ステロイド薬など
アレルギー性腸炎 小麦、牛乳、大豆、卵、ナッツ類など
中毒性腸炎 毒キノコや貝毒など
虚血性腸炎 動脈硬化など

5. 新型コロナウイルス感染症との違い

新型コロナウイルス感染症の症状として、下痢や腹痛、悪心・嘔吐など胃腸炎が起こることがあります。感染性胃腸炎の病原体が新型コロナウイルスということで、他の感染性胃腸炎と違いはありません。

あえて違いを言うとすれば、新型コロナウイルス感染症では、後遺症としても下痢・腹痛が報告されています。
また、小児では、無症状や軽症の新型コロナウイルス感染症後、しばらく経ってから、下痢、腹痛、嘔吐などの強い消化器症状が出る例が報告されています。

明らかな原因が思い当たらないにもかかわらず、4~5日間、下痢や腹痛など胃腸炎の症状がある場合、新型コロナウイルス感染症を念頭に入れることが必要です。
特に、2週間以内に新型コロナウイルス感染症の方や、その疑いのある方と接触した場合には注意しましょう。

感染性胃腸炎の原因

感染性胃腸炎の原因となる病原体の多くは、ウイルスと細菌です。
原因となる主なウイルスには、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどがあります。また、原因となる主な細菌には、カンピロバクター、サルモネラ菌、ウエルシュ菌、病原性大腸菌、黄色ブドウ球菌などがあります。これらの病原体が口などから体内に侵入し、腸内に感染して、腹痛や下痢、おう吐などの消化器症状を引き起こします。

感染性胃腸炎の原因となる主なウイルス

【 ノロウイルス 】

ノロウイルス

感染力が強く、100個以下のウイルスでも発症することがあります。汚染されたカキなどの二枚貝を、生のまま、または十分な加熱をせずに食べた場合などに感染し、潜伏期間を経て感染します。吐き気・おう吐、下痢、腹痛などが現れ、発熱は軽度です。これらの症状は通常1~2日で治まります。例年11月から2月にかけて流行します。

【 ロタウイルス 】

ロタウイルス

主に乳幼児に急性胃腸炎を引き起こすことで知られるウイルスです。100個以下のウイルスでも感染し、発症することがあります。水のような下痢やおう吐が繰り返し起こり、発熱や腹痛などもよくみられます。通常は1~2週間で自然に治まります。例年3月から5月にかけて流行します。

【 アデノウイルス 】

アデノウイルス

数は不明ですが、少量のウイルスでも発症すると推測されています。発症は乳幼児に多くみられます。主な症状は下痢で、1週間以上続くこともあります。発熱することは少なく、下痢とおう吐または下痢のみの場合もあります。

感染性胃腸炎の原因となる主な細菌

【 カンピロバクター 】

カンピロバクター

家畜やペット、野生動物の多くが持っている菌で、生または加熱不足の鶏肉などに存在することがあります。数百個程度で発症することがあります。発症すると下痢、腹痛、発熱、吐き気、おう吐、だるさなどが現れます。多くの場合、1週間程度で症状が治まります。

【 サルモネラ菌 】

サルモネラ菌

動物の腸内や、川・湖・下水などに広く存在しています。とくに鶏肉と卵を汚染することが多いです。発症すると悪心・嘔吐ではじまり、数時間後に激しい腹痛や下痢、38℃以上の発熱、おう吐などが現れます。下痢は通常は3~4日持続し、1週間以上続くこともあります。

【 ウエルシュ菌 】

ウエルシュ菌

ヒトや動物の腸内にいる菌で、いわゆる悪玉菌と呼ばれるもののひとつ。土壌や下水などにも広く存在しています。食肉・魚介・野菜などを加熱調理したカレーやシチューなどを放置することによって増殖します。腸内で大量に増殖すると、菌が作り出した毒素によってさまざまな症状が引き起こされます。潜伏期間は平均10時間で、主な症状は腹痛と下痢で、一般的に1~2日で治まります。

【 病原性大腸菌 】

病原性大腸菌

ヒトの腸内などにいる大腸菌のうち、病気・症状を引き起こすおそれのある大腸菌のことです。下痢原性大腸菌ともいいます。病気の起こしかたによって5つのタイプ(腸管病原性大腸菌、腸管侵入性大腸菌、毒素原性大腸菌、腸管出血性大腸菌、腸管凝集性大腸菌)に分類されています。とくに注意しなければいけないのが、O157などの腸管出血性大腸菌です。発症すると激しい腹痛、水のような下痢、血便などが現れ、その後、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重篤な症状が起こる場合もあります。

【 黄色ブドウ球菌 】

黄色ブドウ球菌

ニキビやおできなどの原因にもなる菌で、通常、ヒトののどや鼻などにも存在しています。潜伏時間が平均3時間と短く、発症すると吐き気やおう吐、腹痛などが現れます。通常は24時間以内に改善するとされています。

感染性胃腸炎にかかりやすい時期・季節

感染性胃腸炎の原因となるウイルスや細菌は、基本的には一年中存在しているものですが、それぞれに流行しやすい季節もあります。

国立感染症研究所の過去のデータによると、例年、感染性胃腸炎は初冬から増加し始め、12月にノロウイルスの流行がピークを迎えた後、減少傾向となり、春になるとロタウイルスにより再び増加傾向を示します。
夏場になると腸炎ビブリオ、病原性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクターなどの細菌による感染性胃腸炎が増加し、その後減少傾向となるのが一連の流れです。

こうした傾向を示す理由として、ウイルスは低温で湿気の少ない環境を好むため冬場にウイルス性の胃腸炎が増加する一方、細菌は高温で湿気が多い環境を好むため、ジメジメする梅雨から夏場には細菌性の胃腸炎が増加するということが挙げられます。

あくまでもこの季節に流行することが多いというだけで、それ以外の季節でも感染する可能性は十分にあります。とくに、子どもや高齢者、免疫力が落ちている人などは、季節にかかわらず感染しやすいと考えられるので、日頃から注意しておく必要があるでしょう。

感染性胃腸炎になったらどうする?

ここからは、感染性胃腸炎になった時の対処方法について説明していきましょう。

1. 生活上の注意

感染性胃腸炎は基本的には数日で自然に治るため、安静を保ち、経過をみていきましょう。
ただし、自分で水が飲めない程ぐったりしていたり、症状が強くなったりする場合などは、医療機関を受診する方が良いでしょう。

症状が強い間は辛いですが、もっとも大切なのは脱水にならないように、下痢や嘔吐で失った水分を補給することです。電解質も一緒に補給するために、スポーツドリンクや経口補水液を少しずつ飲むようにしましょう。

嘔吐や吐き気が治まったら、バナナ、おかゆ、ゼリーなど消化の良いものを少しずつでも食べることをおすすめします。脂っこいものや味の濃いもの、乳製品、コーヒー、アルコールなどは控えましょう。

2. 感染性胃腸炎の治療方法

感染性胃腸炎の治療方法として、まずおこなうべきは水分補給です。
自分で飲めない場合や脱水症状になっている場合には点滴をします。抗生物質などは、特殊な病原体を除き使用しませんが、食事や症状などから細菌性が疑われる場合には、抗生物質が投与される場合もあります。

吐き気止めや腹痛を和らげる薬などは、嘔吐や下痢が強い場合に使うことがありますが、下痢止めはウイルスや細菌の排出を遅らせるため使用しません。一方、乳酸菌製剤などの整腸剤は、下痢を長引かせない効果があるようです。

3. 周囲の人にうつさないための行動

周囲の人にうつさないためには、便や吐いた物の処理や、触れた物の消毒などを十分にすることが大切です。次のことに気を付けて行動しましょう。

① 便や吐いた物の処理をする時

汚物が乾燥する前に処理と消毒を済ませるようにしましょう。
使い捨てのマスクと手袋、エプロン、ペーパータオルを用いて処理します。汚物が付いた床は広い範囲で、次亜塩素酸ナトリウムの消毒液とペーパータオルでふき取ります。
処理した汚物などはひとまとめにしてビニール袋に入れ、しっかりと封をして捨てます。処理後は、石鹸でよく手を洗います。

② 消毒方法

ウイルスの消毒に効果があるのは、次亜塩素酸ナトリウムと加熱消毒です。ペットボトルを利用して、市販の次亜塩素酸ナトリウム(5~6%)を既定の濃度に希釈した消毒液を作ります。
効果が弱まるのを防ぐため陽の当らないところに保管し、毎日作り変えてください。

消毒の対象 濃度(次亜塩素酸ナトリウム6%液)
・汚物の付着した床
・衣類など
0.1%濃度(1000ppm)
水500mLに対して薬約10mL
・便座、ドアノブなど共有部分
・調理器具、シンク、ふきんなど
・日常の清掃
0.02%濃度(200ppm)
水500mLに対して薬2.5mL
・洗えないもの
・色落ちするもの
・煮沸消毒
・スチームアイロン等(85℃1分半)

③ 食べ残しや食器の処理

食べ残しや食器は、直接手で触れないようにしましょう。手袋をして処理したり洗ったりし、食器は0.02%濃度の次亜塩素酸ナトリウム液に浸して消毒します。

④ 共有部分や環境についての注意

タオルの共有は絶対してはいけません。使い捨てのぺーパータオルを使用し、他のごみと分けて捨てます。また、室内を換気することも重要です。

4. 感染性胃腸炎にかかった場合の登校・出社

感染性胃腸炎にかかった場合、病原体が一般的なサルモネラ菌、カンピロバクター、ロタウイルス、ノロウイルスなどでは、感染症法や学校保健法においても、出席や就業の制限はありません。
下痢や嘔吐の症状がおさまり、全身状態がよくなれば登校、出社することができます。

ただし、同法により第3類のコレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフスの感染性胃腸炎については、医師によって、感染のおそれがないと認められるまで登校や出社は制限されます。

また、学校や職場ごとに判断が異なることもあります。
個別に相談して対処することが大切です。ノロウイルスなど症状が回復した後も便への排菌が持続することから、手洗いなど職場や学校での感染防止に努めるようにしましょう。

5. 効果的な漢方薬

「おなかにくる風邪」や「胃腸炎」に効果的な漢方薬として、「柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)」がおすすめです。

柴胡桂枝湯には体の中の熱や炎症をしずめながら、胃腸を元気にし、下痢や嘔吐、吐き気で消耗した体力を補うはたらきがあります。そのため、体力中等度からやや虚弱な方の、腹痛をともなう微熱や寒気、頭痛、吐き気などのある胃腸炎に適しています。

感染性胃腸炎の予防策

感染性胃腸炎の予防策は、主に次の3つがあげられます。

基本的な予防対策は、石鹸を使った流水による手洗いです。トイレのあと、食事や調理の前などこまめな手洗いがもっとも大切です。

病原体に汚染された食品を摂らないことです。病原体となるウイルスや細菌は、原因食品を中心部まで十分に加熱することで感染を予防できます。以下は代表的な原因食品と病原体の加熱処理方法です。

感染性胃腸炎の原因食品と加熱処理方法

病原体 原因食品 加熱処理方法
カンピロバクター 鶏肉、豚肉 中心部を75℃で1分間以上
サルモネラ菌 鶏肉、鶏卵、牛肉、豚肉 中心部を75℃で1分間以上
ノロウイルス 二枚貝(カキなど) 中心部が85℃~90℃で90秒以上
腸管出血性大腸炎(O-157) 牛肉 中心温度75℃以上で1分間以上

現在、ロタウイルスにのみ乳幼児期に受けるワクチンがあります。生後6週から24週までの間に2回受けるタイプと、生後6週から32週までの間に3回受けるタイプの2種類で、定期接種です。

まとめ

感染性胃腸炎は通常は数日で自然と治るため、最優先される治療は水分を補うことです。薬による治療は一般的にはおこなわれませんが、胃腸の調子を整え、下痢や嘔吐などの症状に、柴胡桂枝湯は適した漢方薬と言えます。

感染性胃腸炎の予防のためには、こまめな手洗いを励行し、感染性胃腸炎の原因となる病原体を遠ざけることが大切です。もしかかってしまった場合には、周囲の人にうつらないように処理や消毒などの対策を講じるようにしましょう。

小谷敦子

薬剤師免許取得後、病院薬剤師として就職。ライフステージの変化にともない、調剤薬局の薬剤師とメディカルライターとしての実績を積んできた。東洋医学専門診療科のある大学病院の門前薬局では、漢方薬の処方に対する数多くの服薬指導を経験。