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下痢

下痢に効果的な漢方薬|下痢の原因とその改善方法とは

電車に乗っているとき、プレゼンなどの大事な場面でおなかが痛くなるという人は多いようです。下痢の症状・原因・改善方法を解説し、おすすめの漢方薬をご紹介します。自分の症状に合った漢方薬を見つけて、下痢の改善にお役立てください。

目次

下痢とは

下痢とは、便の量や水分、排便回数が増加することです。便の水分が異常に増え、液状またはそれに近い状態を「下痢便」と呼びます。下痢になると腸内ガス、腹部けいれん、便意の切迫を伴うことが多く、感染性微生物や有害物質によって引き起こされた場合は発熱や吐き気、嘔吐を伴うこともあります。


急性下痢と慢性下痢

下痢は、急に始まって短期間で治まる「急性下痢」と、3週間以上長く続く「慢性下痢」という分け方ができます。一般的に、急性下痢は暴飲暴食や食中毒などによる外因性の下痢です。一方、慢性下痢はストレスなどによる内因性の下痢です。


危険な下痢の症状

下痢の多くは数日で自然に治るのですが、下痢がずっと続く場合には、腸自体の炎症や潰瘍である可能性も考えられます。これらの症状は、消化器専門の医師にかかって、大腸検査をして判断されます。下痢が続く場合は、一度専門の医師を受診することをおすすめします。


ストレス性の「過敏性腸症候群」

過敏性腸症候群とは、ストレスなどが原因で、慢性的に下痢や便秘、腹痛を繰り返す疾患のことです。大腸や小腸に原因となる異常を特定できないのに、便通異常と腹部症状が続きます。症状は、通勤や通学の途中で電車に乗ったときや、人と会う前などに、突然、腹痛がしてトイレに行きたくなるといったものです。

下痢になる主な原因

下痢の主な原因は、暴飲暴食や冷え、細菌やウイルス感染、ストレスなどが考えられます。


食べ過ぎ・飲み過ぎ

急性の下痢の原因で多いのが、食べ過ぎや飲み過ぎた翌日に起こる下痢です。思い当たる方も少なくないのでは? この下痢は大部分が消化不良によるものです。とくに疲れているときは消化機能が弱っているので、下痢になりやすくなります。また、アルコールや辛い食べ物などは注意が必要で、その刺激で腸の蠕動運動が高まり過ぎて下痢することもあります。


細菌・ウイルス感染

O157やノロウイルスといった細菌やウイルスが食べ物といっしょに口から入って感染することで、急性の下痢の症状を起こすことがあります。これらの感染性急性下痢の症状は、血便、発熱や腹痛、吐き気や嘔吐などを伴うのが特徴です。また、脱水などの症状が現れ、医療機関での治療が必要になる場合もあります。


ストレス

下痢や便秘といった腸の症状には、緊張や不安などの精神的ストレスが大きくかかわっていると考えられています。ストレスによって自律神経が乱れて腸がけいれんするので、腸の動きがにぶくなり、下痢や便秘になったり、下痢と便秘を繰り返したりすることがあります。

下痢を改善する方法

警戒すべき危険な症状がある下痢の場合は、すぐ病院に行くことをおすすめしますが、ここでは、日常生活でできる慢性的な下痢の対処法をご紹介します。


腸内環境を整える

下痢を改善するには、生活習慣を整えるのはもちろんですが、それとは別に、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を取り入れることも大切になります。善玉菌は、悪玉菌の増殖を抑えて、腸内環境を整えるはたらきがあります。善玉菌はヨーグルトなどの乳製品、納豆など発酵食品などから摂取することが可能ですから、バランスよく摂取して腸内環境を整えましょう。また、乳酸菌などの生菌製剤を利用するのも効果的です。


食生活を改善する

腸管の異常な運動を起こさないために、暴飲暴食はせず、刺激のある食物や消化の悪い物を食べないよう気をつけましょう。また、冷たいものは避けてなるべく常温のものを摂取するように心がけるほか、コーヒーなどのカフェインを含むものやアルコールは避けましょう。腸への刺激が少なくて消化が良く、栄養価が高い食材を使って体の抵抗力を上げていくことも大切です。やわらかいご飯やうどん、サトイモ、ジャガイモ、卵、鶏のささみ、白身魚、豆腐、納豆、バナナ、リンゴ、ヨーグルトといった食材を積極的にとるようにしましょう。


ストレスをためず発散させる

消化管の運動は自律神経でコントロールされているため、ストレスが原因で自律神経が乱れると便通に異常が起こり、下痢や便秘になる可能性があります。慢性的な下痢の原因となるストレスを軽減するよう心掛けましょう。ゆっくり休息する時間をとる、睡眠をきちんととる、趣味を見つけるなどして、ストレスと上手につき合っていくことがポイントです。


繰り返す下痢には漢方がおすすめ

漢方では、下痢は主に水分が過剰になりたまった状態である「水毒」と考えられています。過剰な水分が胃腸にたまることで、腰や腹部が冷えます。そのことで、腹痛、下痢、おなかが張る、おなかにガスがたまりやすい、などのさまざまな症状が現れます。また、最近ではストレス、いわゆる「気」の停滞で下痢をする人が増えています。ストレスによって、腸管の動きが悪くなることで下痢になってしまうのです。漢方薬には、胃腸を温めることにより、余分な水分を体外に排出してくれる効果や、「気」の流れを良くしてストレスをやわらげる効果があります。さらに、症状が慢性化して下痢に悩まされる場合にも、漢方薬が効果的です。漢方薬は、単に下痢を止めるだけでなく、腸の状態を正常に戻していきます。

下痢に効果的な漢方薬

次に、下痢におすすめの漢方薬をご紹介します。


水様性下痢に

五苓散 第2類医薬品

五苓散(ごれいさん)


体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症:水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔
(注)「しぶり腹」とは、残便感があり、くり返し腹痛を伴う便意を催すものを指します。



一般的に「下痢」に使われる漢方薬
「五苓散」の解説を見る


急性胃腸炎、お腹が冷えて下痢になる方に

胃苓湯 第2類医薬品

胃苓湯(いれいとう)


体力中等度で、水様性の下痢、嘔吐があり、口渇、尿量減少を伴うものの次の諸症:食あたり、暑気あたり、冷え腹、急性胃腸炎、腹痛



一般的に「下痢」に使われる漢方薬
「胃苓湯」の解説を見る


不安や過労などのストレスによるみぞおちのつかえ、神経性胃炎に

半夏瀉心湯 第2類医薬品

半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)


体力中等度で、みぞおちがつかえた感じがあり、ときに悪心、嘔吐があり食欲不振で腹が鳴って軟便又は下痢の傾向のあるものの次の諸症:急・慢性胃腸炎、下痢・軟便、消化不良、胃下垂、神経性胃炎、胃弱、二日酔、げっぷ、胸やけ、口内炎、神経症



一般的に「下痢」に使われる漢方薬
「半夏瀉心湯」の解説を見る


腸が過敏で腹痛や下痢になりやすい方に

桂枝加芍薬湯 第2類医薬品

桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)


体力中等度以下で、腹部膨満感のあるものの次の諸症:しぶり腹、腹痛、下痢、便秘
(注)「しぶり腹」とは、残便感があり、くり返し腹痛を伴う便意を催すものを指します。



一般的に「下痢」に使われる漢方薬
「桂枝加芍薬湯」の解説を見る

まとめ

いかがでしたか? 便は健康のバロメーターです。下痢のタイプ別に合った対処法を行い、つらい状態から早く解放されるようにしましょう。急な下痢はたいてい数日で治るということを、経験的にご存知だと思いますが、記事でご紹介したように、なかには速やかな治療が必要な下痢もあるため、注意しましょう。