論文及び学会発表資料
研究所では
研究成果を対外発表しています。
過去に発表した論文及び学会発表をご紹介します。
ホームプロダクツカンパニー
- 「分光学的手法を用いた紫外線による子ども毛の毛髪表面変性解析」
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発表年2024年学会・媒体第29回高分子分析討論会 ウインクあいち
毛髪は物理的、化学的、環境的要因などで損傷を受けるが、特に紫外線(UV)はキューティクルに大きな損傷を与えることが報告されている。本研究では、成人よりも細く柔らかく、UVに日常的に曝露される機会が多い幼児毛髪に着目し、UVによる幼児毛髪の形態学的および化学的変化を調査した。その結果、幼児毛髪は600 J/cm²までのUV照射で有意な形態変化が確認され、特に300 J/cm²でキューティクルのリフトアップが確認された。また分光学的手法を用いて毛髪表面の化学変化を解析したところ、幼児毛髪は300 J/cm²でC=OやSO3Hなどの信号強度が有意に上昇することを見出した。さらにその化学変化機序として、まず脂質の脱離が起き、次にタンパク質のカルボニル化が起きることが示唆された。一方、本研究の照射条件下では、大人の毛髪に有意な変化は確認されなかった。以上より、幼児毛髪はUVダメージを受けやすいため、皮膚だけではなく毛髪にも適切なUVケアが必要だと考えられる。
- 「クレンジングクリームの製造条件検討におけるレオロジーの応用」
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発表年2024年学会・媒体第72回レオロジー討論会 山形
化粧品の処方開発において、設計通りの高品質で使用者が使いやすい製品を提供するために、最適な製造プロセスを確立することは非常に重要であるが、製造プロセスが使用感触に与える影響についての報告例は少ない。本研究では、クレンジングクリームをラボスケールから工場スケールへスケールアップを行った際に生じた使用感触の違い、特に塗布し始めの製剤の崩れ方を物性として捉えることを試みた。製剤を塗布し始めるときの動作を再現したせん断速度100s⁻¹におけるせん断粘度の時間依存性測定において、チキソトロピー性と相関が見られることを見出し、定量化するためチキソトロピー性インデックス(TI)を定めた。ラボ試作品同等の使用感触とするためには、工場生産において攪拌力を2/3に、もしくは分散時間を1/5にする必要があると推測された。また、ひずみ依存性測定により、製剤を塗布し始めの崩れ方には系内の凝集構造が寄与していることが考えられた。
- Why don't you change your skincare to “skin-friendly and eco-friendly”?
Fabulous emulsion with low-HLB surfactants will supply oil to your skin like drinking milk. -
発表年2024年学会・媒体2024 IFSCC Congress ブラジル・イグアス フォール
エマルジョンには安定性を高めるために乳化剤や合成増粘剤を多く配合するが、刺激性や感触の悪化、環境面への課題があった。「牛乳」のように低粘度で浸透性が高く安定なエマルジョンを作成するために相分離状態に着目、セスキオレイン酸ソルビタンとPPG-13-デシルテトラデセス-24との組み合わせを見出した。2つの乳化剤の最適な比率を検討し、共溶媒のBGと水との疑似三相平衡図を作成したところ、特定の比率においてⅠ相の液晶構造を形成することが分かった。この液晶構造に油剤を取り込ませ、その後水で希釈することによって、ラメラ液晶構造の形成を経てコールドプロセスで簡便にエマルジョンを作成することができた。油剤としてスクワランを用い、肌への油剤の浸透性を一般的なエマルジョンと比較した。テープストリップ後の角層中の油剤を定量したところ、新開発のエマルジョンは角層のより深層に、かつ多くの量を浸透させることが確認された。
- 「脂肪酸石けん系界面活性剤水溶液の粘弾性特性に与える香料成分の影響」
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発表年2024年学会・媒体日本油化学会第62回年会 山形大学工学部米沢キャンパス
界面活性剤水溶液のひも状ミセルは、その絡み合いにより溶液の粘度を高くするという特徴をもち、ボディソープ、シャンプーなどの製剤の安定性の一端を担っていると考えられる。過去の研究により、ひも状ミセル水溶液に炭化水素を可溶化させることで増粘挙動に変化が現れ、炭化水素の種類によって変化の傾向が異なることがわかっていた。また、ドデシル硫酸ナトリウム、疎水性界面活性剤であるトリ(オキシエチレン)モノドデシルエーテルの系のひも状ミセル水溶液に、種々の香料成分を可溶化させると、それらの極性により増粘挙動に影響を与えることが報告されていた。そこで本研究では脂肪酸石けん系界面活性剤のひも状ミセル水溶液の粘弾性特性に与える香料成分の影響について検討し、特性の変化を明らかにした。
- Age-related hair denaturation related to protein carbonyls
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発表年2024年学会・媒体International Journal of Cosmetic Science誌
これまでに我々は加齢により毛髪タンパク質がカルボニル化することを明らかにし、毛髪の曲率変化や水分挙動における関係性を見出してきた。本研究では、毛髪タンパク質におけるカルボニル化が加齢によって起こりやすい部位を特定し、さらにカルボニル化によっておこる高次構造変性について明らかにするため、生化学分析、熱分析、および分光分析を用いて調査した。その結果、加齢により毛髪タンパク質中のアミノ基含量が減少し、Intermediate filamentにおけるtype IIケラチンのカルボニル化が進むことが明らかとなった。顕微赤外分光分析と多変量スペクトル分解を用いた解析では、タンパク質二次構造におけるαヘリックスの存在量が加齢とともに減少することが示された。さらに高圧差示走査熱量測定の結果、変性エンタルピーも加齢とともに減少することが確認され、三次構造安定性の低下が示唆された。
- 「Noble boosting technique of penetration and adsorption for hair conditioning agent」
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発表年2024年学会・媒体ASCS 2024 conference インド・ゴア
カチオン性界面活性剤は、髪を柔らかく滑らかにする重要な成分としてヘアコンディショナー中に配合されているが、髪に効果的に浸透、吸着させる方法についてはあまり研究されていない。今回毛髪コンディショニング剤の一種である第三級アミンの併用に着目、カチオン性界面活性剤の浸透、吸着の強化について検討した。一つの系では乳酸で中和された第三級アミンをカチオン性界面活性剤と併用、もう一方は未中和の第三級アミンとカチオン性界面活性剤を併用し中和酸の影響を評価した。それぞれ毛束に処理を行い、第三級アミンとカチオン性界面活性剤の毛髪内部への浸透深度と強度をGCIB-TOF-SIMSで測定した。未中和の第三級アミンの系では、カチオン性界面活性剤と第三級アミンの浸透量が多く、深くまで浸透していることが明らかとなった。未中和第三級アミンを併用することで、カチオン性界面活性剤の髪への浸透を強化することが可能となった。
- 反復延伸によるゆがみ毛の形状変化ならびにそのケア方法の開発
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発表年2024年学会・媒体日本化粧品技術者会誌
加齢によってうねりやくせが目立つようになり、ゆがみ毛と言われる毛髪が増えてくる。“ ゆがみ毛” の存在によって、髪の手触りが悪くなり、まとまりや外観を損なうとともに、思うようなスタイリングが出来なくなるなどの課題が生じる。本研究では、ゆがみ毛に着目し、日常のお手入れ行動としてよく行われる髪を繰り返し伸ばす(反復延伸)行為との関係性を調査した。まず、ゆがみ毛保有者の行動調査では、繰り返しコーミングしてうねりやくせ対策を行っているが、その行為がかえって髪のまとまりを低下させていることがわかった。次に直毛とゆがみ毛について形態学的パラメータを定義してそれぞれサンプリングし、日常にかかり得る荷重ストレスにおいて反復延伸試験を実施した結果、ゆがみ毛は曲率が有意に上昇し、その一因として毛髪内部タンパク質のインターメディエイトフィラメントの構造安定性の低下が示唆された。さらに、ゆがみ毛の形状ならびに構造変化を抑制する成分としてPPG-2 アルギニンを見出した。
- 動的粘弾性測定を用いた直毛とゆがみ毛の加齢変化解析
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発表年2025年学会・媒体第85回分析化学討論会
直毛とゆがみ毛の加齢変化を生化学的・分光学的・物理化学的手法により明らかにした。ゆがみ毛は加齢変化により、10年前と比べて有意にカルボニル化タンパク質およびシステイン酸が増加した。さらに、動的粘弾性を測定した結果、tanδは、直毛は10年前と比べて減少(弾性化)し、逆にゆがみ毛は10年前と比べて上昇(粘性化)することを見出した。これは上記タンパク質の変性により、ゆがみ毛の内部タンパク質の架橋点が減少したためだと考えられる。以上のことより、直毛とゆがみ毛は加齢すると、形状(曲率や脂質局在)の違いだけではなく、タンパク質変性による粘弾性にも違いが生まれることが明らかとなった。
- 近赤外分光画像システムによるヒト頭髪部を対象とした診断システムの開発
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発表年2025年学会・媒体2025年繊維学会年次大会
NIR-HSIシステムを用いたヒト毛髪の診断について、スペクトルレベルではなく、全頭を対象としたデータ解析を行った。その結果、NIR-HSIとディープラーニング技術を合わせることで、毛髪のダメージ状態だけではなく、スペクトル単体では診断の難しかった年齢や性別についても判定が可能になる可能性が示された。
- Internal structural changes in age-related curved hair due to cyclical extension: An IR spectroscopy study
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発表年2025年学会・媒体International Journal of Cosmetic Science
加齢に伴うゆがみ毛に対して500回の繰り返し伸長を行い、赤外分光とケモメトリクス解析によって内部構造変化を調べた。多変量スペクトル分解により、ゆがみ毛では125回以降にCH₂やC=Oなど脂質由来シグナルが増加し、225回以降にはSO₃Hシグナルが増大したが、直毛では同様の変化は見られなかった。また二次元相関分光分析により、伸長によってまずS–SO₃Hが生成され、その後SO₃Hが形成されること、さらにSO₃H生成後にケラチン二次構造が変化し、αヘリックスがほどけてβ構造へ変換されることが示唆された。これらの結果から、ゆがみ毛の内部変化は、内部脂質の表面移動、C–SおよびS–S結合の二段階の切断、そして225回以上の伸長によるαヘリックスからβ構造への転換という三段階で進行することが明らかとなった。これらの知見は、日常の整髪行為による毛髪のゆがみ進行を理解し、適切なケア方法を検討する上で有用である。
薬品カンパニー
- 高速液体クロマトグラフー四重極ー飛行時間質量分析計を用いた生薬中の不純物スクリーニング法
及びその定量法の開発(Pyrrolizine alkaloids) -
発表年2024年学会・媒体日本薬学会 第144年会
15種のPAsのスクリーニングが可能な方法を開発した。その方法を用いて3種の生薬合計10検体についてスクリーニングを実施したところ、シコンからEchimidineと、Lycopsamineあるいはその構造異性体であるIntermedineが検出された。検出されたPAsの内、標準品が入手可能なEchimidineを定量した結果、1ppm以上のEchimidineが検出された。本研究で構築したプロトコルを用いることで、生薬中の15種PAsのスクリーニングと一部PAsの定量が可能となった。
- リアルタイムPCR法を用いた生薬及び漢方処方エキスからの特定微生物の検出法(第4報)
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発表年2024年学会・媒体日本薬学会 第144年会
第十八改正日本薬局方における〈5.02〉生薬及び生薬を主たる原料とする製剤の微生物限度試験法には特定微生物試験が規定されている。この試験は標準的な培養法を採用しており、試験結果を得るには数日間を要するため、迅速で簡便な特定微生物試験法の開発が望まれる。本研究では過去にリアルタイムPCR法で約30品目の生薬から大腸菌・サルモネラを検出できることを示した。第十九改正日本薬局方参考情報の〈G4-6-190〉微生物迅速試験法に「各試験と検証が必要なバリデーションパラメーター」が追加される予定であり、定性試験の項目を参照し、本報では試験法の検出限界及び頑健性に加えて、精度についても検討を行った。なお、試験法の特異性及び適合性は過去にすでに報告している。検討の結果、すべての項目において問題ないことを確認し、リアルタイムPCR法は生薬の特定微生物試験に応用できることを確認できた。本試験法は培養法より試験日数を2日以上短縮でき、培養法の迅速化の手段として製造現場で利用できると期待される。
- 熱重量分析装置TGA801を用いた灰分試験の自動化の検討
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発表年2024年学会・媒体日本薬学会 第144年会
第十八改正日本薬局方(以下、JP18)で漢方処方エキス及び生薬の品質試験として規定されている灰分試験は、予備灰化・長時間強熱灰化及び恒量確認の工程があり、手間と時間を要する。そこで、プログラムに従い自動的に加熱(~1000℃)、冷却、秤量(>0.1 mg)を行う熱重量分析装置TGA801(LECOジャパン合同会社)を用いた灰分試験の自動化装置を用いた漢方処方エキスの灰分試験の自動化の可能性について検証を行った。JP18収載エキス9品目(3ロット)についてTGA法で測定した結果、予備灰化(250℃、30分)+強熱灰化(550℃、4時間)の条件下では9品目中4品目について恒量確認ができなかった。一方、予備灰化(250℃、30分)+強熱灰化(550℃、10時間))の条件下では、全ての検体で恒量確認ができ、灰分値も全てJP18規定値以内であった。以上の結果から、JP18収載エキス9品目について熱重量分析装置TGA801による自動化条件を確立し、本装置を利用した灰分試験の可能性が示唆された。
- 漢方製剤における生物学的同等性の評価指標成分の探索
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発表年2024年学会・媒体フォーラム富山「創薬」第59回研究会
医療用医薬品の承認申請は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)に則って行われるが、本承認制度は単一化合物あるいは少数の既知化合物から構成される化学薬品を想定したもので、未知化合物を含む多種多様な化合物から成る天然物医薬品である漢方製剤にそのまま適用することは難しい。そのため、1985年の「医療用漢方エキス製剤の取扱いについて」(薬審2第120号)等に基づく148処方の代替新規申請以降、新たな医療用漢方製剤は承認されていない。我々は、国立医薬品食品衛生研究所と共同で、非常に多くの成分より構成される天然物医薬品である漢方製剤に関する基礎的知見を得ることを目的として漢方処方の湯剤とエキス製剤を用いた臨床試験を実施し、ヒトに投与した際の薬物動態が確認できる化合物を探索してきた。その中で、マオウに含有されるephedrineやpseudoephedrine、カッコンに含有されるpuerarinは生物学的同等性を得られる可能性が高いことを明らかにした。今回、得られた知見について紹介する。
- マイクロコロニー法による生薬及び生薬を主たる原料とする製剤の生菌数試験における迅速化の検討(第3報)
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発表年2024年学会・媒体日本防菌防黴学会第51回年次大会
第十八改正日本薬局方(JP18)における生薬及び生薬を主たる原料とする製剤の微生物限度試験法< 5.02 >には、生菌数試験として総好気性微生物数及び総真菌数の評価が規定されている。これらの試験法は、対象となる微生物が目視で観察できるまで数日間を要するため迅速な試験法の開発が望まれる。本研究では、JP18参考情報の微生物迅速試験法< G4-6-170 >に記載されているマイクロコロニー法を応用した微生物微小コロニー迅速検査装置TM-LAB plus(槌屋)の適用について検討してきた。これまでに、葛根湯エキス及び構成生薬の総好気性微生物数評価においてTM-LAB plusを用いたマイクロコロニー法(以降TM-LAB法)の適応が可能であることを示した。本報では、総真菌数評価の条件検討及び総好気性微生物数評価の条件の見直しを行い、生菌数試験TM-LAB法による19生薬の生菌数試験を実施した。検討の結果、総好気性微生物数評価では全ての生薬、総真菌数評価ではオウレン及びボレイを除く17生薬で正しい菌数評価ができ、本法は生薬の生菌数試験に利用できる可能性が示唆された。一方、オウレンは自家蛍光によりコロニーの識別ができないこと、ボレイは菌の増殖抑制により菌数が過小評価される課題が判明した。
- 二酸化炭素超臨界流体抽出-LC-MS/MSを用いた植物試料中のマイコトキシン分析法の開発と
ハンセンの溶解度パラメータを用いた抽出寄与パラメータの解析 -
発表年2024年学会・媒体日本分析化学会第73年会
マイコトキシンはカビが産生する二次代謝物のうち健康影響を及ぼす化合物の総称であり、低濃度でも健康被害を及ぼすため、様々な国や地域で最大基準値が設定されている。マイコトキシン分析は特に夾雑成分の多い乾燥食品やスパイスでは複数の前処理法を組み合わせる必要があり、煩雑性や再現性で課題がある。二酸化炭素を用いた超臨界流体抽出 (CO2-SFE) は浸透力、溶出力及び夾雑成分との分離能の高さから、残留農薬など食品中不純物スクリーニングの抽出法として検討されつつある。CO2-SFEは共溶媒として有機溶媒を混合し、抽出力を変化させることができる。そのため、CO2-SFEのメソッド開発には測定対象に応じた共溶媒の選択が必要であるが、経験的に共溶媒を選択しており、抽出力に与える影響は明らかではない。そこで、共溶媒とマイコトキシンの物性パラメータを用いて共溶媒の種類とマイコトキシンの抽出率との関係を考察した。ハンセンの溶解度パラメータを説明変数、マイコトキシンの抽出率を目的変数として重回帰分析した結果、自由度調整済み決定係数 (R2) の値が0.92と非常に高く、説明変数が目的変数を説明できていることが分かった。また、3種のハンセンの溶解度パラメータのうち、今回の定対象マイコトキシンの抽出には特に水素結合性に関するパラメータの寄与が高いことが明らかとなった。
- 二酸化炭素超臨界流体抽出を用いたマイコトキシン前処理法の開発とハンセンの溶解度パラメータを用いた抽出寄与因子の解析
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発表年2025年学会・媒体日本薬学会第145年会
二酸化炭素を用いた超臨界流体抽出(CO2-SFE)は、食品中のマイコトキシンなど不純物分析の前処理法として有用であるが、共溶媒選択は経験則に依存している。本研究では、ハンセンの溶解度パラメータ(HSP)を用いて、共溶媒の種類とマイコトキシン抽出率の関係を検討した。5種の共溶媒を用いたCO2-SFEによりマイコトキシン抽出率を評価し、重回帰分析を行った結果、調整済みR²は0.92と高く、HSPによる抽出率予測の有効性が示された。特に水素結合性パラメータの寄与が大きかった。さらにSc-CO2のHSP算出にも成功したが、混合流体と抽出率の相関は弱く、その要因について検討中である。
- LC-MS多成分一斉分析を用いた葛根湯エキス確認試験の迅速化
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発表年2025年学会・媒体日本薬学会第145年会
天然由来生薬からなる漢方処方エキスでは、日本薬局方(JP)によりTLC確認試験が規定されているが、工程数が多く、処方ごとに複数試験を要するため簡略化が求められている。本研究では、JP収載葛根湯エキスを対象に、6生薬に対応する6種の確認成分をLC-MSにより一斉分析する迅速な確認試験法を検討した。標準溶液から最適な質量電荷比を選定し、混合標準溶液および葛根湯エキス試料を用いてLC条件を最適化した。特異性は各生薬を欠いたブランクエキスで確認し、TLCの検出下限を閾値として判定基準を設定した。その結果、15検体で従来のTLC法と同等の判定が得られ、全工程約1時間で試験可能となり、大幅な工数削減が示された。
- 遺伝情報を利用したセンキュウの鑑別マーカーの探索
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発表年2025年学会・媒体日本薬学会第145年会
センキュウは防風通聖散などに配合される重要な生薬であるが、日本薬局方(JP18)と中国薬典(CP2020)では基原植物が異なり、近縁生薬との鑑別が重要である。本研究では、日本市場に流通するJPセンキュウが規定基原植物Cnidium officinaleであるかをDNA解析により確認し、近縁種との鑑別マーカーを探索した。JPセンキュウ11検体およびコウホン2検体からDNAを抽出し、複数の葉緑体遺伝子領域と核遺伝子ITS1を解析した結果、JPセンキュウはC. officinaleと一致し、psbA、atpB‑rbcL、trnK、rpl32‑trnL領域が近縁種との鑑別に有用である可能性が示された。一方、JP18収載のTLC確認試験ではJPセンキュウとコウホンの判別はできず、形態鑑別が困難な場合には遺伝学的手法の有用性が示唆された。
- 生薬中不純物分析の実例ーマイコトキシンについてー
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発表年2025年学会・媒体第404回液体クロマトグラフィー研究懇親会
アフラトキシン(AFs)は強い毒性と発がん性を有するマイコトキシンであり、ng g⁻¹オーダーでの厳格な管理が求められている。分析前処理として広く用いられるイムノアフィニティーカラム(IAC)は高い特異性を有する一方、複雑な植物マトリックスでは回収率低下が問題となる。本研究では、シナモン中に多量に含まれるプロアントシアニジンがAFsと複合体を形成し共沈することが回収率低下の原因であると仮定し、その解明と新規前処理法の開発を行った。GPC解析によりプロアントシアニジンの分子量分布を明らかにし、AFsとの共沈を確認した。さらに、ジルコニア担持シリカゲルによる前処理でプロアントシアニジンを除去後、IACとLC‑MS/MSを組み合わせることで、AFs回収率を約80%まで改善した。本法はバリデーションおよび実試料への適用により有効性が示され、プロアントシアニジン含有植物試料中AFs分析に有用であると考えられた。
- 生薬に付着するアフラトキシン産生菌の実態調査
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発表年2025年学会・媒体日本防菌防黴学会第52回年次大会
アフラトキシンは発がん性を有するカビ毒であり、生薬においても海外では規制対象となっている。本研究では、生薬に付着するアフラトキシン産生菌の実態を明らかにすることを目的とし、海外で規制のある12品目の生薬について調査を行った。総アフラトキシン測定の結果、オンジ、サンソウニン、トウニン、ヨクイニンの4検体から1~9 ppbが検出された。これらを対象に産生菌数を測定したところ、オンジ、サンソウニン、トウニンの3検体から約10² CFU/gのアフラトキシン産生菌が検出された。分離菌7株を同定した結果、Aspergillus flavusまたはA. parasiticusであり、そのうち5株にアフラトキシン産生能が確認された。以上より、一部生薬では規格値内であっても産生菌付着のリスクがあり、適切な管理の必要性が示唆された。
- マイクロコロニー法による生薬及び生薬を主たる原料とする製剤の生菌数試験における迅速化の検討(第4報)
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発表年2025年学会・媒体日本防菌防黴学会第52回年次大会
日本薬局方(JP18)では、生薬および漢方処方エキスの微生物限度試験として培養法による生菌数評価が規定されているが、結果取得までに数日を要する。本研究では、微生物迅速試験法であるマイクロコロニー法を応用したTM‑LAB plusの漢方処方エキスへの適用性を検討した。遠心分離による前処理により測定阻害が改善され、培養条件は総好気性微生物数で33℃、総真菌数で25℃、染色時間は2分以上が適切と判断された。設定条件下で15品目のエキスを評価した結果、総好気性微生物数では麻黄湯エキスを除く14品目、総真菌数では全品目で従来法と同等の菌数評価が可能であった。TM‑LAB法は漢方処方エキスの迅速な生菌数試験に有用であることが示唆された。
- 熱重量分析装置TGA801を用いた生薬における灰分試験の自動化の検討
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発表年2025年学会・媒体日本生薬学会第71回年会
第十八改正日本薬局方(JP18)に収載されている灰分試験は、予備灰化から長時間の強熱灰化、恒量確認まで多くの工程を要し、時間と労力がかかる試験である。本研究では、熱重量分析装置TGA801を用いた灰分試験の自動化法(TGA法)について、生薬への適用可能性を検討した。JP18記載条件に基づき、生薬75品目を測定した結果、条件①(550℃・10時間)では71品目が良好に灰化できたが、糖分を多く含む4品目では炭化により不十分であった。これらに対し強熱時間を34時間に延長した条件②を適用したところ、3品目で十分な灰化が確認された。以上より、TGA法は多くの生薬に適用可能であり、従来の手動法と比べて作業の安全性向上、試験時間の短縮、省力化に寄与する有用な手法であることが示唆された。
- 生薬及び漢方処方エキス中の元素不純物試験法バリデーションと実測
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発表年2025年学会・媒体薬学雑誌
第十八改正日本薬局方(JP18)で新規収載された一般試験法〈2.66〉元素不純物は、比色法による一斉管理から機器分析を用いた個別管理へ移行し、元素ごとのリスクに基づく管理を可能とした。本研究では、生薬および漢方処方エキスへの適用可能性を検討するため、〈2.66〉の考え方に基づき、クラス1および2Aに分類される7元素(Cd、Pb、As、Hg、Co、V、Ni)を対象に分析を行った。根・根茎を薬用部位とする生薬10種およびそれらを配合した漢方処方エキス12種について分析法をバリデートし実試料を測定した結果、一部試料では〈2.66〉試験法の適用が可能であると考えられた。一方、生薬製剤の服用実態を考慮すると、許容濃度をそのまま適用する管理は難しく、実態把握に基づき医薬品各条で元素ごとに個別管理する必要性が示唆された。
- オタネニンジン各部位におけるサポニン含量分析
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発表年2025年学会・媒体日本生薬学会第71回年会
オタネニンジン含有健康食品では、原料部位の違いによりサポニン含有量や組成に大きな差があることが知られているが、各部位のサポニンパターンに関する詳細な検討は少ない。本研究では、オタネニンジンの茎葉、芦頭、主根、細根に含まれるサポニンパターンを明らかにすることを目的とした。2~4年生ニンジンの各部位を分析した結果、サポニン含量および主要ギンセノシド組成は部位や生育年数により異なる傾向を示した。さらに5年生ニンジン主根および細根から調製した水および含水エタノールエキスのサポニンパターンは、それぞれ原料部位のパターンとほぼ一致した。これらの結果から、健康食品中のサポニンパターンを解析することで、使用されたオタネニンジン原料の部位を推定できる可能性が示唆された。
- 高分解能質量分析計を用いた漢方処方エキス中の指標成分 (Atractylenolide Ⅲ及びGeniposide) の代謝物解析
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発表年2025年学会・媒体日本生薬学会第71回年会
漢方薬は多数の成分から構成され、生体内代謝によりさらに多様な代謝物を生成するが、標準品不足や代謝物の多様性から網羅的解析は困難である。本研究では、加味逍遙散エキスおよび指標成分であるAtractylenolideⅢ、Geniposideを対象にin vitro代謝試験を行い、高分解能質量分析と解析ソフトウェアを用いた代謝物探索を実施した。各試料をミクロソーム画分でインキュベート後、UPLC–高分解能MSにより測定し、UNIFI、MassMetaSite、Progenesis QIを用いて解析した。その結果、AtractylenolideⅢおよびGeniposideでは、それぞれ代謝物と考えられる化合物が検出された。また、加味逍遙散エキスでは多変量解析により、反応群と未反応群の間で有意差(p<0.05)を示す複数の代謝物候補が検出された。本手法は、漢方処方由来代謝物の網羅的探索に有用であることが示唆された。
- 超臨界流体クロマトグラフィーを用いた14種マイコトキシンの分析条件検討
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発表年2025年学会・媒体日本分析化学会第74年会
マイコトキシンは低濃度でも健康被害を及ぼす可能性があるため、迅速かつ高精度な分析法が求められている。本研究では、前処理の大幅な時間短縮が可能な超臨界流体抽出(SFE)を発展させ、抽出から分離までを連続的に行うオンラインSFE–超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)への適用を目的として、14種マイコトキシンのSFC条件を検討した。島津製作所製Nexera UCシステムと質量分析計を用い、6種の分析カラムを比較した結果、Shim-pack UC‑Diol Ⅱが最も良好な分離を示した。生薬(カンゾウ、ショウキョウ)のSFE抽出液およびスパイク試料を測定したところ、オクラトキシンA(OTA)を除く13種で特異性に問題はなく、マトリックスファクターも80–110%と良好であった。OTAではキャリーオーバーの影響が示唆されたが、13種マイコトキシンについてはオンラインSFE–SFCへの適用可能性が確認された。
フーズカンパニー
- 泡沫状服薬補助食品の開発およびその薬剤溶出性への影響について
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発表年2022年学会・媒体第32回日本医療薬学会年会
泡沫状服薬補助食品(おくすりパクッとねるねる)に薬剤を混合した時の薬剤溶出性への影響について、溶出試験法により評価した。試験は日本薬局方に準じて実施し、薬剤はアセトアミノフェン製剤、プレドニゾロン製剤、フロセミド製剤、メトロニダゾール製剤の4種を対象とした。判定基準には、各製剤に設定された溶出性の基準(溶出規格)を用いた。試験の結果、4種すべての薬剤において、溶出規格を満たす溶出性を確認した(n=12)。このことから、泡沫状服薬補助食品(おくすりパクッとねるねる)は薬剤の溶出性を妨げないことが示唆された。
- ゲラニオール配合ローズフレーバーソフトキャンディの喫食影響の研究
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発表年2022年学会・媒体日本農芸化学会2022年度大会
ゲラニオール配合ローズフレーバーソフトキャンディが、マスク着用時の不快感の解決に繋がる可能性について検証した。まず、精神面への影響をアンケートにより確認したところ、キャンディを喫食することでリラックス・リフレッシュしたと感じること、気分が良化し、ネガティブな感情が減少する傾向が見られた。次に、マスク内空間(マスクと体表面の空隙)の状態を調査すべく、マスク内面に付着した成分をGC/MSにて分析すると、喫食30分後のマスクからゲラニオールが検出された。また、キャンディ喫食時の脳波への影響を確認したところ、喫食前後でα波の出現率(%)が上昇していることが確認された。これらの結果より、ゲラニオール配合ローズフレーバーソフトキャンディを喫食することで、マスク内空間の環境が改善され、α波の出現率上昇、及び気分の良化・ネガティブ感情が減少する可能性が示唆された。
3事業の枠を越えた研究
- アルクチゲニンを含むレンギョウ葉エキスの疲労感軽減効果および睡眠の質改善効果
—ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験— -
発表年2022年学会・媒体Japanese Pharmacology & Therapeutics, 2022, 50(1), 61-77
レンギョウの葉には抗酸化作用や抗炎症作用を有するアルクチゲニン(AG)が豊富に含まれており、疲労および睡眠の質に対する改善効果が期待される。本研究では、日常的に疲労感を自覚しており、25.0≦BMI≦30.0、20歳以上65歳以下の健常成人男女120名を対象に、レンギョウ葉エキス(RLE)配合食品(AG 80 mg/日)またはプラセボを4週間摂取した。その結果、RLE配合食品摂取群はプラセボ群に比べてVAS(疲労感)が有意に改善し、Chalder疲労質問票の身体的および精神的疲労スコアが有意に低下した。また、OSA睡眠調査票MA版およびセントマリー病院睡眠質問票において、睡眠感や睡眠の質に関するいくつかの指標が有意に改善した。これにより、AGを含有するRLE配合食品は、日常的な疲労感の軽減および睡眠の質の改善に効果があることが示された。
- アルクチゲニン含有ゴボウスプラウトエキスの疲労感軽減効果および睡眠の質改善効果
—ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験- -
発表年2022年学会・媒体Japanese Pharmacology & Therapeutics, 2022, 50(11), 1989-2003
ゴボウスプラウトに豊富に含まれるアルクチゲニン(AG)は、様々な生理活性を有することが知られており、疲労および睡眠の質に対する改善効果が期待されている。本研究では、日常的に疲労感を自覚しており、23.0≦BMI≦30.0、20歳以上65歳以下の健常成人男女120名を対象に、ゴボウスプラウトエキス(GSE)配合食品(AG 40 mg/日)またはプラセボを4週間摂取した。その結果、GSE配合食品摂取群はプラセボ群に比べてOSA睡眠調査票MA版およびセントマリー病院睡眠質問票において、睡眠感や睡眠の質に関するいくつかの指標が有意に改善した。また、特定の集団においては日常的な疲労感の軽減が認められた。以上よりAGを含有するGSE配合食品は、睡眠の質の改善や日常的な疲労感の軽減に有用な食品であることが確認された。
- 健康ビッグデータを用いた冷え症の特徴因子解析
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発表年2025年学会・媒体第79回日本栄養・食糧学会大会
東洋医学において冷え症は未病状態を示す体質の一つとして捉えられており、冷え症の改善は健康維持やQOL向上に役立つと考えられている。本研究では、弘前大学を中心に進めている岩木健康増進プロジェクト健診の健康ビッグデータを活用し、冷え症に関連する因子の探索および新規の冷え症改善アプローチを検討した。その結果、冷え症者は非冷え症者と比較し、男女ともに皮膚温、BMI、内臓脂肪面積および血中ジホモ-γ-リノレン酸(DGLA)が有意に低く、CES-D(うつ病尺度)、JESS(エプワース眠気尺度)および排尿障害を評価するIPSSが有意に高かった。この中で、DGLAと冷え症との関係については新たな知見であり、新規の冷え症マーカーとなる可能性が示唆された。
- 冷え症バイオマーカーとしてのジホモγ-リノレン酸の可能性
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発表年2025年学会・媒体日本脂質栄養学会第34回大会
岩木健康増進プロジェクト健診の超多項目健康ビッグデータを活用し、冷え症と、ジホモγ-リノレン酸(DGLA)を含むエイコサノイド前駆体、および脂肪酸不飽和化酵素(FADS)の遺伝子多型との関連について調査した。その結果、冷え症者は非冷え症者と比較してDGLAが有意に低値を示した。一方、アラキドン酸(AA)およびエイコサペンタエン酸(EPA)では差が認められなかった。また、AA/DGLA比は冷え症者で有意に高かった。DGLAは年齢による変動が大きかったが、AA/DGLA比はその影響が小さく、比較的安定した指標となる可能性が示唆された。FADS1遺伝子多型(rs174547)について、メジャーホモ接合体群はマイナーホモ接合体群と比較して男女ともにAA/DGLA比が有意に高値を示し、冷え症者の割合が高い傾向が認められた。
- レンギョウの化粧品素材応用を目指した皮膚バリア機能に対する機能性評価
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発表年2025年学会・媒体第42回和漢医薬学会学術大会
レンギョウ(Forsythia Fruit)はモクセイ科レンギョウの果実を基原とする生薬で消炎、解毒作用が知られている。今回、レンギョウの化粧品素材としての可能性を見出すためレンギョウ葉の皮膚バリア機能への作用に着目し検討を行ったその結果、タイトジャンクション構成タンパクであるクローディン1、オクルディンの発現上昇が確認され、細胞接着部位にこれらタンパクの集積が認められた。また、保湿に関わるカスパーゼ14の発現増加が認められた。これらの結果からレンギョウ葉はタイトジャンクション、カスパーゼ14を介して皮膚バリア機能・保湿に作用する可能性が示唆され、化粧品素材としての有用性を見出した。
- 低湿度ストレスが引き起こす細胞傷害
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発表年2025年学会・媒体第3回日本化粧品技術者会学術大会
皮膚は身体内部の水分蒸散を防ぎ、外部からの異物の侵入を防御するバリアとして重要な役割を果たす一方で、身体の最外層に位置しているため、紫外線、温度・湿度や化学物質といった外部環境因子に常に晒されている。これまでに低湿度による皮膚の炎症応答に着目し研究を行い、短時間での炎症シグナル応答機構について報告している。本研究では低湿度により引き起こされる炎症応答が細胞機能にどのような影響をおよぼすか、細胞傷害の観点から検証を行った。その結果、低湿度ストレスはシグナル伝達、細胞増殖・死、免疫システムに関連するタンパクを変動させること、さらに、細胞傷害因子の放出を誘導し、表皮細胞に対してアポトース・ネクローシスを引き起こすことを見出した。これらのことから、低湿度は炎症シグナル経路を活性化し、細胞傷害を引き起こすことで荒れ肌のような皮膚ダメージにつながる可能性が示唆された。
- 表情の変化を伴う動的なシワの評価方法
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発表年2025年学会・媒体技術情報協会 書籍 「皮膚の測定評価と可視化、イメージング技術」
シワは、エイジングのサインとしてだけではなく、ライフスタイルや健康状態をも表すと言われ、その評価は大変有益である。表情や環境によって構造を大きく変化させるシワが、日々の生活の中で、いつ、どのように形成されるのかを明らかにするためには、シワを簡便にリアルタイムで評価する方法が求められる。表情の変化を伴う動的なシワを評価するために行われてきた従来の方法について、ヒト試験による直接評価と画像解析による間接評価に分け、それぞれの特徴を紹介した。また、日々の生活の中で見られるシワを簡便で高感度に定性・定量評価できる方法として、VISを用いたシワの評価方法を開発した。この方法は、画像データひとつあればシワが評価できる点が特徴である。そのシワ抽出メカニズムや従来法との相違について論じ、この方法を用いることで表情が変化した際の抗シワ製剤の有用性が評価可能となったことを示した。

