ストーリーから見つける

使い手に寄り添いながら、香りという目に見えないものを形に。

ヘアケア、ボディケア、フェイスケアといった商品において、香りはブランドイメージを左右する重要な要素の一つ。今回は、クラシエの全ブランドの香りを一手に担う、ビューティケア研究所第二研究部に所属し、香料開発を担当しているIさんにお話を伺いました。

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香りを介在したコミュニケーションを重ね、イメージを具現化

香料の開発だけでなく、香料の機能の研究にも携わっているIさん。香りによる感情の変化や、頭皮の匂いを抑える香料などについても研究している。

「香りって目に見えないですよね。だからこそ言葉で伝えるのは非常に難しいですが、見えないものを作る仕事はとても面白いです」

香料の仕事に携わって今年で11年目を迎えるIさんは、そう生き生きと語ります。

 

Iさんが主に取り組んでいるのは、香料の開発。各ブランドのマーケティング担当とディスカッションを重ねながら、イメージを絞り込み、香り作りを進めていきます。さらに、製剤にした時の香りのパフォーマンスを評価し、何度も改良を繰り返します。

「ブランドのイメージを表現する香りを作り上げるため、マーケティング担当とコミュニケーションを取りながら、頭の中に思い描いているものを具現化していきます。ぼんやりとしたイメージしか持っていないと具現化はできないので、香りを介してコミュニケーションを密に取り、イメージを共有しながら作っていくことを大切にしています」

マーケティング担当だけでなく、研究所の他のチームのメンバーなど、社内の人たちと連携を取る中で、香りを表現する語彙力も求められます。

「たとえば冷たいイメージの香りを作りたいとしたら、どんなふうに冷たいのか、どれくらいの冷たさなのか。いろいろな香りを嗅いでいただいて、この冷たさは良い、この冷たさはちょっと違うと、一つひとつチェックしていきながら、香りと言葉を介して、思い描くイメージを形にしていきます。やり取りの中でコンセプトの芯の部分を理解して、本質をしっかりとつかむことが大事ですね」

香りという目に見えないものを形にする難しさを日々感じているからこそ、調合の微調整を繰り返して「これだ!」と思える香りが完成した瞬間の喜びはひとしお。

「商品に関わる社内メンバーから『そうそう、こういう香りを求めていた』と言われると、皆さんとのコミュニケーションを通して具現化できたんだなという実感が湧きますし、やってきて良かったと大きなやりがいを感じます」

香りを作り上げるためには、研究所内のメンバーをはじめ社内外との連携が不可欠。丁寧なコミュニケーションを重ねてイメージを共有する。

香りに真摯に向き合い、さらなる高みを目指す

クラシエの一般流通向け商品にもプロフェッショナル向け商品にも携わっているIさんは、常に商品が使われる場面を想像し、使い手の気持ちに寄り添いながら、香り作りに取り組んでいます。

「まず清潔感のある香りというのが大前提。特にプロ向けの場合は、毎日使うわけではなく、サロンや宿泊・温浴施設などの非日常空間で使うものなので、香りのインパクトを重視しています」

ただし、サロンを訪れるお客さまにとっては非日常でも、施術者にとっては日常であり、毎日のように使う商品。その点にもIさんは気を配っています。

「施術者の方たちにとって負荷にならないように、インパクトがありながらも、そこまで主張が強くない香りというバランスを意識しています。また、サロンや宿泊・温浴施設は多くの人が利用する場なので、香りが空間に残り過ぎないように留意しています」

使う人やシーンなど、さまざまなことに配慮しながらも、常に新しい香りを生み出してきたIさん。普段から何か心がけていることはあるのでしょうか。

「いろいろな香りを知らないと新しいものは作れません。ですから、同じ業界の商品だけでなく、洗剤や柔軟剤といったハウスホールド商品、香水など、香りにまつわる商品にふれることを意識しています。野の花など自然からインスピレーションを得ることもあるので、フィールドワークも大切ですね。香りの嗜好は食経験に起因する部分が大きいのですが、実は私の場合はグリーンピースとそら豆がいまだに食べられなくて、香りも苦手なんです(笑)。でも、自分が苦手な香りでも、他の人にとっては好きな香りという場合ももちろんありますので、仕事上ではどんな香りにもフラットに接するように心がけています」

日常生活から切り離すことのできない香りの世界。Iさんが仕事はもちろん普段から常に香りに真摯に向き合っていることが伝わってきます。

「香りの世界で一人前になるためには、少なくとも10年はかかると言われています。私は今年11年目で、まだまだ腕を磨いていかないといけないですが、イメージを具現化するだけではなく期待を超えていけるように、さらなる高みを目指していきたいです」