血液と血管の総合サイト

監修:杏林堂漢方薬局 薬剤師 若山忠裕 先生

「血液」といっても、その成分はさまざま
血液の種類とはたらきは?

「血液」とひとくちに言っても、赤血球などの血球(けっきゅう)と、血漿(けっしょう)と呼ばれる液体成分から成り立っています。それぞれどのようなはたらきを担っているのか、詳しく見ていきましょう。

血液のはなしイメージ

知っているようでよく知らない血液って?

私たちのからだを流れる「血液」。
生きていくためにはこの血液が体内をくまなく巡る必要がありますが、その成分とはたらきについてはよくわからない、という方も多いのではないでしょうか。

日本人の場合、体内を流れる血液は体重の約8%を占めているといわれます。これは平均すると体重1kgにつき約80mL、つまり体重が60kgの人で考えると、約4.8Lもの血液が流れていることになります。

「血液」は、赤血球、白血球、血小板といった「細胞成分(血球)」と、血漿と呼ばれる「液体成分」から成り立っており、血液全体の約45%が血球で、残り約55%程度が血漿成分といわれます。それぞれの成分について、詳しく見ていきましょう。

血液の成分イラスト※イメージ図

血球成分

赤血球
赤血球イラスト※イメージ図

赤血球は、血液の血球成分のほとんどを占めている赤い血球で、核をもたず、中央がくぼんだ円盤状をしています。肺で取り込んだ酸素を体の各部へ運ぶはたらきをしており、これにかかわっているのが、血色素といわれる赤い「ヘモグロビン」です。
ヘモグロビンは、鉄を含み、赤色をしている色素「ヘム」と、「グロビン」というたんぱく質からできているため、このように名付けられています。酸素と結びつくのは鉄を含む「ヘム」の部分で、「ヘム鉄」と呼ばれます。ヘム鉄は酸素の多い場所では酸素と結びつきますが、少ない場所では放出するという性質があります。これによって、肺で酸素を受け取り、全身の各細胞の近くまで移動し酸素を届け、逆に不要となった二酸化炭素を全身から回収するという大切な役割を果たしています。

赤血球に異常があると…?

この赤血球が減少すると、各細胞に十分な酸素が行き渡らなくなり、動悸、息切れ、めまい、頭痛、けん怠感、などが現れてきます。これが「貧血」です。
急激な貧血の場合は、気を失ったりすることもありますが、慢性的な貧血では、皮膚が青白くなったり、肌荒れ、脱毛なども起きたりするため、赤血球(ヘモグロビン)を補ってあげる必要があります。貧血気味の人が鉄分を摂取するように推奨されるのは、このヘモグロビンを構成する「ヘム鉄」の原料となるからです。
なお、貧血の原因として、鉄分不足以外にも、腎臓や肝臓の機能不全、がんによるもの、などもありますので、症状が続くなどで気になったら、病院で精密検査を受けることをおすすめします。

ケアするには?

バランスのとれた食事を心がけたうえで、ヘモグロビンの材料となるたんぱく質や鉄分を豊富に含む食品を摂取しましょう。たんぱく質は、魚や肉、卵、ミルク、豆など、鉄分は、プルーンやレーズン、レバーなどの食品に多く含まれます。鉄の吸収を高めるビタミンCや、赤血球を作るのに必要なビタミンB12を含む食品、葉酸を含む食品を一緒に摂ると良いといわれています。

白血球
白血球イラスト※イメージ図

白血球は、体内に侵入した細菌やウイルスなどに対する免疫機能を担う血球です。白血球にはいくつか種類があり、それぞれ以下のようなはたらきがあります。

好中球

白血球のうち、約40~70%を占めているのが「好中球」です。細菌などの異物が侵入したら駆けつけ(遊走)、それらを食べて殺菌(貪食)するはたらきをしています。

好酸球

白血球のひとつで、とくに寄生虫に感染した際に体を守るはたらきをしますが、ぜんそくやアトピーなどのアレルギー疾患の一因になるともいわれています。

好塩基球

好酸球と同じく、アレルギー反応などに関与しているとされていますが、長い間そのはたらきがよくわかっていませんでした。近年の研究により、とくにマダニに対する生体防御の機能があることが明らかになりました。

単球

単球は「マクロファージ」ともいわれ、細菌等の病原体のほか、死んだ細胞など、体内で不要になったものなども食べて(貪食)くれます。このため、「大食細胞」と呼ばれることもあります。

リンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)

リンパ球は、ウイルスなどの小さな標的を攻撃する白血球の一種で、抗原抗体反応などの免疫に関与しています。リンパ器官(骨髄やリンパ節、扁桃腺など)といわれる部位に多量に存在しています。

白血球に異常があると…?

白血球が基準値よりも多い場合は細菌感染や、白血球が異常に増加する血液のがん「白血病」などの疑いがあります。逆に基準値よりも少ない場合は、重症感染症によって一時的に減少していたり、再生不良性貧血や抗がん剤などの薬による副作用であったりといったものが考えられます。健診などで数値に指摘があった場合は、すぐに精密検査を受けるようにしましょう。

血小板
血小板イラスト※イメージ図

血小板は、細胞核を持たない円盤型の細胞です。血液全体に占める割合は1%以下と非常に少ないですが、血管が損傷を受け、穴ができたときに損傷部分で固まり、穴をふさいで出血を止めるという重要な役割を担っています。

血小板に異常があると…?

血小板にはこのようなはたらきがありますから、数が減少すると出血した際に血が止まりにくくなります。「軽くぶつけただけで青あざができやすい」「細かい点状の皮下出血がある」「月経量が多くなった」といった場合は注意が必要。気になったときは、すぐに病院で検査を受けるようにしましょう。万一、血小板減少が起きた場合は、ケガをして出血しないよう日常生活に注意しなければなりません。
なお、血小板数が増加することもあり、その場合は慢性骨髄性白血病などの可能性もありますので、健康診断などで高めの数値が出た場合も早めに受診したほうがいいでしょう。

液体成分

血漿
血漿イラスト※イメージ図

血漿はさまざまな物質を含んだ溶液で、血液のうち、血球などの有形成分以外の成分を指します。栄養分を体の各部に運んで、老廃物を運び去るはたらきをします。血液を試験管に入れて遠心分離すると、上のほうに黄色い液体成分ができますが、これが血漿です。含まれる成分は、たんぱく質(アルブミン、フィブリノゲン、免疫グロブリン)・脂質・糖類(グルコース)・無機塩類(カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、鉄、銅、リン等)などになります。
免疫検査などで使われる「血清」は、この血漿から血液凝固に関わるたんぱく質(フィブリノゲンなど)を除いたものを指します。