漢方療法推進会 こころとからだに自然の力

漢方について

漢方ってすばらしい! ~10分で読める 漢方医学コラム~

東洋医学の主役といえる漢方。今、多くの医療機関で漢方薬が処方されるなど、東洋医学の可能性について大きな期待が寄せられています。この秘めたるパワーをもった漢方のことをもっと知りたいという方へ贈る、10分で読める漢方コラムです。

― 第8回 ―

喫煙リスクと漢方的対策

上海中医薬大学附属日本校
校長 矢尾 重雄(医学博士)

「肺」の「補益」になる食材を

たばこを吸っている男性イメージ

タバコの煙に含まれる微細な粒子は刺激物質といえます。気道から肺の表面にいたる広範囲に沈着し、せきとたんの原因になります。長期に渡り喫煙すれば、肺の慢性炎症、COPD(慢性閉塞性肺疾患)および肺がんの発生率が高くなります。漢方の養生方法としては、肺の「補益(呼吸器の栄養や潤いを補う)」、末梢循環の改善などがあります。また、こころを落ち着かせることにより、禁煙禁断症状の改善、緩和にも役に立ちます。下記に薬膳素材をご紹介します。日常の食事やデザート、お茶などに活用すれば、一定の効果が現れると考えられます。

松の実 【五気六味】温/甘 【帰経】肺・肝・大腸

松の実 イメージ

松の実は「潤肺(じゅんぱい)」、つまり肺を潤す食材とされています。中医学で肺は「皮毛を司る(つかさどる)」とされており、皮毛=皮膚ですので、「潤肺」の効能は肌を潤し、みずみずしくすることでもあるわけです。また「潤腸通便」、つまり腸を潤し滑らかにして便秘を解消、老廃物の代謝を促すとされ、美肌にもおすすめです。ミネラルが豊富で、不飽和脂肪酸も多いので高い健康効果が期待できます。

イタリア料理のジェノベーゼソースや韓国料理のサムゲタンの材料として欠かせない存在です。またお菓子にも使われます。

ハトムギ 【五気六味】微寒/甘・淡 【帰経】肺・脾・胃

ハトムギ イメージ

種皮を除いたハトムギの実で、利尿・消炎・鎮痛作用があります。下痢や浮腫、関節リウマチ、神経痛、五十肩などの緩和にも期待ができるほか、代謝を良くして毒素を出す作用もあります。経験的にイボの除去に対する効果がよく知られています。

お茶や料理(お粥、シリアル)などにおすすめの食材です。

クコの実 【五気六味】平/甘 【帰経】肝・腎・肺

クコの実 イメージ

肝や腎を補い、腰やひざのだるやさや無力感、めまいを穏やかにする、眼精疲労や視力減退などの眼の症状、睡眠の改善にも役立つといわれています。また、肺を潤し、せきを抑えます。お茶、料理、製菓、おやつなど使い道が広い食材です。

陳皮 【五気六味】温/辛苦 【帰経】脾・肺

陳皮 イメージ

陳皮はミカンの皮を乾燥させたもので、血気の循環を促進し、四肢を温め、心を癒してくれます。食欲の改善にも役に立つ水分代謝に良い食材ですので、体の余分な水分をとり、毎日食べることにより体は軽くなります。また、せきやたんを抑えるはたらきが期待できます。

お茶や紅茶に入れるだけでもリラックスでき、体が温まります。

百合 【五気六味】微寒/甘・微苦 【帰経】心・肺

百合 イメージ

肺が弱い人におすすめの食材です。肺を潤し、せきを抑えます。また興奮したり不安になったりする精神不安定を改善し、不眠の解消にも役立つといわれています。

デサート、料理、スープなどにおすすめの食材です。

杏 【五気六味】微温/苦   【帰経】肺・大腸 (温性/苦味・甘味)

杏 イメージ

杏(あんず)の種子の中の核は、生薬の「杏仁(きょうにん)」としても使われ、せきを抑えたり、気管や気管支にたまっているたんを排出させることや、整腸作用、美肌効果などもあります。

杏の成熟した種子の仁を乾燥させたものを「甜杏仁(てんあんにん)」といいます。甜杏仁にも肺を潤す作用があり、せきやたんに用いることがあります。
お茶やお菓子におすすめの食材です。

金銀花 【五気六味】寒/甘 【帰経】肺・胃・心

金銀花 イメージ

スイカズラの花のつぼみで、解熱作用があり、下痢や熱病に対して、また、発疹や皮膚の炎症、のどの腫れや痛みの緩和にも期待ができます。スイカズラの名は「吸い葛」からきており、古くは花を口にくわえて蜜を吸っていたことにちなみます。

お茶や、スープにおすすめの食材です。

上記の薬膳素材を喫煙者の健康リスク緩和の対策として活用すれば、一定の効果があるのではないでしょうか。
さらに、体の状態に合わせてこれらを使い分けることで、より効果を上げることができます。詳しくは漢方の専門家にご相談されることをおすすめします。

上海中医薬大学附属日本校 校長 矢尾 重雄(医学博士)

上海中医薬大学附属日本校
校長 矢尾 重雄(医学博士)

矢尾重雄先生プロフィール

  • 1958年3月生まれ(中国名 姚重華)
  • 1978年2月上海中医薬大学医療学部入学。1984年7月卒業。
  • 1984年8月より上海市第一人民病院で臨床医として勤務。中国の国宝級の名老中医に師事。臨床医として経験を積んだのち日本に渡る。
  • 1994年3月神戸大学大学院医学研究科(分子病理学)で医学博士の学位を取得。
  • 1994年4月よりP&G(プロクター・アンド・ギャンブル社)、1997年9月より大塚製薬株式会社にて二十数年間にわたり医薬品開発と臨床開発に従事。
  • 2017年12月より上海中医薬大学附属日本校校長に就任。長年培った医薬経験を生かして、日本の東洋医学の発展に貢献している。

上海中医薬大学付属日本校ホームページ