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漢方について

漢方ってすばらしい! ~10分で読める 漢方医学コラム~

東洋医学の主役といえる漢方。今、多くの医療機関で漢方薬が処方されるなど、東洋医学の可能性について大きな期待が寄せられています。この秘めたるパワーをもった漢方のことをもっと知りたいという方へ贈る、10分で読める漢方コラムです。

― 第7回 ―

漢方(中医学)における腰痛に対する養生法

上海中医薬大学附属日本校
校長 矢尾 重雄(医学博士)

腰痛の中医学的理解

腰痛とは、文字どおり腰の部位に現れる痛みの疾患です。しかし、現代医学では筋肉系や骨組織の損傷、そして内臓疾患、脊髄疾患の病変に至る腰痛以外の約8割の腰痛が原因不明です。
漢方医学(中医学)では、腰痛を急性と慢性の2つに大きく分けて考えます。外界からの悪影響(体外からの寒さ、湿気などの体に悪影響を与える要素。外邪という)や打撲、捻挫により経絡(経脈)の気血の流れが悪くなった急性腰痛と、腰部のだるさや腰部の無力感、疲労感、鈍痛を感じる体の衰え(主に加齢による衰えなど。腎虚じんきょという)による慢性腰痛があります。また、腰痛の原因は加齢と過労にも密接な関連があります。腰痛の治療と予防については「寒さを防ぎ、冷えや湿気(寒湿かんしつの邪気)を除く」「経脈を通る気血の流れを良くする」「中医学でいう肝と腎の機能を高め、筋肉を強化する」ことがポイントとなります。

腰痛の中医学的治療は「内治法」と「外治法」

腰痛が発生した場合、中医学では「内治法」と「外治法」の2とおりの臨床治療があります。

内治法

中医処方による治療法は、経口服用することで薬効を発揮する内治法の代表的なものといえます。

六味地黄丸ろくみじおうがん」「牛車腎気丸ごしゃじんきがん」「疎経活血湯そけいかっけつとう」「独活寄生丸どっかつきせいがん」が腰痛改善におすすめする処方です。

外治法

鍼灸療法、推拿すいな療法(中医学の手技療法)は体表の経絡およびツボを刺激し、整えていく外治療法の代表的なものになります。
腰痛改善におすすめするツボは

  1. 腎兪じんゆ
  2. 気海兪きかいゆ
  3. 大腸兪だいちょうゆ
  4. 志室ししつ
  5. 環跳かんちょう
  6. 殷門いんもん
  7. 委中いちゅう

その他「命門めいもん」などです。

腰痛の養生法

中医学では、治療はもちろん大事にしますが、腰痛にならないように日常の養生を最も重視し提唱しています。なかでも、飲食、運動、防寒および過労などを主に注意します。

  1. 飲食の養生:クルミ、胡麻、山芋、クリ、枸杞、杜仲などを入れる料理やお茶をおすすめします。
  2. 運動の養生:長時間の立ちっぱなしや椅子に座り続けることで腰に負担がかかったり、運動不足になったりしますので注意が必要です。折を見て、積極的に気功法(八段錦はちだんきん)や太極拳などの軽い運動をおすすめします。
  3. 寒熱調整の養生:季節や天候の変化に注意して、腰部の防寒、保温をするように心がけます。
  4. 過労防止の養生:腰部筋肉の疲労、知的労働による脳の疲労、過度な性生活など、中医学が考える「腎」の機能を酷使しないように心がけます。

腰痛に効くツボ
腰痛に効くツボの位置(中医健康養生学講座[応用編]テキストより)
上海中医薬大学附属日本校 校長 矢尾 重雄(医学博士)

上海中医薬大学附属日本校
校長 矢尾 重雄(医学博士)

矢尾重雄先生プロフィール

  • 1958年3月生まれ(中国名 姚重華)
  • 1978年2月上海中医薬大学医療学部入学。1984年7月卒業。
  • 1984年8月より上海市第一人民病院で臨床医として勤務。中国の国宝級の名老中医に師事。臨床医として経験を積んだのち日本に渡る。
  • 1994年3月神戸大学大学院医学研究科(分子病理学)で医学博士の学位を取得。
  • 1994年4月よりP&G(プロクター・アンド・ギャンブル社)、1997年9月より大塚製薬株式会社にて二十数年間にわたり医薬品開発と臨床開発に従事。
  • 2017年12月より上海中医薬大学附属日本校校長に就任。長年培った医薬経験を生かして、日本の東洋医学の発展に貢献している。

上海中医薬大学付属日本校ホームページ