
声が出ない・かすれるのはかぜ? つらい声のトラブルとその原因・対策を解説
最終更新日 2025年12月26日突然“声が出ない”、あるいは“声がかすれる”といった症状を経験したことはありませんか。声が出ないと自分自身が不快なだけでなく、仕事や日常生活における会話が妨げられて大きな支障がでてしまいます。
声のトラブルや喉の不調は、かぜ症状としてあらわれる場合もあれば、普段の生活習慣や病気などを背景に発生していることもあり、原因はさまざまです。
この記事では、声が出にくい、かすれるといった症状の原因や適切な対処法について詳しく解説します。声のトラブルに広く用いられている漢方薬についてもご紹介しますので参考にしてみてください。
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目次
声が出ない・かすれるときに考えられる疾患・原因
私たちの「声」は、肺から送り出された空気が、喉の奥にある「声帯」を振動させることによって出ています。ところが、この仕組みに何らかのトラブルが発生することで、声が出なくなったり、かすれたりといった症状が出ます。日常的に経験しやすいのは、かぜをひいた後の声の出にくさや、かすれですが、このような声のトラブルの原因はさまざまです。一時的なものがほとんどですが、なかには声を失う可能性がある病気が隠れていることもあります。
声が出ない、声がかすれるときに考えられる疾患や原因について詳しくみていきましょう。
急性喉頭炎・急性声帯炎見出し
急性喉頭炎(きゅうせいこうとうえん)や急性声帯炎は、声が出ない・かすれる原因としてもっともよくみられるものです。かぜなどの感染症をきっかけに、喉頭(喉の奥にある気管の入り口)または声帯に急性の炎症が起きて腫れることで、左右の声帯の動きが妨げられ、声がでにくくなったり、かすれたりするようになります。カラオケやスポーツ観戦での応援などによる喉の酷使、喫煙や刺激物の摂取、アレルギー反応がきっかけで起こることも珍しくありません。ごく軽いものであれば、発声を控えて過ごすことで自然に軽快しますが、ひどいと、病院での治療が必要になり治るまでに1〜3週間ほどかかります。急性喉頭炎・急性声帯炎にならないように、かぜを予防したり、喉へのダメージを避けたりすることが大切です。
声帯ポリープ・声帯結節
声帯ポリープ・声帯結節は、声の出しすぎや、歌いすぎ、強い咳払い、喫煙などによって声帯にポリープ(やわらかい盛り上がり)、あるいは結節(硬い組織)ができる良性の病気です。初期症状は、喉のイガイガ感や喉が詰まったような違和感が生じる程度ですが、ポリープが大きくなってくると、声帯の開閉や振動が妨げられ、声を出しにくくなります。ごく軽いものであれば、喉に負担をかけないように心がけることで、たいてい自然に治りますが、重度のものは手術が必要になることもあります。声のかすれや違和感が続く場合は耳鼻咽喉科の専門医を受診しましょう。
声帯麻痺(反回神経麻痺)
声帯を動かす筋肉をコントロールしている反回神経が麻痺し、声帯の動きが低下し、声がかすれたり、出しにくくなったりする病気です。声帯麻痺の原因は、ウイルス感染や甲状腺・食道・肺などのがんや、胸部大動脈瘤、外傷などがありますが、原因不明のものもあります。声の異常だけでなく、誤嚥(食べ物や異物を気管内に飲み込むこと)しやすくなったり、呼吸がしづらくなったりする場合もあり、専門的な治療が必要です。
声帯萎縮
主に加齢や声帯の酷使によって、声帯が痩せて劣化し、声帯の閉じが悪くなることで声のかすれや痰の絡みが生じるものです。高齢者に多く、「年のせいだから」と放置する人もいますが、進行すると嚥下(飲み込み)や呼吸機能も低下する恐れがあるため、専門家によるリハビリテーション(音声治療)が必要です。
喉頭がん
声帯を中心とした喉にできる悪性の腫瘍です。初期症状として喉のイガイガ感や声のかすれなどの症状が出ます。60歳以上の男性に多く、喫煙やアルコール摂取が危険因子として知られており、ヘビースモーカーやアルコールを多飲する方は発症リスクが高くなります。
医療技術の発達により、現在では、早期に発見し、放射線治療やレーザー手術で早期に治療すれば、声を失うことなく完治を目指せる病気です。しかし、放置していると喉頭の摘出手術が必要となり、声を失うこともあるため、早期発見が非常に大切です。
季節や地域的な環境、日常習慣からくる声のかすれの原因
声のかすれや出にくさは、病気だけでなく、日常の習慣が原因で起きていることもあります。かぜなどの感染症にともなう声のトラブルとは異なり、このようなケースでは、発熱などの症状はないにもかかわらず、声の不調や痰などに悩まされることがあります。
花粉・PM2.5・黄砂など外的刺激による炎症
大気に含まれる花粉、黄砂などの物質に対するアレルギー反応や、PM2.5などの微粒子による喉への刺激が原因で、喉の粘膜が炎症を起こして声が出にくくなったり、痰が絡みやすくなったりすることがあります。花粉や黄砂が大量に飛散する時期に特に症状が出やすくなります。また、アレルギー反応によって鼻が詰まると、口で呼吸する機会が増え、乾燥による喉へのダメージが大きくなり、声のトラブルが起きやすくなることもあります。

声の出しすぎ・喫煙・乾燥
大声で歌ったり、スポーツの応援などで喉を酷使したりすると、声帯が炎症を起こし、一時的に声がかすれたり急に出なくなったりすることがあります。また、喫煙習慣のある人では、タバコに含まれるタールによって喉に炎症が起こったり、長年の喫煙によって声帯がむくんで声が出にくくなることもあります。そのほか、口呼吸をしていると、乾燥した空気がダイレクトに喉に触れることで喉の粘膜が乾燥してダメージを受け、声が枯れるトラブルを招くことがあります。

2週間以上声のかすれや出にくさが続く場合は受診を推奨
声帯の一時的な炎症による声がれは、通常、一週間程度で治まるので、過度な心配はいりません。しかし、声のかすれや出にくさが2週間以上続く場合は、がまんせずに耳鼻咽喉科を受診しましょう。耳鼻咽喉科では、喉頭鏡検査やファイバースコープ検査によって喉頭(声帯)の様子を直接観察し、声のトラブルの原因を調べることができます。
息苦しさや飲み込みにくさ、発熱をともなう場合は注意が必要
声のかすれに加え、息苦しさ、飲み込みにくさ、発熱、止まらない咳などの症状がある場合は特に注意が必要です。喉が急激に腫れて気道を塞ぎ呼吸困難になる恐れのある急性喉頭蓋炎(きゅうせいこうとうがいえん)や、飲み込みができなくなる扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうよう)など、緊急性が高く、専門的な治療が必要な病気もあるため、すみやかな受診が必要です。注意深く経過を観察し、異変を感じたら早期に受診することが大切です。
声が出にくいときの対処法と注意点
声のトラブルを和らげ、喉の回復を促すためには、適切な対処が必要です。特に声がでにくい、声が枯れるなどのトラブルが続いているときは、喉の粘膜を保護し、刺激を避けることが基本になります。
安静にして喉を休める
声が出にくい、かすれるといった症状があるときは、喉を休めることがもっとも大切です。声帯を傷つける可能性があるため、大声を出したり、無理に声を出そうとしないようにしましょう。ささやき声もかえって喉に負担をかけることがありますので避けましょう。ごく初期の声帯ポリープや声帯結節では、声を安静に保つことで自然治癒が期待できる場合もあります。

十分な水分補給、加湿
喉の粘膜を潤すことも大切です。こまめな水分補給を心がけ、喉を常に潤すようにしましょう。室内の湿度管理も重要です。理想的な湿度は50〜60%といわれているため、乾燥しがちな季節には加湿器を活用し、喉の乾燥を防ぎましょう。

花粉・PM2.5対策
花粉やPM2.5、黄砂など、喉に刺激を与える微細な粒子から喉をまもるための対策が必要です。外出時には、これらの粒子を吸い込むのを防ぐため、不織布マスクの着用をおすすめします。帰宅後は、衣服や髪にこれらの粒子が付着していることがあるので、手で良く払ってから部屋に入るようにしましょう。帰宅後はうがいを習慣づけ、喉に付着した花粉などを洗い流すことも有効です。布団や洗濯物を外干ししない、室内では空気清浄機を活用するなどして、生活空間の空気を清浄に保つことも大切です。

刺激物(たばこ・アルコール・辛い食べ物)を控える
喉への刺激物を避けましょう。たばこに含まれるタールは喉の炎症を引き起こし、声のかすれや痛みを引き起こすため、喫煙は控えましょう。また、大量のアルコールや濃いお酒は、喉の粘膜にダメージを与えるほか、身体の中でアルコールを分解するために水分を消費するため、喉の乾燥を引き起こし、悪影響を及ぼすため、よくありません。そのほか、香辛料を含む辛い食べ物も、喉粘膜を刺激し、声のトラブルの引き金になるため、控えるようにしましょう。

かぜによる声のトラブルにおすすめの漢方
かぜによる声のトラブルには、漢方薬が症状を和らげる助けとなることがあります。薬局やドラッグストアでは市販の漢方薬を購入することができます。漢方薬は、症状や体質に合ったものを使用することで効果を発揮します。自分に合った漢方薬がわからないときは、薬剤師や医師などの専門家に相談しましょう。
かぜによる喉の痛みに「銀翹散(ぎんぎょうさん)」
かぜによって喉が痛いときに適した漢方薬(生薬製剤)です。「口が乾いて喉がイガイガする」「かぜぎみで頭痛がする」などの症状があるときに選ばれることが多い漢方薬として、銀翹散が挙げられます。コップ一杯程度の水で服用します。喉が痛い場合は、薬剤を口に含んでゆっくりと喉を通すように飲むことで、症状の改善が早く現れることが期待できます。

乾いた咳や声枯れに「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」
かぜをひいた後などに、痰が少なく乾いた咳(からぜき)が出るときや、喉に乾燥感があり、声が枯れるときに選ばれることが多い漢方薬として、麦門冬湯が挙げられます。喉や気管などに潤いを与えて乾燥や刺激から喉を守り、咳などのトラブルを鎮める効果が期待できます。長期服用は避け、からぜきに対して、1週間程度服用しても症状が改善しない場合は、薬剤師や医師などの専門家にしましょう。

喉の違和感をともなう声枯れに「甘草湯(かんぞうとう)」
喉の粘膜が炎症を起こしているときにおすすめの漢方薬が甘草湯です。消炎作用によって喉の粘膜を潤し、痛みを和らげる効果が期待できます。かぜによる喉の痛みや咳、喉の違和感をともなう声がれなどの症状に対して広く用いられています。喉にむずむずと違和感があるときは甘草湯、喉の乾燥感がひどいときは麦門冬湯がおすすめです。

喉に炎症が起きて、痰が絡むような症状があるときに「桔梗石膏(ききょうせっこう)」
かぜをひいて喉に炎症が起きて、痰が絡むような症状があるときは、桔梗石膏がおすすめです。気管などにたまった痰を除去します。ただし、しばらく服用しても改善しないときは、自己判断での服用をやめ、薬剤師や医師などの専門家に相談しましょう。

まとめ
声が出ない、声がかすれるといったトラブルは、声帯を中心とする喉の粘膜に炎症が起きることによって生じます。喉の炎症の多くは、かぜなどの感染症の影響や花粉・PM2.5、空気の乾燥による刺激がきっかけで起こる場合があり、このようなケースでは、喉を安静にしていればたいてい自然に回復するため心配はいりません。声や喉のトラブルに効果のある漢方薬を試してみるのも良いでしょう。また、喫煙やアルコールの多飲、辛い物を好むなどの習慣が背景にある方は、タバコ・アルコール・辛い食べ物を控えることで、症状が改善することがあります。
しかし、いずれの場合でも、2週間以上にわたって声のトラブルが続いているときや、息苦しさ、飲み込みにくさ、発熱などの症状をともなうときは、別の病気が関係している可能性があります。がまんせずに、医療機関を受診し、医師に相談しましょう。
榎本 蒼子
医学博士、医学研究者。2015年まで公立医科大学にて医学研究および医学教育に従事。在職中は医師・研修医向けの東洋医学セミナー等を担当。現在は医療ライターとして、健康に役立つ情報や最新の医学研究に関する情報を発信している。
