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暑くない日も油断大敵!
高齢者のための熱中症対策・予防法

毎年暑い季節になると全国で熱中症を発症する人が多発します。
特に高齢者は熱中症を発症しやすく、重症化しやすいため対策が必要です。
そこで今回は、高齢者の熱中症の特徴と正しい予防対策について詳しく解説します。

高齢者は熱中症にかかりやすい?
その理由とは

総務省消防庁が公表するデータを見ると、平成30年5~9月に熱中症が原因で救急搬送された方は全国で約9万人を上回り、そのうち約半数を65歳以上の高齢者が占めていたことがわかります。

総務省消防庁 熱中症による救急搬送状況(平成30年)
https://www.fdma.go.jp/publication/ugoki/items/3011_05.pdf


一般的に高齢者は熱中症を発症しやすく、重症化しやすいといわれています。
なぜ高齢者は熱中症を発症しやすいのか、その理由を見ていきましょう。

暑さを感じにくくなる

私たちの皮膚の奥には温度を感知するセンサーが存在しています。
そのセンサーが暑さを感知すると、その情報が脳の「体温調節中枢」に伝えられ、自律神経などを介して発汗、血管拡張といった仕組みが作動することで、体温を適切に保っています。

しかし、この「暑さを感知するセンサー」の機能は年齢を重ねるごとに低下するため、高齢者は暑さを感じにくくなると考えられています。
そのため、屋外だけでなく室内で熱中症を発症する方も少なくありません。

体温調節機能の低下

皮膚のセンサーが暑さを感知すると、脳の体温調節中枢が働いて体温を下げてくれます。
私たちが体温を調節する仕組みには、「血管拡張」と「発汗」の二つがあります。
身体の体温よりも暑い環境下にいると、脳から「身体から熱を放出せよ」と指令が下ります。

すると、毛細血管を拡張させて身体の血流をよくすることで、熱を放出します。
それでも熱が外に放出されず体温が下がらない場合は、汗をかくことで皮膚の熱を奪いながら蒸発して、体温を低くします。

高齢者は暑さの感じ方が鈍いため、体温を調節する仕組みが働きだすのが遅く、さらにその働き自体が悪くなるため、体温を調節する機能が低下して熱中症を発症しやすくなるのです。

体内水分量の減少

私たちの身体は多くの水分でできています。
健康な成人の身体は60~65%が水分で、子どもの身体は70%以上が水分です。

一方、高齢者の水分割合は50~55%。年齢を重ねると体内の水分が減少するのです。
このため、若い世代の方より容易に脱水状態になり、熱中症の発症や重症化を起こしやすくなるとされています。

高齢者の熱中症の症状

前述の調査※の「発生場所ごとの項目(構成比)」を見てみると、熱中症で救急搬送される方のうち、約40%は「住居(敷地内全ての場所を含む)」で発症していることが分かります。
屋外での運動など熱中症になりやすい行動をしていない場合でも、家の中で過ごす時間が長い高齢者は、熱中症に十分な対策が必要です。

※総務省消防庁 熱中症による救急搬送状況(平成30年)
https://www.fdma.go.jp/publication/ugoki/items/3011_05.pdf


高齢者は熱中症になると重症化しやすいため、疑わしい症状が現れたときは速やかに応急処置を行う必要があります。
熱中症が酷いときは、頭痛、下痢、寒気などの症状が現れ、後遺症が残ることも。

しかし、高齢者は熱中症に特徴的な症状が現れないことも多いため、発見が遅れることも多々あります。
ここでは、高齢者の熱中症を見分けるポイントをご紹介します。

唇や口の中が乾いている

熱中症を発症すると、体内の水分量が減少するため唇や口の中が乾きやすくなります。 高齢者はのどの渇きを自覚する感覚も低下しがちなので注意が必要です。

また、さらに症状が悪化すると口だけでなく、皮膚も乾燥していきます。
皮膚の乾燥を見分けるには、カサカサした状態の有無だけでなく「皮膚の伸び」を見るのも方法の一つです。
皮膚をつまんで元に戻りにくい場合は脱水が進行しているサインと考えましょう。

身体が熱い

熱中症を発症すると体温がどんどん上昇していきます。
重症なケースでは40度近くまで上昇することも少なくありません。
体温が高いと風邪や感染症などを疑いたくなるものですが、暑い時期の発熱は熱中症も視野に入れましょう。

元気がない

熱中症は体内の水分量が減少していくため、身体の中で流れる血液量も少なくなります。
その結果、全身に十分な酸素や栄養素が行き渡らなくなり、めまいや立ちくらみなどが初期症状として現れます。

さらに重症化すると強いだるさや疲れなどが生じ、力が入らない、やる気が起こらないといった症状も見られるように。

何となく元気がない、普段よりも静かにしている、ぼんやりしているといった様子の変化は熱中症のサインかも知れません。

食欲がない

熱中症は進行すると胃や腸の働きが低下し、吐き気や嘔吐などの症状が見られるようになります。はっきりした原因がないのに、突然食欲がなくなった時は注意が必要です。

また、水分もとれなくなると体内の水分量がどんどん減少して熱中症が重症化していきます。
早急に点滴治療などが必要になりますので、見逃してはいけないサインの一つです。

高齢者の熱中症対策・予防方法

熱中症になりやすく、重症化しやすい高齢者は日ごろから熱中症対策をすることが大切です。 高齢者は室内でも熱中症になりやすく、若い世代の方では熱中症を発症するリスクがほとんどない気候のときでも、気づかぬうちに熱中症を発症していることも少なくありません。

暑い日の外出は控え、屋内にいるときも「周囲が顔色等に気を配る」「服装に注意する」など高齢者には特段の注意を払いましょう。そのほか、次のような対策も有効です。

室温は28℃以下をキープ

一般的に、室温は28℃以上になると熱中症を発症しやすくなるといわれています。
高齢者は室内でも熱中症を発症しやすいため、室温は常に28℃以下に保つように冷房や扇風機などを活用しましょう。

風通しに注意

熱中症は外気温が24℃以上になると発症するリスクが高まると言われていますが、高齢者は体内の水分量が少ないことに加え、体温調節機能が衰えているためそれ以下の温度でも熱中症を発症することがあります。

涼しいときは冷房や扇風機などを無理に使用する必要はありませんが、窓やドアを開けるなどして風通しをよくするよう注意しましょう。

こまめな水分補給

高齢者は自覚がないまま脱水症状になりやすいため、のどの渇きを感じていないとしてもこまめに水分を補うことが大切です。

水分は電解質が補える経口補水液やミネラル麦茶がおすすめ。
コーヒーや緑茶には利尿作用のあるカフェインが含まれていますので、飲み過ぎには注意しましょう。

適度な運動習慣を身に付ける

体温調節機能は年齢とともに徐々に衰えていきますが、日常的に運動習慣のある高齢者は若い世代の方とほぼ変わらず暑さへの耐性をキープできます。

高齢者は筋力の低下や関節の痛みなどさまざまな症状が現れやすいため運動から遠ざかる方も少なくありませんが、週に2~3回、ウォーキングや軽い水泳、サイクリングなどの有酸素運動を30分ほどとり入れるのがおすすめです。

まとめ

高齢者は熱中症になりやすく、発症すると一気に重症化するケースもあります。
今回ご紹介した対策を心がけ、熱中症を予防していくことが大切です。

また、高齢者の熱中症は特徴的な症状が現れないこともあるため、高齢者の様子が「いつもとなにか違うな」と感じたら十分注意しましょう。