イノベーション

~ 濡れ髪ダメージ毛は、キューティクルの最下層が露出していることを解明~
「濡れ髪ダメージ」を予防・補修する「エゴマ油」を発見

クラシエホームプロダクツは、キューティクルのダメージについて研究する中で、髪が「濡れた状態」で摩擦を受けると、キューティクルの層が剥がれ、キューティクルの最下層が露出した「濡れ髪ダメージ」状態になることを確認しました。その理由は、キューティクルの最下層が水でふやけた状態になるためです。

さらに、「濡れ髪ダメージ」の予防・補修に効果のある成分として、「エゴマ油」を発見しました。

 

 

1.背景

ブラッシングなどの摩擦による毛髪ダメージは、キューティクルが剥がれることが原因というのはよく知られていますが、「髪が濡れたままで寝る」、「洗髪後にタオルでゴシゴシ拭く」行為など「濡れた状態」がさらに大きなダメージを与えると言われています。しかし、髪が濡れたままの状態でどういう現象がダメージの原因になっているのかは、科学的に解明されていませんでした。 

 

 

2.ダメージ現象の解明

(1)「滑り性」を比較 -「乾燥」に比べ「濡れた状態」が悪化

まず、「乾燥した状態」と「濡れた状態」で繰り返しブラッシングして摩擦を与えた毛髪の「滑り性」を測定したところ、「乾燥した状態」に比べ、「濡れた状態」では、滑り性が悪化し(図1)、毛髪はパサついて、広がり、手触りが悪い状態になりました。

 

図1:摩擦毛のすべり性

 

(2)毛髪表面のキューティクルを解析 -表面層が剥がれ、最下層の露出を確認

形状解析レーザー顕微鏡を用いて得られた画像から、毛髪表面のキューティクル状態の観察と計測解析を行いました。

 

なお、キューティクルとは、うろこ状に何枚も重なって毛髪表面を覆う組織ですが、1枚のキューティクルがさらに3層に分けられることが分かっています。上から「A層」、「エキソキューティクル」、「エンドキューティクル」の3層です。

 

観察の結果、毛髪表面のキューティクル状態が異なっていることが確認できました。「乾燥した状態」で摩擦を与えた毛髪では、キューティクルの端の一部分だけが「欠けている」のに対し、「濡れた状態」で摩擦を与えた毛髪では、キューティクルの上の層が剥がれ、最下層の「エンドキューティクル」が「露出した状態」であることが判明しました。(図2)。

図2:各摩擦毛のキューティクル形状の違い

 

(3)キューティクルの層の硬さを観察 - 水に濡れるとふやけることを確認

次に、原子間力顕微鏡を用いて「乾燥した状態」と「水に濡れた状態」で、キューティクルの層の硬さ(弾性率)を観察しました。すると「エンドキューティクル」は水に濡れると軟らかくなることが確認できました(図3)。つまり「エンドキューティクル」は濡れて、ふやけているのです。

図3:キューティクルの弾性率

 

「濡れた状態」でのキューティクル剥離のメカニズムは、毛髪が濡れると下の層の「エンドキューティクル」が「ふやけて柔らかくなる」こと。次に、この状態で摩擦を受けると、柔らかい「エンドキューティクル」に力が集中して、上の層のキューティクルがベロッと剥がれるため「エンドキューティクル」が露出します。

これにより、髪がパサつき、広がり、手触りが悪い状態になっているのだと考えています。

 

 

3.有効成分の探索、発見

そこで、濡れた状態でも「エンドキューティクル」がふやけて柔らかくなるのを防ぐことができれば、キューティクルの剥離を防ぐことができるのではと考えました。

 

「エンドキューティクルがふやけて柔らかくなる」のを抑制する成分について、さまざまなオイル成分を探索した結果、「エゴマ油」が有効であることを発見しました。「エゴマ油」処理すると、濡れたときのエンドキューティクルの硬さは、19%上がるという結果でした(図4)。

図4:エゴマ油のエンドキューティクル弾性率低下抑制効果

 

図5:エゴマ油の滑り性向上効果

 

さらに、毛髪の「濡れ髪ダメージ」予防効果を調べるために、エゴマ油入りトリートメント処理をした「濡れ髪ダメージ」毛の滑り性を測定しました。「エゴマ油無し」の「濡れ摩擦」毛を100%とした場合、「エゴマ油入り」の滑り性は31%向上するという結果でした(図5)。

加えて、毛髪のツヤの向上も確認しました。つまり、「エゴマ油」は、「濡れ摩擦」ダメージの予防・補修効果があることが判明しました。

 

 

4.まとめ

(1)毛髪は摩擦を受けるとキューティクルが剥がれるが、「乾いた状態」と「水に濡れた状態」とでキューティクルの剥がれ方が異なることを確認。

 

(2)水に濡れると「エンドキューティクル」がふやけて柔らかくなるため、濡れ髪ダメージ毛は1枚のキューティクルの上の層が剥がれて、最下層の「エンドキューティクル」が露出した状態になることを解明。

 

(3)キューティクルがふやけて柔らかくなるのを防ぐ「エゴマ油」を発見

 

 

 

 

当社は、今回の研究の成果を2016年7月 化粧品技術者会にて発表予定です。

今後、ヘアケア製品に応用する予定です。

 

参考

エゴマとは:

シソ科の一年草。地方名では、“食べると十年長生きできる”という いわれから「ジュウネン」と呼ばれる。エゴマ油は、その種子から搾った油で、防水性があり、古くは番傘の塗料としても使用されていた。近年、「オメガ3」(α-リノレン酸)を多く含むとして、美容業界で注目の素材。

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