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エネルギー代謝の内訳と肥満との関係

【監修】
工藤内科
工藤孝文先生

東洋医学・漢方医。福岡大学医学部卒。卒業後、アイルランドとオーストラリアへ留学。帰国後は大学病院、地域の基幹病院を経て、現在は福岡県みやま市の工藤内科にて、地域医療を行なっている。東洋医学・漢方治療、糖尿病・ダイエット治療を専門とし、NHK「ガッテン! 」、NHK「あさイチ」、日本テレビ「世界一受けたい授業」、TBS「名医のTHE太鼓判!」、フジテレビ「ホンマでっか !? TV」などに漢方治療評論家・肥満治療評論家として出演。日本内科学会・日本東洋医学会、日本肥満学会・日本糖尿病学会・日本高血圧学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・小児慢性疾病指定医。『ゆるやせ漢方ダイエット(日本文芸社)、『なんとなく不調なときの生薬と漢方』(日東書院本社)、『リバウンドしない血糖値の下げ方』(笠倉出版社)、『医師が認めた最強の漢方薬人参養栄湯』(あさ出版)、など著書多数。

代謝って?

「代謝」とは、からだの中で起きているもので、私達の生命活動そのものです。一般的には、新しいものと古いものとが入れ替わることと理解されていますが、医学的には、取り入れた栄養をエネルギーに変え(エネルギー代謝)、からだをつくり、修復し、不要物として排出するまで、非常に幅広く捉えられています。

「代謝」の具体例

  • 1.食事などでからだの中に取り込んだ栄養をエネルギーに変える
  • 2.体中にめぐらせる
  • 3.体の構成物質(骨や血液、筋肉や脂肪など)をつくり、修復する
  • 4.いらないものを排出する

など、摂取してから排出するまで、からだの中で起こる一連の活動をさします。

エネルギー代謝は大きく3つに分けられる。

エネルギー代謝の内訳

基礎代謝

体温維持、心臓や呼吸など、人が生きていくために最低限必要なエネルギー。

活動代謝

家事や仕事、歩く、荷物を持つなど、日常の活動で動くことに使うエネルギー。

食事誘導性代謝

食べたものを消化・吸収するために内臓などが動き、熱を発する。その際に使われるエネルギー。

余分な脂肪を減らしたい場合、一般に「食事」と「運動」が重要だとされています。しかし「食事量を減らしたり、運動を続けるのは大変」「なかなか効果を実感できない」という声をよく聞きます。その理由として、まず「食事」。単に食事量を減らすだけではからだの筋肉量を減らしてしまうため、基礎代謝が下がり、かえって太りやすくなるだけでなく、ストレスが溜まります。また、「運動」で汗をかいて痩せたと感じても、水分補給をすれば元に戻ってしまいます。隣の駅まで30分歩いて100kcal消費したとして、缶コーヒーを1本飲めば100kcal摂取で帳消しです。運動によるカロリー消費は、続けるのが大変な割にはカロリー消費量は少ないかもしれません。
では、エネルギー消費の大部分を担う「基礎代謝」を高める、というのはどうでしょう。心臓の動きを自分でコントロールできないように、残念ながらこれを意識的に高めることは容易でありません。また、女性はもともと男性より筋肉量が少ないため、基礎代謝が低い傾向にあります。さらに妊娠・出産という大切な機能があり、多くの脂肪を蓄えていることも痩せにくさの一因となっています。

「肥満」と「代謝」の関係

人の体内ではいろいろな器官・機能が連携しながら様々な化学反応が起きており、重要なのはその収支バランスです。からだが必要とする以上にエネルギーを摂取すると、余った分が脂肪として体内に備蓄されます。適量であれば問題ありませんが、慢性的に代謝できる量を超え続けると、からだは余ったエネルギーを脂肪に変えて蓄えます。余分な脂肪が溜まった状態が「肥満症」です。脂肪1kgがつくには7,000kcal、落とすにはその3倍近いカロリー消費が必要だといわれています。なぜなら、脂肪はそのままではエネルギーにならず、エネルギーとして使われる形に分解されたとしても、すぐに使われなければ再び脂肪に戻ってしまうからです。一度ついた脂肪を落とすのは、とても大変そうですね。ちなみに、脂肪は筋肉と違って熱を生み出しません。おしりや太ももなど脂肪が多い部分は触ると冷たく感じるのはこのためです。

筋肉量の減少は肥満のきっかけに。

肥満の原因は人それぞれで、脂肪がつく部位や落ちやすさも様々ですが、肥満のきっかけとして多く見られるのが、筋肉量の減少です。筋肉は、私たちのからだを支えると同時に、体温をつくり出す働きを担っており、「筋肉の維持」は基礎代謝の中でも一番多くエネルギーを必要とします。筋肉量が減ると代謝が落ちるだけでなく、体温が維持できなくなるため、からだの熱を逃がさないように筋肉が減った分を脂肪で埋めようとします。これが過剰に進むと「肥満」になります。
実は、日本人の摂取カロリーは昭和45年をピークに減少しています(厚生労働省 国民健康・栄養調査より)。にもかかわらず、子供の肥満が増えたり、メタボリックシンドロームが話題になるなど、余分な脂肪に関する悩みは深まるばかり。その背景として注目したいキーワードが「代謝」です。生活が便利になりからだを動かす機会が減る、エアコンの普及で室内外の温度差が拡大する一方で、汗をかくことが少ない、ストレスや不規則な生活など、現代社会は代謝を低下させる要因が山積みです。さらに、年齢を重ねるごとに自然と代謝が低下することを考えると、食事や運動だけで代謝を高めることはとても難しいことといえるでしょう。内側からキレイで輝き続けたいと願うなら、より意識的に代謝を高める工夫をすることが必要なのです。