INTERVIEW クラシエのヒト

甘栗むいちゃいましたを語る。

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プロ卓球選手 福原 愛

フーズマーケティング室 有賀副室長

「甘栗むいちゃいました」には小さい頃からの思い出がいっぱい。親子3代で大ファンです。

母が大好きだったので、私も小学生の頃から食べていました。たぶん、発売されてすぐからだと思います。自然な食材を選んでアイスクリームもポテトチップスも手づくりしていた母は、このお菓子なら安心だと思ったんでしょうね。
当時は練習や試合で全国各地に車で出かけることが多く、そういうときも「はい」って一袋渡してくれました。自分が母親になってわかったんですけど、ひと口サイズでポロポロこぼさないからっていう理由もあったのかもしれません。今は上の娘が「1個ちょうだい」って母からもらっています。
少し大人になって「甘栗むいちゃいました」の袋を開けたとき、懐かしい香りだなと思ったことがあります。宮城県と岩手県の県境にある母の実家へ遊びに行くと、よく栗を蒸してくれました。そのときの香りを思い出したんです。「蒸す」と「焼く」の違いはありますけど、「甘栗むいちゃいました」は、封を開けたらいつでも栗の自然な香りが楽しめるんだと気づいて、ちょっと感動しました。
もちろん、海外へ行くときも持って行きましたよ。卓球仲間は私がお菓子好きなのを知っているので、おなかがすいたら「何かない?」って聞いてくるんです。特に中国や台湾の選手は、日本と同じような屋台の甘栗の味を知っているので「甘栗むいちゃいました」をとても喜んでくれました。
家には日頃から備えてあるので、少し砕いたものを茶碗蒸しに入れたり、すりつぶして、きなこや黒ごまといっしょにタピオカミルクティーに入れたり、使い方も広がってきました。母から教わった「甘栗むいちゃいました」の手軽で自然なおいしさを、私も娘も毎日のように楽しんでいます。

「ナチュラル・スイート」を掲げて、これまでなかったお菓子づくりにチャレンジ。

「甘栗むいちゃいました」の発売は今から20年以上前の1998年です。当時カネボウ(クラシエの前身)ではガムやキャンディやアイスクリーム、缶飲料やカップ麺などを製造していたのですが、上司から求められたのは「そのどれでもない新ジャンル」の開発でした。
その頃、私は「人々の甘みに対する意識が変わってきているな」と感じていました。カロリーの低い、自然な甘みが求められていたのです。端的に言えば「食べても罪悪感のないお菓子」です。
そこで「ナチュラル・スイート」というコンセプトで素材選びから始め、レーズンやピーナツ、芋、栗などの選択で紆余曲折したあと、私の幼い頃からの好みもあって栗に決定しました。それから、栗を使ったチョコレートなどのアイデアが次々と出てきましたが、やっぱりピュアな甘みを大切にしようということで甘栗にたどり着いたのです。
調査として女性によるお菓子座談会をしましたが、甘栗の評価が高く、参加者が残さず食べたのを思い出します。
甘栗をお菓子として流通させるには日持ちさせる必要があり、アルミパウチとレトルト処理で最低半年間持つようにしました。もうひとつこだわったのが、福原愛さんも気づいてくださった封を開けたときの香り、焼き立ての香りをどうやって残すかですね。これはパウチの中の酸素を取り除いて窒素に置き替えることで実現しました。

畑違いのメンバーだからできた、前例にとらわれない自由な発想。

私はもともと缶コーヒーやお茶など飲料の開発をしていて、プロジェクトのメンバーも、お菓子の開発とは無縁でした。だからこそ今までのお菓子の概念にとらわれず、新たな視点からアイデアを出せたのだと思います。また、レトルト技術もそうですが、このお菓子には食品や飲料の技術がいっぱい詰め込まれているんです。
「甘栗むいちゃいました」というネーミングも、発売当時はずいぶん話題になりましたね。これは喫茶店で打ち合わせをしていたとき、ある女性が何気なく「甘栗むいちゃったとか」と口にしたのを聞いて、全員が「それだ!」となったんです。パッケージも2、3案出てきたところで早々に決まって、今もほとんど変えずに使っています。プロジェクトとして、何か勢いがあったんでしょうね。

天候に左右される農産物の難しさ。発売時の混乱を慎重なデビュー計画で回避。

これは甘栗に決めた後から実感したのですが、栗というのは農産物ですから、当然、天候によって作柄が左右されます。今は安定して調達できるようになったものの、しばらくの間はいろいろな苦労がありました。秋に収穫した栗を1年間使う分だけ冷凍保存しておくので、先に売れすぎると無くなってしまうし、売れないと余ってしまうという問題もあります。
発売に当たって、最初はエリアを限定してキヨスクでテスト販売をおこない、次にコンビニに広げ、さらにエリアを広げながら2年越しで全国展開に持っていきました。どのお店でどの程度売れるのかシミュレーションをした上で、栗の調達をしながら少しずつ広げていったのです。結果的に、それがうまくいきました。当初から売れ行きは良かったので、いきなり全国展開していたら調達が間に合わず、幻の商品になっていたかもしれませんね。

中国の栗にこだわって、今も皮むきは一つひとつ人の手で。

発売以来、原料の仕入れと加工は中国で、アルミパウチやレトルト処理は日本で行っています。ヨーロッパ栗とか日本の丹波栗とか、栗の種類はたくさんありますが、例えばグラッセにすると、とてもおいしいけれど焼き栗だとパサパサするといった向き不向きがあり、大きさも一口で食べられるサイズが理想です。それで中国産の栗を使っています。
もちろん、日本では甘栗といえば天津甘栗というイメージが定着していますし、私自身、天津甘栗の味や香りをお菓子として提供したいという強い思いがありました。だから、加工も自然の味と香りを引き出せる石焼焙煎にこだわり、皮むきもずっと人の手で行っているんです。

お客様の数を求めるのではなく、深く愛される商品を開発したい。

ロングセラー商品なので、これから急激に伸びていくのは難しいかもしれません。けれど、無着色・無加糖・保存料不使用で1袋35g当たり65kcalだとか、脂質0.5gで食物繊維が豊富だとか、健康面でのアピールはもっと発信していきたいと思っています。それと今、お料理やスイーツの素材として使う「アレンジレシピ」という取り組みも行っています。こうしたところからも、何か新しい広がりが生まれたらいいですね。
「甘栗むいちゃいました」はおかげさまでヒットしましたが、商品開発では、初めからたくさんの人に売ろうとすると誰にも売れないことがあります。自分も含めて、どんな人に食べてもらいたいのか、やっぱりお客様の顔を思い浮かべながら、最初の人数は少なくても良いものを丁寧に伝えて最終的には深く長く愛してもらえる商品を目指すのが本当じゃないかと思うんです。そこを大切にして、まだまだ新しい商品を開発していきたいです。