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不眠

不眠に効く漢方とは|症状別のおすすめ漢方を紹介

ストレスや体の不調で不眠の症状に悩まされている人は多いようです。ここでは、不眠を改善するために漢方を検討中の方に向けて、不眠に対する西洋医学、漢方医学の考え方やおすすめの漢方、そのほかの対処法をご紹介していきます。不眠を改善するのに役立つ情報をぜひチェックしてみてください。

目次

不眠・不眠症とは

不眠症は、夜間なかなか寝つけずに、普段より2時間以上かかってしまう「入眠障害」、一旦寝ついても夜中に目が覚めやすく、2回以上目が覚める「中間覚醒」、朝目覚めたときにぐっすりと眠った感じが得られない「熟眠障害」、朝普段よりも2時間以上早く目が覚めてしまう「早朝覚醒」などの状態が、週2回以上あり、かつ少なくとも1カ月以上持続していて、不眠のため自身が苦痛を感じるか、社会生活または職業的機能が妨げられている状態と定義されています(日本睡眠学会)。これらの要件を満たすほどではないものの、睡眠のリズムが崩されて、眠れなかったり、眠りが浅くてすぐに起きてしまったり、朝早く目覚めてしまったりするのが「不眠」となります。


西洋医学の考え方

不眠症を治す方法としては、不眠が起こる原因を取り除き、眠りに就きやすい環境を整えることです。寝室、寝具を自分に合ったものに取り替える、気分をリラックスさせる、カフェインをとらない、などを行っても眠れない場合は、医師の指導のもと睡眠薬や睡眠導入薬、漢方薬を処方されたりする場合があります。また、精神療法を行う場合もあります。


漢方医学の考え方

漢方では、眠りには「気」が関連していると考えます。不眠の要因となる疲労やストレスは気のめぐりを邪魔して滞らせてしまいます。その場合は気の流れを戻して心を落ち着かせる処方など、不眠の状態に合わせて漢方薬が処方されます。漢方では、「眠りにつく」という一部分ではなく、不眠の「自然な眠りをさまたげる原因」というところから考えます。眠りをさまたげる原因にはたらきかけ、良い眠りに導いていきます。


漢方用語解説
目に見えないが人の体を支えるすべての原動力のようなもの

症状別おすすめ漢方

次に、不眠の症状別におすすめの漢方薬をご紹介します。


いらいらして寝つきが悪い、驚いて目を覚ます、痰が多い方

柴胡加竜骨牡蛎湯 第2類医薬品

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)


体力中等度以上で、精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う次の諸症:高血圧の随伴症状(動悸、不安、不眠)、神経症、更年期神経症、小児夜泣き、便秘



一般的に「不眠」に使われる漢方薬
「柴胡加竜骨牡蛎湯」の解説を見る


眠りが浅い、憂鬱、胸脇がはって苦しい方

加味逍遙散 第2類医薬品

加味逍遙散(かみしょうようさん)


体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるものの次の諸症:冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症、不眠症
(注)「血の道症」とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状を指します。



一般的に「不眠」に使われる漢方薬
「加味逍遙散」の解説を見る


ストレスを受けやすい、イライラしやすい、ちょっとしたことで怒ってしまう方

抑肝散加陳皮半夏 第2類医薬品

抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)


体力中等度をめやすとして、やや消化器が弱く、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(神経過敏)、更年期障害、血の道症、歯ぎしり
(注)「血の道症」とは、月経、妊娠、出産、更年期など女性ホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状を指します。



一般的に「不眠」に使われる漢方薬
「抑肝散加陳皮半夏」の解説を見る


眠りが浅く夢をよく見る、倦怠感がある、日中に眠い方

加味帰脾湯 第2類医薬品

加味帰脾湯(かみきひとう)


体力中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪く、ときに熱感を伴うものの次の諸症:貧血、不眠症、精神不安、神経症



一般的に「不眠」に使われる漢方薬
「加味帰脾湯」の解説を見る

不眠への対処法

漢方薬以外での不眠改善へのアプローチ方法をご紹介します。


規則正しい食事の時間を心がける

朝昼晩と3食規則正しい食事の時間を心がけて、極端な空腹や満腹のまま眠ることのないようにしましょう。空腹で眠ると睡眠は妨げられてしまいます。睡眠前に軽食(とくに炭水化物)を取ると睡眠の助けになることがあります。また、脂っこいものや胃もたれするものを就寝前に食べるのは避けるようにしましょう。


適度な運動をする

運動にはストレスの解消や自律神経を整えるはたらきがあり、良質な睡眠を促進することが知られています。しかし、ただ運動をすればいいわけではありません。週に数回、ジョギングやウォーキング、水泳などの中程度の運動を習慣的に行うとよいとされています。逆に、激しい運動は、かえって睡眠を妨げます。無理をせず自分に合った運動を続けることが重要です。また、寝る直前の運動は、体温上昇をまねき、寝付きを悪くします。ただ、ゆるやかに無理のない範囲で行う軽いストレッチはお休み前に有効です。ストレッチは、筋肉だけではなく脳波や自律神経にも良い影響があるといわれています。


ぬるめのお風呂に入る

お風呂に入ることによって手足の血行が良くなることは、スムーズな入眠につながります。ただし、熱いお湯は禁物。38℃程度のぬるめのお湯で25~30分ほど入浴することで、その効果が得られやすくなるとされています。また、おなかまでつかる半身浴の場合は、40℃程度のお湯で30分ほど入浴することでも同様の効果が認められています。


就寝前に飲酒や喫煙をしない

就寝前にはカフェイン、ニコチンの摂取を避けるようにしましょう。カフェインの入った日本茶、コーヒー、紅茶などの飲料や、チョコレートなどの食べ物を摂取したり、たばこ(ニコチンを含む)を吸ったりすると、神経を刺激するため睡眠を妨げやすくなってしまいます。

なお、寝酒も避けましょう。時間とともにアルコールが分解されて、血液中の濃度が低くなると、覚醒効果が現れてしまいます。一時的に寝つきが良くなりますが、夜中に目が覚めやすくなってしまいます。


睡眠専門の病院へ行く

「いろいろな方法を試してはみたけれど、やはりよく眠れない…」という人や、「よく眠っているのに、朝起きた時に十分に眠った感じがしない…」、という人は、睡眠専門の病院(外来)への受診をおすすめします。自分でも気がつかない不眠の原因が明らかになるかもしれません。

まとめ

なかなか眠れないときは自分の体を見つめ直してみましょう。ストレスや疲労、不規則な生活などで知らず知らずのうちに体に負担がかかっているのかもしれません。がんばっている自分をねぎらって、リラックスできる時間が作れるようにしたいですね。また、症状別に選べる漢方薬でのアプローチも不眠には効果的です。睡眠は生活の質を左右するとても重要な要素ですから、自然な睡眠リズムで休息をとって、心地よい1日を送れるようにしましょう。


よくある質問

Q 何時間以上眠れないと「不眠」になりますか?
A 睡眠時間には個人差があります。日本人の睡眠時間は平均して7時間ほどですが、3時間ほどの睡眠で間に合っている人もいれば、10時間ほど眠らないと寝足りない人までさまざまです。ちなみに、「長期間にわたり夜間の不眠が続く」「日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下する」、この二つが認められたとき不眠症と診断されます。
Q 長時間寝ても疲れが取れないのは「不眠」だからですか?
A 長時間寝ても疲れが取れない場合、睡眠の質が低下しているほか、疲労そのものに原因がある場合などが考えられます。必ずしも不眠が原因ではないため、医師などにご相談ください。
Q 不眠に効く漢方薬の特長を教えてください。
A 漢方では不眠の原因をストレスなど自律神経系によるものと、胃腸機能の低下や老化による栄養不足によるものと、大きく2つに分けて考えます。前者には自律神経を整える働きがある「柴胡加竜骨牡蛎湯」を、後者には胃腸機能を高め栄養を補う「加味帰脾湯」が適しています。漢方薬は体全体のバランスを整えて不眠などの症状を改善するので、夜だけでなく1日3回用法どおり服用してください。