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髪の中の新しい発見

昨年、クラシエホームプロダクツは毛髪内部の成分分布状況の可視化に成功。
「毛髪のゆがみ」状態をミクロレベルで確認しました。そこで今回は実際に携わった研究員にインタビュー。
研究の背景や発見に至るプロセスなどを語ってもらいました。

対象物の真理を知り、独自の視点で新たな価値を生み出す。

インタビュー写真1

 私たちが研究対象としているのは毛髪や肌など生体なのですが、その仕組みや働きについての「普遍的な真理」を知ることがとても重要なのです。分かっているようで分かっていないことがたくさんあり、一方で技術の進歩とともに明らかになってきていることもある。そういった中で、独自の視点でこれまで分からなかったことを調べて、さらに仮説を立てて検証し、新たな付加価値を生み出す。その結果、お客様の暮らしがより豊かになるようなサービスへとつなげていく。そういったプロセスに、社内はもちろん、時には様々な分野の専門家・専門機関と協力しながら日々取り組んでいます。

 また、ビューティケア研究所の毛髪研究の特徴として得意としている分野が3つあります。一つは天然由来の成分を毛髪トラブルケアに有効活用すること。これまでも繭や米のとぎ汁、ひまわりといったものから成分を探索し、お客様のお悩みに応える商品を数多く生み出してきました。二つ目は熱ダメージに対する防止技術。こてやヘアアイロンなどを使う若年層の生活習慣にいち早く着目し、熱ダメージ特有の現象を確認しました。毛髪を熱から守るテクノロジーにおいては、今でも業界を牽引する存在になっています。そして三つ目は毛髪内部の観察技術です。今回の「毛髪のゆがみ」に関する新たな発見もこういった特徴が活かされたものだと思います。

世界最高性能の顕微IR装置を駆使して、世界で初めて毛髪内部の「脂質」分布を可視化。

図1.毛髪内部成分マッピング(真円毛)

図1.毛髪内部成分マッピング(真円毛)

図2.毛髪内部成分マッピング(うねり毛)

図2.毛髪内部成分マッピング(うねり毛)

 髪の主な成分であるタンパク質については様々な手法や技術で研究がなされていて、加齢とともに起こる「うねり毛」にはタンパク質の影響があることが分かっていました。しかし、タンパク質とともに重要な構成成分である「脂質」については明らかでない部分が多かったのです。そこで今回は世界最高性能の大型放射光施設(SPring-8)の顕微IRという装置を使いました。これは顕微鏡と赤外分光光度計を組み合わせ、特定の領域の成分分布を測定できる装置です。約80〜100μmの髪の断面に数μm間隔で光を照射し、赤外波長領域で吸収される情報を取り出して分析すると、肉眼では見えない成分の情報が見えてくるのです。これは非常に地道な作業で、一枚の横断面を撮るのに6時間くらいかけました。様々な測定条件出しを繰り返し毛髪を調べてみた結果、うねり毛における脂質の分布状況を可視化することに成功しました。真円に近い毛髪では、タンパク質と脂質が横断面全体に均一に分布しているのに対して(図1)、うねりを伴う毛髪は、タンパク質が「密」な状態では脂質が「疎」の状態であり、タンパク質が「疎」の状態では脂質が「密」であることを確認したのです(図2)。この発見はおそらく世界初だと思いますし、毛髪のうねりを是正するヘアケア商品の開発に応用できると考えています。

      
インタビュー写真2

 ただ、そんな発見も、実は初めから脂質だけにターゲットを絞っていたわけではなく、様々な毛髪内部に存在する成分の情報を得ることが目的でした。そして毛髪のゆがみを分析している過程で脂質に関して興味深いデータが見つかったのです。もともとクラシエでは「髪のエイジング」という概念が世の中で広く注目される前から加齢について研究しており、毛髪内部の脂質の組成変化に強い関心を持っていました。そこで「これはもしかしたら!」ということで一気に脂質にフォーカスして今回の発見にたどり着いた感じですね。

機能の裏側を常に考えること。リスクに対する想像力を養うこと。

インタビュー写真3

 日々そういった研究を進めつつ、絶対に欠かすことが出来ないのものとして「安全性」の問題があります。基本的に、効果効能を求めるとその反作用は起こりうるものです。ですから、どのようなテストをして、いかにリスクを見極めるかが研究者の大事な素養だと思います。また安定性についても0℃付近の低温から40℃を超える高温の生活環境下でも使用性や保管性に問題はないかなど、使用シーンをあらゆる面で想定しなければなりません。また、「そんな使われ方は想像していなかった」とならないよう、たとえ小さな可能性であろうとそのリスクを決して過小に見積らない危機管理意識と想像力を養うことが重要です。そのため私たちは、経験豊富な先人や多くの知見を持つ専門家の方々とのコミュニケーションを日頃から心がけています。どんなに優れた機能も、安全性や安定性が担保されていないのではあれば意味がないですから。

研究の先にあるものは、研究。終わりなき挑戦は続く。

 今回は「脂質」の部分で新たな発見にたどり着きましたが、これからの高齢化社会においてはエイジングのさらなる研究が必須だと思っています。しかしそれだけでなく、私自身が一児の母になったことで「髪の一生」について興味を持つようになりました。生まれた時にはうぶ毛だったものが、やがて強い髪になり、クセが出てきたりうねってきたり。ひとりの人でもいろいろな髪質をたどりますよね。そこがすごく神秘的だと思っていて、いつかその部分を解明したいです。

インタビュー写真4

 私も研究に携わる中で興味の対象が変わってきたことを感じます。若い頃は物質・生命そのものに関心があったのですが、今は人間の活動をどう快適にしていくのか、ミクロではなくマクロの部分を追求したいと思っています。それには生活スタイルの変化、社会環境、購買行動などもっと視野を広げなくてはなりません。そして試行錯誤して、何かを発見して、また違う疑問、興味が生まれて、を繰り返すのだろうなと思います。研究に終わりはないですから。常に知的好奇心を満たしながら、「想像」から新しいものを「創造」するという行為は研究者に与えられた喜びだと、ことあるごとに実感しています。

インタビュー写真5
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